青森へのバイパス路線、奥羽本線の旅【車窓・見所や駅弁について】

幹線

奥羽本線は福島駅から山形・秋田を経由して青森駅までを結ぶ路線です。
相次ぐ新幹線の開業によって、今や何とも一貫性のない路線となっていますが、青春18きっぷ利用者にとっては東北本線のバイパス線のような役割もあります。

2019年12月中旬に奥羽本線の普通列車で、青森から秋田で1泊して福島まで南下しました。

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青森~秋田

3つの路線が集まる青森駅

今回の奥羽本線の旅の起点となる青森駅は、東北本線(現・青い森鉄道)・奥羽本線、そして北へとうかがう津軽線(津軽海峡線)の3路線が集まる駅です。

青函トンネル開業前はここから青函連絡船が発着していました。
今でも長いホームの先には連絡船乗り場へと続く跨線橋が残っています。

特急「つがる」3往復走る

この区間を普通列車で走破できるスジは概ね数時間に1本です。
弘前までは列車本数は割と多く、その他では大館で乗り換えになるケースが見られます。
なお、青森早朝(5時41分)発と深夜(22時13分)着の快速が設定されており、景色や早起きに構わないのであれば便利なスジです。

昔よりスケールは小さくなったとはいえ、「スーパーはつかり」の任を解かれたE751系による特急「つがる」が青森・秋田間を1日3往復運行されているので、時間帯によっては利用価値があります。

またこの区間は所謂、日本海縦貫線の一端も形成しています。
そのため局所的に複線化されているのも特徴です。

平野と山越えの車窓

青森駅を出るとすぐに青い森鉄道と分かれます。
青函連絡の深夜便に連絡する東北本線の「はつかり」と奥羽本線の「白鳥」が、北海道から日本各地へ向かう乗客を乗せて、朝4時台に青森駅を同時に出発してここで別れたものでした。
その後は津軽線を右に分けます。

青森駅で奥羽本線と青い森鉄道が分岐する
青森駅を出てすぐ、青い森鉄道と別れる。
東北本線と再開するのは終着の福島

東北新幹線の終点の新青森駅は整備新幹線の駅らしく、何もない所に突如現れた立派な駅です。
もっともこの駅から乗る人は青森駅に行くようで、私がいる上り列車にはあまり乗ってこないようでした。

その次の津軽新城駅までは街中で、その先しばらくは津軽半島の付け根となる山地を越えます。
にわかに路盤が雪で覆われ、前面展望も真っ白になりました。

弘前までは山地を越えなければならない

浪岡駅からは平坦になり津軽平野を快走します。
急曲線もなく、特急も100㎞に満たない最高速度で走るのが非常に勿体なく感じられます。

津軽平野に出る

川部駅は風光明媚なことで知られる五能線が分岐しています。
「リゾートしらかみ」が運転されていますが、観光客ばかりのお仕着せの列車より、ローカルな風情が感じられる普通列車の方がおすすめです。

弘南鉄道が発着する弘前駅はかなり栄えた所ですが、弘前を過ぎて徐々に山地が近づき、大鰐温泉駅あたりからは田舎らしい風景になります。

大鰐温泉駅
大鰐温泉駅。
車内も空いてきた

その次の長峰駅から秋田県の大館までは矢立峠越えが始まります。
この区間は複線電化されており、曲線・勾配も緩和されています。
東北本線などでもよくある、上下線が大きく離れて一方だけがトンネルで抜ける、という光景が見られます。

矢立峠の線路は改良されている。
下り線が遠くに見える。

青森と秋田の県境は津軽湯の沢駅陣馬駅の間のトンネルの中にあります。
津軽湯の沢駅は12月~3月まで普通列車すら停車しない駅です。

大館駅は忠犬ハチ公の故郷で、とにかく秋田犬が大きな産業となっている模様です。
ホームには「ハチ公神社」もあります。

大館駅のホームにあるハチ公神社
大館駅のホームにあるハチ公神社

この駅で乗り換える時に忘れてはならないのは、名物駅弁である花善の「鶏めし」です。
スタンダードの「鶏めし」以外にもいくつか種類がありますが、私は「比内地鶏の鶏めし」を買いました。
駅弁の販売所があるのは駅を出た正面のロータリーの向こう側です。

大館駅の駅弁、比内地鶏の鶏めし
比内地鶏の鶏めし
もはや「チキン」と一括りにするのは失礼である

また、この駅からは花輪線が分岐しています。

大館を出るとしばらく盆地の中を走ります。
軽い山越えはあるものの、複線化・線路改良がなされていて、勾配や曲線も比較的緩やかです。
秋田内陸縦貫鉄道が分岐する鷹巣駅を経て、前山駅までは水田が広がりますが、その後は丘陵地帯を進んでいきます。

二ツ井駅付近。
複線用のトンネルは、複線化に際して線路付け替えがなされたことを示している。

東能代駅は五能線と再会する駅。
市街地へは五能線に一駅乗った能代駅が近いようです。

大館から東能代に至るまで、米代川に沿って山地を横断してきたわけですが、ここからは進路を南に変えて秋田を目指していきます。
海の近くまで来ましたが、東能代からは意外と丘陵地帯が続きます。

奥羽本線の南能代信号場
東能代の先にある南能代信号場。
単線ながら輸送量を確保している。

鹿渡駅からは周りに水田が広がり、秋田市内にも近づいて乗客が増え始めます。
八郎潟駅付近の広い干拓地を見て、追分駅で男鹿線を分けて、やがて秋田駅に到着します。

八郎潟の干拓地

秋田駅は青森駅も含めてこれまでの駅よりも格段に栄えています。
羽越本線が海沿いを走るのに対して、奥羽本線はこれから内陸へと向かいます。

秋田駅の駅弁、「秋田肉三昧」
秋田駅の駅弁、「秋田肉三昧」
それぞれに合った味付けが楽しめる。
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秋田~新庄

新幹線とローカル線が同居する区間

この区間は大曲までは奥羽本線というよりは「秋田新幹線の末端部分」といった様相で、普通列車の他に秋田新幹線の「こまち」が走ります。

両方の列車が走れるように、複線のうち一方は新幹線用の標準軌に改軌し、もう片方は在来線の狭軌のまま(一部は両方走れるように線路が三本ある)になっています。
その結果、標準軌と狭軌の線路がそれぞれ単線で存在する、単線並列となっています。
このため普通列車が同じ方向に走る「こまち」に追い抜かれるという、都市圏の複々線のような光景に出会うことがあります。

一方で大曲以降は優等列車の設定がない、ローカル線同然になってしまいます。
基本単線電化で、唯一複線化されているのが院内と及位間の1駅分のみです。

東北新幹線の開業によって、それまでは格下の地方交通線だった田沢湖線が東京・秋田間の輸送のメインルートに出世し、逆にそれまで在来線特急「つばさ」が走っていた奥羽本線が零落したことは、山陽新幹線の岡山開業に伴う山陰本線と伯備線との下克上の物語を想起させます。

ローカル線のような車窓

奥羽本線2日目はまだ暗い朝6時前に秋田を発つ列車に乗りました。
おそらく水田の中を走っているはずです。
大張野駅から峰吉川駅は山間部で曲線が多くなります。

夜明けの峰吉川駅。
2本の線路の幅の違いに注目。

その後はまた水田の広がる盆地に出ますが、内陸部に入っていくにつれて積雪の量が多くなってきました。
大曲駅で田沢湖線を分ける、と書きたいところですが、現状としてはこちらが秋田新幹線から切り離される、と表現すべきです。

大曲駅を出て川を渡ってすぐの所にある曲線から、横手駅の手前まで15㎞近くに渡って延々と奥羽本線最長の直線が続きます。
雪山を眺めながら広い平野を刈っていくのは気分が良いものです。

雪を被った水田地帯を直線で突っ切る

横手駅は北上線が分岐する駅で、それなりの規模があります。
北上線は今では地味な存在ですが、新幹線開業前は東北の横断線として、急行列車や一時期は仙台と秋田を結ぶ特急列車すら運転されていた時代がありました。

横手駅
格を感じる横手駅

横手駅を出て十文字駅あたりから田舎らしさが感じられ、昔から特急「つばさ」が停車していた湯沢駅を過ぎると、いよいよローカル線の風情が漂います。
この辺りが奥羽本線で最も寂しい区間といえましょう。

寒村の風景

院内駅からは本格的な峠越えが始まり、次の及位のぞき駅との間に秋田と山形の県境があります。
一応幹線らしく勾配は緩く抑えられていることが多い奥羽本線ですが、ここでは20‰の勾配や400mの急曲線が連続します。

秋田と山形の県境にさしかかる

及位駅から先も勾配とトンネルが続き、大滝駅では車窓が開けます。

真室川駅はそこそこの集落のある所で、乗客も増えてきました。
先ほどまでの県境付近では銀世界でしたが、この辺りでは木々も緑になりました。

真室川を過ぎると集落も増える

連なる山々を眺めながら列車は新庄駅に到着します。

新庄駅より。
左手には鳥海山も見えているらしい。
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新庄~福島

山形新幹線

新庄からは山形新幹線「つばさ」が直通しているため、新幹線の軌間に合わせて標準軌になっています。
そのため普通列車にも標準軌に対応した専用の車両が使われます。
なお普通列車に対してはこの区間は「山形線」と呼ばれていますが、いずれにせよ正式名称ではありません。

新庄駅の奥羽本線のホーム
軌間が変わる新庄駅のホーム。
手前が山形方面行、奥が秋田方面行の電車が出る。

普通列車の運転系統としては、山形・米沢で分かれています。
このうち米沢までは1~2時間毎の運転ですが、米沢~福島間は普通列車が非常に少なく、日中は5時間も間隔があることもあります。
普通列車で楽しみたい区間ではあるものの、残念ながら山形新幹線でワープせざるを得ないケースも多いでしょう。

屈指の難所、板谷峠を過ぎて福島へ

新庄駅の次の駅、船形駅からその隣の芦沢駅までは軽い山越えといった感じです。
その後も長閑な風景が続きますが、秋田~新庄間程のローカル線らしさは感じられません。

奥羽本線の新庄付近の車窓
船形から少し山越えになる
奥羽本線の大石田付近の車窓
大石田駅付近の田舎の風景

村山駅に近づく頃には雪は消えて、車窓は平坦な盆地となりました。
沿線人口が増えだしたのか、駅間が短くなり、車内も混雑してきました。

奥羽本線の南出羽付近の車窓
南出羽駅付近。
雪がなくなり、住宅が増えた。

羽前千歳駅からはもう市街地になり、なおも走ると山形駅に到着します。

山形駅の駅弁、牛豚鶏の肉づくし
山形駅の駅弁、牛豚鶏の肉づくし。
秋田でも似たような駅弁を食べたが、こちらの方がボリュームがある気がする。

山形駅を出て次の蔵王駅までは平坦な地形を進みますが、やがて緩やかな上り勾配が始まります。
上りは中川駅を過ぎた所にある北赤湯信号場まで続き、ここで複線になります。
そしてカーブしながら山々に囲まれた盆地を見下ろしながら下っていく車窓は見事です。

奥羽本線の中川~赤湯間の車窓
中川~赤湯間。
弧を描くように盆地を眺めて進んでいく。

赤湯駅を過ぎるとまた勾配も曲線も少ない線路で米沢駅に到着します。
米沢駅といえば名物駅弁、「牛肉どまんなか」でしょう。
それにしても奥羽本線の駅弁は肉が多いです。

米沢駅の名物駅弁「牛肉どまんなか」
米沢駅の名物駅弁「牛肉どまんなか」。
そぼろも食べ応えがある。

米沢駅の後に残る最後の仕上げは板谷峠越えです。
次の関根駅から福島駅の2つ手前の庭坂駅までの30㎞程度は、33.3‰(最大38‰)の急勾配が続く日本屈指の難所です。
板谷駅を過ぎたあたりで福島県に入ります。

奥羽本線の板谷峠越え
険しい山越えが始まる
奥羽本線板谷峠の松川橋梁
迫力のある松川橋梁

それだけに車窓も魅力的なのは当然ですが、ここでの見所はやはりスイッチバック跡です。
機関車が客車を牽いていた時代は急勾配上に駅を設けられないため、各駅でスイッチバックをしていました。
山形新幹線「つばさ」が通過する現在では、普通列車も流石にそんな悠長なことはしませんが、スイッチバック時代の駅や引き上げ線の跡が列車からも確認できます。

スノーシェルターに覆われた峠駅とスイッチバック跡
スノーシェルターに覆われた峠駅。
奥にスイッチバック時代の駅の用地が見える。
板谷駅付近の引き上げ線跡のトンネル
板谷駅付近。
トンネルは引き上げ線で使われていたもの

S字カーブを描きながら庭坂駅に着くと、難関の板谷峠越えは終わりです。
ここまで来れば福島駅はもう間もなくです。

山に沿って迂回しながら板谷峠を駆け降りる
ついに福島駅に到着し兄貴分の東北本線と再会
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青春18きっぷで青森に行く所要時間は?

首都圏から青春18きっぷで青森を目指す場合、当然最短経路は東北本線となりますが、新幹線の開業によって盛岡以北は第三セクターになっているので、追加料金必要になります。
この追加料金について説明すると、基本的に盛岡以北はJRでないので青春18きっぷ利用不可なのですが、青い森鉄道の八戸~青森間には特例があり、同区間を通過利用する場合のみ運賃不要となります。
参照: http://aoimorirailway.com/guide/q_a
結局、必要なのは盛岡~八戸間の運賃3110円です。

青春18きっぷで青森に行く場合は今回紹介した奥羽本線回りとなりますが、所要時間はどのくらい変わるのでしょうか。
まず距離ですが、福島~青森まで東北本線経由が470㎞弱、奥羽本線経由が485㎞と実は大して変わらないことが分かります。
実際に、上野発の青森行き夜行列車が華やかなりし時代は、東北本線・常磐線経由の列車以外に奥羽本線経由で青森に行く急行「津軽」が運転されていました。

では現在の普通列車の所要時間はどうかというと、およその乗車時間だけでは福島~新庄と新庄~秋田間は3時間、秋田~青森が3時間半です。
東北本線は同区間で8時間程度なので、如何に全線複線電化の線路が早いか分かります。
もっとも両線ともスムーズに乗り継ぎできませんが、奥羽本線は途中で在来線の特急でワープできるので、(本物の)新幹線よりは楽しむことができます。

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北へ向かうもう一つの幹線

奥羽本線は東北本線とはまた違った魅力があります。
一つは車窓について。
奥羽本線は山脈に囲まれた内陸部を走るので、より山村の風情が強く感じられ、雪の多さも太平洋側の東北本線と比べて格段に多いです。
東北本線は仙台を過ぎて岩手県に入る辺りまでは雪は少ない地域ですが、その点、奥羽本線となると福島を出てまもなく板谷峠の雪景色です。

もう一つは線路条件の多様性です。
全線複線電化で最高速度120㎞の東北本線と比べ、奥羽本線は2番手の幹線なのでそこまで贅沢な投資はできません。
そこで線形の悪い部分だけ改良・複線化したり、単線の駅間に信号場を設けたりと、数々の工夫が見られます。

そして山形・秋田両新幹線の開業によって、奥羽本線はさらにユニークな特徴を持つに至ったといえます。

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