【185系「踊り子」引退記念】現役の首都圏特急車両たちと座談会

東日本の車両

2021年3月のダイヤ改正で、国鉄型特急車両の185系が40年続けてきた特急「踊り子」を引退しました。
これを機に、私が議長を務め、これまでの首都圏の特急列車のあゆみについて、外観・用途も様々な現役車両と共に振り返っていきます。

2021年3月、東京駅にて

議長:本日は(一部の方を除き)お忙しい中、お越しいただきありがとうございます。
185系さんが特急「踊り子」を勇退なさるとのことで、首都圏の現役特急車両の皆さんとこうして送別会を開催させていただきました。今回は現役の10名の方に参加していただいております。

E257系:議長、9名しかいませんよ?

E657系:本当だ。中央本線のE353系さんがいませんね。昨晩二人でチャットしてた時は出席すると言ってましたけど。

E353系:申し訳ありません。遅くなりました。

651系:最近の若い車両もんは時間も守れんとは、鉄道車両にあるまじきことではないか。

E353系:あいにくオレンジ色の中央線快速の奴らがまた遅延して、なかなか進めなかったのです。
隣の黄色の各停にまで抜かされる始末ですよ。まあ慣れているとはいえ、やはり屈辱的ですね。
はい、これが遅延証明書です。

議長:まさか貴方がこれを持ってくるとは思いませんでした。
とりあえず、全員揃ったので始めましょう。

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各車両自己紹介

議長:まずは簡単に自己紹介をしていただきましょう。
年功序列式に185系さんからお願いします。

185系:私が営業運転を開始したのは国鉄時代の1981年。お馴染みの特急「踊り子」の誕生です。普通列車としても運用されたため、当時特急車両としては型破りなほどラフな存在でした。
フットワークの軽さゆえに何かと便利屋として重宝されたため、気づけば40歳になっていました。

185系(1981~)
ユーティリティープレーヤーとして長年に渡り愛されてきた
写真は「ムーンライトながら」

E257系:それでこそ名車であります。たしかダーウィンでしたよね。「生き残るのは早くてカッコ良い車両、あるいは豪華な車両ではない。社会情勢の変化に対応し得る車両である。」と言ったのは?

議長:正しくはありませんが、おっしゃる意味は分かります。
では国鉄民営化を経て651系さんの登場です。

651系:私は記念すべき平成元年、1989年に常磐線「スーパーひたち」としてデビューしました。
国鉄型特急車の時代に私が白いタキシードを纏って登場したわけですから、随分と世間を驚かせてしまったものですなぁ。
今は高崎線の「草津」に就いていますが、下手に迎合して自分の流儀は変えるつもりはありません。

651系(1989~)
白いタキシード姿の堂々とした紳士。
高崎線で活躍する今も容姿はあまり変わらない。

議長:お次は253系さんです。

253系:オッケー。「成田エクスプレス」用の初代車両の253系です。
1991年に空港ターミナル直下の駅ができて以来、2010年までそのミッションをしておりました。
日本に来たガイジンサンを驚かせてやろうと、かなりビビットなお洒落をしましたよ。
現在では新宿から日光まで、JRと東武鉄道をダイレクトに結ぶ列車として活躍しております。

253系(1991~)
お洒落で欧米かぶれ
成田エクスプレス時代の写真。

255系:房総半島の255系です。
内房線・外房線とも夏は行楽需要が盛んですから、私もご覧の通りビーチや海、菜の花を思わせる明るい車体となっております。列車名も当初は「ビューさざなみ」とか「ビューわかしお」といった具合に、観光を意識したものでした。

255系(1993~)
華やかな身なりだが、意外とバランス派。

議長:さて、「いなほ」(新潟~酒田~秋田)で活躍されているE653系さんは、現在新潟にいらっしゃるのでリモートでの出演です。
今回はWeb会議システムの“Zuug”(ツーク)を導入しています。

E259系:なるほど。今注目のサービスと、ドイツ語で「列車」を意味する”Zug”をかけてるんですね?

議長:さすがは現役の「成田エクスプレス」さん。外国語には強いですね。
では、E653系さん、聞こえますか?

E653系:はい。こんにちは。こちらはまだ雪が残ってますよー。
新潟だけでなく、酒田も秋田も食べ物やお酒が美味しいので来てくださいねー。

651系:E653系君、ここは営業の場ではないのだが。
まったく、常磐線時代と変わらんな。

E653系:で、何でしたかな?ああ、自己紹介ですね。ありがとうE657系青年。
1997年に常磐線の「フレッシュひたち」という清々しい名前でデビューしたE653系です。厳格なる先輩651系さんと共に良きコンビ(651系&E657系苦笑)を組んでおりました。
今はいろいろあって新潟に転勤となりましたが、「いなほ」「しらゆき」で充実した仕事をさせてもらっています。

E653系(1997~)
カラフルな衣装が好きなお調子者
現在は羽越本線で活躍中

E257系:どうもどうも。E257系と申します。
まずは中央本線に始まり、房総半島の他、今日の主役でいらっしゃいます185系さんの後継として、東海道本線「踊り子」に就いております。要するに、各線の看板車両を補佐するのが私の務めでございます。

E257系(2001~)
腰が低い世渡り上手
185系に代わり「踊り子」を務める

議長:その次は、二代目「成田エクスプレス」E259系さんですね。随分と青ざめているようですが?

E259系:ええ。新型コロナウイルスの影響で訪日外国人がほぼ消滅したものですから。皆さんもそうかと思いますが、私の場合特に深刻でして、日中は運用すらなく暇を持て余している有様です。
2009年からずっと「成田エクスプレス」の仕事をやっていますが、まさかこんな事態になるとは…

E259系(2009~)
前任者のイメージを継承するも、性格は比較的温厚。

議長:お気の毒です。
では常磐線のE657系さん、どうぞ。

E657系:はい、よろしくお願いします。
私は2012年より、尊敬する651系さんの後継車両としてデビューし、現在では常磐線特急の全列車を担当させていただいています。昨年(2020年)は東日本大震災で運休していた区間も全て復旧して、「ひたち」は仙台まで到達できて、今まで以上に仕事にやりがいを感じています。

E657系(2012~)
真面目な優等生タイプの好青年

E353系:中央本線のE353系です。最初に「スーパーあずさ」に就いたのが2017年末でした。
中央本線はカーブが多いので、自転車がするように車体を内側に傾けることで高速で通過しています。先代のE351系さんは「振り子式」という方式でしたが、技術進歩のおかげでコストパフォーマンスが向上したのです。コツは呼吸法(新しい「空気バネ式車体傾斜」)とダイエット(軽量化)ですよ(笑)。

E353系(2017~)
コスパ重視型の堅実派だが遊び心も多少ある

議長:最後はE261系さんです。

E261系:2020年より「サフィール踊り子」で伊豆への観光輸送に邁進しています。乗車そのものを楽しんでいただくために、グリーン個室・カフェテリア・プレミアムグリーン車といった、高付加価値のサービスを提供して話題になっております。階級制が顕著だった昔でいう「一・二等特別急行」ですが、私はそういうふんぞり返った存在にはなりたくありません。

E261系(2020~)
シックでスタイリッシュな全車グリーン車以上の新星

255系:「一・二等特別急行」とは?

E261系:客室の等級はかつて一等から三等までありました。戦後しばらくして一等が廃止され、1969年には二等がグリーン車、三等が普通車と改められたわけです。

253系:欧米では未だに一等や二等という等級制がありますな。

E653系:要するに我々は「二・三等特別急行」で、自分だけ格式が上だと言いたいのだね?

E261系:ですから「格式」という古臭い言葉は好みませんが、編成の充実度に関しては私が優秀であると自覚しています。

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首都圏の特急車両を世代別に分類してみる

議長:それではお話を伺う前に、185系さんの登場した頃から今に至るまでを幾つかの段階に分けてみたいと思います。
昨今問題となっている「世代間の対立」を煽るつもりは決してございませんが、そうすることで世の中の流れというものが見えやすくなると愚考した故です。
先に私なりの見解をご笑覧いただきましょう。イタリック体で記した車両は本日いらっしゃらない方です。

世代区分おおよその年代車両好んで使う単語・フレーズ
Ⅰ 昭和末期世代1970年代中盤~1980中盤183,185特急大衆化、短距離化、急行の特急格上げ
Ⅱ 平成初期世代1980年代後半~1990年代前半251,E351,651,253,255速達化、画期的な、国鉄時代では考えられなかったような
Ⅲ 平成中期世代1990年代中盤~2000年代E751,E653,E257標準型、汎用性、親しみやすさ
Ⅳ 平成後期世代2010年代E259,E657,E353○○のイメージを継承した、コンセント設置、Wi-Fi、外国人向けの、
Ⅴ 令和世代2020年代~E261コト消費、高付加価値サービス、大人の

E353系:わざわざE261系さんを「令和世代」に分ける必要あります?僕とは実質2年くらいしか離れてませんよ?

E261系:この表を見てお分かりの通り、私はE353系さんの世代とはそのコンセプトを異にしてます。同世代の仲間では近鉄の「ひのとり」さんがいますね。

議長:ありがとうございます。今後もこのような風潮は続くように思います。

253系:255系さんが我々と同じⅡにカテゴライズされているのはいかがなものでしょうか?

議長:たしかに悩んだんですよ。255系さんは実際はⅡとⅢの過渡期なのでしょうが、敢えて分類するならⅡが適切だと思いました。

255系:私もそのように自己認識しております。
まあ、253系さんとは性格は違うけど体形は似てると言われますがね。

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Ⅰ世代 ~特急の価値を問い直した185系~

議長:それでは内容に入っていきます。
185系さんがいわゆる「特急らしからぬ」特急車両として登場されたのは1981年でした。

185系:当時の私の先輩の多くは1960年代という在来線特急の全盛期に活躍された方々で、「特急たるもの食堂車があって初めて一人前」という雰囲気があったんですよ。
私はといえば扉が片側2つあって窓も開くという、それまでの特急とは大きく異なる車両だったんですね。昔東海道本線で特急「こだま」を務められた大御所の181系さんなんかは「お前など急行型車両じゃ」って言ってましたよ。酷い時には「女の子のヘッドマークなんかつけてけしからん」なんて声もありましたっけ。

E261系:いましたよね。特急車には「格式」というものも必要だとか言う方。

185系:鉄道が唯一の中長距離輸送手段だった1950年代までと違って、特急も大衆化・短距離化といった社会情勢の変化に対応すべきなのです。私は悪い意味での国鉄らしい体質を変えたくて、前例を打ち破って登場したのです。

議長:しかし、お堅い人はともかく、乗客にとっても「特急らしくない」と思われませんでした?

185系:そこなんですよ。保守的な先輩の特急車両さんたちとは違って、実は乗客の皆さんはそんな固定観念なぞ持っていなかったのです。新幹線から普通列車に乗り換えるより、「踊り子」なる目新しい電車に乗って伊豆に行く方が気分も盛り上がるでしょう?

253系:なるほど。潜在的なニーズを提供することの大変さ、そしてその意義がよく分かる話ですな。ヨーロッパの列車も文学者や音楽家にちなんだネーミングがよくあります。

ミュンヘン~プラハを結ぶ「フランツ・カフカ」号

185系:翌年には東北・上越新幹線が大宮を起点に暫定開業したので、上野~大宮で「新幹線リレー号」にも就きました。その後も行楽輸送に気軽に利用できる「新特急」シリーズで活躍しました。

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Ⅱ世代 ~民営化を機に急速に進歩~

議長:1987年に国鉄は民営化され、関東から東北にかけてはJR東日本となりました。
同社が初めて世に送った特急車が651系さんでした。

651系:皆さん、在来線特急の最高速度は一般に130㎞だと認識されているかと思いますが、それを最初に実現したのは他ならぬ私であります。
それまでの堅牢な印象があった国鉄車両とは違った、洗練された見た目と速達性。私は平成という新しい時代、そして新生JRの象徴のような存在だったのです。

議長:私も子供の頃に「スーパーひたち」というカッコイイ電車があると聞いて、東京に用事で行った際、親に頼んで乗せてもらったんです。上野から松戸まででしたが…

651系:あの時代は今と違って勢いがありましたな。より速く、それまでにはないものを、という意識が我々の世代にはありました。

253系:イエス。同感です。
私のデビュー時も成田空港駅が開業するとのことで、京成電鉄さんやリムジンバスさんやらの、ライバルがいたわけです。そんな中でお客様からチョイスしていただくべく、インパクトのある「成田エクスプレス」ブランドを打ち立てたのです。例えば昔の「パーラーカー」みたいな1列&1列のグリーン車や、4人用のグリーン個室まであったんですよ。
それに比べると近頃の車両は、我々のジェネレーションのイメージを引き継ぎながらもスケールダウンしたような小物が多い。今でも時々ヤングの街渋谷に行ってみるのですが、どうもエネルギーに欠けますな。

E653系:253系さん、古いですよ。今どき渋谷を若者の街なんて。
どうしてバブル世代ってのは自分の時代を神聖化するんですかねぇ?

255系:まあ、そんな華やかな時代があったのは私からすれば羨ましいですな。
私のいる房総半島の内房・外房線は海水浴客が多いのですが、昔と違ってバスに客を取られてしまって。特に内房線の特急「さざなみ」は平日は朝と夜だけの通勤特急化してしまいした。
そうなったのも私が登場して数年後に、アクアラインなんかができたからですよ。今は亡くなった自民党の「ハ○コー」さんに文句言ってやろうかと思いましたが、あの方は顔が怖そうだったのでやめました。

E657系:貴方みたいに派手な方が通勤輸送ですか?

255系:そこは外見だけで判断しないでいただきたい。
私はこう見えても内装は落ち着いていて、ビジネス需要にも対応できるのですよ。総武本線や京葉線は、今では千葉の先まで宅地化が進んでいますから。
こういうのを中途半端だって言う方もいますが、私の現在の主要な仕事である総武本線「しおさい」は、まさにビジネス・観光両方でそれなりの需要があるわけです。悲しい哉、中庸というのは常に両側から批判されるのです。

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Ⅲ世代 ~性能追及から実用本位へ~

議長:90年代中盤以降は民営化の熱も幾分収まり、バブル崩壊の後遺症としてその後何十年も続く不景気の時代が始まりました。
この時代に生まれた方々は、民営化直後に華々しく登場されたⅡ世代を補完する立場だったように思います。

E653系:縁の下の力持ちというやつですよ。私が国鉄型の車両を置き換えた「フレッシュひたち」で活躍していたころは、車体の色のバリエーションが何種類もあって、華やかさに欠けた常磐線にカラフルな雰囲気を添えたのですよ。
しかし、先輩はそれに理解を示さず、「フレッシュひたち」は「スーパーひたち」より停車駅が多くグリーン車もない「格下」のような存在だったのです。あの時代はまだ私の価値が認められていませんでしたね。

651系:当然だね。常磐線特急は観光客よりビジネス利用の方が多いのだから。

E257系:よろしいでしょうか?
私の最初の仕事は中央本線。今は引退されたE351系さんをお支えする役目でした。E653系さん同様、古い国鉄車両を置き換えたうえで、ポップで親しみやすい車両として、先輩の務める看板列車の補佐役をしておったのです。

E353系:E257系さん、やたら謙遜してますけど僕は知ってますよ。
「スーパーあずさ」って懸命に振り子してるけど、新宿から八王子はそもそも作動させてないし、甲府から先なんて乗客も少ないんだよね。正直そこまでしなくてもよくない?
とか陰で言ってたの。

初代「スーパーあずさ」、E351系のラストラン

E257系:いやいや。発言の真意が伝わらなかったようですが、E351系さんやE353系君の努力を讃えているのです。もっとも、実用本位に徹するという私のポリシーは変わりませんがね。
やがて房総地区にも配属され、やはり当時「ビューさざなみ」などで活躍されていた255系さんのもとで、国鉄車両に代わって仕事をしたのです。つまり私は往年の183系さんや185系さんの後を継いだ、首都圏の標準型車両と申してよろしいかと存じます。

185系:そう言いながら私の陰口を叩いているのではないだろうね?

E257系:それは断じてありません。185系さんは私の手本ともいうべきお方ですから。

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Ⅳ世代 ~時代に合わせてブランドを守る~

議長:さて、2000年代後半以降というのは、リーマンショックを経て、世の中で「保守化」という言葉がよく使われるようになった気もします。そして、Ⅱ世代がそろそろ老朽化を指摘される頃でもありました。

E259系:私がデビューしたのは2009年ですが、その翌年に京成電鉄さんの「スカイライナー」が新線経由になって大幅にスピードアップするため、JRとしても先手を打ったわけです。「成田エクスプレス」はさほど乗車時間も長くなく、グループで目的地に旅行に行くわけでもないと私は考え、グリーン個室は採用しませんでした。

253系のグリーン個室。現在では長野電鉄で健在。

253系:それがコンサーバティブだと言っているのですよ。

651系:すまん、英語は得意ではないのだが、「コンサーバティブ」とはどういう意味だね?
どうも253系さんの物言いはカタカナが多すぎて理解しづらい。

E259系:「保守的な」という意味です。
しかし、結果的には私は実績をあげましたよ。座席のコンセントはスマホの普及により必須設備となりましたし、先輩のボックスシートも意欲的でしたが、私はそういう尖った部分を平準化したんです。

253系:進行方向が逆になるのは欧米では当たり前ですよ。

E259系:そうかもしれませんが、私は日本の良さにこだわるのがおもてなしだと思っています。
それで、当初はリーマンショック直後でどうなるかと思いましたけど、その後景気も回復して、これが大きかったのですが訪日外国人も急増して順調でした。インバウンド需要。懐かしい響きですね。それも新型コロナウイルスで全てが変わってしまったのはご存じの通りです。
そういえば、高名な投資家のジョン・テンプルトンという方がこんな言葉を遺しています。
強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福の中で消えていく

議長:名言ですね。
で、253系さんのその後は?

253系:成田エクスプレスからは退きましたが、冒頭述べた通り、日光の自然をイメージした新たな装いで、新宿から日光・鬼怒川温泉行の運用を東武鉄道のスペーシアさんとシェアしています。長年のライバルが手を組むわけですから、これもエポックメーキングなことですよ。

651系:しかしパートナーがスペーシアさんとは、相手が優秀過ぎて気の毒ですな。
いくら派手な装いをしたところで、実力ではかなうまい。

253系:まあ、そう簡単に比較するのはフェアではありませんよ。
それから、私の一族にはセカンドライフで長野に移住した者もおりまして、長野電鉄の有料特急で活躍しているんです。しかもそこには4人用グリーン個室が健在で、1部屋1000円で利用できるのです!
だからE259系君も、今よりもっと通勤輸送にコミットするとか、LCC(ローコストキャリア)の格安運賃に惹かれて成田空港に行く旅行者向けにバーゲンセールするなりトライされては?

E657系:そうですよ。「悲観」の今こそ新たなチャンスかもしれませんよ?
ところで、実は当初は私が上野~いわきまでの「ひたち」を担当し、いわき~仙台はE653系さんが引き継ぎという予定になっていたのです。

E653系:私も南東北に移住するのを楽しみにしていたんです。ところが、2011年に東日本大震災が起きて、その計画も白紙撤回されました。嗚呼、真面目な上下世代に挟まれた私は東京には居づらくなり、新天地を新潟に求めたのです。

651系:E657系君はしっかり者で、私も安心して「ひたち」を任せられる気がしたものだよ。

E657系:光栄です。私は黒をベースにした高級感がある客室にオフィスビルのように上品なデッキを特徴にしているんです。それから、乗り心地が良くなったという声もよく頂いています。

651系:それにE653系君も、新潟では随分のびのびとやっているようで結構だな?

E653系:へえ、おかげさまで。「いなほ」を務めるにあたってグリーン車をこしらえまして、それが在来線特急随一といわれる豪華さなのですよ。これぞグリーン車だと思わんかね、優等生のE657系青年?

E657系:やめてくださいよ。同じグリーン車といっても線区も客層も違うんですから!それ以上言うと”Zuug”の電源切りますよ!

255系:E657系さんって意外と過激なところがあるんですね。癖の強い二人の兄貴を持つ心優しい青年、ドストエフスキーの傑作「カラマーゾフの兄弟」の三男アリョーシャみたいな方だと思っていたのですが。

E259系:それはE657系さんに主体性が無いと言っているようにも聞こえます。同じ世代としては不服です。

E257系:恐れ入りますが、私は実務型の者でして、文学はさっぱりわからんのです。話を戻していただきたいのですが?

議長:そうですね。
2017年末には中央本線でも主役が交代しました。

E353系:確か出発式の時に議長いましたよね?
先輩のE351系さんがそろそろ古くなってきたということで、僕が「スーパーあずさ」のバトンを受け継いだんです。

E657系:私もE353系さんもそうですが、国鉄時代から大幅にスピードアップした先代の存在感が大きいわけです。それで「器が小さい」とか言われるのですが、乗り心地や内装に関しては格段に進歩しています。

E259系:同感です。見た目だけでなくて、そういう所の完成度を高めるのが誠実な仕事ですよ。

E353系:やはり理解してくれる同世代の友はいいものですね。
最初の方に申し上げた通り、「振り子式」から「空気バネ式」になったことで、揺れが軽減されて車内も圧迫感が無くなったんです。その他にもスマホの充電ができるコンセントがあったり、荷物置き場を設置して外国人旅行客にも対応するなど、細かい配慮もしているんですよ。

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Ⅴ世代 ~高品質サービスの時代へ~

議長:いよいよ最後の世代、2020年3月にE261系さんの「サフィール踊り子」がデビューしました。

E261系:私の先輩にあたるのは「スーパービュー踊り子」の251系さんです。グリーン個室や天井まで届きそうな明るい窓は、私も大いに参考にさせていただきました。
もっとも私は251系さんよりさらに観光輸送に徹していまして、三等車、いや普通車は設けませんでした。

185系:ご存じの通り私は全くプライドが高いものではないのですが、さすがにサフィール少年と一緒に走るとなると、いささか肩身が狭いものでしたな。これが40年の歳月なのかと。

E261系:とんでもないことです。私がこうして伊豆行き列車で観光特化していられるのも、185系さんが地道に「踊り子」ブランドを育ててくださったからですよ。

議長:実を申しますと、私はE261系さんのことを誤解しておりました。最初は「またオモチャみたいな観光列車が来たんだな」と思ったんです。ところが、実際に「サフィール踊り子」を利用したら全く「押しつけがましさ」がなくて感心したのです。

E261系:そりゃあ酷いですね。私はあくまで大人のための高品質なサービスを提供しているのですよ。テーマパークの箱みたいな下品な連中と一緒にしないでいただきたい。

E353系:しかし、そんなE261系さんのデビューがコロナと重なるとは気の毒ですね。

E261系:全くです。せっかくのウリであるカフェテリアも度々営業休止をしていますし、観光需要が落ち込むのもやむを得ません。デビュー時から「お前は不要不急だ」と言われている私の悔しさ、お分かりいただけますか?

E259系:今の私には分かります。同じく存在を否定されたものですから。

651系:しかし私が引退した暁には、高崎線や吾妻線にもE261系君のような「サフィール草津」が来て欲しいものだな。

255系:ええ。同じく房総半島の鉄道輸送活性化にも期待したいところです。

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185系「踊り子」を引退

185系踊り子グリーン車の旅

議長:で、「踊り子」の方はE257系さんが引き継ぐわけですね。

E257系:恐縮です。
気づいたら中央本線は「あずさ」も「かいじ」も、E353系君に定期列車を全部取られて暇になっていたです。だから私にとってはちょうど良いタイミングでした。房総半島の方も列車が減ったものですし。

新旧「あずさ」

255系:「房総半島には見込みがない」みたいなことをよく愚痴っていたそうですな。

E257系:それも発言の真意が伝わらなかったようです。(一同ヤジる)要するに、房総特急はなるべく255系さんにお任せしたいというつもりだったのです。

185系:とにかく、よろしく頼みますよ。
それから通勤列車の「湘南ライナー」が特急「湘南」になって値上げされているわけだから、そのこともお忘れなく。

E259系:それで、185系さんはもう現役引退してしまうんですか?

185系:いや、定期列車はありませんが、しばらくは波動用として臨時列車や有事の救済列車でお声がかかるかもしれません。

議長:第一線を退いても「代打の神様」ならぬ「代走の神様」ですね。

185系:私は国鉄の117系氏(185系に影響を与えた関西地区の新快速車両)と知り合いなので分かりますが、その関西ネタは東日本を出たことがない彼らには通じませんよ。

651系:それにしましても、昭和から令和にかけてバブル景気とその崩壊、リーマンショック・レジャーの多様化など社会は激変した中で、40年間も「踊り子」を務められた185系さんには感服いたす次第であります。(一同拍手)

ん?E257系君どうした?

E257系:後継者として、僭越ながら一同の気持ちを代弁させていただきます。
(白地に緑字のフリップを取り出して)
185系「踊り子」ありがとう

E657系:そういう政治ネタはやめていただきたいですね。

議長:私からもお願いします。

253系:いやはや。せっかく651系さんが上手く締めたのが台無しですなぁ。

185系:いや、そんなことはないよ。E257系君、どうもありがとう。
何といっても、緑も白も私が大好きな色なんだ。

185系の側面デザイン






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