リバティ会津&AIZUマウントエクスプレスの乗車記、会津鉄道経由で会津若松へ

ローカル線

東京から鉄道へ東北地方へ行く場合、最も一般的な東北新幹線(東北本線)や常磐線が考えられますが、意外なルートとして東武鉄道や会津鉄道で会津地方に出る方法があります。
時間がかかり利用できる列車の選択肢も限られているのが難点ですが、景色は他のルートよりも遥かに良いのが特徴です。

2021年2月に浅草を早朝に出発する「リバティ会津」に乗り、会津田島駅で「AIZUマウントエクスプレス」に乗り換えて会津若松駅に向かいました。

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リバティ会津で会津田島へ

東武鉄道リバティには売店・自販機はない

「リバティ会津」に使われる東武鉄道の「リバティ(Revaty)」は2017年に登場した新しい特急車両です。
他にも日光行きや伊勢崎線など東武鉄道の様々な路線で活躍しています。

車内は紫色の座席に茶色の床というシックな雰囲気です。
天井のデザインも川の流れを模したお洒落なもので、「一般型車両」から想像される無機質さはありません。

ただ車内設備は簡素で、スペーシアにあるような個室や売店はおろか、自動販売機さえもありません。
「リバティけごん」(「会津」に併結)の一部列車には車内販売があるようですが、私が乗った浅草6時半発の便にはありませんでした。
会津田島までの所要時間は浅草から約3時間です。

日光の山や鬼怒川温泉街を見つつ東北へ

ようやく明るくなってきた土曜日の浅草駅は6時過ぎ、まだまだ人もまばらです。
車内で飲み物を買えないので、近くのコンビニでお茶とホットコーヒーを買って「リバティ会津」に乗り込みます。
昭和初期のアールデコ調の駅舎を構える浅草駅は東武鉄道のターミナル駅で、行き止まり式で端の方が急カーブしている独特の駅です。
利便性に関してはJRからだと北千住に軍配が上がりますが、やはり東武鉄道の旅立ちは浅草駅です。

出発するや否や、東京スカイツリーを見上げながら隅田川を渡ります。
遠くの空は朝日でオレンジ色に染まっています。

しばらくは急カーブが続き、雑然とした下町を都会の生活を覗き込むように走ります。
北千住駅から大きな荷物を持った行楽客のグループがいくらか乗ってきました。
早朝の列車はガラガラかと思っていましたが、予想以上に乗客がいます。

北千住を出ると荒川を渡り、辺りの住宅街も整然としてきます。
まだ朝早いというのに、近くの席では座席を向かい合わせにして老若男女入り混じった酒盛りが始まりました。
楽しそうな一団の空気に圧倒されてか、車掌による感染症予防対策のお願いアナウンスも次第にトーンダウンしていきました。

複々線区間も終わり、春日部駅を過ぎた頃には田畑が多くなります。
JRの宇都宮線と接続する栗橋駅を通過すると右折しながら坂を登り、それまで堤と並行に続いていた利根川を渡ります。
右前方から橋梁が近づいてくるこのダイナミックな一コマは、東武鉄道の旅行の醍醐味だと思います。

利根川を渡るとさらに田園風景が卓越してきます。
東武鉄道に限りませんが、都心から郊外へと走っていく路線は川を渡るごとに車窓が変化し、東京を中心とした関東地方の同心円構造を実感することができます。
もちろん列車から絶景を見るのも楽しいですが、普段であればありきたりに感じられる車窓の変化に注目するのも旅の醍醐味です

板倉東洋大前駅は東武日光線で唯一群馬県に位置しています。
また「リバティ会津101号」はこの駅に停車する1往復だけの特急列車ですが、まるで群馬県に義理立てしているようです。
すぐに栃木県に入り渡良瀬川を渡ると左手には山が近づきます。

新鹿沼駅しんかぬまからはいよいよ道は険しくなります。
左手には日光の男体山がよく見えます。

下今市駅で併結していた日光行き「リバティけごん」を切り離します。
鬼怒川温泉駅付近は温泉街の風情は感じられるのですが、廃ホテルも目立つのが「わろし」です。

後でも述べますが、下今市からは特急券なしでもこの列車に乗れるので、東京からの行楽客とは全く風貌の違う地元民が乗り込んでくるので、車内の空気感がガラッと変わります。

新藤原駅で東武鉄道線が終わり、1986年に開通した野岩鉄道線となります。
新しい路線なのでトンネルが多いのですが、その合間に少しの間だけ見えるダムと渓谷の景色はより一層印象的です。
どういうわけか、洒落の利いた鉄道旅行家の先輩方は、この種の趣をストリップ劇場に喩えたがります。

湯西川温泉駅を過ぎてトンネルを抜けると、川の水が凍っていました。
まだ栃木県ですが、徐々に雪景色となっていきます。

トンネルの中で福島県に入ると、まもなく会津高原尾瀬口駅です。
いよいよ東北地方にやって来ました。
この駅でウィンタースポーツを楽しむ人たちが大勢降りていきました。

ここからは会津鉄道ですが、元は国鉄の会津線だったのを第三セクターに移管したものです。
かつて終点だったこともあり、機関車の転車台が雪に埋もれて残っていました。

会津鉄道線内は近代的な野岩鉄道に比べて軌道が弱いためよく揺れます。
しかも快晴で太陽光が雪に反射して眩しく、早起きしたせいもあり眠たくなる条件があまりに揃っています。
しかし、屋根の傾斜が急で庇の長い、東北らしい民家が寄り添う集落の景色が、私を睡魔から守ってくれました。

川沿いの穏やかな林を進み、市街地が広がってくると終点会津田島駅に到着です。

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AIZUマウントエクスプレスで会津若松へ

会津田島駅の駅弁「松茸二段弁当南山のたび」はおすすめの一品

会津田島駅は南会津の拠点で、駅舎は巨大な体育館のようです。
駅の傍らには蒸気機関車と腕木式信号機が保存され、国鉄時代の会津線を偲んでいます。

まだ10時前ですが、地酒の自動販売機があったので、これは試さずにはいられません。
一般的な東北の日本酒のイメージとは異なり、会津の酒は甘口・旨口タイプが多いです。

会津田島駅では駅弁も販売されています。
人気ナンバーワンという「松茸二段弁当南山のたび」は松茸ご飯も本格的なうえに、エビや魚のフライなど副菜も非常に充実しています。
驚くことに、これだけ質も量もハイレベルな駅弁がたったの1,180円で買えるのです。
JR線ではないので他では見かけませんが、もし東京駅で売ったらすぐ売り切れてしまうでしょう。
(追記)残念ながら、「松茸二段弁当南山のたび」は2021年に製造者が廃業したため終売となったようです。

AIZUマウントエクスプレスにはトイレがない場合も

快速「AIZUマウントエクスプレス」は2021年3月現在では2往復運転されており、1往復が日光発、もう1往復が鬼怒川温泉発です。
両方とも会津若松行きですが、うち1往復は期間限定喜多方まで延長運転されます。

私が乗った日は2両編成で、前の車両が一般型の車両、後ろが快速専用らしいリクライニングシートの車両でした。
ただし、この時はどちらの車両にもトイレが無く、乗車前に慌てて済ませました。

2両目の赤い車両の車内

なおこの列車は快速を名乗っていますが通過駅は少なく、会津田島~会津若松では各駅に停車します。
同区間の所要時間は1時間少々です。

深い谷を越えて会津盆地へ

「リバティ会津」から接続が良いのは快速「リレー」号ですが、1時間を会津田島駅の散策と駅弁と地酒に費やし、快速「AIZUマウントエクスプレス」に乗車しました。
しばらくは平地を快走します。
乗客は観光客らしき人は僅かで、ほとんどが地元客と思われます。
住宅の屋根は簡素ながらカラフルです。

会津下郷駅付近から右手に川が現れます。
このあたりからが会津鉄道でも車窓が良い区間で、渓谷は次第に深くなっていきます。
長閑な風景にウトウトしていた乗客たちも、景色に見入るようになりました。

塔のへつり駅は有名な景勝地の近くにあります。
写真で見るスポットは車窓から確認できませんでしたが、険しく反り立った崖は迫力があります。
それこそ崖っぷちに建物があって、見ているこちらが怖くなりそうです。

行き違い設備のある湯野上温泉駅は藁葺き屋根の駅舎でした。
桜の季節の写真を時々見かけますが、半分だけ雪を被った屋根も春を待つ健気な風景だといえるでしょう。

その後はトンネルが多くなります。
それまで険しい表情をしていた渓谷は、今やダム建設によってできた悠然とした人造湖になっています。

やがて山地が左右から遠ざかり、門田駅もんでんの手前くらいでは会津盆地にでます。
列車は解き放たれたかのように、会津若松を目指していきます。
しばらくすると右手前方に、磐梯山の山頂が見えてきます。

磐梯山の山頂が見えてきた

南若松駅からは市街地で客の乗り降りも増えてきました。
またこのあたりから工場も目立つようになります。
会津というと歴史や文化に注目がいきがちですが、会津若松市は福島県でも有数の規模を持つ都市です。

西若松駅が会津鉄道の終点で、以降は只見線の線路を走ります。
沿線からは住宅が途切れることがなく、目的地の会津若松駅に到着します。

会津若松駅は磐越西線の途中駅ですが運転系統は分かれており、実質的にはこの駅を境に別の路線といっても大げさではありません。
実際に駅の構造は行き止まり式になっていています。

会津若松駅で販売されている駅弁が「会津を紡ぐわっぱめし」です。
包装が伝統工芸の会津木綿のデザインで、地鶏のそぼろや卵、ニシンの天ぷらなど盛りだくさんな弁当です。
どの品もあまり強く自己主張しすぎないので、弁当としての調和が乱れることもありません。

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工夫次第でリバティ会津の費用は抑えられる

東武鉄道線内は株主優待券

東武鉄道の乗車券は、金券ショップで買える株主優待券を利用するのが断然経済的です。
これは東武鉄道全線で任意の一区間有効なもので、私が新宿で購入した時は620円でした。
浅草~新藤原までの正規運賃は1,580円ですから、いかにオトクかが分かるでしょう。

特急券は別に購入する必要がありますが、平日・土日や時間帯によって細かく設定されているスペーシアと異なり、リバティの特急料金は区間ごとに一律です。
浅草から終点の会津田島だと2,160円かかります。

なおリバティ会津を下今市~会津田島の相互区間のみ利用する場合は特急料金は不要なので、都心から特急以外の東武鉄道の列車に乗って下今市でリバティ会津に乗り換えると、費用を抑えることができます。
なお、この規則は当該区間外から乗車(または下車)する場合には適用されないので、特急料金は浅草~下今市まででよい」という意味ではありません。

会津田島駅

会津田島駅からは週末パスが有効

その日の目的地が会津なら下車駅までの乗車券を買うことになりますが、会津若松からJR線を乗り継いでいく場合には、週末パスを利用することもできます。
週末パスは連続する土日の2日間という制約はありますが、信越・関東・南東北のJR線や第三セクターなどの私鉄(首都圏の大手私鉄は不可)の普通列車に乗ることができる便利な切符です。
東武鉄道と野岩鉄道は利用不可ですが、会津鉄道の会津田島から先の区間で有効です。

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東北への第三のルート

冒頭に述べた通り、会津鉄道は都心から東北地方へ向かうルートにうち最も車窓が良い路線です。
さらに、途中に大きな地方都市が存在しないかわりに温泉地やリゾート地が続くため、駅の雰囲気や客層の変化もその魅力の一つだと思います。
「リバティ会津」と会津鉄道の旅は物好きのためのスケジュールではなく、目的地までの時間も大切にする余裕のある旅行に相応しい選択肢だといえます。

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