会津若松発、復旧した只見線新型車両の乗車記【車窓の左右・混雑具合など】

ローカル線

只見線は福島県の会津若松駅から新潟県の小出駅こいで(上越線)を結ぶ路線です。
四季折々の絶景を楽しめるローカル線として、全国的にも知られています。
大雨の被害で長らく部分運休していましたが、2022年10月に待望の全線復旧を果たしました。

青春18きっぷの期限も迫る2023年4月上旬、会津若松駅を13時5分に発車する便で、私も念願だった初春の只見線完乗をしました。
本記事は、まず只見線に乗る際の注意点、続いて実際の乗車記という章立てです。

赤線が只見線
国土地理院の地図を加工して利用
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【只見線攻略法】車窓のおすすめは右(北)側

以下は2023年3月のダイヤ、同年4月の乗車に基づいています。

車内は2&4人用ボックス席、トイレあり

現在只見線で運転されている車両は、旧型(キハ110系)と新型(キハE120系)の2種類があります。
2両編成で新旧車両が1両ずつ繋いである列車もありました。

車内はどちらも、通路を隔てて2人用と4人用のボックスシートが並び、前後はロングシートという配置です。
最近の首都圏の電車と同じで、新型車両の方が椅子が固いです。
車内にはトイレも設置されています。

只見線新型車両の車内
新型車両の車内

所要時間は約4時間半、途中駅で買い物もできる

列車本数は非常に少なく、会津若松~小出まで全線走破できるのは1日3往復だけです。
上下とも、早朝・昼頃・夕方に始発駅を発車します。
特に夕方発の便は、季節によってはあまり景色が見えないので要注意です。

列車によってばらつきがありますが、会津若松~小出の所要時間はおよそ4時間半です。
只見線は当然ながら全線単線、しかも列車行き違いができる駅も少ないようで、主要駅では10分、長い時には30分以上も停車することがあります。
例えば会津川口駅や只見駅には観光案内を兼ねた土産物店があり、そこで地産の珍しい菓子やつまみを買うことができます。
ただ、弁当までは売っていなかったので、必要なら事前に買っておきましょう。

なお、土日祝日の一部の区間・時間では、列車内でも特産品の販売が行われるそうです。

景色はどっちが良い?

只見線の車窓は左右のどちら側が良いのかは、古典的かつ非常に難しい問題です。
それぞれ一長一短があり、明確にどちらかが正解とは断言できません。

会津若松側から乗る場合、前半は右側の方が全体的に景色が綺麗だと思います。
川が見えるのは右側が多く、序盤の会津盆地の眺めは格段にこちらの方が優れています。
一方で、会津川口駅以降は左側も見せ場が多くなってきます。
特に只見駅付近の集落の佇まいはとても印象的です。

総合的に勘案すると、僅差の判定勝ちで右側の座席を取るのがおすすめです。
とにかく、どちら側に座っても「外れた」と感じることはないでしょう。
ちなみに私が乗った新型車両だと、会津若松発進行方向左側が2人用ボックスシートでした。

混雑するので早めに並ぶべし

車窓が美しいローカル線として名高い只見線は、全国各地から、近年は外国からも旅行客が乗りに来ます。
特に全線復旧した2022年10月以降は混雑が常態化し、臨時列車が運転される日がある程です。

私は青春18きっぷ期間中の2023年4月上旬に乗車しましたが、始発の会津若松駅では1時間以上前からホームで待っている人がいました。
13時5分発の只見線に乗る場合、郡山発12時31分着の磐越西線の列車から乗り換えると、座れなくはないものの窓側座席の確保は難しそうでした。
1本前(1時間後)の列車で会津若松入りし、昼食を済ませて次の便が来る前に並ぶのが理想的です。

青春18きっぷ期間外ならそこまでは混雑しないとは思います。
ただし、他にも区間利用の行楽客、景勝区間だけ乗っていく団体客、そして(彼らが一番大切な客だが)地元の高校生なども利用します。
また、今後は遅ればせながら開国の影響で外国人も増えるでしょうから油断はできません。

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只見線の初春の乗車記

本章では只見線を3つのパートに分けて紹介していきます。

  • 会津若松~会津坂下:会津盆地より飯豊山や磐梯山を望む
  • 会津坂下~会津川口~只見:只見川沿いの景色
  • 只見~小出:人の気配のない県境を越えて下っていく

一般に只見線の車窓は第二パートが有名ですが、雄大な第一パート、そしてとにかく迫力のある第三パートも無視できません。

会津若松~会津坂下:地元民で混雑する

4月上旬、快晴の会津盆地はすっかり春です。
13時5分発の只見線に乗るために、1本早い11時21分着の磐越西線で会津入りします。
1時間前にホームに行ったところ、既に5,6人が待機しており、釣りでもするように折り畳み式の椅子を持参してビールを飲んでいる人もいました。

12時31分着の磐越西線が到着すると、列は長くなりました。
なお、ホームに停まっていた12時50分発の会津田島行きが発車してから、只見線の列車が入線します。
早めに並んでいたので、思惑通りに左側の進行方向窓側座席を確保。
前の章で述べた通り、実際は右側の方が景色は良かったです。

13時5分、会津若松駅発。
待ちに待った只見線の旅の始まりです。
線路脇の桜を散らしながら走ります。
もう既に立ち客がいて、何より肩身が狭そうにしている地元の高校生たちには申し訳ない気がします。

次の七日町駅から西若松駅にかけて、左手に鶴ヶ城が見えるはずですが、建物に紛れて辛うじて赤い瓦が確認できた程度でした。
さらに高校生が乗って来て車内は大混雑です。

第一パートの只見線は会津盆地の南部をU字型に囲むように走ります。
よって、盆地や飯豊山、会津磐梯山の景色が良く見えるのは右側です。

会津坂下駅あいづばんげで高校生はほとんど降りました。
近くのボックス席では60歳は過ぎていそうなおばさんが、青春18きっぷで日本各地を旅した話をしています。

会津坂下~只見:絶景ポイントが多く団体の区間利用もあり

会津坂下駅を出発すると、カーブしながら高度を上げていきます。
右手に会津盆地を見下ろしながら、第一パートを締めくくります。

桜が満開の会津柳津駅では団体客が乗ってきました。
あいにく空席はなく、彼らは運転席の周りに立っていました。
いよいよ只見線の主役、只見川沿いの区間です。

只見川はしばらく右手に流れます。
会津檜原駅あいづひのはら~会津西方駅の間で、撮影地としても有名な第一只見川橋梁を渡ります。
濁ったエメラルドの川がかなり下に見えます。

第一只見川橋梁より

その後も、第二只見川橋梁があります。
これらの橋は長さはさほどではありませんが、その水量と高さのために迫力があります。
第二只見川橋梁を渡り終えると、会津宮下駅に到着。
ここで団体客が降りました。
2つの有名な橋だけピックアップして只見線に乗るツアーだったのでしょう。

第二只見川橋梁より

当然のことながら、絶景ポイントを過ぎたからと言って、只見線の旅の面白さは全く変わりません。
儚げに散る桜と巨大なダムの奇妙な組み合わせに目を奪われます。

ダムを過ぎると水位が上がるため、列車と川の高さが近づきます。
やはり有名なスポット、第三只見川橋梁を渡ります。

第三只見川橋梁より

ようやく左側にも川がやって来ました。
会津若松駅で購入した甘口の地酒も進みます。

大自然の中にひっそりと在る小さな駅で、木綿の作務衣を着たお婆さんたちが降りていきました。
ところで、片側の線路が撤去された駅を幾つか見かけます。
そもそも只見線は「昔栄えていたローカル線」ですらなく、せいぜい急行列車が運転されていた程度なので、単純に経費削減のためでしょう。

その後も幾つかのダムを見ながら川沿いに進んでいきます。
民家の屋根は傾きが急で大きく、色は赤か青が多いようです。
いやはや、川を渡って水を見るだけで満足して下車していった団体客が気の毒に思えてきます。

14時58分、会津川口駅に到着です。
駅のすぐ傍に只見川、少し先の方で野尻川が合流しています。
ここでなんと30分も停車します。
行き違いできる駅を減らして、長時間停車すればその間に駅にも金が落ちて、経費削減もできて一石二鳥、というわけでしょうか。

ということで、駅に合った土産物屋で「黒糖えごまおからかりんとう」を買いました。
甘すぎずベタベタもせず、香ばしい味わいです。
ついでに、近くの雑貨店で地酒をチャージします。

乗客は皆思い思いの30分を過ごし、列車は再び動き出しました。
川の向こうにあるカラフルな集落の情景は、見事に自然に溶け込んでいます。

この辺りに来ると雪がまだ残っています。
桜が咲き誇っていた会津盆地から遥か遠くに来たように感じますが、実際には100㎞も走っていません。

雪景色になると、同じような民家や渓谷の風景もまた違って見えます。
そして、細くなった只見川を見ると、乗っている我々も心細い感情を抱き始めます。

16時21分に只見駅に着きました。
ここでも10分程度停車します。
行楽客らしき女性グループが降りていきました。

駅のすぐ近くには、やはりお土産物屋がありました。
打ち豆とどぶろくを購入。
打ち豆は自然の風味が凝縮した、おそらくそら豆だと思います。
近所の旅館が製造したどぶろくは、稲の香り(「米」ではない)がはじけます。

只見~小出:地元客の利用は比較的少ないか?

いよいよ最終パートです。
只見駅を出てしばらくすると、左手に田子倉湖が見えます。

次いで現れる雪覆いの中にある空間は、廃止された田子倉駅跡です。
周辺には人気が全く感じられず、そもそもなぜ駅があったのか不思議です。

田子倉駅跡

大糸線の北部(南小谷~糸魚川)と同じで、列車の旅というよりは、テーマパークのアドベンチャーもののアトラクションに乗っている気分です。

福島県と新潟県の境は田子倉駅跡を過ぎてすぐに入る、長さ6㎞余りのトンネルの中にあります。
県境では勾配が上りから下りに転じるので、エンジンの音も変わります。
何も見えませんが、ついに福島県も終わりか、と感動する瞬間です。

トンネルを出ると、屈曲した末沢川を15回以上も渡りながら、相変わらず人跡稀な地をひたすら下っていきます。
ダムのあるゆったりした只見川とは対照的な、険しい渓谷に圧倒されているうちに大白川駅に到着します。

大白川駅付近

その後地形は緩やかになります。
また桜の花が咲き始め、徐々に春の気配が蘇ります。
盆地が広がりますが、乗客は特に増えませんでした。

最後の最後、小出駅こいでの手前で魚野川を渡ります。
豊富な雪解け水が流れています。

肌寒さを感じる魚野川沿いの小出駅に到着です。
上越線の広大な駅の隅っこに、ちょこんと只見線用のホームが添えられています。
4時間半列車に揺られ続け、その果てに辿り着いたこの虚しさ。
只見線の旅の終幕には何とも相応しいではありませんか。
乗客が皆跨線橋へ向かっていった後も一人侘しいホームに立ち、しばし余韻に浸っていました。
なお、大白川行きの折り返し列車の乗客はあまり多くありませんでした。

暗くなり始めた空に、18時を知らせる「夕焼け小焼け」が流れました。
「ときに乗って帰りましょ」と聞こえる歌でした。

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廃止の危機を乗り越え復旧した超ローカル線

2011年に甚大な豪雨被害を受けた只見線は、一時期は廃止も取りざたされていました。
過疎地域を走る赤字線なので、JRにとって只見線を多大な費用を使って復旧させる経済的メリットは小さいのも事実でしょう。

しかし、地元の自治体が只見線の復旧を働きかけ、結果的にJRもその熱意に応じる形で只見線復旧が実現しました。
実際、列車に向かって手を振る人をよく見かけました。
只見線沿線の盛り上がりが、数ある赤字ローカル線の将来に対する指針になることを願ってやみません。

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