快速「あいづ」自由席でゆく、磐越西線の乗車記【会津若松→郡山】

ローカル線

磐越西線は信越本線の新津にいつ駅(新潟県)から会津若松駅を経て、東北本線の郡山こおりやま駅(福島県)へと至る路線です。
会津若松駅で運転系統が分かれ、諸々の要素も大きく変わるため、当サイトでは別個に記事を作成しています。
本記事では会津若松~郡山の乗車記を扱いますが、新津~会津若松については以下の記事を参照してください。
当記事で利用した快速「あがの」は2022年に廃止されましたが、「快速破れて山河在り」ということで、車窓など乗車時の雰囲気を感じ取っていただけたらと思います。

会津若松から郡山までの路線の概要ですが、東北地方の東西横断線にしてはかなり変形で、

  • 会津盆地を離れ磐梯山目指して登って行く、会津若松~翁島
  • 猪苗代湖の湖岸の平地を走りながら磐梯山を眺め回す、翁島~上戸じょうこ
  • スイッチバック跡が残る急な坂を降りていく、上戸~安子ヶ島
  • 郡山盆地を緩やかに降りる、安子ヶ島~郡山

といった具合です。
2021年3月に会津若松駅を14時13分に出発する快速「あいづ4号」で郡山を目指しました。

青色線と黄色線が磐越西線、本記事に収録した部分は黄色線の区間。
国土地理院の地図を加工して利用。
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磐梯山・猪苗代湖やスイッチバック跡など、みどころが多い

E721系快速「あいづ」は指定席より自由席の方がおすすめ

郡山~会津若松~喜多方は電化されており、郡山・会津若松間の本数は1時間に1本程度です。
福島県の中通りと会津の主要都市を結ぶ区間故に高速バスとの競争もあり、快速「あいづ」が3往復設定されています。
それ以外にも愛称名が無い快速列車もありますが、「あいづ」と名無しの快速の主な違いは指定席車両があるか否かです。

「あいづ」の指定席はリクライニングシートで確実に座れるので快適なのには間違いありませんが、それでも自由席(つまり普通の車両)をお勧めします。
というのは、私の印象では地方の快速列車の「特別席」には鉄道ファンか、せいぜい観光客くらいしか乗っていないからです。
別に彼らを嫌っているわけではありませんが、地元を感じられる不特定多数の客層の列車旅の方が私は好きです。

郡山~会津若松の所要時間の目安は、快速列車が1時間程度、普通列車なら1時間15分程度です。
車両は南東北の電化区間でお馴染みの、E721系というボックス席とロングシート混在の電車です。
高速バスに対して本数はやや劣るものの、快速の所要時間ではあまり差は無く、鉄道もこの区間では健闘しています。

E721系快速「あいづ」
E721系快速「あいづ」
会津若松駅にて

磐越西線の車窓

数時間の会津若松の観光を終えて発車5分前に乗り込んだ時には、昼過ぎの列車にはまだボックス席の空きがありました。
本当は進行方向左側の座席を取りたかったのですが、仕方なく右側に座ります。

ところで、会津若松駅では駅弁が販売されています。
会津を紡ぐわっぱめし」は地鶏・玉子・ニシンの天ぷらなどの具が、主張しすぎることなく調和を保っている優しい味わいの駅弁です。

会津若松の駅弁、会津を紡ぐわっぱめし
会津若松の駅弁、会津を紡ぐわっぱめし

くねくねと勾配を登る。景色は左側がおすすめ。

会津若松駅を出発して市街地を走り、左手遠方には飯豊いいで山が見えます。
しかし、平坦な地形も次の広田駅あたりでは終わり、列車は急勾配を登り始めます。

近くのロングシートで隣り合っている婆さん2人が「○○ねぇんだべさァ」と、かなりの訛りでお互いの高校生の孫の話をしています。
そういえば、会津若松市内の酒屋で親切にお勧めを教えてくれたとても若い女性も、結構な訛りで話していました。
ここまでの方言は東北本線沿線であれば岩手県まで行かないと聞けなさそうですが、これもやはり会津の人々の「中央政府」に対する反骨なのでしょうか?
なお、乗客の方言を楽しむためにはお年寄りか女子高校生の近くに座るというのが鉄則ですので、これはよく覚えておきましょう。
それでも、「他人の方言よりも車内放送を聞く方が楽しい」という生粋の鉄道ファンは、どうぞ指定席に乗ってください。

さて、列車はくねくねとS字カーブしながら、登山するかのように磐梯山めがけて走っていきます。
この辺りの線路が蛇行しているのは、これ以上の急勾配を避けるため(鉄道は坂に弱い)です。
磐梯山は初めは右手前方に見えますが、列車がカーブするにつれて、やがて正面から左側にかけてその姿を刻々と変えていきます。

ついつい上ばかり見てしまいがちですが、左手後方に目をやると会津盆地がどんどん下に離れていきます。

磐梯山は左手その後右手後方へ、猪苗代湖は右手にちらりと見える

翁島駅おきなしまあたりでようやく上り勾配が終わり、周囲を遮るものがない平地に辿り着きます。
先ほどまでのようにそそくさと消えては現れるのではなく、磐梯山が今度はどっしりと左手に構えています。
特に猪苗代駅いなわしろまではカーブも坂もほとんどないので開放感に浸れ、多くの人がカメラを向けていました。

川桁駅かわげたからは磐梯山は右手後方に見えるようになります。
いろいろな角度から眺め回した結果、個人的にはこの付近から見える形が最も官能的で好きです。

また、左手遠方には猪苗代湖が広がっています。
とはいえ、「眺める」というよりは、かすかに湖面が見える程度です。

2月に列車から撮影した猪苗代湖

スイッチバック式だった中山宿駅

清々しい湖岸の平地も上戸駅じょうこを過ぎると終わり、再び急勾配・急カーブの線路をくねくねと今度は降りていきます。
ちらほら残っていた積雪はすぐに無くなりました。

中山宿駅なかやまじゅくを通過して少し郡山方向に進んだところに、スイッチバック時代の旧駅跡があります。
この駅は急勾配の途中にあるためかつてはスイッチバック式(平坦な地に作られた駅に、進行方向を変えながら出入りする方式)でしたが、現在磐越西線を走るのは高性能な電車ばかりとなり、この設備は不要となり廃止されました。
綺麗に整備され過ぎるより適度に荒れていた方が情緒がありますが、そうは言ってもホーム跡などが見学ができるのは興味をそそられます。

スイッチバック時代の旧中山宿駅跡
スイッチバック時代の旧中山宿駅跡

山の中を進んでいくと、磐梯熱海駅の付近には旅館が立ち並んでいます。
少しづつ開けてくると、左手遠方に安達太良山あだたらやまに続く山地が見えてきます。

安子ヶ島駅からは混雑する

安子ヶ島駅あこがしままで来るとそこは郡山盆地です。
カーブは少なく緩くなり、水田地帯をなおも緩やかな坂で下ります。
気づくと方言のきつい婆さんたちは降りていましたが、ここから乗客が増え始めます。

喜久田駅きくたはもはや市街地で、車内はかなり混雑してきました。
ここから郡山まで8㎞の距離で2駅ですが、もっと駅があった方がいいのにと思います。
もっとも2017年に郡山富田駅が開業するまでは、喜久田駅の次が郡山駅でした。

終点の郡山駅こおりやまは東北本線・東北新幹線、そして事実上水郡線の接続駅となる鉄道のジャンクションです。
さらに、福島県横断の旅は、ここから磐越東線へと引き継がれます。

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蛇行する線路と(旧)スイッチバックで克服した急勾配

磐越西線は、数ある奥羽山脈を横断する路線のなかで最南端に位置しています。
土木技術が未熟な1899年に民間資本によって建設されたためか、トンネルや橋梁に頼らず地道に急な坂を登るこの山越え線は、磐梯山を筆頭に車窓のみどころが多いのが特徴です。
その意味で、新津~郡山の磐越西線、郡山~いわきの磐越東線という路線区分けにおいて、会津若松~郡山は「磐越中線」とでも呼びたくなるような独自性を持っています。

「赤べこ」の専用塗装が施されていた485系時代の快速「あいづ」
「赤べこ」の専用塗装が施されていた485系時代の快速「あいづ」
2010年8月

また、同じ福島県でも工業・商業都市として明治以後に急速に成長した郡山と、江戸時代より大きな城下町だったのが明治政府に嫌われ(?)、その後も主要幹線から外れて発展が遅れた会津若松という、ある意味対照的な2つの都市を結ぶという点も興味深いところです。

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