ワイドビューふじかわと普通列車、身延線の乗車記【富士~甲府】

ローカル線

身延線は東海道本線の富士駅と中央本線の甲府駅を結ぶJR東海に所属する路線です。
フォッサマグナの西端、糸魚川ー静岡構造線に沿って走り、戦前に地方私鉄として開業した歴史を持つので線路の規格が厳しく、ローカル線らしい雰囲気を味わうことができます。

身延線を3つの区間に分けると

  • 富士山麓の市街地、富士~富士宮
  • 富士川沿いを急曲線で進む、富士宮~鰍沢口かじかざわぐち
  • 甲府盆地に出て市街地へ進入する、鰍沢口~甲府

となります。

2021年3月に、特急「ワイドビューふじかわ」と普通列車で富士駅から甲府駅まで乗車しました。

紫線が身延線。
国土地理院の地図を加工して利用。
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身延線の乗車記

「ワイドビューふじかわ」が7往復

身延線を全線通しで走る普通列車はおよそ1~2時間毎に運転されており、所要時間は約3時間です。
この他に、富士~西富士宮(富士宮の次の駅)には1時間に数本の普通列車があり、鰍沢口からも少し区間運転の列車が設定されています。

特急「ワイドビューふじかわ」(静岡~富士~甲府)が東海道新幹線と連絡して、2時間毎に1日7往復運転されています。
一応特急を名乗っていますが、90㎞に満たない身延線を2時間近くかかるという、日本でも有数の鈍足特急です。
車両はローカル線の特急だけでなく普通列車にも使える373系で、特急車両にも関わらずデッキが無いという珍しい車内です。
と書くと、いかにも安物の特急(実際に短距離の特急料金は安い)のようですが、車内のインテリアなどは決して手抜き感があるわけではありません。

富士の麓から甲府盆地へ

東海道新幹線のルートから外れてしまった富士駅は、その名前の響きにもかかわらず駅前はややくたびれた様子が伺えました。

今回は開店前だったのですが、富士駅の身延線ホームにある駅そばの天ぷらは注文してから揚げてくれるので有名です。

富士山麓の市街地、富士~富士宮

まずは普通列車に乗車。
4人掛けのボックスシートとロングシートから成る車両でした。

大阪方向に向けて出発し、まもなく高架を走ります。
だんだん近づいてくる富士山とは、右窓、左窓、あるいは正面からとかわるがわる対峙します。
近くにいたカメラを抱えた女子学生2人が、せわしくなく左右のボックスを行ったり来たりしています。
また、海側では紙パルプ工場が煙を吐いています。

やがて富士山を望むのは進行方向右側に定まります。
勾配を登りながら富士宮駅に到着します。
ここで複線区間が終わり、私も特急「ワイドビューふじかわ」に乗り換えます。

富士川沿いを急曲線で進む、富士宮~鰍沢口かじかざわぐち

富士宮から先は進行方向左側の方が車窓を楽しめます。
富士宮駅を出るとすぐに市街地は尽き、山裾を走ります。

西富士宮駅を過ぎると大きくカーブしながら、たなびく雲を従えた富士山の威光を前に、ひれ伏すように広がる富士宮の市街を左手に見渡します。
私はこの風景を見た時、「富士山の美しさは山頂ではなく、裾野にあるのだ」と確信しました。

その後身延線は富士川沿いの谷を進みますが、とにかく急カーブがあまりに多く、特急と言えども一向にスピードが出ません。
特急がこれでは頼りないですが、列車旅を楽しむには好都合です。

速度も川の景色も大変穏やかで、川の水量は少なくほぼ砂利道ですが、川岸には山地が迫っています。
静かな車内に「キーン」というレールと車輪の摩擦音が、BGMとしてずっと流れています。
時折茶畑やセメント工場が見られます。

稲子駅十島駅とおしまの間に静岡県と山梨県の境があります。

谷が広がり、少し大きめの集落が見えてくると、特急も停車する内船駅うつぶな
心地よい車窓も単調になってくると飽きてきますが、そういう所に人の気配が入り込んでくるとなぜかホッとします。

路線名の由来にもなった身延駅はさすがに他よりも大きな市街でした。

身延からしばらくすると、列車は富士川からやや離れた所を走ります。
下部温泉駅しもべおんせん付近は松林に囲まれた旅館が印象的でした。

なおも山間部が続きます。
民家の屋根は今まで黒が多かったようですが、赤いものが目立つようになり、形も少し変わっています。

甲府盆地に出て市街地へ進入する、鰍沢口~甲府

急カーブで谷を越え山を越え、鰍沢口駅でついに開けて甲府盆地に来ました。
遥か前方には南アルプスの赤石山脈が望まれます。

身延線はこれから甲府を目指すわけですが、市内に攻め入るために様子を窺っているのか、その周辺を取り囲むように進んでいきます。

甲斐上野駅を過ぎた後、意を決したように笛吹川を渡って平地へと進入します。
ここから先は今までが嘘だったようにカーブが少なくなります。

進行方向右側に目をやると、富士山が名残惜し気に山頂部分だけを覗かせていました。

甲府盆地らしくブドウ畑も見られますが、やがて市街地が広がり、その向こうにはアルプスの雪山がそびえています。

甲府城に迎えられながら終点の甲府駅です。
特急が頻繁に走る幹線、中央本線に対する遠慮からか、あるいはJR東日本から邪険に扱われているのか、肩身が狭そうに端のホームに到着しました。

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日帰り旅行におすすめの路線

身延線の魅力はその手軽さにあります。
知終点である富士も甲府も、都心から比較的容易にアクセスできるので日帰りには好都合です。
身延線は普通列車でも3時間程度で完乗できるうえに、富士山を間近で眺めることができる他、穏やかな富士川の流れも堪能できます。
そして、連なる南アルプスの山々の秀麗な姿は、単独で立つ富士山とはまた違った美しさがあります。


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