東海道本線を青春18きっぷで旅行する時にしばしば話題になるのが、静岡県の区間(ここでは便宜上、熱海~豊橋間を想定します)をいかにして通過するのかということです。
ここが問題となる理由は
- 乗車時間が長い
- 車両がロングシート
- 基本的に快速運転がなく、各駅停車しかない
といったところでしょうか。
本記事では提起されたそれぞれの問題について、解決法あるいは対処法を考えていきたいと思います。
なお、東海道本線の全般に関しては
長時間乗車が苦痛な人は途中休憩する
熱海から豊橋までの乗車時間は3時間強。
浜松駅(熱海駅からの乗車時間約150分。以下数字は同様の意味。)で乗り換えになることが多いです。
接続時間も幸か不幸か15分未満と短く、駅での乗り換えや座席確保のためにゆっくりできるとは言い難いです。
そこで、途中駅でまとまった時間をとって途中休憩すると精神的にもゆとりが出ると思います。
都市部以外でも普通列車が15~30分毎に走っている区間など、日本全国他にはありません。
東海道本線は途中下車・途中休憩の旅に最適な路線といえます。
静岡駅で途中下車がおすすめ
私はよく静岡駅(80分)で途中休憩を挟みます。
静岡駅は規模が大きいので買い物などにも便利なうえ、熱海駅と浜松駅のちょうど真ん中あたりなので途中下車には都合が良い駅です。
新幹線と並んだ高架の駅で、なんとなく古い感じがするホームです。
もちろん駅近くの人気レストランに行くのも良いですが、列車の旅にはやはり駅弁でしょう。
駅の改札を出て左側に東海軒のお店があります。
「特製鯛めし」は鯛のそぼろご飯に金目鯛の切り身がのった、静岡らしい弁当です。
なお普通の「鯛めし」には金目鯛はついていません。
またホームには駅そばがあります。
乗換は興津駅や島田駅にこだわる必要はない
静岡県の区間で確実に座るテクニックとして「興津駅(大阪方面行き)や島田駅(東京方面行)で乗り換える」というものがあります。
熱海駅~浜松駅において、熱海から島田(100分)行きに乗って、途中のどこかの駅で興津(60分)始発の浜松行きに乗り換え、というパターンが結構あります。
この場合だと興津で乗り換えると、始発の電車に乗れるので確実に座れるというテクニックです。
ただし私はそれでも先ほど述べた通り、興津ではなく静岡(80分)を選びます。
なぜなら静岡で乗客の多くが入れ替わるので、少しだけ早めに並べば座れる可能性が高いからです。
浜松も大きな駅
浜松駅も静岡駅に似た高架式の大きな駅で、うなぎの駅弁があります。
売っている場所は改札を出て正面に向かった建物の中です。
やはりというか2000円以上するものもありますが、ひつまぶしに似たウナギのきもの佃煮つきの「うなぎまぶし」は1500円程度です。
ロングシート車両はさほど不快ではない
ロングシート車両再評価
東海道本線の静岡地区を走る車両はロングシートの通勤車ばかり(浜松~豊橋は一部クロスシート車両あり)です。
たしかにロングシートの車両は、旅情という観点からは全く残念な代物です。
しかし空いている時には、足も延ばせて隣の人との間隔もある程度確保されている、意外と快適な車両でもあることを忘れてはいけません。
中途半端に埋まったボックスシートよりも、かえって楽だと感じることもあるのではないでしょうか。
ちなみに車両について付け加えると、新型の313系にはトイレが付いていますが、旧型の211系には付いていません。
ただ、両形式が併結されている場合もあるので、自分が乗った車両が旧型だったとしても、別の車両にトイレがある可能性も考えられます。
ホームライナーは使いづらい
よく「静岡県区間移動には乗車整理券320円だけで乗れるホームライナーを使うべし」といった意見を目にしますが、言うは易く行うは難しです。
ホームライナーは特急用の車両が使用されていて、快速運転もするのでお得な気がしますが、致命的なのは運転されているのは朝と夕方・夜のみという点です。
静岡県内が目的の場合はたしかに選択肢になりえますが、多くの人は東京から名古屋あるいは大阪まで行くでしょうから、静岡地区の通過は日中になるのが普通です。
よってこのテクニックは現実的ではありません。
各駅停車で車窓を楽しむ
熱海から豊橋までは基本的に各駅停車のみで、列車の遅さがこの区間が長いと感じる要因の一つであることは間違いありません。
それならば逆の発想で、車窓をゆっくりと楽しむのはどうでしょうか。
「車窓といっても所詮は都市部を走る東海道本線でしょ?」
と思われるかもしれませんが、東海道本線にも見所はたくさんあります。
富士山と海に囲まれた熱海~静岡
熱海を出発する時に「これから長い静岡県の区間だ…」
などとぼんやりしているのは勿体ないです。
熱海を出てすぐに進行方向左側に熱海の街並みと海、それから熱海城が僅かながら見られます。
すぐに東海道本線で最長の丹那トンネル(7804m)に突入します。
ちなみにこの丹那トンネルが開通(1934年)するまでは、現在の御殿場線が東海道本線を名乗っていました。
トンネルを出ても山の中で今一つパッとしませんが、沼津から富士にかけては富士山が眺められます。
意外なことに、富士山は海側からも見れる箇所が二つだけあります。
一つ目は富士川駅出てすぐの新幹線の線路をくぐってからの約数十秒。二つ目は由比駅を出てからトンネルに入るまでの数分間です。
特に後者は比較的長く海に沿って走る区間なので、美しい海越しの富士山を楽しむことができます。
茶畑を快走する静岡~浜松
静岡を出た後も、用宗を過ぎてトンネルに入るまでの短い区間で海が綺麗に見えます。
その後しばらくは比較的街中を走りますが、島田を出て工場を背に大井川を橋梁で渡ると、茶所である牧の原台地です。
茶畑の中を左右にカーブしながら走るこの区間は、昔から撮影地として有名な場所です。
掛川からはまた平坦になりますが、豊田町~天竜川では天竜川橋梁(1209m)を渡ります。
名だたる長大橋梁が多くある東海道本線の中にあっても、最長を誇るのがこの天竜川橋梁です。
浜名湖が美しい浜松~豊橋
この区間の見所は何と言っても両手に広がる浜名湖と遠州灘です。
新幹線と並んで水上を飛ぶように駆け抜けていくこの区間は、気持ちが晴れ晴れとします。
この区間ではロングシートの車両ばかりではなく、時々転換クロスシートの車両も使用されています。
なお豊橋の二つ手前の新所原からすぐの地点が、静岡県と愛知県の境です。
裏技、新幹線ワープの効果的な使い方
当然のことながら奥の手ではありますが、一部区間だけ新幹線で移動する方法(通称・ワープ)も無くはありません。
さて、新幹線を1駅だけ利用する場合、自由席に限って特急券が安くなりますが、実は2駅でもこの特定特急料金が適用される区間が東海道にもあります。
その区間は
- 三島~静岡:乗車券+自由席特急券=1950円
- 静岡~浜松:同2400円
2019年の増税前の料金です。
たまに「ひかり」が使えるケースもありますが、基本的には1時間に2本の「こだま」を利用することになります。
移動ではなく旅をしよう
近年は全国に観光列車が運転され、鉄道会社が鉄道の旅をお膳立てしてくれるようになりました。
しかし、青春18きっぷユーザーにとって大切なのは、そのようなお仕着せの玩具に頼ることなく、通常の列車であっても自ら積極的に楽しもうとする姿勢です。
富士山、駿河湾、茶畑、そして浜名湖等々。
東海道を彩るこれらの風景を眺めていると、3時間の乗車時間など実は大したことがないことに気が付くはずです。
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