富士川からふじかわへ、373系とその時代【普通車の車内や座席など】

東海の車両
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汎用性の高い特急車両

急行から格上げされる特急

国鉄分割民営化に伴いドル箱路線の東海道新幹線を承継したJR東海は、在来線となると特急「しなの」が運転されていた中央西線以外はそれほど需要のある線区がなく、特急が運転されている高山本線や紀勢本線は現在も非電化です。
そのJR東海が、身延線などで急行列車として使用されていた165系電車を置き換えるべく開発されたのが373系です。
1960年代までは庶民のための列車として、特急よりも遥かに本数が多かった急行も、70年代以降は優等列車の特急への一本化によって急速に数を減らしていきました。

373系はまず1995年に身延線に投入され、急行「富士川ふじがわ」(静岡~甲府)は特急「ふじかわ」となりました。
身延線はローカル線ですが、「ふじかわ」は静岡と山梨の県都を結ぶことから新型車両によってサービス向上が図られたのです。
増収目当ての格上げとの誹りを和らげるため、乗車距離が50㎞以内の場合の自由席特急券は、急行券とあまり変わらないように設定されていました。

実際、急行時代は5往復でしたが現在では7往復に増発されており、3両編成と短くなったとはいえ、特急化によって一定の活性化は達せられたと思われます。
その翌年には急行として運転されていた飯田線の「伊那路」(豊橋~飯田)や東海道本線の「東海」(東京~静岡)も、特急格上げに伴い373系化されます。

普通列車の運用にも対応

ここまでだと何となく冴えないローカル特急車のように思えますが、373系の注目点は普通列車としても使用できる汎用性の高い車両だということです。
そのため片側2か所ある扉は両開きになっていて、その場所も他の特急車よりもやや内側に寄っています。
また次の章で述べますが、車内も普通列車としての運用を想定した造りになっています。

特急としては珍しい片側2か所の両開き扉

この「普通列車にも使える新時代の急行型」という設計思想は、国鉄末期に製造された185系に似ています。
ただし、185系は東京口の特急「踊り子」や普通列車のためにグリーン車が連結された長大編成ですが、373系はローカル線にも対応する3両編成のモノクラスです。
また185系が斬新な緑のストライプの塗装であるのに対して、373系は普通のJR東海カラーという地味な身なりです。

特急「(ワイドビュー)東海」からは撤退

373系が特急として走る身延線と飯田線は、私鉄を国が買収した路線で、電化されているものの急曲線・急勾配が連続する非常に線形の悪い路線です。
そのため両線を走る特急の停車時間も含めた表定速度は50㎞程度と、特急料金を徴収するのも恥ずかしいくらいの有様となっています。

一方で東京~静岡を走る「東海」は堂々たる幹線の東海道本線の特急列車で、373系にとっても自身の面目を保つ拠り所といえたのかもしれません。
しかし「東海」は列車本数も多くなく、スピードも急行時代とあまり変わらなかったために利用客が伸び悩み、2007年に廃止されることになります。
同区間は新幹線と競合するとはいえ、その恩恵を受けない区間も多く存在することや、何より沿線人口に恵まれていることを考えると、何とも不本意な撤退だと言わざるを得ません。
もっとも「東海」の凋落は東海道新幹線開通直後(その時の種別は準急だった)から既に始まっていたので、373系は貧乏くじをひかされたという見方もできるかもしれません。

その後も普通列車や夜行快速「ムーンライトながら」として東京でも顔を見せていましたが、現在はこれらの運用からも外れたことで上京する機会を失い、故郷の東海地方で静かに暮らしています。

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373系の車内

普通車の車内と座席

373系の車内
普通車の車内

「なんちゃって特急」のイメージで乗車すると、意外と快適性が高いのが373系の車内です。
インテリアも特別な点はありませんが、まあ特急としても及第点といったところではないでしょうか。
逆に普通列車なら乗り得列車といえるでしょう。

座席はリクライニングシートでフットレストも備えられています。
またJR東海の特急列車名表記(厳密には列車名ではない)には「ワイドビュー」が付けられており、373系も窓が横にも縦にも広くなっています。

373系の普通車の座席
普通車の座席

デッキ扉は無いがセミコンパートメント席がある

373系ではデッキと客室を隔てる仕切りが無いので、居住性はやや劣る。

373系の大きな車内の特徴はデッキと客室を隔てる扉が無いことです。
これはもちろん普通列車として使用した際に乗り降りをスムーズにするためですが、やはり特急としては格落ちな気がします。

もう一つ特筆すべき点は、自由席である2号車と3号車の車端部とドアの間のスペースには、4人用の大型テーブル付きのセミコンパートメント席が設けられていることです。
通路との間に仕切りがあるわけではありませんが、グループ客には適した設備です。

373系のセミコンパートメント席
大型テーブル付きのセミコンパートメント席

なおこのセミコンパートメント席の存在は、時刻表の巻末の列車編成案内でも紹介されています。
空きスペースを有効活用して魅力に変えている良い例です。

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総評

特急用車両としては優れた性能・接客設備ではありませんが、普通列車での運用も想定していることを考慮すると、全体的にうまく小さくまとめた車両だといえます。

ただし373系の運用は事実上の敗戦処理のような形のものも多く、これまで担当する列車が度々廃止されてきたのは気の毒です。
近年は臨時列車で使用されない時は余剰が生じ気味ですが、特急券を取るにせよ取らないにせよ、東海道本線という恵まれたインフラでこんな便利な車両を有効活用できないのは、JR東海の怠慢だと思えてなりません。

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