カムバックした「カムイ」、789系1000番台とその時代【車内と座席など】

北海道の車両
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北海道の中枢を結ぶ特急電車

旭川行き「スーパーカムイ」でデビュー

789系1000番台は、札幌~旭川間の特急として使われてきた国鉄型の781系を置き換えるために、2007年に登場した特急電車車両です。
スーパー白鳥」用に開発された789系基本番台がベースになっていますが、塗装の関係で外見の印象は大きく異なります。
それまで同区間の特急列車は、「スーパーホワイトアロー」(785系)と「ライラック」(781系)の2種類ありましたが、本形式の投入によって785系と併せて「スーパーカムイ」に列車名が統一されました。

2017年からは、前年の北海道新幹線開業によって「スーパー白鳥」の役目を終えた789系基本番台が道央に配置転換され「ライラック」として、1000番台の「カムイ」と共に札幌~旭川間における特急列車の高頻度運転を担っています。

なお「かむい」の列車名は1964年10月号の時刻表からは、小樽・札幌~旭川間の気動車準急列車で確認できますが、その後も急行への格上げ、電車化を経ていったん消滅したものの、遂に新型電車特急として華々しく復帰を果たすことになりました。

室蘭行きの「すずらん」でも運用される

札幌~旭川間の特急に使用されてきた789系1000番台でしたが、2013年より札幌~室蘭間の特急「すずらん」(東室蘭~室蘭は普通列車)にも785系と共に運用されるようになりました。
室蘭は工業都市であり、かつては石炭積み出し港としても栄えた街で、「すずらん」は函館発着の「北斗」を補完する列車です。
室蘭本線が室蘭まで電化され、東室蘭~長万部が非電化であることからも、札幌~函館間では室蘭(東室蘭)を境に輸送量に差があることが分かります。

外観

789系1000番台の外観
JR北海道の特急車両お馴染みの顔

軽快な姿をした785系とは異なり、基本番台と同じくJR北海道の特急車のトレードマークともいえる、重厚感のある高運転台の先頭車両です。
やや暗めのシルバータリックの凛とした車体は、JR九州の787系を思わせます。

光沢のある滑らかな車体に黒・紫そしてコーポレートカラーのライトグリーンのラインが入った側面は、個人的に日本の鉄道車両の中でも屈指の美しさだと思います。
グレーのスーツを身にまとった紳士が、ちょっとだけお洒落な色合いのネクタイをしているような感じでしょうか。

789系1000番台の車体側面
車体側面
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789系1000番台の車内

789系1000番台の編成も785系と同様に、モノクラス制でグリーン車はありません。
やはりこちらも、自由席と指定席(uシート)で座席が異なっています。

自由席車両の車内と座席

789系1000番台の自由席の車内
自由席の車内

自由席の座席は785系のものと同じで、内装もよく似ています。
もちろん全く同じというわけではなく、車体断面が785系が角ばった印象であるのに対して、789系1000番台はもう少し曲線的です。
また、照明や客室扉もこちらの方が全体的にスマートな仕上がりになっているように感じられます。

785系の自由席の車内
参考:785系の自由席の車内

東室蘭から苫小牧までを、行きは789系1000番台、帰りは785系で往復した(「すずらん」の車両は固定されていませんが、運良く行き帰りで異なる車両に乗れた)のですが、やはり新型のこちらの車両の方が乗り心地が良いように思いました。

789系1000番台の自由席の座席
自由席の座席

指定席車両(uシート)の車内と座席はコンセント付き

789系1000番台の指定席、uシートの車内
指定席の車内

指定席車両は、北海道の特急でよく見かける「グレードアップ座席」に似たものが備えられています。
座席の色は茶色なので、もう少し落ち着いた雰囲気です。
もちろん座席自体も自由席と比べてスタイリッシュですが、その他の差別化されている点は、uシートには前の座席の裏にコンセントが付いているところです。

789系1000番台の指定席、uシートの座席
指定席の座席

自由席車両は2列分の大型窓ですが、指定席車両は1列ごとの小型窓が採用されています。
少しでもこの車両が目立つように工夫をしているのでしょうか。

789系1000番台の指定席車両の小型窓
指定席車両は小型窓になっている
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運用は「カムイ」と一部の「すずらん」

室蘭駅に停車中の789系1000番台「すずらん」
室蘭駅に停車中の「すずらん」

789系1000番台は札幌~旭川間の「カムイ」全てと、札幌~室蘭(東室蘭からは普通列車として運転)間の「すずらん」の一部に運用されています。
「すずらん」に関しては785系と共に運転されていますが、「スーパー北斗」と違って、どの列車がどちらの車両かは定まっていません
また「すずらん」は普通列車として運転される区間では、指定席車両uシートも乗車券だけで利用できます。

かつては旭川からの特急列車が、札幌駅で引き続き快速「エアポート」として直通運転されていたこともありましたが、現在ではこの運用は行われていません。

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基本番台の「ライラック」と「カムイ」の違いは?

ライラックとして使われる789系基本番台
ライラックとして使われる789系基本番台

さて、札幌~旭川間の特急の列車名には、本形式による「カムイ」の他に789系基本番台の「ライラック」もあります。
両列車とも停車駅も所要時間も同じですが、違いもあります。

まず挙げられるのは編成内容の違いです。
「カムイ」は5両編成で普通車のみのモノクラスですが、「ライラック」は6両編成でグリーン車があります。
また「ライラック」の普通車は指定席であっても、グレードアップ座席ではなく自由席と同じものになっています。

789系基本番台の普通車の車内
基本番台の普通車車内。
指定席・自由席の差異はない

普通車の車内も雰囲気が異なっており、全体的に落ち着いたトーンの「カムイ」(1000番台)に対して、「ライラック」(基本番台)は座席がカラフルで床のデザインも菱形模様が描かれた、明るく開放的な印象です。

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総評

前任者の785系が1990年という青函トンネル開業直後の好景気に登場したのに対して、789系1000番台の時代背景は決して喜ばしいものではありませんでした。
デビューを果たした2007年の後半は、100年に一度の危機といわれたリーマンショックの引き金となるサブプライム問題が顕在化した頃でした。
そして景気の停滞期から抜け出そうという2010年代前半は、JR北海道でメンテナンス不良による事故が多発し、安全対策強化のため特急の最高速度が120㎞に引き下げられます。
気の毒といえば気の毒ですが、運転区間が北海道にしては自然が過酷ではない地域で、沿線人口も多い都市部なのが幸いです。

全線複線電化され勾配・曲線も少ないという、全国でも有数の恵まれた条件の線路をシックな車内と外観で高速走行する姿は、北海道の大幹線で活躍するビジネス特急電車としての品格が感じられます。

編成内容だけ見ると「ライラック」の方が格上の列車であるのは事実ですが、運転区間の性格からして、ビジネス特急の車内の雰囲気により相応しいのは「カムイ」ではないかと思います。
その意味で789系1000番台は、出自が北海道と本州を結ぶ「スーパー白鳥」である基本番台とはまた別な、道央の都市間輸送に励むという堅実なアイデンティーティーを持った車両だといえそうです。


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