「すずらん」で最後の花を咲かせる785系とその時代【車内と座席】

北海道の車両
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「スーパーホワイトアロー」発射される

軽快で俊足な電車特急

785系は1990年に営業を開始した、JR北海道初の特急電車車両です。
北海道の中央部の2大都市、札幌と旭川を結ぶ特急「スーパーホワイトアロー」として、同区間の136㎞を最高速度130㎞、80分で結ぶ高速列車としてデビューしました。
国鉄型の781系を使った「ライラック」(最高速度120㎞、所要時間90分)と合わせて、当時から30分毎の運転が行われていました。

小樽~札幌~旭川間の複線電化が完了したのは1969年と、北海道にしてはかなり早い段階でした。
この頃は千歳線でさえも非電化で単線区間も残っていたわけですから、いかにこの区間が北海道の中枢として重要視されていたかが分かります。
なお複線電化の際に、急曲線が連続する旭川近くの納内おさむない近文ちかぶみ間は線路改良がなされました。

線形の良さと加速力のおかげで表定速度は102㎞にもなり、運転開始直後に高速道路が開通してからも競争力を発揮しました。
表定速度は全盛期の最速「スーパー北斗」の106㎞には及びませんが、80分の間に途中停車駅が5つもあることを考慮すると、驚異的な速さというべきです。

北海道の複線電化区間は線形が良い。
写真は室蘭本線。

ちなみに、「スーパーホワイトアロー」の元になる「ホワイトアロー」の列車名は国鉄末期の781系による特急列車で使われています。
札幌~旭川までノンストップという、まさに特別急行らしい列車でしたが、所要時間は1時間29分(1987年4月号より)と、現在の停車駅が多い特急よりも遅いようです。

列車名変更と「すずらん」にも進出

2007年には北海道用の特急電車として25年以上働いて来た781系が勇退し、789系1000番台が代わりに投入されます。
札幌~旭川間特急は785系と789系の2形式による運転となるものの、列車名は統一され「スーパーカムイ」を名乗ります。
その後、最高速度は120㎞に落とされますが、所要時間の変化は5分にとどまり健脚を維持しました。

またこの時に785系は、それまでの781系による「すずらん」の運用を引き継ぎました。
「すずらん」は札幌と工業都市室蘭を結ぶ電車特急ですが、「北斗」の補完的意味合いもある列車です。

「スーパーカムイ」の運用は789系に追われる

室蘭~札幌~旭川という道央の電化区間で快走していた785系ですが、2017年より札幌~旭川間での運用が廃止されます。
2016年に北海道新幹線が新函館北斗まで開業し、青森~函館間の特急が廃止されますが、「スーパー白鳥」で使われていた789系基本番台が翌2017年より、札幌~旭川間の特急に転用されることになったのです。
これによって札幌~旭川間の特急の列車名は、789系1000番台の「カムイ」と基本番台の「ライラック」の二本立てとなります。

785系にしても車齢は既に25年を過ぎており、第一線での活躍も最高速度も130㎞から120㎞に引き下げられていたこともあり、「スーパーカムイ」からの撤退にはさほど未練は無しといったところでしょうか。

外観

すずらんの運用に就く785系
すずらんの運用に就く785系。
東室蘭駅にて。

JR北海道でお馴染みの高運転台を採用していないため、他の車両と比べるとやや存在感という点では劣るかもしれません。
その意味ではむしろ異質な車両といえるでしょう。

道央の電化区間は北海道の他の路線ほどは気象条件や線路条件が厳しくないので、エンジンを唸らせ身を傾けながら厳しい自然に挑んでゆく猛々しさはないものの、電車ならではのスピード感があるスタイルにも感じます。

785系の車体側面
車体側面

「魔改造」され現在は5両編成

785系の先頭車の中間車に改造した車両
先頭車同士を接着して中間車に改造した車両

当初は基本編成4両と付属編成2両という組み合わせでしたが、後に5両の固定編成に改造されています。

基本編成に対しては1両中間車を組み込むことで対処したのですが、付属編成に関しては2編成を1組にまとめ、さらに1両中間車を挿入しています。
そのため運転台付きの車両同士が「溶接」された、異様な姿を見ることができます。
外見はともかく中間車の扱いなので通り抜けも可能です。

785系の旧先頭車同士の通り抜け
旧先頭車の間も通り抜け可能
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785系の車内

785系はモノクラスでグリーン車はありませんが、通常の車両と「uシート」と呼ばれる指定席車両では、座席が異なっています。

自由席車両の車内と座席

785系の自由席車両の車内
自由席車両の車内。
客室扉のシルエットが印象的。

785系の客室はリニューアルが施されており、特急「すずらん」で共用される789系1000番台とよく似た雰囲気になっています。
座席や床は同じものですが、客室扉の枠がスタイリッシュで印象的な形状になっています。

天井の照明は789系1000番台はすっきりした落ち着いたものであるのに対して、785系は少しギラギラした印象があり、この辺はキハ281系と同様に古さを感じてしまいます。

785系自由席車両の照明や荷物棚
照明や荷物棚に古さが残っている。

荷物棚の赤みがかった半透明のアクリル板も、どことなく平成初期を思わせます。
また、789系では上下に動かすブラインドがありますが、785系ではカーテンが備えられています。

785系の自由席車両のリニューアルされた座席
自由席車両であっても座席はリニューアルされており快適

指定席車両(uシート)の車内と座席

785系のuシートの指定席車両
uシートの指定席車両。
窓が1列ずつの小型になっている。

1両だけある指定席車両は他の自由席車両と比べて、座席に若干の差別化が図られています。
見た感じではuシートの方が確かにスマートですが、実際にはそこまで快適性には差は無いように思われます。

785系のuシート、指定席車両の車内。
指定席車両の車内。
内装はほぼ変わらないが座席が異なる。

ただ、こちらの車両には前の座席にコンセントが付いているので、その点が付加価値かもしれません。
なお「すずらん」は普通列車として運転される室蘭~東室蘭間では、全車両に指定・特急料金不要で乗れるので、uシートは乗り得車両です。

785系のuシート、指定席車両のコンセント付きの座席
コンセント付きの座席
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一部の「すずらん」の運用だが、引退も近い

登場から30年近く経った2019年時点では、785系は当初の札幌~旭川間の大役から離れ、札幌~室蘭で特急「すずらん」の一部列車を789系1000番台と共に担当しています。
ただ、どの車両で運転されるかは定まっていないので、どちらが来るかは事前には分からないようです。

一時は2018年度中に引退するという話もありましたが、2019年9月にも乗車できました。
もっとも、車齢を考えるとそれほど余生も長くないでしょう。

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総評

JR北海道の特急車両らしからぬ、まるで私鉄車両を思わせるような軽快さから、あまり目立たない存在であったかもしれません。
しかしその軽やかさこそが、都市間の電車特急という785系のアイデンティティーだといえます。

本形式が登場した1990年というのは、民営化直後の勢いもさることながら、バブル景気や青函トンネル開通もあって北海道観光が盛り上がった時代でもありました。
困難な状況にあるJR北海道にとっては、初めての特急車両である785系は良き時代の思い出であり、間もなくと思われるその引退は一つの時代の終わりを意味するのでしょう。

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