個室付きのデラックス車両、東武スペーシアとその時代【車内・座席と費用について】

浅草駅のスペーシア 私鉄有料特急
東武スペーシア
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登場の経緯

デラックスロマンスカーの後継車

東京から日本を代表する観光地である日光へは、昔から国鉄と東武鉄道が乗客獲得競争を繰り広げていました。
国鉄は特急に匹敵する設備を持つ157系を、1959年に準急「日光」として投入しますが、「デラックスロマンスカー」こと1720系が1960年に登場したことにより、鉄道輸送はほぼ東武鉄道の独壇場となりました。(もっとも、最近はジャパンレールパスでJRを利用する外国人も多いです。)

その老朽化した1720系を置き換えるために1990年に登場したのが、東武鉄道100系「スペーシア」です。
偉大なる1720系の後継車両として恥じない、東武特急のブランドを保持したグレードの高い車両に仕上がっています。

21世紀の車両をも凌駕する乗り心地

東武スペーシアの特徴は、その車内設備です。
さすが1990年生まれだけあって、バブル時代の面影を残しています。
これについては後ほど写真で紹介したいと思います。

さて、内装もさることながら、もう一つこの車両のクオリティーの高さを示しているのが走行時の快適さです。
まずは揺れの少なさ。
カーブ通過時や高速走行の際にも揺れや振動はとても穏やかです。
また加減速時も非常にスムーズで、衝撃はほとんどありません。
何度乗っても本当に滑らかだな、と感心させられます。

登場したのが1990年ということで、初期のインバーター制御(ヒューンヒューン音)のため実際にはモーター音がうるさいにもかかわらず、車内はとても静かです。

浅草駅に入線するスペーシア

2010年代以降に登場した車両でも、デザインはスマートであるにもかかわらず、走り出すとガタガタというのはよくある話(特に首都圏の通勤車両)です。
JRの車両でも、平成初期に登場したスペーシア並みの完成度を誇る在来線特急車両はなかなか見つかりません。
「結局スペーシアを超えることができずに、平成の時代は終わってしまったのだな」
と悲しくなる令和元年現在であります。

ちなみに、先頭車両の外観は、ほぼ同時期にデビューした300系新幹線電車によく似ています。

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東武100系の車内

バブル時代を彷彿とさせる優雅な車内

スペーシアの車内
スペーシアの車内。
グリーン車並みの設備。

スペーシアの特筆すべき点は何と言ってもその車内の豪華さです。
この列車のデビューした1990年というとバブルの時代で、前後の年にはキハ85系(1989年)、371系(1991年)がお見えしています。

シートピッチの広い(1100㎜)どっしりとした座席が並ぶ室内は、カーペットが敷かれ、金の装飾が施されています。
といっても一部の観光列車にみられる、ケバケバしいデザインではなく、高級感を上品に演出しています。またフットレストも付いています。

東武スペーシアの座席
フットレスト付きの座席

先代のデラックスロマンスカーはリクライニングシートで登場しましたが、1960年当時では国鉄特急の2等車(今でいうグリーン車)並みの設備といわれていました。
スペーシアの座席もJRの特急のグリーン車に負けないくらいの快適さです。

本格的な4人用個室がある

東武100系スペーシアの個室
スペーシアの個室

さて、通常車両でもJRのグリーン車に匹敵する水準ですが、浅草寄りの先頭車両6号車には、個室車両が6部屋設けられています。
「個室感覚」ではなく個室です。

現在のシートのモケットは、高級感の溢れるブラウンになっていています。
この個室は扉で通路と仕切られるので、プライバシーが確保されます。また、中央には大理石のテーブルが備わり、広々とした座席の間には大型のひじ掛けもある豪華仕様です。

東武スペーシアの個室車両の通路
個室車両の通路

車内販売

スペーシアの3号車にはカウンターがあり、そこで飲み物や軽食を注文できます。
今や珍しい設備です。
豪華車両のスペーシアのイメージとは裏腹に、フライドポテトやたこ焼きといった屋台の縁日のようなメニューがあります。
もちろんワゴン販売も行われていて、コーヒーやアイスクリームなども購入可能です。

一部の列車では車内販売を営業していないので要注意です。
どの列車が営業しているか、取り扱い商品については、関連企業のホームページから確認できます。

東武スペーシアの3号車のカウンター
3号車のカウンター。
ワゴン販売営業中のため閉まっている。
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東武100系の運用

浅草~日光・鬼怒川温泉の運用が多い

東武線内の特急では主に「けごん」(日光行き)、「きぬ」(鬼怒川温泉行き)に使用されています。

日光・鬼怒川方面行の特急は一部が、2017年に登場した500系「リバティ」で運行されるものもあり、これらの列車は列車名が「リバティけごん」「リバティきぬ」になります。

リバティの方が25年以上新しいですが、こちらは併結・分割ができる汎用型車両なので、車内のグレード・高級感としてはスペーシアの方がやはり優れていると思います。
例えて言えば、スペーシアが小田急の「VSE」、リバティが同じく「EXE」といったところでしょうか。

JR新宿発のスペーシアは鬼怒川温泉行のみ

半世紀以上前にライバル対決をしていたのが嘘のように、1日数往復の特急列車がJRに乗り入れして、新宿まで走っています。

車両は東武のスペーシアと、JR側はかつて「成田エクスプレス」に使用された253系をリニューアルしたものが受け持っています。
鬼怒川温泉行きの「スペーシアきぬがわ」が東武のスペーシア車両の列車です。(「きぬがわ」「日光」はJRの253系)
253系も観光特急用の悪い車両ではありませんが、やはりスペーシアが比較対象というのは気の毒な感じがします。

元成田エクスプレス用の253系「きぬがわ」
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予約方法と費用の抑え方

スペーシアに限らず東武特急はインターネットで予約することができます。
以前だと個室はインターネット予約ができず電話のみで対応していましたが、現在では可能になっているようです。
ただし東武鉄道のページからはJR直通特急の予約はできません。
これらの列車の場合はJRのえきねっとを利用する必要があります。

特にネット割引のような制度はありませんが、費用を安くする方法はあります。
乗車券と特急券に分けて解説します。

株主優待の乗車券

運賃を安くする方法は、チケットショップで売っている東武鉄道全線で利用可能な乗車券を使うことです。
私が新宿で探したところだいたい800円弱で販売されていました。(2019年の場合)
浅草~日光間の乗車券が1390円なので、非常にお得だということが分かると思います。
惰性でスイカやパスモで改札に入らないように注意してください。
当然ながらフリー切符ではないので一度しか使えません。

特急券は曜日と午後割・夜割料金を活用

スペーシアの料金は曜日や時間帯によって変動します。
まず、土日より平日の方が若干安くなると覚えましょう。
概ね100円くらいの差額ですが、個室料金は3770円が3150円と結構変わるので狙い目です。

また、昼以降発車する列車には午後割・夜割が設定されています。
これはかなりお得な制度で、浅草~日光・鬼怒川のような121㎞以上では、料金が1470円(土日)から1050円になります。
浅草発だと使いづらいでしょうが、帰りの便で有効活用したいものです。
適用列車が細かく決められているので、ホームページで確認してください。

JR直通列車は割高

栗橋駅でJRから東武に転線する。

新宿から出ているJR直通列車は便利ですが、会社をまたがって運転されているため費用は割高になります。
例えば土日に日光まで行く場合、浅草発なら2800円程度(正規の値段。前に説明した優待券や割引を使えば安くなる)ですが、新宿からだと4000円程度になります。
また、個室料金もJR線内と東武線内の両方で発生するため、その分高くつきます。

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後継の新型車両N100系が2023年に登場予定

関東の有料特急車両、いや全国の特急車両の中でも屈指の存在であるスペーシアですが、登場以来30年近く経っている現在(2019年)、流石に古さも隠せない状態です。

東武鉄道は2017年に中期計画として、「フラッグシップ特急車両の導入」を発表しています。この「フラッグシップ特急車両」は500系リバティとは別のため、スペーシア後継車両と思われます。

デラックスロマンスカー、スペーシアと歴史に燦然と輝く車両を世に送ってきた東武鉄道が、今度はどんな車両を見せてくれるのか楽しみである一方、スペーシアの引退も近いことを実感し残念でもあります。

(2021年11月追記)
東武鉄道のニュースリリースによって、いよいよ正式に新型車両、N100系の情報がアナウンスされました。
2023年に導入予定とのことです。
気になるアコモデーションに関しては、個室の継承やラウンジタイプなど複数のタイプの座席、それからカフェカウンターの設置など、スペーシアの後継車両を意識していることを伺わせます。

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