梅雨入りして雨が続く6月の、久々にカラッと晴れた月曜日。
日光へ日帰りで、こだわりの鉄道旅行に行ってきました。
今回は行きが東武スペーシアの個室、帰りはJR利用で宇都宮から新幹線のグリーン車を利用するという、リッチな旅です。
【往路】スペーシアの出発は浅草
弁当の売店もある。旅の最初はターミナル駅、浅草から。
東武鉄道の始発駅は浅草駅です。
とはいえ、この駅はややアクセスが不便で、北千住や押上といった駅から東京メトロの電車が直通しているため、その地位は今一つパッとしません。その意味で京成上野駅に似た立ち位置と言えましょう。
しかし、駅の建物は昭和初期のデザインであり、やはり行き止まり式の駅の旅情は何にも代えられません。
また、東武浅草駅には改札を入ったところにも弁当などが売っているお店があり、旅の準備をするのにも便利な駅です。
「浅草まで行くのは面倒だから途中駅から乗ろう」とは考えずに、始発駅から乗って出発を盛り上げましょう。
入線時刻は発車の5分前。個室車両に乗車!
行きの列車は浅草9時30分発の「けごん13号」です。
駅にまで至る急曲線を、フランジ音をたてながら紫色のスペーシアが入線してきます。ちなみにこの列車の入線時刻は9時25分ごろでした。やや慌ただしい感じです。
今回は個室車両を利用しました。
通常の車両でもグリーン車並みの設備を誇るスペーシアですが、4人用個室はまさに豪華そのものです。
東武スペーシアの詳しい車両解説は
東武100系スペーシアの車両ガイド【平成を代表する私鉄有料特急車両】
を参照してください。
日光までの100分を満喫せよ
滑らかに発車して急曲線を通過してすぐに、東京スカイツリーに見守られながら、隅田川を渡ります。
橋の上のゆっくりとした走行音は、旅立ちの序曲です。
季節違えど、滝廉太郎作曲の「花」が脳内再生されたら、浅草駅で購入した「深川めし」を大理石のテーブルに広げて、江戸情緒に彩を添えます。
さて、北千住からしばらくは、複々線区間となっています。
隣を走る各駅停車の電車を追い抜いていく様は、首都圏の路線の醍醐味です。東武鉄道の車両以外にも東京メトロ日比谷線や半蔵門線の車両も見られ、賑やかな光景が広がります。
沿線に住宅地が長い間続く小田急線と違って、春日部あたりからは徐々に「都会感」がなくなっていきます。
JR両毛線と連絡する栃木駅からはずっと上り勾配が続き、山に近づいて、やがて山の中に入ります。
日光まであと少しの所にある下今市駅では、鬼怒川温泉方面の列車に乗り換えることができます。
なお、この駅から鬼怒川温泉の区間を、国鉄時代に製造された14系客車をSLが牽く「SL大樹」が土日を中心に運行されています。
この日は運行日ではありませんでしたが、その姿だけ見ることができました。
下今市あたりから日光までは急勾配が連続しています。
そのためかスペーシアは全車両にモーターがつく「オールM」の編成となっています。高速域からでも強い加速力が感じられます。
軽々と坂を登って、JR日光線が見えてきたら、日光に到着です。
終着の東武日光駅は観光地らしい雰囲気の駅です。
駅前には世界遺産へアクセスするバスの乗り場があり、駅の売店や設備も充実しています。
スペーシアの車内販売について
スペーシアには車販準備室も兼ねたカウンターがあり、ワゴン販売を行っていない時間帯は、ここで飲み物の他、軽食も注文できます。
今や、ワゴン販売以外に対面販売がある数少ない列車です。
弁当も販売されていますが、一部の商品は数日前からの予約必須のようです。
【復路】JR日光線と新幹線グリーン車を利用
歴史あるJR日光駅
日光観光を終えたら、帰りはJRを利用します。
JR日光駅は、1960年に東武鉄道が1720系「デラックスロマンスカー」を登場させるまで、世界的観光地への玄関口として、多くの皇族や外国人を迎えてきました。
そのため立派な駅舎を持った駅で、2階にはかつての一等車利用客専用の待合室があります。
もっとも華やかな歴史を伝える駅舎とは裏腹に、駅構内は一部線路が撤去された跡が残っており、やや寂しい印象を受けます。
日光線「いろは」で宇都宮駅へ
日光線で使われている205系は、日光をイメージしたリニューアルがなされていますが、一部の列車は「いろは」と呼ばれる観光車両となっています。
この車両は通路を挟んで4人用と2人用のボックスシートを備えていて、車体両側の扉付近はロングシートです。
さて、205系は本来片側4つ扉の車両ですが、「いろは車両」は内側の2つの扉は廃止されています。
「いろは」の車内は観光列車仕様になっていますが、一部の列車のような独善的なデザインではなく、比較的落ち着いた雰囲気となっています。JR線利用ならこの車両を選ぶと良いでしょう。
E5系「なすの」グリーン車で東京へ
宇都宮駅に着いたら、新幹線に乗り換えです。
行きに個室を利用したのだからと、東京駅まで1時間のグリーン車の旅です。
E5系のグリーン車の内装は上質なものです。
まずデッキの配色は濃い木目調で 、そのシックな雰囲気で導入演出を果たしてくれます。
客室内は全体的にブラウンというかベージュの色が支配的となっており、壁もやはり木目調であたたかみを感じます。
座席ももちろん豪華で、普通車との最大の違いはフットレストが付いていることです。
なお、フットレストを動かすと、それに連動して座面が沈むようになっています。歩き回って疲れた体(特に足)が本当に休まりました。
座席の可動枕も程よく頭と首を支えて、快適な旅を手助けしてくれます。
「遅延してくれ!」という我々の願いも叶わず、約1時間で東京駅に到着しました。
費用と予約方法
さて、豪華旅行の気になる費用ですが、安くする方法は結構あります。
まずは今回の一人当たりの交通費をまとめます。
- スペーシア:780(運賃)+1340(特急券)+770(個室一人当たり) 計2890円
- 日光~宇都宮:760円
- なすの:4190円(特急券・グリーン券込み)
合計で7840円です。
以下、費用を抑えるポイントと予約方法です。
東武スペーシアの費用は意外と安くできる
知っておくべきは、スペーシアの料金体系は平日と土日で異なるということです。
まず、部屋単位で販売される個室ですが、平日が3090円、土日が3700円となっています。
特急券も日光(鬼怒川温泉も同じ)まで、平日1340円、土日1440円です。
なお、「午後割・夜割」というものがあって、浅草昼過ぎ発、または日光夕方発の列車は曜日に関係なく特急料金が1030円になります。(設定列車は平日と土日で異なる)
以上の内容は東武鉄道のホームページで確認できます。
乗車券は公式の割引はありませんが、東武鉄道の全区間で利用できる株主優待券が800円前後で出回っています。
浅草・日光間の運賃が1360円であることを考えると、これを使わない手はありません。
予約方法は通常の車両なら東武鉄道のホームページからネット予約できますが、個室の場合はネット予約不可です。
電話で予約して、1週間以内に東武の駅か代理店に取りに行く必要があります。
東北新幹線の予約はえきねっと
東北新幹線の予約は、JR東日本の予約サービスのえきねっとが便利でお得です。
宇都宮・東京間は「なすの」と仙台発着の「やまびこ」で割引が適用されます。
特に14日前までに予約する「お先にトクだ値」は同区間が最大35%割引になります。
14日以上前でも数に限りがあるので、早めの予約が望ましいです。
日光旅行は鉄道で
日本が世界に誇る観光地、日光の輸送のために、東武鉄道はもちろん、一時期は国鉄も相当の力を入れてきました。
国鉄は東武に一度は敗れ去るものの、訪日外国人の「ジャパンレールパス」を追い風に、再び観光車両の整備や駅舎の活用によって、我々に魅力を提供しています。
小学校で習った通り「家を出てから帰宅するまでが旅行」です。
本記事を参考にして、都心から日光までの往復数時間も有効に活用して、素晴らしい日光旅行を楽しんでください。