山陽新幹線500系こだま、元グリーン車の指定席で新大阪から博多へ【車内・予約方法】

幹線

次々と魅力的な新型車両が各地で生まれる新幹線にあって、20年以上にわたり「かっこいい新幹線車両」として常に人気最上位を維持しているのが、JR西日本の500系です。
第一線を退いた今も、登場当時とほぼ同じ姿で山陽新幹線「こだま」の運用に就いています。

2023年9月上旬、新大阪駅から博多駅まで500系「こだま」に乗車しました。

スポンサーリンク

日本初の時速300㎞

1997年3月、日本初の最高速度300㎞/h運転が可能な500系新幹線が誕生しました。
世界最速にも並ぶ速さはもちろんのこと、15Mにも及ぶ長い鼻や航空機のようなスタイルによく合うカラーリング、そして開発にはカワセミやフクロウにヒントを得たというエピソード等々、「未来の高速鉄道」を体現した新型車両は大きな話題となりました。

まずは山陽新幹線の新大阪・博多間に投入され、持ち前の300㎞/h運転によって同区間をそれまでより15分早い2時間17分で結び、ライバルの航空機に対抗します。
その後は東海道新幹線にも直通運転を開始し、東京・博多間は5時間を切る4時間49分となりました。
かくして、「特別な存在」である500系は電車好きの少年のみならず、大人からも高い人気を集めたのです。

しかし、特別であるが故に、他の車両と一部仕様が異なる500系は、没個性と協調性を至高の美徳とみなす日本社会では厄介者扱いされる存在でもありました。
その仕様の差異とて、先頭車両の扉が1つ少ないとか、定員が1名足りないとか、その程度の話ではありましたが、そうした些細な点を完璧にするために一体どれだけのものを失っているか考える人は、残念ながらこの国にはあまりいません。

500系と同じ300㎞/h運転が可能で、東海道新幹線での曲線通過速度や加速力が高く、そして既存車両との共通化も実現したN700系が2007年に登場すると、500系は早くも「のぞみ」の運用を減らしていきます。
そして2010年、500系は「のぞみ」から完全に撤退し、16両から8両編成に改造されたうえで、山陽新幹線の「こだま」で第二の人生を歩むこととなりました。

スポンサーリンク

500系こだまの車内・サービス

山陽新幹線の「こだま」は8両編成で、グリーン車は連結されていません。
しかし、500系の普通車には①自由席・②指定席・③元グリーン車の指定席と3種類のパターンがあります。

自由席の車内と座席

500系こだまの自由席の車内
自由席の車内
先頭車両のため運転席寄りの天井が低くなっている

オリジナルの雰囲気を保っているのが自由席です。
通常の新幹線車両と同じ、通路を挟んで2&3列の座席配置になっています。
紫色の座席も「未来の高速列車」500系らしさを感じさせます。

500系全般に言えることですが、丸みを帯びた車体断面のため、客室上部が絞り込んだ形状になっています。
「圧迫感がある」という意見もありますが、個人的には乗っていてさほど気になるものではないと思います。

500系こだまの自由席の座席
自由席の座席

指定席の車内と座席

500系こだまの指定席の車内

山陽新幹線の8両編成の車両は、普通車指定席でもグリーン車と同じ2&2列シートになっています。
500系も「こだま」専属化に際して、指定席車両は700系「レールスター」と同じ座席に変更されました。

500系こだまの指定席の座席

元グリーン車指定席(6号車)の車内と座席

500系こだまの元グリーン車指定席の車内

指定席のうち6号車はかつてグリーン車で使われていた車両です。
もちろん指定席料金も他の号車と変わりません。

内装や座席の柄が高級感のあるものになっています。
ただテーブルは背面ではなく肘掛け内蔵式で、やや小さくて使いにくかったです。

500系こだまの元グリーン車指定席の座席

コンセントは無い

500系が登場した1990年代後半には、まだスマホがありませんでした。
よって車両や窓側・通路側にかかわらず、コンセントはありません。
敢えて長期戦に臨む方はスマホのバッテリーには注意しましょう。

車内販売は無いが、途中駅停車中に調達できる

車内販売基地跡?

「こだま」には車内販売や自動販売機はありません。
なので、出発前に駅で必要なものを買うのが基本です。
ただ、「こだま」は途中の駅で頻繁に通過待ちをするので、その間に売店で飲み物や弁当を購入することができます。

スポンサーリンク

【乗車記】新大阪から博多へ、所要時間4時間20分

山陽新幹線の車窓は海側がおすすめ

朝7時半前の新大阪駅は、東京へ仕事に行く人や鹿児島へ旅行に行く人で賑やかです。
私が乗る500系の「こだま」は一番端のホームから出発します。

東京にいると500系に乗る機会はおろか、見る機会さえなかなかありません。
それにしても、何年経っても500系のスタイルは美しい。
正面から見れば、きっと誰でも少年(または少女)に戻れるでしょう。

新大阪駅

さて、元グリーン車の6号車の進行方向の窓側席に乗車。
山陽新幹線の車窓は海側の方が良いです。
海が見える区間はほとんどありませんが、山側にそれに代わる魅力があるとすれば姫路城くらいです。
新大阪出発前の段階では埋まっている座席は半分程度。
全体的に女性のグループが多く、長期戦覚悟なのか2Lのペットボトルの水を用意している一人旅の若者もいます。

岡山まで指定席は比較的混雑

7時40分、新大阪駅を出発。
N700系ほどの加速力は感じません。
「いい日旅立ち」の車内チャイムが流れます。
JR西日本が完全に「私物化」した感のあるこの曲は、元は1970年代後半に国鉄のキャンペーン用に創られたものです。

発車後まもなく淀川を渡り、左手前方にはこれから突っ込んでいく六甲の山なみが見えます。
今年(2023年)は六甲おろしもより一層、颯爽と吹き抜けるのでしょう。

新大阪駅付近

沿線に見えていた町工場はやがて住宅地になります。
六甲トンネルに入る直前で、遠方に私の実家が辛うじて視界に入りました。

新神戸駅は六甲トンネルと神戸トンネルに挟まれた所にあります。
左手は神戸港に降りていく市街、右手は山と川と、駅を境に全く異なる光景です。
意外とここで降りる人もいました。
神戸トンネルを出て摂津と播磨の国境を過ぎると、左手には明石海峡大橋と淡路島が見えます。

西明石駅付近

西明石駅でもそれなりの乗車がありました。
明石市の人口は30万人を超えていますが、「こだま」以外の新幹線はほとんどがこの駅を通過します。
団体客がおり、指定席は車両によってはほぼ満席です。

その後左手には瀬戸内海が見えます。
在来線ではこの辺りでは海が見えませんが、新幹線は高架を走るので見渡しが良いです。

西明石駅付近

姫路駅付近では右手に真っ白の姫路城が望まれます。
東海道新幹線の富士山と同じで、ここが山陽新幹線の右側車窓の最初で最後の見せ場です。

中国地方らしい石州瓦

岡山駅で団体含め降りる人が多く、乗車率が明らかに下がりました。
ここは山陰や四国への列車が発着する駅で、時刻表で地理を学んだ方は広島より岡山の方がずっと大きな街だと勘違いされていたことでしょう。

福山駅・新尾道駅・三原駅と短い間隔で駅が続きます。
このあたりで東京や品川を朝一番に発った「のぞみ」たちに続けて抜かれるので、走っている時間より待っている時間の方が長いです。
市街地の向こうに、瀬戸内海に浮かぶ島が上の方だけ見え隠れします。

新尾道駅付近

三原駅からは在来線は「セノハチ越え」と呼ばれた急勾配区間となり、新幹線もトンネルが増えます。
そして、赤い石州瓦の民家が目立つのもこの辺りからです。
四季折々の風景に似合う石州瓦を見ると、いよいよ本格的に中国地方だなと感じます。

東広島駅付近

やがて中国地方最大の都市、広島駅に到着です。
ここでガラガラになるかと思っていましたがそうでもなく、岡山以西は乗客が入れ替わりながら大して変わらない乗車率のままでした。
西部区間でも沿線に中規模の都市が点在しているためでしょう。

広島駅付近

瀬戸内海と工場、徳山駅付近が車窓ハイライト

ほとんど内陸部やトンネルを走る山陽新幹線で、最も海がよく見えるのが徳山駅付近です。
穏やかで明るい瀬戸内の海と、重厚長大型のくすんだ工場のコントラストが極めて印象的です。
ここでも通過待ちで9分停車。

ホームに出て潮風に当たります。
学生のグループが駅構内の売店で買い物をして戻ってきました。

徳山駅付近

ところで、広島県と山口県にはそれぞれ新幹線の駅が5つあります。
よく言われるように、両県とも総理大臣を多く輩出していることと関係があるのでしょうか?
ちなみに、やはり総理大臣の「産地」である岩手県には、東北新幹線の駅が無駄に7個(たしかに南北に長い県だが)あります。

新下関駅で「さくら549号」が追い付いてきて先に出発します。
残す駅は「さくら」も停車する小倉と博多だけなので、自由席の客にとっては「さくら」に乗り換えるのが合理的です。
実際、新下関駅からは自由席にはほとんど人が乗っていませんでした。

いつの間にか九州へ

新下関駅出発後すぐに新関門トンネルに入り、ついに九州に上陸。
長い暗闇の後に函館湾と函館山が迎えてくれる北海道新幹線の感動的な演出と比べると、新幹線での九州入りは何ともあっさりしています。

小倉駅付近

九州の二大都市、小倉駅から博多駅までは、JR九州の特急列車と競合関係にあります。
所要時間は特急の半分以下で料金もあまり変わらないため、この一駅だけ自由席利用する人が多いです。
JR西日本からすれば、他所のドル箱路線で有利な商売ができるわけです。

新大阪駅から4時間20分余り。
「みずほ」より2時間近くも時間をかけて、ようやく終点の博多駅に着きました。

博多駅付近
博多駅

結局、私の後ろに乗っていた女性二人組も新大阪から博多まで乗り通しました。
とてもそんな風に見えなかったので意外です。
500系は女性受けも良いのでしょうか?
いずれにせよ、鉄道の世界が専門用語が飛び交うマニアックな界隈にとどまらず、幅広い層に親しまれるのは結構なことです。

スポンサーリンク

予約はe5489の「スーパー早得きっぷ」がおすすめ

新大阪から博多まで新幹線の自由席を利用すると、費用は14,750円です。
指定席だと15,280円になりますが、530円高いだけで4列座席に乗れるのでこちらが圧倒的に利用価値が高いです。

以上は定価の場合です。
新大阪・新神戸~小倉・博多まで乗車する場合は、JR西日本のチケットサービスのe5489で買える「スーパー早得きっぷ」がおすすめです。
値段は11,690円で、新大阪・博多間の指定席の通常価格より25%以上割引になります。

なお、普通に区間・日時だけ選択すると検索結果は「のぞみ」や「さくら」ばかりになります。
予約する時は「利用列車」のところを「新幹線(こだま利用)」にしましょう。
残念ながら、関西~岡山・広島・山口県の区間にはスーパー早得きっぷの設定はありません。

e5489の予約画面

また、設定区間が幅広い「こだま指定席きっぷ」は前日まで購入できて割引率も高い商品です。
ただし2名以上でしか利用できないので要注意です。
子供料金は一律1,500円という破格設定で、ファミリー向けの切符でしょう。

スポンサーリンク

JR西日本の青春時代・少年たちの夢

後輩のN700系に抜かれる500系こだま

主役の座をN700系に譲って以来、「こだま」運用に就く期間が本来の「のぞみ」で活躍した期間より長くなってきた500系。
しかし、「大量生産型」の700系やN700系と違って、孤高の500系にはクラフトビールのような深い味わいがあります。

500系が登場した1997年は国鉄民営化からまだ10年で、JR各社には今よりずっとアグレッシブな姿勢があった時代でした。
それまでの、否、それ以降の枠にさえとらわれない500系はJR西日本の熱い青春であり、老若男女問わず今の乗客にとっても少年の夢なのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました