航空機に勝つのぞみ、N700Aとその時代【普通車・グリーン車の車内や座席など】

新幹線車両
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本記事ではN700系シリーズの東海道・山陽新幹線用の編成について取り扱っています。

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東海道・山陽新幹線の次世代車両

車体傾斜システムと高加減速度でスピードアップ

N700系は2007年に東海道・山陽新幹線で営業運転を開始しました。
形式名だけだとまるで先代の700系のマイナーチェンジのような印象を持ちますが、実際は様々な面で改良が行われています。

まず第一に挙げなければならないのは、車体傾斜システムを新幹線車両としては初めて採用したことです。
東海道・山陽新幹線は中長距離輸送で航空機との競争を繰り広げてきました。
東京~大阪は新幹線の所要時間が2時間半程度と優位に立っていましたが、東京~広島や名古屋~博多間は両者が拮抗していました。
参照:https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/data/pdf/data2019_10.pdf

国内、というより世界で初の高速鉄道路線である東海道新幹線は最小曲線半径(小さい程カーブがきつい。以下Rと表記)が2500mで建設されましたが、この場合の通過速度は255㎞です。
300系の登場以来東海道新幹線の最高速度は270㎞でしたが、実際にこの速度で走る区間はさほど長くありませんでした。
しかしN700系は車体傾斜により、R2500の「急曲線」でも速度を落とさず270㎞で、しかも遠心力がかからず快適に走行できるのでスピードアップが可能になりました。

そして性能面のもう一つの注目点はその加減速性能の高さです。
起動時の加速度(1秒あたり何㎞加速できるか)は2.6と通勤電車並みを誇ります。
新幹線車両はだいたい1.6~2.0ですから、その高さが分かるでしょう。
270㎞に達するまでの時間も僅か180秒程度と驚異的です。
ちなみに初代0系の起動加速度は1.0でした。
過密ダイヤの東海道新幹線では各駅停車タイプの「こだま」が「のぞみ」の妨げになってしまうため、加減速性能はとても大事なのです。

車両と車両の間は全周幌が採用され空気抵抗を抑えている

時流に乗ったコンセント設置と全席禁煙化

N700系は車内設備でも幾つもの改善が見られます。
まず最初に気づくのが客室ドアの上の案内表示器の文字が大きくなり読みやすくなったことです。
自分の目が良くなったと勘違い人もいたようです。

とはいえやはり大きかったのが、グリーン車の全席と普通車の窓側にコンセントを設置したことでしょう。
折しもN700系が投入・増備された頃は、スマホが普及していく時期と重なります。
今でももちろんそうですが、ガラケーと比べるとスマホのバッテリー持ちの悪さに悩んでいた人々にとって、これは非常に有難い設備でした。
もっとも、今の新幹線は昔のように食堂車・ビュッフェや冷水器が無いのが非常に残念に思いますが、そんなことよりもスマホの充電の方が大切なのが現代社会なのでしょうか…

東京に行く時には必ず利用していた冷水器。
大宮鉄道博物館の0系にて。

また編成に4カ所ある喫煙ルームを除いて全席禁煙としたのも、時代の流れに沿った施策でした。
私はタバコを吸いたいと思ったこともありませんが、小さいころ乗った0系なんかは車内がタバコ臭かったのを思い出します。

ともかく、N700系は21世紀の次世代型車両としての地位を確立したのでした。
窓口で「のぞみ」の切符を買うときに「N700系で」とのご指名も多かったそうです。

さらに進歩したN700A登場

瞬く間に人々からの支持を集めたN700系ですが、2013年にはその改良型となるN700A(N700系1000番台)が増備されます。
「A」は「進歩(Advance)」の意味があるそうです。

N700系と外見は同じですが、N700Aは従来のものより広範囲で車体傾斜を作動できるようになり、東海道新幹線で285㎞運転(2015年から)が可能になりました。
というのは、これまでは車体傾斜を使っていなかったR3000(R2500と同様にまんべんなく存在している)でも使うことで、285㎞で通過できるようになったのです。
なお、東海道新幹線の最高速度が引き上げられるのは1992年の300系登場以来、実に23年ぶりでした。

こうした中、既存のN700系に対してもN700Aへの改造が施され、2016年に全編成の「A化」が完了しました。
生まれながらのN700Aと途中で進化したN700Aは、車体側面にあるロゴマークの違いで分かります。

N700Aのロゴマークの違い
N700Aとして新造された編成は「A」の文字が大きい。
N700Aのロゴマークの違い
既存のN700系から「A化」された編成。
改造された組はAアピールも控えめ。

また車内設備の相違点では、Aとして新造されたタイプの方が座席のヘッドレスト部分の出っ張りが少しだけ大きいことが挙げられます。
細かい話ではありますが、座って寝ようと思うと意外と気が付く部分でもあります。

N700Aとして新造された車両。
背もたれ上部の左右に出っ張りがある。
N700Aに改造した車両は出っ張りが穏やか。

東海道新幹線を制覇し新たなステージへ

2020年3月には700系が東海道新幹線から完全に撤退し、車両はN700Aに統一されます。
これにより「のぞみ」の東京~新大阪の平均所要時間は4分短縮され、全列車が2時間30分以内で結ぶことになりました。
また最速列車の所要時間は2時間21分(下り265号及び上り64号)とさらに1分更新されました。

そして1時間あたり10本だった「のぞみ」が、最大で12本運転可能なダイヤになりました。(皮肉にもダイヤ改正したころは新型コロナウィルスの感染拡大のため、運転本数を逆に減らす措置が取られる)
1964年10月に開業した時には、超特急「ひかり」と特急「こだま」の毎時1本ずつの運転でスタートした東海道新幹線ですが、当時の関係者も現在の通勤電車並みの過密ダイヤを果たして予想していたでしょうか。

1964年10月の東海道新幹線開業時の時刻表
記念すべき1964年10月、東海道新幹線開業時の時刻表。
当初の所要時間は「ひかり」でも4時間だった。

0系がその能力を真に発揮してからは3時間10分、300系「のぞみ」が新横浜・品川を通過してもようやく2時間30分でした。
近年はスピードアップに消極的な線区・会社が多いですが、たかが1分、否、15秒の短縮が積み重なって鉄道が進歩してきたということを、鉄道会社も我々も再認識する必要があります。

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N700系Aの車内

普通車の車内と座席

N700系普通車の車内
普通車の車内

座席は薄い青のモケットで、インテリアもシンプルながら明るく清潔な雰囲気がありますが、他の特急・新幹線と比べても特に快適だとは感じません。
従来より座席の幅が1㎝広くなりましたが、これもうんちく話・知識自慢の域を出ません。

とはいえ2017年ごろだったか、私が久々に臨時「のぞみ」で700系に乗った時にはやはり「少し古い」と感じました。
窓が700系以前の車両より小さくなっていますが、新幹線車両にとってはさほどハンデにもならないでしょう。
もはや当たり前になりすぎてしまい、その良さを感じることも少ないのがN700系シリーズの偉大な所以であり悲しい所でもあります。

N700系の普通車の座席
普通車の座席。
窓側の足元にコンセントが備えられている。

グリーン車の車内と座席

N700系グリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車の座席は意外と硬いのですが、新しく開発された座り心地の良いものです。
ただしフットレストの位置と角度が個人的には使いづらく感じました。
車内の雰囲気はやはり落ち着いた上質なもので、壁にうっすらと模様が描かれていたり、窓の上にこっそりとライトがあるのも品の良さを感じます。

窓の上から光が漏れる

ワンオフの観光客をパッと見で喜ばせるような分かりやすい仕掛けはありませんが、常連客が安心して自分の時間を過ごせる空間で、その意味でも東海道新幹線らしい車内だと思います。
例えれば、全体としては派手で高級そうな服は着ていないように見えるが、スーツの裏側がお洒落で靴もきれいに磨かれているジェントルマンです。

N700系グリーン車の座席
グリーン車の座席。
壁に描かれた模様がささやかな高級感を演出している。
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総評

日本の大動脈の中の大動脈である東海道・山陽新幹線の主役であるN700系シリーズは、我が国における看板鉄道車両です。
その高速性能はもちろんのこと、車内の快適性・機能性でもそれまでの車両からは格段に進化しています。

国内初の300㎞運転を開始した人気者の500系のようなカリスマ性はありませんが、裏を返せば特殊性や希少価値を持つのではなく標準型車両となったことが、その完成度の高さの証に他なりません。
山陽・九州新幹線用にもN700系7000・8000番台が投入され、2020年7月からはフルモデルチェンジ型のN700 Sが営業運転を開始しました。

しかしながら、ウスターソースやトマトケチャップと同じで、完成度が高すぎる故に結局全部それになってしまい、車両のバラエティーの観点からは面白みが減った、という点は鉄道ファンとして敢えて指摘しなければなりません。
まあそれはともかくとして、私は新たな「普通」を造ったN700系シリーズは、東海道新幹線における0系以来の偉大な傑作車両だと思っています。

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