下克上を果たした「みずほ」、N700系(山陽・九州新幹線用)とその時代【普通車・グリーン車の車内など】

新幹線車両
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鹿児島まで繫がった新幹線

独自の進化を遂げた山陽新幹線車両

国鉄民営化後JR西日本の運営になった山陽新幹線(新大阪~博多)は、福岡空港のアクセスが非常に良好なことから、京阪神対九州でもトータルの所要時間では圧倒的優位とは言えませんでした。

そこで山陽新幹線独自の列車として、0系のアコモを改善した「ウエストひかり」や700系をベースに4人用個室や「サイレンスカー」など新たなサービスを試みた「ひかりレールスター」が登場しました。
これらの特徴は普通車であっても指定席車両(「ウエストひかり」は自由席も)が4列座席となっていることで、高水準のサービスであることには違いありませんが、東京を起点としていない山陽新幹線ならではの厳しい需要の表われとも言えます。
そうした健全な危機感のおかげで、近年では京阪神~福岡県の新幹線のシェアは9割近くにもなっています。

「ひかりレールスター」用の700系。
現在では主に「こだま」として運用されている。

また速達性に関しては、日本初の300㎞運転を行った500系が新大阪~博多を2時間17分(当時は新神戸も通過)で結び、この記録は現在に至るまで破られていません。
500系の登場は鉄道ファンのみならず多くの人を湧かせましたが、直通運転先の東海道新幹線ではカッコ良さや個性よりも規格の統一性が重視され、東京では煙たがられてしまう結果となりました。

国内初の300㎞運転を実現した500系。
こちらも現在は8両編成化されて「こだま」に使われている。

均一の商品を安定して供給することを至上命題とするJR東海の東海道新幹線と、商品の質(ダイヤや接客設備)を高めることに重きを置くJR西日本の山陽新幹線との違いがはっきりと表れています。

さて、南九州の新八代(熊本県)~鹿児島中央で孤立していた九州新幹線でしたが、2011年3月に残りの博多~新八代が開業したことで山陽新幹線と直通運転が可能になりました。
そこで「ひかりレールスター」を発展させる形で、新大阪~鹿児島中央で運転される列車のために登場したのが、九州新幹線直通用のN700系です。

参考:JR西日本提供のデータ

N700系をベースに上品さを湛える

従来の東海道・山陽新幹線用と同じくN700系を名乗っていますが、外観の塗装がやや暗い色で窓下のラインも異なるので、印象はだいぶ違って見えます。
こちらの方が凛としていて高級感を感じさせる佇まいです。
東海道新幹線に乗って大阪に行く時に新大阪駅の近くの基地でこの車両を見ると、この先乗り換えて九州に行きたくなってしまいます。

山陽・九州両新幹線が繋がったことを象徴するロゴ

また、九州新幹線直通用のN700系は「ウエストひかり」や「ひかりレールスター」と同様に8両編成で、グリーン車は1両の半分が充てられています。
東海道新幹線では16両中3両もグリーン車があるので、ここも山陽新幹線の客層に合わせた仕様となっています。

立場が完全に逆転した列車愛称たち

山陽・九州新幹線直通列車の愛称は準速達列車が「さくら」、そして最速達列車には「みずほ」が設定されました。
「さくら」は山陽新幹線内では「ひかり」と、「みずほ」は「のぞみ」とほぼ同等のダイヤです。

両方ともかつて東京~九州間の寝台特急に使われていた列車名ですが、「さくら」が戦前から設定されていた伝統ある名前なのに対し、熊本行き「みずほ」は西鹿児島(現・鹿児島中央)行き「はやぶさ」の補完列車のような地味な存在でした。
そのため九州行きの看板列車が「みずほ」になったことに違和感を感じたのは、おそらく私だけではなかったと思います。

ましてや、それまでトンネルだらけの離れ小島の新八代~鹿児島中央で黙々と任務をこなしていた「つばめ」に至っては、線路が繋がってようやく主役に躍り出るどころか、九州内の、それもほとんどが博多~熊本の各駅停車タイプという、おそらく新幹線の列車名で最も影の薄い役割に甘んじています。
これはもはや違和感どころではなく、名列車に対する冒涜であるといっても過言ではありません。

JR九州ではつばめを模ったマークが使われることが多い。
それ故に、列車としての「つばめ」には一刻も早い名誉挽回が望まれる。

さて、九州新幹線は他の整備新幹線と同様に、通常の新幹線でなく在来線の線路幅で200㎞程度で走る「スーパー特急」方式が構想されていました。
しかし一部の自治体や政治家から「ウナギを注文したらアナゴやドジョウが出てきた」と批判され、結局なし崩し的にフル規格の新幹線となりました。
しかし、出来上がった九州新幹線は山陽新幹線と比べると線路条件が悪く、建設費を節約するために急勾配が存在することもあってか最高速度は260㎞に抑えられています。
確かにウナギは出てきましたが、冷凍の中国産だったようです。

最速列車の新大阪~鹿児島中央の所要時間は3時間41分(下り「みずほ603号」)ですが、日中は「みずほ」の設定は無く、「さくら」だと4時間以上を要します。
現状では京阪神対熊本県では航空機に対して優位に立っていますが、鹿児島県となると鉄道のシェアは25%程度にとどまり明らかに劣勢です。
「のぞみ」と差別化する意味でも「みずほ」の途中停車駅を減らすなどして、さらにスピードアップする必要があると思われます。

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九州新幹線直通用N700系の車内

本形式の客室は東海道新幹線のN700系に比べると高品質です。
同じ普通車でも自由席と指定席で座席が異なるのも特徴です。

普通車自由席の車内と座席

九州新幹線用N700系の普通車自由席の車内
普通車自由席の車内

普通車自由席は1~3号車で、東海道新幹線のN700系とあまり変わりません。
座席のモケットの色・柄が少しお洒落で、荷物棚など所々に木目デザインが施されています。
個々のパーツとしてはシックな色調なのですが、座席の色が1両に2種類あるというのはあまり落ち着きません。

普通車指定席の車内と座席

九州新幹線用N700系の普通車指定席の車内
普通車指定席の車内

4~8号車(一部グリーン車)の指定席車両は、普通車であるにもかかわらず4列座席となっているのが特徴です。
内装は変わりませんが、指定席料金500円少々で快適な座席を利用することができます。

九州新幹線用N700系の普通車指定席の座席
普通車指定席の座席

自由席と指定席の違いはあるものの、E4系の6列座席も同じ新幹線の普通車であるというのは不思議なものです。
環境や条件は違いますが、列車の接客設備の西高東低は通勤電車だけでなく、新幹線にも当てはまります。

グリーン車の車内と座席

九州新幹線用N700系のグリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車は6号車の半分という狭い空間です。
普通車指定席でも十分快適なのですが、グリーン車はより大型でレッグレスト付きの座席が備えられています。

普通車と大きく異なるのが内装です。
落ち着いた車内のトーンに唐草模様があしらわれているのは、「JR西日本とJR九州の折衷様式」とでも表現できるでしょう。
華やかながらも重厚感のある客室です。

九州新幹線用N700系のグリーン車の座席
グリーン車の座席

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総評

不運にもその出発は直前の東日本大震災の影響で控えめなものになりましたが、九州新幹線が全線開通したことで、九州はもちろん、山陽新幹線にとっても大きな輸送の流れの変化が生まれました。
東海道新幹線の延長部分としての山陽新幹線ではなく、大阪から鹿児島(そして将来的には長崎も)に至る西日本随一の回廊を担う山陽新幹線の主役として、白い車体に青いラインを纏った「のぞみ」と対峙するかのように活躍しています。

上京すると標準語になってしまう東北の人と違って、いつまでも「母国語」を大切にする関西人よろしく、九州新幹線直通用編成はN700系シリーズの一員でありながらも、東海道色に染まらない個性を有しています。

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