最南端の西大山駅を経て、指宿枕崎線の乗車記【車窓やダイヤなど】

ローカル線

指宿枕崎線いぶすきまくらざきせんは鹿児島中央駅を起点に、薩摩半島の南東部の海岸線に沿って枕崎に至る路線です。
錦江湾や桜島の景色も見ることができますが、沿線の象徴的存在となっているのはやはり「薩摩富士」こと開聞岳です。
またJR線で日本最南端の駅である途中の西大山駅も有名です。

この路線は運転系統や景観のイメージによって

  1. 錦江湾沿いの景色が続く鹿児島中央~指宿
  2. 開聞岳と南国の土地が印象的な指宿~枕崎

に分けられます。

以下、2020年9月中旬の鹿児島中央から枕崎までの乗車記から、その魅力を探っていきましょう。

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鹿児島中央~指宿

快速や特急も設定されている

鹿児島中央付近は列車本数も多く、対向列車待ちをすることも多い。

指宿または山川までは普通列車が1時間毎に運転されており、さらには特急「指宿のたまて箱」や快速列車の設定もあります。
指宿や山川までの観光輸送や都市間輸送のまとまった需要があるのでしょう。

また短距離の区間運転の列車も鹿児島中央寄りに多数運行されています。
鹿児島市内は地理的に南北に細長く、周りはシラス台地に囲まれているため、東西に貫く鹿児島本線・日豊本線は市内をあまり通過しません。
そのため指宿枕崎線が鹿児島市内の地域輸送を担っています。
いずれにせよ、九州最南端のローカル線にしては立派なダイヤだといえます。

錦江湾沿いの車窓

鹿児島中央駅1番線から出発する枕崎行き普通列車。
鹿児島・日豊両本線の列車が発着するホームからは少し離れている。

指宿枕崎線の列車は鹿児島中央駅の隅にある1番線から出発しました。
平日午前10時発という中途半端な時間帯でしたが、車内はかなり混雑していて座ることもできませんでした。
よく日焼けして健康的な若者たちの薩摩弁を聞きながら市内部を走ります。
同じ南九州でも熊本なら「関東人が真似しているような関西弁」くらいでしたが、鹿児島ではまるでアクセントが異なり、話の内容が理解しづらいです。
しかし、車内が賑やかだったのは最初の15分だけ。
駅に停車するごとに人は減り、谷山駅を出たころには車内はかなり空いていました。

谷山駅とその付近は近代的

市街地が尽きる五位野駅からは海沿いを走ります。
後方ではうっすらと見える桜島が噴煙を上げています。
また船の姿も多く、場所や角度によっては遥か遠くの大隅半島も見えます。

それまで市街地に遮られていた桜島もよく見える

中名なかみょう喜入きいれの間には、半島のように突き出した埋め立て地に巨大な円形の石油タンクが整然と並んでいました。

どうもこの路線では線路脇の草木の手入れがあまりなされておらず、車体に枝がバチバチとぶつかっていきます。
列車の窓は開きますが、結構危ないので要注意です。
私も何度か鞭打ちされましたが、怪我するほどでないにせよ、やはり痛いです。

列車はほぼ海岸線に沿って進みます。
薩摩今和泉駅では列車交換のためしばらく停車したので外に出ると、温室植物園にいるように蒸し暑いです。

沿線には海沿いに松の木も並んでいますが、特徴的なのはシュロの木です。
このあたりのものは「南国ムードを醸し出すために植えました」というより、自然に群生しているように見受けられます。

砂蒸し温泉で有名な指宿駅の周辺はそこそこの市街地です。

観光の拠点でもある指宿駅
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指宿~枕崎

普通列車が6往復のみのダイヤに

山川を過ぎると一気に運転本数が減り、枕崎まで行く列車は普通列車が1日6本のみになります。
この区間は1960年~1963年にかけて開通しましたが、既に車社会への移行が進んでいた当時に、こんな閑散とした線区をよくぞ建設してくれたものです。

私は鹿児島中央を10時ごろに出る枕崎行きに乗りましたが、その前の枕崎行きのスジだと、鹿児島中央発は5時前発です。
明るいうちに全線乗れる列車は、私が乗った10時頃発かその2時間後の12時頃発でしょう。

次節でも紹介するように、車窓は今までよりもこちらの後半部分の方が優れていると私は思います。
それにもかかわらず、観光特急のはずの「指宿のたまて箱」がこの区間を走らないのは、おそらく沿線に観光地らしき施設もない(=金が落ちない)からでしょう。
結局、「地元の良さを感じる乗って楽しい列車」はツアーの観光バスと同じようなもので、通常の列車旅こそ味わいがあります。
余計なお世話であることを百も承知で書きますが、普通の観光客ならともかく、「乗り鉄」を自称する人でさえも、お仕着せの客寄せパンダに乗ることが鉄道旅行の醍醐味だと思っている人が多いのは非常に残念なことです。

JR最南端の西大山駅と開聞岳

指宿駅を出ると観光ホテルなどを見ながら海面よりやや高い位置を走ります。
やがて山川港を見下ろしながら列車も下り、山川駅に着きます。

山川港はなかなかの規模

山川駅を出てすぐにある山川トンネルが日本最南端のトンネルです。
そして大山駅を過ぎると左手正面に見事な円錐型をした開聞岳が見えてきます。
「薩摩富士」に違わぬ、正々堂々どっしりと構えた山容です。
鹿児島を出発した頃は曇り空でしたが、今では青空も覗いて、頂上以外は姿を見せてくれています。

おおらかな山に感心しているうちに、列車はJRで日本最南端の西大山駅に着きます。
長らく「日本最南端」でしたが、沖縄にモノレールが開業してからは「JR日本最南端」となりました。

この駅目当てに車で来る人もいるようで、近くには駐車場と土産物屋がありました。
全てがそうなのかは分かりませんが、私が乗った列車は乗客の記念撮影のために2分程停車してくれました。
発車する30秒くらい前になると汽笛を鳴らしてくれるのも、なかなか気の利いたサービスではありませんか。

こんなものを見せられると、また北海道に行きたくなる。

開聞岳の山裾を周りながら走るので、この先も東開聞駅くらいまでは左手に開聞岳がよく見えます。

とりあえず「イベント」は消化したので、車窓は見ながらも鹿児島中央駅で買った駅弁と地ビールを堪能します。
今回の駅弁「えびめし」は、鹿児島中央駅以外にも川内駅や出水駅でも販売されている名物弁当で、海老で炊いたご飯の上に食感の良い海老が載っています。

鹿児島中央駅・出水駅の駅弁、えびめし
鹿児島中央で買った駅弁、えびめし。
エビフライやさつま揚げなどサイドメニューも豊富。

また、有名な焼酎メーカーが作った地ビールの方は、香ばしさがない代わりにまろやかです。
変わった味だと思ってラベルを見ると原料がサツマイモのようで、「西欧のビールに対して、薩摩の真の地ビール」たらんとする決意が書かれています。
まるで19世紀後半のクラシック音楽における国民楽派(当時主に東欧に現れた、西欧偏重を改め自民族の文化を曲に取り入れる動き。)のようなことを言っています。

さて、車窓はというと入野駅から海が見えてきます。
海岸線沿いに走るというより、起伏のある台地から少し遠くに海を見おろす感じです。

ここからの車窓は単調ではありますが、ローカル線ムードに満ちた、のんびりとした心地よさがあります。

途中駅も木々の合間に申し訳なさそうに存在していて、廃線に残された駅かと見間違えそうです。

自然に埋もれつつある、何もない駅。
これもローカル線の醍醐味の一つである。

駅の間隔は2㎞ずつと短い割には沿線に住宅は少なく、ただただ畑や草地があり、南国風の檳榔樹びんろうじゅが生えています。
東南アジアの農園に来たような風景で、仮にここでバナナが栽培されていても驚きません。

白沢駅を出ると、再び畑の向こうに海が見えてきます。
広々とした原野をゆっくり走りながら、遮るもののない外洋を眺めるのは実に開放的な気分です。

やがて枕崎の市街と港が見えてくると、列車はトンネルで坂を下って終点の枕崎駅に到着です。
鹿児島中央駅から90㎞弱と、途中駅の多さと満足感の割には短い距離です。
所要時間は乗り換え無しで3時間弱でした。

枕崎駅は普通の小さな駅で、周りに特別なものがあるわけでもありませんが、やはり最南端の終着駅に来たという感慨は湧き上がってきます。
時間は平日の13時ごろでしたが、中年の男性が待合スペースで酒を飲んでいました。
長閑な駅です。

終着駅の情景を一番醸し出すのは車止め
稚内から3100㎞程度の距離。
意外と近いのだなと感じた。

ところで、鹿児島へ戻るには比較的すぐに出発してしまう折り返し列車に乗るのもありですが、ここからバスに乗って加世田を経由して鹿児島本線の伊集院駅に至る、鹿児島交通の旧・南薩鉄道のルートを辿るのもおすすめです。

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南の最果ての線路

指宿枕崎線の見所はといえば冒頭記した通り、桜島・開聞岳、あるいは西大山駅が挙げられるでしょう。

しかし、この路線の一番の魅力は、観光列車が足を踏み入れない指宿以降の、荒涼とした台地とその向こうに広がる外洋の風景にあります。
そこには北海道の宗谷本線や根室本線にも通じる、最果ての雰囲気が感じられます。
そして南国風の植物と強い日差しが、やはりここは南九州であることを教えてくれるのです。

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