北陸へ翔ける「しらさぎ」、681系とその時代【普通車・グリーン車の車内や座席など】

西日本の車両
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北陸本線の高速化の集大成「サンダーバード」

「雷鳥」の繁栄と発展

北陸本線は、日本海側の路線がどれもそうであるように、厳しい自然条件や気候のために線路の規格は低く、従って輸送力も低く抑えられていました。
しかし、1960年代には複線化・電化に伴い、北陸トンネル開通に代表される大幅な線路改良が行われました。

そして1964年、初の交直両用特急電車として「雷鳥」が運転を開始します。
大阪・京都と福井・金沢・富山といった北陸の主要都市を結ぶ「雷鳥」は以後急成長し、関西を代表する特急列車となります。
ちなみに、西の「雷鳥」に対して東では上越線「とき」も本数を増やしていきますが、絶滅危惧種の鳥の名前を付けた両特急列車が大繁殖することになりました。

出発を待つ「雷鳥」と(たぶん)筆者。
1993年大阪駅にて。

民営化後、JR西日本は同社にとって在来線特急で最も重要な路線である北陸本線特急のさらなるスピードアップのため、新型車両681系を製造します。
1992年に試作車が登場し、1995年から本格的に営業運転を開始します。
当初の列車名は「スーパー雷鳥(サンダーバード)」で、97年から「サンダーバード」と名乗ります。
それにしても「雷鳥」の新型車両が「サンダーバード」とは、いかにも英単語を習い始めた小中学生が考えそうな列車名です。

681系は湖西線や北陸トンネル内など、踏切がなく曲線も少ない区間では160㎞運転を行うことを目指していました。
とりあえずは全線で130㎞運転(485系でも湖西線などでは130㎞を出していた)を行い、大阪~金沢間の最速の所要時間は辛うじて一つの目安とされる2時間半を切りました。
ちなみに、国鉄民営化直後の「雷鳥」の同区間の所要時間が3時間弱でした。
また、681系は振り子式車両ではありませんが曲線通過速度も向上しており、緩いカーブでは通常の+25㎞と、旧式の振り子車両並みかそれ以上の性能です。

貫通型の正面。
窓下のラインの色は「しらさぎ」と「サンダーバード」で異なり、誤乗車を防いでいる。

北越急行の「はくたか」では160㎞運転を実現

さて、関西対北陸輸送では高速化によって鉄道はバスに対抗していましたが、東京対北陸となると相手は飛行機でした。
東京から上越新幹線で長岡まで行き、そこから新幹線連絡列車「かがやき」で富山・金沢に至るのが、かつての鉄道のメインルートでした。
お気づきかと思いますが、現在の北陸新幹線のエース列車の名前はこの特急列車から採られています。

ところが1997年に、上越線の六日町から信越本線の犀潟まで、北越急行ほくほく線が開業します。
この路線は世界屈指の豪雪地帯を走る単線の線区ではあるものの、近代的な雪対策を施した踏切のない高規格路線として建設されました。

これによって越後湯沢で上越新幹線と連絡して、681系(しばらくは485系の運用もあった)の「はくたか」が北越急行経由で北陸各都市へとアクセスするようになりました。
この時の北越急行線内での最高速度は「サンダーバード」より速い140㎞でしたが、問題がないことが確認されたことで10㎞ずつ引き上げられ、ついに本領発揮となる在来線最速の160㎞運転を開始しました。

1997年のほくほく線開業によって、東京から北陸への鉄道の主要ルートは長岡経由から越後湯沢経由へと移行した。

私も何度か160㎞運転の「はくたか」に乗ったことがありますが、何せ北越急行はトンネルが多いので、速さを確かめるのは難しかったです。
直江津(正確には犀潟)に近い区間はトンネルが少ないので外が見えますが、ロングレールの築堤(高架だったかもしれない)の上を飛ぶように滑らかに走るので、思ったほどスピード感は無かったのを覚えています。

683系の増備で「サンダーバード」運用は減少

2001年に681系の改良型である683系登場します。
新型車両の増備に伴い、「スーパー雷鳥」が「サンダーバード」になる形で廃止されました。
その後も683系は「しらさぎ」にも運用され、北陸本線での勢力を拡大。
数の上では兄貴分の681系を凌ぐほどになります。

早くて快適な「サンダーバード」が増発されますが、2001年より車両の増備は681系ではなく、新形式の683系で行われました。
683系は681系の改良版ともいえる車両ですが正面のデザインがやや異なり、カマキリのような目つきになりました。
また最高速度は130㎞にとどまり、当初「サンダーバード」が目指していた160㎞運転を諦めた格好となりました。
とにかく高速化にまい進した681系に対して、コスト・利便性なども含め総合的な完成度を以って製造されたのが683系です。

683系の勢力拡大は急速に進み、「しらさぎ」や「(スーパー)雷鳥」に使われていた485系を次々と置き換えていきました。
そんな中681系は「サンダーバード」の運用の大半を683系に任せ、160㎞運転を行う「はくたか」に専念するようになりました。

北陸新幹線金沢開業後は「しらさぎ」の運用

2015年3月に北陸新幹線の長野~金沢が開業。
「はくたか」は新幹線の準速達列車の名前に昇格し、「サンダーバード」は金沢止まりとなります。

「はくたか」の歴代車両たち。
新幹線開通直前の越後湯沢駅にて。

東京の人にとっては新幹線延伸によって北陸が近くなりましたが、大阪からだと金沢で「サンダーバード」から新幹線のシャトル列車「つるぎ」に乗り換えなければならなくなりました。
やはりこれは不評のようで、切符売り場の窓口で苦情を言われた駅員が「お客様からはよく、便利でなくなったとの声をいただいております。」と言って対応していたこともあったそうです。
北陸本線の金沢から先が第三セクター化されたことが要因でしょうが、それ以外にも豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」が廃止になるなどの影響があり、並行在来線の切り捨て政策が果たして旅客サービスとして適切かどうかは甚だ疑問です。

それはともかく、それまで「はくたか」に使われていた681系ですが、今度は主に「しらさぎ」に転用されています。
それによって余剰となった683系は直流専用に改造された上で289系と形式変更されました。

2024年北陸新幹線延伸で敦賀止まりに

2024年3月に北陸新幹線が敦賀駅まで開業。
これにより、「しらさぎ」も敦賀駅止まりに運転区間が短縮されます。
特に米原駅発着の便は、わずか46㎞を30分少々走るだけの列車となりました。
事実上の「つるぎリレー」と言っても大げさではありません。

新幹線開業後の敦賀駅にて
左が「サンダーバード」、右が「しらさぎ」

ところで東京から敦賀に行く場合、「かがやき」で直通するよりも東海道新幹線で米原まで行って「しらさぎ」に乗り換える方が速く、しかも安くなります。
例えば下り最速の「かがやき503号」は東京発7時20分、敦賀着10時28分ですが、東京7時33発の「ひかり633号」から米原で「しらさぎ3号」に乗り継ぐと、敦賀駅には1分早い10時27分に着きます。
距離が米原経由の方が80㎞以上短くなり、急勾配が多い北陸新幹線は速度が遅いことが要因です。
北陸新幹線によって活躍の場を狭められた「しらさぎ」にとっては、実に痛快なことでしょう。

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681系の車内

普通車の車内と座席

681系の普通車の車内
普通車の車内

普通車の車内は洗練されており、派手過ぎることもなく、かといって素っ気ない訳でもありません。
ビジネス利用でも観光利用でも快適に過ごすことができる内装だと思います。
座席の色は2種類あって、写真のピンク色の他にグレーの車両もあります。

681系の普通車の座席
普通車の座席

グリーン車の車内と座席

681系のグリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車は3列シートです。
座席の大きさや色、デッキへの扉も高級感がある雰囲気です。
窓の間にある柱についているライトがお洒落です。
こういうささやかで粋な演出は、個人的に品が感じられて好きです。

681系のグリーン車の座席
グリーン車の座席
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引退説

2020年代前半に車齢30年を迎える681系は、リニューアルされたとはいえ老朽化は進んでいるのは事実です。
ここで注目すべきなのは、2023年春に予定されている北陸新幹線の敦賀延伸です。

新快速直通によって京阪神が近くなった敦賀。
新幹線開通で首都圏とも結びつけられるか。

仮に敦賀延伸以降も「サンダーバード」や「しらさぎ」が短距離特急として残るにしても、これらの運転に必要な編成数は少なくなります。
転用する特急列車がある路線もJR西日本ではあまりないため、車齢の高い681系が廃車になり、残った683系でまかなうということも考えられます。

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総評

1990年代のJR西日本は、列車の高速化に熱心に取り組んでいました。
681系はやがて、より「成熟した」683系に主役の座は譲りますが、その683系とて681系あっての車両に違いありません。
また、683系を改造した289系はもちろん、287系も683系と似た部分が多いことからも、関西の在来線特急車両に多大な寄与をしたといっても過言ではありません。

発足してまだ日の浅かったJRにとって681系は、がむしゃらに希望に向かって突き進み、かつその後の人格形成(車両設計)にも影響を与えたという意味で、「JR西日本の青春時代の成果」として位置づけられるでしょう。

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