かがやきを放つ名脇役、E7系とその時代【グリーン車・グランクラスの車内や座席など】

新幹線車両

北陸新幹線は金沢延伸までは「長野新幹線」と呼ばれていましたが、本記事では正式名称である「北陸新幹線」で統一します。
またJR西日本が所有する編成はW7系と呼ばれますが、基本同じなので本記事では敢えて区別しません。

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E7系のプロフィール

熾烈だった東京対北陸の鉄道と航空機のシェア争い

1982年に上越新幹線が大宮まで暫定開業にこぎつけ、その後も240㎞運転を開始したり都心に足を延ばすようになってからは、東京から新潟までの所要時間は1時間台となり、航空機の出る幕はほぼなくなりました。

一方北陸地方となると新幹線から在来線特急に乗り換える必要があり、鉄道と航空機は激しい競争をしていました。
かつての東京~北陸へのメインルートは上越新幹線の長岡から特急「かがやき」で直江津・富山・金沢に至る乗継でした。
当時の上越新幹線「あさひ」も「かがやき」も、途中停車駅を極力減らして速達性を重視していましたが、「あさひ」に至っては200系にもかかわらず一部列車では下り勾配を使って275㎞運転を行っていました。
もっともこれはドーピングによる参考記録であり、一般には200系の最高速度は240㎞です。

大宮の鉄道博物館に展示されている200系新幹線。

1997年に北越急行が開業すると、今度は越後湯沢から「はくたか」への乗り継ぎとなりました。
北越急行は高規格路線として建設され、「はくたか」は在来線最速となる160㎞運転(当初は140㎞)を行いました。
それでも金沢までは乗り換えが必要で、所要時間は最速でも4時間弱が限界でした。

北越急行683系「はくたか」
新幹線に昇格する直前の683系「はくたか」。
越後湯沢駅にて。

そして2015年3月、北陸新幹線が金沢までの開業を果たします。
E7系はその前年の2014年よりそれまでE2系で運転されていた「あさま」の一部で運用を開始しました。
北陸新幹線の列車名は、従来通りの長野行きが「あさま」、金沢行きの準速達型は「はくたか」、最速達型は「かがやき」と、新旧の在来線連絡特急が揃ったことになります。
「かがやき」の所要時間は東京~富山が2時間強、金沢までも2時間半程度で、航空機に対して有利になりました。

特急「はくたか」運転終了間際のポスター。
2015年越後湯沢駅にて。

「はくたか」「かがやき」の全列車がE7系で運用されました。
また富山から金沢止まりとなった大阪発の「サンダーバード」と連絡する短距離運転の「つるぎ」(金沢~富山)でも、一部の車両を閉め切って使われています。
もっとも「つるぎ」は新幹線の副作用そのもので、あまり有難くはない任務でしょう。

最高速度は275㎞

E7系の当初の最高速度は260㎞で、E5系のような車体傾斜機能も採用されていません。
その後上越新幹線で使用されるにあたり、2023年から275㎞運転を開始します。(後述)

北陸新幹線はその建設方式を巡って政治に翻弄された路線として知られています。
建設を巡っては当然ながら地方の費用負担が論争になりましたが、山岳地帯を通り、建設費も抑えているので急勾配や曲線が多いのが北陸新幹線の特徴です。
また東京から金沢の所要時間は現行の「かがやき」でも2時間半程度なので、そもそも高速性能を要求されていないです。

デザインは個性的

性能は抑えられている一方で車内の内装にはこだわりが感じられます。
コンセプトは「和の伝統文化」だとか「日本の先端技術」だとか、とってつけたようなありきたりな代物で、私も当初は全く期待していなかったのですが、実際に乗ってみると上品で洗練された車内空間でした。

空気抵抗をそれほど気にしなくても良いので、外観は最近の新幹線の中ではシンプルな形状です。
配色は青と茶色というJR西日本の新快速を思わせる落ち着いたものです。

ラインの配色はJR西日本の新快速を思わせる

上越新幹線もE7系で統一される

E2系に代わって今や北陸新幹線の全列車を担当するE7系ですが、上越新幹線でも徐々に勢力を拡大させています。
「とき」と「たにがわ」の一部で運用されていますが、時刻表のグランクラス(アテンダントのサービスは無し)のマークがあるので分かりやすいです。

2019年の台風による水没の被害でE7系の廃車が出てしまったので、増備計画に遅れは生じたものの、2021年10月にはE4系を置き換えました。
そして2023年3月のダイヤ改正では残りのE2系も置き換え、ここに上越新幹線の車両はE7系に統一されることになります。

この改正では、上越新幹線の最高速度は240㎞から275㎞に引き上げられました。
一時期200系が下り勾配を利用して無理やり出していた「参考記録」を除けば、ようやく上越新幹線も東海道新幹線に30年遅れること、275㎞時代を迎えるのです。
東京~新潟の最速「とき311号」(途中停車駅は大宮のみ)の所要時間は、7分短縮して1時間29分となりました。

とにかく、北陸・上越両新幹線を独占したE7系は、かつて武田信玄や上杉謙信も果たせなかった越後・信州完全制覇という偉業を成し遂げたのでした。

敦賀開業で福井県へ

2024年3月には北陸新幹線が敦賀駅まで延伸されます。
最短で東京・敦賀間は3時間8分、東京・福井間は3時間を切りました。
また「かがやき」や「はくたか」に前後する形で、「つるぎ」(富山~敦賀)が別途運転され、敦賀駅で大阪行き「サンダーバード」や名古屋行き「しらさぎ」と接続するようになりました。
それまで中途半端すぎる存在だった「つるぎ」も、大阪・名古屋指向の列車としての立場を固めたというべきでしょう。

直流電化され新快速も直通する敦賀は、もうほとんど関西圏です。
悲願の大阪直通まであと一息といったところですが、敦賀開業時点ではこの先のルートさえも決まっていない状況です。
日本海回りの東京・大阪間の新幹線が全通するのは、まだまだ先になりそうです。

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E7系の車内とサービス

普通車の車内と座席

E7系の普通車の車内
普通車の車内

普通車は赤と黒の座席に床と荷物棚が茶色という、なかなか渋い雰囲気です。
E7系の普通車で特筆すべきことは、各列ではなく各座席にコンセントが設置されていることです。
窓の外はあまり見ない(そもそもトンネル区間が長い)が仕事がしたいという人も、無理に窓側の座席を取る必要がなくなりました。

E7系の普通車の座席
普通車の座席

グリーン車の車内と座席

E7系のグリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車は荷物棚と客室のドアが茶色ですが、床のカーペットと座席は濃い青になっています。
肘掛けと座席の外縁の白が、より一層凛とした客室の表情を引き立てているように感じます。

座席はレッグレスト付きで、リクライニングすると座面も連動して動くようになっています。

E7系のグリーン車の座席
グリーン車の座席

車内販売やグランクラスの軽食・飲料サービスの有無について

E7系で運転される列車のうち、車内販売があるのは「かがやき」「はくたか」「とき」です。
それ以外の「あさま」「たにがわ」「つるぎ」にはありません。

次の章のグランクラス乗車記で詳しく述べますが、グランクラスのサービスにはアテンダントによる軽食・飲料のサービスが有るもの(A)と、無いもの(B)の2種類あります。
グランクラス(A)の営業は「かがやき」「はくたか」(長野発着便を除く)、(B)の営業は「とき」「あさま」「たにがわ」です。
「つるぎ」にはそもそもグランクラスの営業自体がありません。

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グランクラス乗車記

2020年2月に東京を朝出発する「はくたか」のグランクラスを利用しました。
以下その乗車レポートです。

グランクラスの車内と座席

グランクラスは床のカーペットと壁はワインレッド、天井と本革の座席は白というシックで高級感のある空間です。
荷物棚は航空機のようなカバー付きが採用されています。

新幹線の車体ながら横3列という贅沢な造りで、まさに一等車(昔の区分に当てはめるとグリーン車は二等車になる)の再来といえそうです。

アテンダントによるサービス

前述の通り、「はくたか」のグランクラスではアテンダントによる軽食・菓子や飲み物(アルコール有)のサービスが行われます。
その点でグランクラスはもはやグリーン車の延長上ではなく、新しい移動の価値を提供していると表現しても過言ではありません。

軽食はばら寿司(ちらし寿司のようなもの)で注文したドリンクは赤ワイン(国産ワインの産地としては有名な長野県塩尻産)でした。
菓子はほうじ茶のパウンドケーキとあられです。
ばら寿司はイクラやカニといった高級な食材が使われ、魚の酢漬けも上品な味ですが、感心したのは柚子の香り漂う蓮根でした。
こういうさりげない所に料理の格というものが現われるのです。

ばら寿司と塩尻産メルローの赤ワイン。
教科書的なマリアージュではないが、ワインはすっきりしていて違和感はなかった。
パウンドケーキとあられ。
グラスにはグランクラスのマークが付いている。

乗車直後と同様に目的地到着の10分前にもアテンダントの挨拶があり、飲み物を勧められ、下車時に見送られるなど、(クルーズトレインは知りませんが)今までの日本の鉄道にはなかった人的サービスのあふれる乗車でした。

グランクラス(B)はアテンダントのサービスが無い分料金も安いですが、せっかくですから極力サービス有のグランクラス(A)に乗りたいものです。

デッキのデザインも美しい

東京寄りのデッキ。
花びらが散っていく桜が表現されている。

客室前後のデッキには季節感のある沿線の風物が日本画風に描かれています。
特別な客室への大変粋な導入演出です。
そして誇らしげに重厚感のあるドアの前に立って自分の席に座りましょう。

先頭の金沢寄りのデッキ。
富山県の県鳥であるライチョウは冬の装いである。
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総評

E5系とは別の方向におけるE2系の後継車両という位置づけですが、八方美人のスタイルを改め、北陸・上越新幹線に特化して、内装デザインや各座席のコンセント設置などのサービス面を充実させた潔い車両です。
札幌延伸を見据え高速化が進む東北・北海道新幹線と、距離が短く線形も悪い北陸・上越新幹線との間の「格差」が、設計思想の異なるE5系とE7系によって鮮明になったといえます。

E7系には東北新幹線を320㎞で走るE5系やE6系のような高速性能や華やかさ、あるいは設計思想が似ているJR九州の800系のような派手さはありません。
しかし、険しい山々を貫き北陸へと新幹線網を切り開いたこの寡黙な武士は、その凛とした節度ある佇まいで新幹線の名脇役として今後も活躍してくれることでしょう。

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