【北陸新幹線敦賀経由】かがやき&サンダーバード乗り継ぎで東京から大阪へ

旅行記

2024年3月に北陸新幹線が金沢から敦賀(福井県)まで延伸しました。
敦賀には新快速も乗り入れるので、もはやそこは関西圏と言えます。

ということで2024年3月中旬、開業間もない金沢~敦賀の初乗りも兼ねて北陸新幹線「かがやき」と特急「サンダーバード」を敦賀で乗り継いで、東京駅から大阪駅まで日本海回りで辿ってみました。
本記事では、おすすめの座席や車窓、賢い切符の買い方や敦賀駅での乗り継ぎの所感などを、実際の乗車記と共にお伝えします。

青線が「かがやき」、赤線が「サンダーバード」
国土地理院の地図を加工して利用
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日本海回りで東京から大阪までの所要時間は最短で5時間弱

北陸新幹線経由で東京から大阪まで行く場合、新幹線の終着の敦賀から特急「サンダーバード」で大阪まで行きます。
東京から敦賀までの距離は約570㎞、敦賀から大阪まで約140㎞です。
所要時間は最速の北陸新幹線「かがやき」が3時間8分、敦賀から大阪までが約1時間20分です。
乗り継ぎが上手くいけば、東京から大阪まで所要時間が4時間40分台となります。

敦賀駅の乗り換えコンコース

ちなみに、東京から敦賀へは「かがやき」よりも、東海道新幹線で米原まで行って特急「しらさぎ」(敦賀~名古屋)に乗り換える方が速いです。
例えば最速「かがやき503号」だと東京発7時20分、敦賀着10時28分ですが、東京7時33分発の「ひかり633号」から米原で「しらさぎ3号」に乗り換えると、敦賀に10時27分に着きます。
新幹線延伸で活躍の場を狭められた「しらさぎ」にとっては、誠に痛快なことでしょう。

「東京駅で北陸新幹線に乗るフリ(目撃証言付き)をして、実際は東海道新幹線に乗り、敦賀駅(在来線ホームの方が出口に近い)近くで手早く事件を起こす…」というトリックを用いた推理小説が出るのも時間の問題でしょう。

ともかく、そんなわけで東京発の「かがやき」から「サンダーバード」「しらさぎ」への乗り継ぎはあまり考慮されていません。
特急が接続をするのは「つるぎ」(富山~敦賀)です。
つまり、敢えて日本海側を迂回するにしても、20分以内の乗り継ぎができるケースは1日に数回しかありません。

「かがやき」の車両は、今や上越・北陸新幹線の運用を独占したE7系
越後・信州の制覇という武田信玄と上杉謙信の夢は、令和時代を迎えて彼によってついに叶えられました。
「サンダーバード」に運用される車両は、JR西日本の683系
こちらは新幹線が開通する以前の「鳥の楽園」(鳥の名前を冠した列車が多かった)と呼ばれた北陸本線を、我が物顔で飛び交っていた電車です。

敢えて北陸新幹線経由で東京から大阪まで行く場合、普通に通しで切符を買うと約2万円かかります。
割引きっぷを買うためには「かがやき」はJR東日本の「えきねっと」、「サンダーバード」はJR西日本の「e5489」と、別々に買わなければなりません。
それぞれ最安の「トクだ値」や「WEB早特」で予約できれば、合計で15,000円程度にまで抑えられます。
また、東京発の場合「WEB早特」の切符は関東では受け取り出来ません。
敦賀駅の乗り換える際に発券する必要があるので気を付けてください。

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乗車記:「かがやき」は進行方向右側のA席がおすすめ

最速の「かがやき503号」に乗車

新幹線延伸の翌週の平日の朝、忙しい東京駅に「かがやき503号」が発車10分前に入線した。
「敦賀」の文字が実に新鮮でワクワクする。
7時40分に東京駅発。
この時点の乗車率は6割程度だった。

すぐに地下に潜り上野駅を通過。
大宮駅から乗る人が多く、8割~9割の席が埋まった。
この「かがやき503号」は「かがやき」の中でも特に速達タイプで時間帯も良いので、北陸新幹線で最も乗車率が高い列車だろう。
ここからようやく新幹線らしい走りを見せる区間になる。
加速しながら東北新幹線から分かれ、スピードが最高速度の時速275㎞になる頃には周りは畑が目立つようになっていた。
今日の関東平野は快晴である。

高崎駅を通過して上越新幹線と分かれると、いよいよ北陸新幹線区間となる。
かつて日本一の勾配区間だった碓氷峠もトンネルで通過する。
トンネルの途中で上りから下りに転じたことが、乗っていても重力変化で明確に感じられる。
ゆっくりと軽井沢駅を通過。
辺りはスキー場・ゴルフ場と落葉針葉樹だ。
依然として急な下り勾配が続き、新幹線より在来線に近いスピードで走る。

私は無意識に2列席の窓側のE席、つまり進行方向左側を予約してしまったが、北陸新幹線で車窓が良いのは右側である。
軽井沢を過ぎて浅間山や善光寺平の眺望も良く、後ほど海も見える。

8時37分に長野駅に停車。
降りた数の半分程度の客が乗って来て、依然として7~8割の乗車率だ。
ここで車掌が交代した。
大宮から1時間もしないうちに着いてしまっては、ここは信州というより関東外縁部と呼ぶべきかもしれない。

しばらく千曲川と善光寺平を右手に見ながら走る。
盆地が尽きて山腹のリンゴ畑が近づいてきたところでトンネルに入り、列車は北へ列島横断の行路を進む。
新幹線ならではのダイナミックな展開である。

しばらくトンネル区間が続くので「中座」しているうちに、上越妙高駅を通過してしまったようだった。
頚城平野の水田地帯をかすめるように走り去っていったはずである。

トンネルを抜けて糸魚川駅を通過する手前で、ついに右手には日本海が現れた。
ほんの1時間前の麗らかな関東平野とは対照的に、灰色の分厚い雲に押しつぶされそうな黒い海である。
夜行列車で北陸に向かっていた時代は目が覚めると北国だったが、新幹線の時代ではトイレで用を足しているうちに日本海側まで来てしまう。

さて、車窓は右側がおすすめと書いたが、ようやく左側にも見せ場が来た。
富山平野と立山連峰である。
雪解けで所々濡れた水田には屋敷林が点在し、その向こうにはまだ雪に閉ざされているであろうアルプスの山々が厳かに聳えている。
富山県の宝、立山の雪解け水を集落に届ける川の流れは速かった。
私はこの辺りが北陸の自然を感じられる車窓ハイライトだと思っている。

富山駅では降りる人より乗る人の方が多くて意外だった。
この列車の後を追う「つるぎ」は金沢始発だから、大阪や名古屋に行く人たちだろう。

木曽義仲の活躍で知られる古戦場の倶利伽羅峠をあっさりとトンネルで抜け、北陸三県で最大の都市、金沢に到着。
ここで多数の客が降りて車内はようやく空いた。
金沢へはビジネス・観光共に東京からの需要があるようで、北陸新幹線開業で最も恩恵を受けた都市だろう。

ここから先が新規開業区間である。
新しい線路を今までと同じ速度で走っているはずなのに、少し揺れが大きくなったのは気のせいだろうか?
相変わらず左手遠方は白山に連なる雪山で、右手には少しだけ海が見えた。
在来線(現・IRいしかわ鉄道)と違って高架を走るために眺望が良い。

陽が射してきた。
所々に苗を植えた田んぼが見られ、全体的に景色が明るくなってきたようだ。
加賀温泉駅と芦原温泉駅あわらおんせんの間で県境を越える。
富山県にも黒部宇奈月温泉駅があるから、北陸新幹線には各県に温泉駅があることになる。

九頭竜川を渡ると、県庁所在地の福井駅へ。
全列車が停車する割には小さかった。
周辺にはあちこちに恐竜のオブジェがあり、駅前のテラスでは新幹線を見学する人が沢山いた。
福井の人にしてみれば、ようやく新幹線がやってきて東京が近くなった。
もっとも大阪へは時間があまり変わらないのに乗り換えが必要になる。

また曇ってきた。
新規開業区間で唯一在来線と接続していない越前たけふ駅は、山の中にある小さな通過駅だった。
敦賀へ抜けるラストスパートは長さ約20㎞の新北陸トンネルである。
1962年に開通した現・ハピラインふくい線の北陸トンネル(13,870m)は在来線最長のトンネル(青函トンネル除く)だが、そんな近代化の象徴たる北陸トンネルとて今は「旧街道」となった。

これまでの北陸本線の60年に思いを馳せながらじっと乗っていると、やがて車内チャイムが鳴り終着の敦賀駅に着いた。
大阪行き「サンダーバード」とは16分の乗り換え時間がある。

敦賀駅での新幹線と特急の乗り換えは8分でも余裕あり

敦賀駅の新幹線ホームは驚くほど高かった。
地方の中小都市でこれほど高いのも珍しい。
おかげでホームからは街の北側の敦賀湾を見渡すことができた。
乗り換えで殺気立つ人もいるかもしれないが、この景色を見逃すのは勿体ないと思う。
後日外から駅を見ると、巨大な半導体工場か何かのようだった。

右の最上層が新幹線ホーム

車内放送でも敦賀駅の乗り換えについて、あいにく過保護に案内していた。
JR側も特に新幹線「つるぎ」と特急の乗り継ぎに相当神経を使っているようだ。
結論としては、足が不自由等の事情が無ければ乗り換え時間8分(最短の場合)というのは、心配するほどタイトな時間でもなかった。
案内に沿って歩いて行けばいいので、道に迷うこともないだろう。

私の場合、敦賀駅に到着してホーム端まで行って写真を撮り、予約した「サンダーバード」の切符を受け取り、コンビニで地酒を買ってから「サンダーバード」のホームに着くまでに10分を要した。
ただし、敦賀駅で切符受け取りが必要なのは東京方面からの「かがやき」と「サンダーバード」の割引きっぷを個別に購入するような特殊なケースで、「かがやき」の場合は乗り換え時間に余裕がある。
よって、普通に乗り換える限り時間が8分でも、よほど混んでいなければ買い物をするくらいはできそうだ。

湖西線運転見合わせのため米原経由になった「サンダーバード16号」

特急のホームには大阪行き「サンダーバード」と名古屋行き「しらさぎ」が並んでいる。
窓下のラインの色以外は見た目がほとんど同じなので誤乗車のないように。
それにしても三大都市の東京・大阪・名古屋行きの列車が勢ぞろいする駅は他にあるだろうか?
敦賀はまさに交通の結節点となった。
ついでに戦前のウラジオストク航路も再開して欲しいのだが…
それはともかく、「サンダーバード」と「しらさぎ」は2024年3月より全席指定となったので注意されたい。

左が「サンダーバード」、右が「しらさぎ」

駅で買った地酒は新幹線や福井名物が描かれた、開業祝のパッケージだった。
300mlで930円と価格設定もなかなか強気である。
北国らしい綺麗な辛口で、ほのかな甘みも感じる。
「サンダーバード16号」の乗客は外国人旅行客が多い。
たしかに京都を思わせる雅な雰囲気のある金沢は、彼らにとって魅力的だろう。

「かがやき503号」の後を追う「つるぎ15号」からの乗り換え客も続々と到着し、まもなく出発時間というところで、「湖西線が強風のため運転見合わせ。米原経由で迂回するために乗務員手配中」とのアナウンスが入った。
結局定刻の10時44分から23分遅れ、11時7分に発車。
直前に駆け込んできた人がいた。
おそらく11時2分に敦賀に着く「つるぎ17号」の客が、11時18分に出発する1本後の「サンダーバード18号」と間違えて乗ってしまったのだろう。
これは同情を禁じ得ない。

さて、「サンダーバード」の車窓は左側がおすすめだ。
琵琶湖が見えるし、敦賀出発後まもなく前方には敦賀湾も見える。

読者の皆さんは地図を思い浮かべながら「??」と感じただろうが、これは間違いではない。
北陸本線の敦賀の南寄りでは、米原方面への線路だけ上り勾配を緩和するためにループ線になっている。
そのループの途中で左手に市街地と敦賀湾が見えるのである。

2020年7月

今日左手に見えたのは琵琶湖ではなく伊吹山。
臨時ダイヤなのでノロノロ走る。
11時45分に米原駅に臨時停車した。
新大阪まで新幹線で急いで行く人のためにドアが開いたが、特急券は別途購入せよとのことだった。

湖西線からの琵琶湖の車窓

琵琶湖線の沿線では、どこから情報を嗅ぎ付けたのか、撮り鉄の姿が散見された。
並走する新快速を抜いたり抜かれたりしているうちに、京都駅の手前で信号待ちとなった。
なんと京都駅には30分前を走るはずの「サンダーバード14号」が停まっているらしい。
終着の大阪駅に着いたのは、予定の12時6分より1時間近く遅い13時2分だった。

予定通りなら東京駅から大阪駅まで4時間46分。
「直行便」よりも2時間以上遅いが、日本海回りで来たことを思うと感慨深いものがある。

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北の国近代化の集大成

雪が流れていた。まだ陽の射さない前の薄蒼い中に、雪の堆積はしっかりとふくれあがっていた。黒い木の線が、その中に埋ずもり、沈んだ屋根の下にとぼしい灯が洩れていた。どこかでは焚火をしていて、その火の色が鮮やかだった。空は曇っているらしく、すすけた灰色が閉ざしていた。
(これが北の国だった)

松本清張 ゼロの焦点

1950年代後半、東京から金沢へ向かう夜汽車の朝。
そこで描かれる北陸の風景は、我々がイメージする「裏日本」そのものです。
以降、北陸本線は北陸トンネルを筆頭に日本海側の地域では異例なほどの改良を重ね、その健気な印象を払拭していきました。

そして、今や東京を起点に越前の端まで3時間で結ばれたのです。
関西圏まで到達しようかという北陸新幹線と比べれば、「兄貴分」であるはずの上越新幹線などその支線のように思えます。
東京を発ってからあっという間に現れる、「ゼロの焦点」の時代とそう変わらないであろう北陸の風土を見る時、日本の広さと新幹線の速さに驚かされます。

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