車内販売付き快速ノサップ、花咲線の乗車記【車窓の左右や混雑傾向・絶景区間など】

ローカル線

花咲線は北海道の根室本線のうち、東端の釧路~根室間の路線愛称です。
花咲線の魅力は、道東ならではの雄大な車窓に尽きます。
特に、後ほど紹介する2つの絶景ポイントはよくポスターの写真に使われます。
この路線の内容を地理的に綺麗に区切るのは難しいので、途中の主要駅で距離的にも収まりが良い厚岸駅あっけし厚床駅あっとこを境に、第一パートから第三パートに分割して解説します。

赤線が花咲線。縦の黒線は厚岸駅・厚床駅のおよその位置
国土地理院の地図を加工して利用

2022年7月の土曜日に、釧路駅から根室駅まで快速「ノサップ」に乗車しました。
写真は2019年9月のものも使用しています。

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混雑していた快速「ノサップ」

快速「はなさき」と「ノサップ」が計3便。

根室本線も釧路から先の花咲線では特急列車の運転はなく、通しの列車は普通・快速の6往復のみとなります。
このうち快速列車は「はなさき」が1往復、「ノサップ」が下りのみ1便の計3便設定されています。
両列車の違いは停車駅パターンで、いずれも全席自由席です。
所要時間は普通列車で2時間半、快速列車で2時間10分~20分程度です。

花咲線の列車

花咲線の列車は1両編成の古いディーゼルカーで、座席は新しくなっていて快適なのですが、観光客の多い土日は混雑します。
特に釧路~厚岸、次いで厚床から根室にかけて乗客が増える傾向にあります。
また、日本最東端の東根室駅から記念乗車する団体ツアーも時々見かけます。
ちなみに、根室駅に着いたらすぐに折り返し列車に乗って釧路に帰る人もいると思いますが、その場合でも一旦下車して改札のために並ぶルールがあるので注意してください。

車内販売がある日も!

花咲線の一部列車では、沿線の企業による特産品の車内販売があります。
対象列車は下りの快速「ノサップ」と、上りの快速「はなさき」で、区間は厚床~根室(この間の所要時間は40分程度)です。
実施される日程は土日を中心に週1~2日のようですので、JR北海道のホームページで要確認です。

2021年から行われているようで、この年は11月まで車内販売があったようです。
北海道の特急列車では車内販売が廃止されていますが、快速列車でもこうした取り組みが行われているのはとても喜ばしいことです。

弁当・コーヒー・アイス・地酒と豊富なラインナップ

乗車記:車窓は右側がおすすめ。

土曜日11時頃の釧路駅ホームは小雨など意に介さぬように、「くしろ湿原ノロッコ号」と快速「ノサップ」の出発を前にして賑やかな雰囲気でした。
隣の一番線では特急「おおぞら」も停車していて、釧路駅が最も輝いている時間帯ではないでしょうか。

花咲線で車窓が綺麗なのは進行方向右側(根室行きの場合)です。
しかし、10分前に乗車した時は既に狙い目の右側の窓側座席は埋まり、辛うじて反対側の窓側を確保しました。
やはり観光客風の乗客が多く子供連れもいました。
そんな車内に迷い込んだように、ギャル風の地元民が私の近くの席に座っています。

釧路~厚岸:意外と山地が多い。厚岸駅の駅弁「かきめし」は電話予約で。

「ノロッコ号」を追うように、花咲線の列車も釧路駅を後にしました。
市街地と工場を背後に釧路川を渡ると東釧路駅に到着。
ここは釧網本線の分岐駅です。

釧路湿原の景色は釧網本線に任せて、一般的なイメージとは対照的に、花咲線は別保駅べっぽあたりからすぐに山地に入ります。
針葉樹林もあれば、地面にはシダ植物がびっしりと生えていて、まるで植物園のように多様な植生です。

釧路を出発して間もないですが、もうこの辺りは人の住む気配はほとんど感じられません。
ところで、列車が突然速度を落とし、その横を鹿が逃げていくことが時々あります。
花咲線は人よりも鹿を相手に商売した方が良さそうな気がします。

花咲線の列車より

尾幌駅おぼろからは平地になり、やがて厚岸湾が右手に見えると厚岸駅あっけしです。
赤い大きな厚岸大橋の向こうにも市街地が形成されています。
ここでかなりの数の乗客が下車して、空席も目立つようになりました。

花咲線に乗ったら是非味わいたいのが、厚岸駅の駅弁「かきめし」です。
牡蠣はもちろん、アサリやツブ貝も磯の香りを奏でてくれます。
「かきめし」を購入するためには厚岸駅で下車する必要はありません。
業者の氏家待合所に電話予約して名前と列車を伝えると、ホームまで持って来てくれます。

厚岸駅の駅弁「かきめし」
2019年に予約購入した厚岸駅の駅弁「かきめし」

厚岸~厚床:厚岸湖と湖岸の湿原は一つ目の絶景ハイライト

厚岸駅を出ると一つ目の絶景区間です。
右手には厚岸湖が静かに広がり、やがて湖岸の湿原の中を走ります。

湿原が途切れると、また原生林の山地にさしかかります。
厚岸駅と次の茶内駅ちゃないの距離は20㎞と新幹線並みです。

やがて起伏のある台地が開け、しばらくすると厚床駅あっとこに到着です。

厚床駅は民営化直後まで標津線しべつが分岐していた駅で、崩れ落ちて草生したホームにその面影を見ます。
ここからバスで旧中標津駅に行くことができます。

役目を終え体裁もかなぐり捨てたホームに夕日が注ぐ

厚床~根室:別当賀駅~落石駅は日本屈指の絶景区間

厚床駅から車内販売が乗り込んで来ました。
メニューを乗客一人一人に配っていくのですが、その間にもワゴンには人だかりができてスタッフは忙しそうでした。
私はまず別海べっかい町産のアイスクリームを買いました。
別海は旧標津しべつ線沿いにある酪農で有名な町です。
乳脂肪分が18%と普通のアイスよりも高く、濃醇でクリーミーな味わいは別海ならぬ別格です。
その後コーヒーや地酒も買いました。

さて、車窓はまた起伏のある牧場で、その向こうには海も見えます。
寝そべっている乳牛たちに感謝しつつ、アイスクリームを噛みしめながら味わいます。

列車は根室半島脊梁部のなだらかな台地の上を走ります。
この辺りの景色は本当に日本離れしています。
以前夕日に照らされながらここを通った時は、「遠き山に日は落ちて」の原曲で知られる、ドヴォルジャークの交響曲「新世界より」第二楽章のメロディーが自然と脳内を流れました。

参考:ドヴォルジャークは鉄道ファンでした。

別当賀駅べっとがを過ぎると半島の背骨が狭まり、荒涼とした原野を恐々と走ります。
自然条件が厳しく枯れ木も多いですが、ここではそれさえも美しく見えます。

そしてついに、二つ目の絶景ポイントです。
列車は海岸沿いの屈曲した崖の上に放り出されます。
太平洋と断崖が織りなすダイナミックな景色は、絶景に恵まれた北海道においてさえ、一大ハイライトと表現して間違いありません。

西和田駅を過ぎると左手の遥か遠方にも根室湾が望まれます。
つまり、数分のうちに太平洋とオホーツク海を両方見ることができるのです。

路線愛称名になった花咲港近くの漁村を過ぎ、日本最東端の東根室駅を通過します。
ここは終着の一つ手前にある無人駅です。

そのまま市街地を走り、西の方角を向いて終着根室駅に到着です。

ホームと線路が1つだけの駅で、終着駅ならではの風情があります。
釧路からさらに東へ、過酷な地に線路を敷いてまで根室に鉄道を開通させたのだと思うとなおさらです。

東根室駅は無人駅なので、根室駅が「最東端有人駅」となる
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東の最果て

北か東かの違いはあれど、最果てへの鉄路という点では、花咲線は宗谷本線と似ています。
しかし、駅舎が新しくなり、戦前は樺太(サハリン)航路と連絡していた稚内駅と比べると、根室駅にはもっと素朴なローカル線らしい趣があります。

根室では道路や街の案内表示でロシア文字をよく見ます。
領土問題を想起しつつも、異国情緒を感じていたのは2022年2月までのこと。
海を隔てた外国は30年前と同様に、はるか遠くの世界になってしまいました。

納沙布岬へは根室駅からバスで40分程度

線路が西を向いている根室駅に降り立つと、東の終着駅として逆説的でもありつつも象徴的でもあるような感慨を覚えます。

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