関西~九州間の夜行列車は、1960年代~70年代には特急・急行合わせて15往復以上運転されていましたが、2000年代には全廃され、長距離移動手段としての在来線の凋落を象徴する存在として記憶されています。
今やこの区間を鉄道で利用するには新幹線か、青春18きっぷなどで地道に普通列車で行くことになります。
もう寝台列車のような旅情を感じながら九州には行けないのでしょうか?
そう諦観する方にはフェリーの利用を是非とも勧めたいです。
関西九州間は複数の会社が大阪・神戸から九州各地に運行しており、夕方・夜発の朝着というとても便利なダイヤになっています。
マイカーがない場合は港までのアクセスが手間といえば手間ですが、それでもなお、夜行列車の代わりとして充分機能する輸送機関です。
どんな航路があるのか?
関西九州間で運行されているフェリーの路線・会社は以下の通りです。
- 大阪南港~北九州(新門司) 名門大洋フェリー 2往復
- 大阪(泉大津)・神戸(六甲アイランド)~北九州(新門司) 阪九フェリー 各1往復
- 神戸港~宮崎港 宮崎カーフェリー 1往復
- 大阪南港~別府観光港・志布志(鹿児島県) フェリーさんふらわあ 各1往復
- 神戸港(六甲アイランド)~大分港 フェリーさんふらわあ 1往復
です。
この区間はまさにフェリー銀座の様相を呈しています。
名門大洋フェリー乗船記
九州からの帰りに名門大洋フェリーを利用したので、その時の乗船記を紹介します。
新門司港へは無料送迎バスがある
新門司港へは公共交通機関はありませんが、船の出港時刻に合わせて無料の送迎バスが運行されています。小倉駅か門司駅の駅前から利用できます。
門司駅発は19時。所要時間は20分で出港が19時50分ですから、無駄な待ち時間が無く、時間を有効活用できます。
ツーリストクラスの様子
私が利用したツーリストクラスは、かつてのブルートレインの開放型B寝台に近いもので、相部屋にカーテン付き2段ベッドが並んでいます。
昔ながらの雑魚寝であるエコノミーの次に安い設備です。
プライバシーも大してなく高さも低いですが、乗船中ずっとここにいるわけでもないので、寝るための場所だと思えば苦にはならないでしょう。
各ベッドにコンセントが付いているのも助かります。
出港時の旅情を味わう
出港時刻になったら船室から出て看板に立ちましょう。
月に向かって勢いよく黒い煙を吐きながら動き出す船の大きさを改めて感じます。
ターミナル駅を発つ列車とも、離陸する飛行機とも違う、船旅ならではの旅立ちの情景がここにはあります。
フェリーは船内の共用設備が充実している
フェリーの大きな利点として、浴場・ロビー・展望スペースなどといった設備が充実していることが挙げられます。
特に移動しながらゆったりと風呂に入れるのはとても嬉しいですね。
私が船旅で個室よりもリーズナブルなベッドを好むのもこの点にあります。
列車とは違い、自分の座席・寝台に籠る必要はないのです。
また、フェリー利用客には旅好きな人も割といるので、船内で時刻表を見ていたら、見ず知らずの人と話が弾んだことも何度かありました。
バイキング形式のレストラン
名門大洋フェリーのレストランはバイキング形式です。会社によっては各品を注文するスタイルの所もあります。
特段美味しい、というわけでもありませんが、やはり船上での食事は寝台列車の食堂車がそうであったように、格別なものがあります。
食事代は普通チケットには含まれていません。
夕食が1550円、朝食が750円でアルコールは別です。
3つの橋の下を通過する
さて、瀬戸内海航路の見逃せないイベントは、来島海峡大橋・瀬戸大橋・明石海峡大橋の3つの橋の下を通過することです。
さすがに3回ともに立ち会うのは、翌日に支障をきたすでしょうが、せっかくですからどれか一つくらいは見ておきたいものです。
巨大な橋にゆっくりと近づいているように感じられますが、いざそばに来てみると、船は意外な速さでその下を潜り抜けていきます。
ネット予約で格安の料金で移動できる
各会社ともネットでの予約が可能で、割引料金も設定されています。
私が今回利用した名門大洋フェリーは競合他社と比べて運賃が安く、ネット割引も効くので格安で旅行することができます。
2番目に安いツーリストクラスで運賃は6460円と、B寝台と同じ値段です。
ちなみに、これは第2便の話で、少し早めの夕方に出港する1便はネット割引がさらに10%安くなり、朝食も無料(キャンペーンなので変更の可能性あり)です。
日本の旅にフェリーという選択を
宣伝のような見出しになってしまいましたが(もちろん利害関係は一切ありません)、日本から旅情が失われつつあることを嘆くだけでなく、島国日本ならではの船旅を楽しみましょう。
思えばはるか昔の、山陽本線が国有化される前の山陽鉄道の時代から、航路は鉄道の強力な競争相手でした。
山陽本線を走破する旅客列車が消えた今でも、天然の運河である瀬戸内海を通る船は重要な交通手段となっています。
雑魚寝のストイックな乗り物でも、金持ちの暇つぶしでもない、旅情溢れる快適で実用的な移動手段としてフェリーを有効活用してはいかかでしょうか。