孤軍奮闘する「サンライズ出雲・瀬戸」285系とその時代【個室・設備・性能について】

西日本の車両
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新しい寝台特急電車

ブルートレインの没落

初代ブルートレイン、20系客車は「走るホテル」と呼ばれた。
大宮の鉄道博物館にて。

青く連なる客車を機関車が牽く「ブルートレイン」の歴史は、1958年に東京~博多間の特急「あさかぜ」に新型車両の20系が投入された時より始まりました。
その後も運転区間を拡大し長距離移動に欠かせない存在になった寝台特急でしたが、1970年代後半以降は、新幹線の高速化や航空機の大衆化、そして全国に格安のビジネスホテルが展開されたことによって、その存在意義は薄れていきました。
バブル景気と呼ばれた1980年代後半から90年代初頭には、一部列車の編成のグレードアップやシャワー室の設置などが行われるものの、景気が停滞すると食堂車が休止されたり、そもそも列車自体が廃止される列車が相次ぎます。

そうした中、衰退が明白となっていた寝台特急の新型車両として、1998年に登場したのが285系です。

「サンライズ出雲・瀬戸」で運転

暖色系の配色に二階建て構造の車体

285系は、距離・所要時間が妥当で従来の「瀬戸」「出雲」の運転実績があり、かつ新幹線・航空機との競合が少ない東京~高松(サンライズ瀬戸)と東京~出雲市(サンライズ出雲)の2区間で運用されています。
両列車は岡山まで並走し、同駅で切り離された後、各目的地に向かいます。(下りの場合)

床面積を増やすために多くの車両が2階建てが採用され、内装はあたたかみのある木目調となっています。
また、時代遅れとなっていた開放寝台を廃止し、個室寝台主体(それ以外では寝台料金不要の「ノビノビ座席」がある)の編成です。

そして、それまで主流だった機関車に索引される客車ではなく、583系と同じ電車方式が採用されました。
もっとも583系は夜は寝台特急として、昼は普通の在来線特急として24時間営業するために電車となっていましたが、285系は夜行列車専用として設計されています。

高度経済成長期に24時間働いた企業戦士、583系。
九州鉄道記念館にて。

なお岡山駅には6時27分に到着するので、そこから新幹線を乗り継いで九州まで行くという非常に利便性の高い使い方もできます。
岡山6時51分発の「みずほ601号」だと、広島7時25分着、博多8時28分着、熊本9時02分着、そして鹿児島中央には9時46分に着きます。(ダイヤはいずれも2020年3月号の時刻表を参照。)

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車内設備・サービス

サンライズの特徴は一人用個室寝台のバリエーションが多いことです。
比較的早くに埋まってしまうのが最上級の「シングルデラックス」と、寝台料金不要の「ノビノビ座席」です。
一方で最後まで売れ残っていることが多いのが「シングル」です。

シングルデラックス

285系シングルデラックス
シングルデラックスの室内。
大型机と洗面台が備わる。

この車両で最上級の設備で、2階部分にあります。
寝台料金は13,980円。

椅子とテーブルに洗面台も付いており、室内は広々としています。

かつてのブルートレインにも同じ名前の個室がありましたが、部屋の広さだけなら昔の「シングルデラックス」はおろか、「北斗星」などにあった「ロイヤル」にも匹敵します。
利用客にはシャワーカードが無料で配られ、専用のシャワールームを使うことができます。

なるべく乗車時間の長い区間で利用したいですね。
サンライズ出雲ならゆっくりと伯備線の景色を眺める時間があります。
一方サンライズ瀬戸だと瀬戸大橋は綺麗ですが、終点高松まででも少し時間が短く感じられるかもしれません。

サンライズ瀬戸は多客期に高松から琴平まで延長運転します。
往復する宇多津・高松間の往復は含めずに運賃計算されるので、お得に長時間乗ることができます。

数が少なく人気もあるので、予約が取りにくい設備として知られています。

285系シングルデラックス
シングルデラックスのベッド

シングルツイン

一人用でも二人用でも利用できる個室です。
寝台料金は一人用で9,600円、二人用では計15,100円。

2段ベッドが備えられていて、下段ベッドは二人用の向かい合わせの座席としても使用できます。

一人用では荷物がとても大きい時などに真価を発揮しそうです。

シングル

285系シングル
シングルの室内

最も数が多い標準的な設備です。
寝台料金は7,700円。

室内は広いとはいえませんが、寝台の横に荷物を置けるスペースもあり、窮屈な感じはあまりしません。

本や弁当、パソコンも置ける机もあるため、不便なく利用できる機能的な個室という感じです。
次に紹介するソロはこのシングルより1000円程度安いですが、私だったらソロかシングルか迷ったらシングルにします。

ソロ

285系ソロ
ソロはシングル比べて狭い

個室寝台の中では最も安いです。
寝台料金は6,600円。

シングルと比較すると、室内は圧迫感があり狭く感じられます。

また荷物を置くスペースがほとんどなく(特に下段)、中型以上のスーツケースを持ち込む場合は置き場に困ります。

もっともコンセントはあるので、荷物も少なく寝るだけと割り切ればリーズナブルで利用価値が高い設備でしょう。

サンライズツイン

二人用の個室です。
寝台料金は計15,400円です。一人当たり換算するとシングルと同じ料金になります。

シングルデラックスの階下に位置しています。
シングルツインが2段ベッドなのに対して、こちらはツインベッドが並んでいます。

ノビノビ座席

285系ノビノビ座席
ノビノビ座席の上段

寝台料金不要でその代わり指定席券だけで利用できる設備です。

フェリーの雑魚寝に近いですが、頭の部分には仕切りがあります。
コンセントが車両に数か所しかないので、スマホの充電は満足にできないと思われます。
掛け布団はありますが、枕などはなく床も硬いです。

疲れてもいいから、とにかく安く移動したい人向けです。

285系ノビノビ座席

車内販売はない

かつては一部区間で車内販売が行われていましたが、現在では廃止されています。
飲み物が買える自動販売機が一応ありますが、乗車前に必要なものを準備しておくのが望ましいです。

特にサンライズ出雲の場合、下りの終着出雲市駅到着が10時近くなので、翌朝の朝食もお忘れなく。
岡山駅の停車中(7分間)に買うのは、不可能ではありませんがリスキーです。

シャワー室とミニラウンジ

共用設備としては、3、10号車にシャワー室とミニラウンジがあります。
飛行機や新幹線には真似できない、鉄道ならではの設備です。

シャワー室は券売機からシャワーカード(330円)を購入することで利用できますが、数に限りがあるので早々に売り切れてしまうこともあります。早めに買っておきましょう。
60秒の間お湯が出るシステムで、任意のタイミングで止めることができます。

ミニラウンジは談笑したり食事するときに便利です。窓に面した椅子が8つ設けられています。
だいたい二・三人のグループが利用しており、一人客はあまりいません。
ここも取り合いになるので、乗車したら早めに確保しましょう。
もちろん貴重品には注意が必要ですが。

285系ミニラウンジ
ミニラウンジ
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性能としてはサンライズは俊足の電車ではない

電車化によってスピードアップした」と宣伝される285系ですが、これはあくまで機関車索引の客車列車と比べた時の話であって、他の特急用電車と比較するとかなり遅いです。

車両の速さの指標に「速度種別」があります。
これは上り勾配10‰における最高速度で表されますが、285系は105㎞。
特急用車両だと国鉄型車両でも120㎞を超えているのが普通です。
客車だと80㎞程度なので、実力としては特急電車と客車の中間くらいです。

また2階建てで車体が重いので曲線通過速度も低いです。
はっきりとしたことは分かりませんが、私が線路縦断面図とGPSの速度計測アプリを照らし合わせたところ、カーブではほぼ本則通りの速度でした。
特急車両なら車体傾斜しなくても15㎞以上本則にプラスした速度で通過しますが、285系は客車列車と同じくらいの曲線通過速度だと思われます。

実際、民営化直後の1987年4月の時刻表だと、下りの客車列車による「みずほ」が東京から大阪まで6時間44分で結んでいます。
サンライズだと同区間は6時間27分(大阪駅は運転停車)でそれほど変わりません。

また線形の悪い伯備線(倉敷~米子)では約 2時間15分かかっていますが、これは停車駅がより多い国鉄型振子車両の381系の平均より15分程度遅いです。

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後継車両は結局現れず

寝台特急の巻き返しが期待されましたが、後継車両の計画はなく、最後の寝台特急車両となりそうです。
ニッチな区間に参入してそれなりの成果は挙げたものの、臨時列車として「サンライズ瀬戸」が琴平や松山に延長されたり、広島・下関行きの「サンライズゆめ」が運転された以外は発展はありませんでした。

東京22時発の定期列車の発車と同時に入線する臨時のサンライズ出雲
東京22時発の定期列車の発車と同時に入線する臨時の「サンライズ出雲」。
こちらは7両編成で出雲行きのみ。

また昼間東京で15時間近く暇を持て余す運用効率の悪さも指摘されています。
夜行列車用として開発されたため、583系のように昼間の列車に使うというのは難しく、運用効率を上げるとなると東京~下関のように長い距離を走る列車として運転するしかありませんが、そうなると飛行機や新幹線との競合が問題となります。

夜行列車の起死回生とまではいきませんでしたが、カシオペア用のE26系と同じく車内設備やコンセプトは優れており、寝台列車のあり方に一石を投じた名車であることには間違いありません。

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