二代目Maxとして登場
16両での定員は1634人
1994年に登場したE1 系は、当時増えつつあった近距離の新幹線通勤輸送の着席機会向上のために、12両編成の全車両が二階建てとして制作されました。
そして1997年、このオール二階建てという特徴を引き継いで、さらに発展させたのがE4系です。
E1系より短い8両編成となったものの、2編成16両で運用可能で、その時の定員は1634人と高速鉄道では世界最大です。
需要に合わせた編成数で運行できるだけでなく、他の車種とも併結できる柔軟さも特徴で、とりわけミニ新幹線の後ろをオール二階建て新幹線がついていく姿はなかなか可笑しいものでした。
なお愛称は「Max」で「Multi Amenity Express」の頭文字とも解説されますが、おそらくこじつけでしょう。
巨体とは裏腹に、先頭部の曲線的な形状と戦闘機のようなキャノピー型の運転席窓、そして柔らかい表情の垂れ目がとても特徴的です。
その輸送力の大きさを活かして「Maxなすの」などで運用されますが、私が子供の頃時刻表を眺めていた記憶では、長距離輸送も担うであろう速達タイプの「Maxやまびこ」も設定されていました。
大量輸送のための「通勤車両」として誕生したといっても、実際の運用は幅広い列車で行われていたようです。
やはり二階建て車両というのはそれだけで魅力的に映るものです。
最高速度は240㎞
最高速度は240㎞。
とにもかくにも定員増を最優先にした設計のため、先輩のE2系やE3系よりもスピードでは劣ります。
ちなみにE4系と同じオール二階建てを採用したフランスのTGV-Dは、前後に機関車を連結したプッシュプル方式で320㎞運転可能という驚異的な編成です。
なお一部の編成は急勾配や異なる周波数に対応していますが、基本的にE4系は北陸新幹線には乗り入れできません。
東北新幹線からは撤退し、上越新幹線で運用される
東北新幹線は新青森まで全線開通した2010年以降、高速化が大きく進展します。
2011年には次世代車両のE5系が投入され最高速度も引き上げられていく中、240㎞までしか出せないE4系はダイヤの足かせとなっていきました。
そのため2012年には東北新幹線から撤退し、先輩のE1系に代わって上越新幹線に活躍の場を見出します。
その後車体の塗装が変更され、真ん中のラインが黄色からピンク色になりました。
また車体側面には朱鷺のイラストが描かれ、上越新幹線らしい車両となりました。
しかし上越新幹線においてもE7系の増備が進んでおり、E4系の引退が現実的に予定されています。(後述)
E4系の車内・サービス
普通車指定席の座席と車内
1階と2階のどちらも2+3列の座席ですが、座席のモケットと天井の配色が異なるので、車内の雰囲気は印象が異なります。
1階席は落ち着いた雰囲気である一方、2階席は明るく開放的な感じがします。
2階建て車両なので仕方がありませんが、やはり天井が低い分、圧迫感は多少感じます。
私個人の感想では1階席の方が車内の雰囲気は好きですが、とはいっても2階席の眺望の良さも捨てがたいものです。
ちなみにではありまですが、1階席の窓側は男性ばかりかと思っておりましたが(理由は自明な故に、敢えて書きません)、実際私が乗った時はそうでもなかったです。
グリーン車の座席と車内
通路を挟んで両側2列の大型座席が並んでいます。
レッグレスト付きで枕も上下に動きます。
全体的な車内の雰囲気としてはそこまで高級感を感じませんが、非常に掛け心地が良い秀逸なものです。
肘掛けの形状などもスタイリッシュとはいえないものの、シックな緑の配色も相まって、上質な移動を演出してくれます。
普通車自由席(2階)の座席と車内
ある意味で本形式の象徴的な存在といえるのが、普通車自由席の2階部分です。
通路を挟んで両側に3列の座席が並ぶ、6列シートになっています。
この座席はリクライニング機能なし。通路側以外は肘掛けもなし。
しかも3連1組の構造なので3列の誰かが座るなり姿勢を変えるなりすると、他の人にも振動が伝わってしまう代物です。
1960年代の特急の3等車と同じレベルといっても差し支えないでしょう。
なお自由席でも1階席は通常の5列シートです。
デッキとジャンプシート
客室へと続く螺旋階段の中心にあるのは、車内販売のワゴンが使うためのリフトです。
また床下のスペースが限られているため車体の連結部付近にも機器があり、デッキの通路が狭くなっているところもあります。
自由席として使われる1~3号車(16両編成の時は9~11号車も。以下同様にn号車と(n+8)号車は対応する)のデッキのドア近くにはジャンプシートがあります。
実際は「シート」と名乗るのもおこがましい、簡素な腰掛です。
満席の時にデッキに立つよりかはマシ、といういかにもMax車両らしい設備です。
車内販売について
E4系は「Maxとき」「Maxたにがわ」に運用されていますが、「Maxとき」のみ車内販売があります。
かつては売店での営業も行われていましたが、現在では車販準備室として使われているようです。
コンセント付きの座席はない
普通車・グリーン車を問わず、全ての設備・車両にコンセントは付いていません。
子供ならまだ携帯電話を持っていなかった時代に生まれた車両ですから仕方ないですが、E7系には全座席にコンセントが装備された今からすれば不便さは感じてしまいます。
どの車両・座席がおすすめなのか?
今まで見てきたとおり、E4系には様々な座席のバリエーションがありますが、「結局何号車のどの席が良いのか」という疑問に答えます。
自由席の2階なら4号車
2階席に座りたいけど座席指定はしていない、という場合は4号車が狙い目です。
4号車は本来指定席の車両ですが、列車によっては自由席で運転されます。
つまり自由席の2階席でも粗末な6列シートではなく、5列のリクライニングシートに座れるのです。
4号車が自由席になる列車は「Maxたにがわ」と一部の「Maxとき」ですが、日によっては指定席になるので確実なことは言えません。
フラットシートは穴場
2,4,6号車(つまり自由席・指定席両方ある)に車両端に狭い平屋の客室があります。
ここは階段を昇り降りせずに利用できるフラットシートという座席です。
平屋なので他の客室と比べて天井が高く、座席が3列しか並んでいない狭い独特な空間です。
「2階席ではなくフラットシートに乗るのがE4系通」という意見もちらほら聞かれます。
グリーン車は端の列にオットマンがある
グリーン車の最前列の座席にはオットマン(足載せ台)があります。
ただでさえ座り心地の良いE4系のグリーン車がさらに快適になります。
車端部は落ち着かないという人もいるかもしれませんが、ここまで付加価値のある座席なら検討の余地はあるでしょう。
運用は上越新幹線のみ。2020年度に引退予定だが延期か?
上越新幹線で「Maxとき」「Maxたにがわ」の列車名で運用されています。
しかし、JR東日本は上越新幹線の車両をE7系に統一すると発表していますが、E4系の置き換えが完了する2020年度には引退することになります。
出典: https://www.jreast.co.jp/press/2017/20170402.pdf
これによりオール二階建て新幹線、というより二階建て車両付き新幹線が全廃となります。
(2020年5月追記)
2019年の台風被害でE7系に廃車が発生してしまったために、E4系の引退は延期になると広く予想されています。
もっともこの件のソースといわれているのは新潟駅での「E4系の自己紹介」であり、JR東日本の公式発表が無いので詳細は分かりません。
(2020年10月追記)
ようやくJR東日本の公式見解でE4系の延命がアナウンスされました。
E4系の引退時期は2020年春から2020年秋ごろになるようです。
なお、E4系がE7系に置き換えられることで、やがて上越新幹線の最高速度は275㎞に引き上げられる予定です。
総評
E4系はスピードと快適性を犠牲にしてでも通勤客輸送のための座席数確保を第一命題とした車両でした。
その意味においてはいろいろ工夫された車両だといえます。
地価の値下がりや都心回帰によって新幹線通勤は一時のブームは去ったかもしれませんが、新幹線の定期利用がそこまで落ち込んでいるわけではなく、オール二階建て車両の存在価値はなくなったと判断するのは早計かと思われます。
JR東日本は在来線でもオール二階建ての215系を1992年に造って、通勤輸送に当たらせていましたが、乗り降りに時間がかかり主に通勤ライナーに運用が限定されてしまいました。
しかし、新幹線であればE2系かE3系程度に性能を上げれば活躍する余地はまだあるようにも感じられますが、E4系の後継車両は結局現れなかったことは残念です。