【首都圏から日帰りできる】怖い(?)階段があるモグラ駅、土合駅

東日本の駅

土合駅は上越線の谷川岳の登山口に近い駅です。
この駅の特徴は何と言っても、上下線のホームの高さが70Mほど離れており、下り線ホームへは長い階段で降りていくことです。

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土合駅途中下車記

下り線ホームに到着。かろうじて待合室とトイレがある。

トンネルの中にある土合駅下りホーム
トンネルの中にある土合駅下りホーム

上越線普通列車の乗換駅である水上駅から、約10分(2駅)で下り線の土合駅に到着です。

下り線のホームはトンネルの中にあり、外は真夏で30度越えにもかかわらず、ヒンヤリと寒くて驚きました。
こじんまりとした待合室と、男女別にすらなっていないトイレが無ければ、駅とは思えない空間です。

土合駅の下りホームの待合室
ホームの待合室

長い階段を昇る

土合駅の階段
462段の階段が待ち構える「日本一のモグラ駅」

下り線ホームは地下にあるので、出口までは長い階段を上っていきます。
もっとも標高はここでも500M以上あります。

谷川岳をトンネルで貫いている部分なので湧水が流れており、足元が濡れている所もあります。
ところで階段の脇に細い通路があるのですが、これはついに設置されなかったエスカレーターのための場所だそうです。おそらくこの駅はバリアフリー化工事はされないでしょう。

土合駅の階段
ここにエスカレーターができるはずだった

462段の階段を昇るとようやく地上に出ます。
ここで一息つきたいところですが、出口まではあともう少しだけ、川を跨ぐ古びた連絡通路を進む必要があります。

土合駅の連絡通路
階段を昇ったらあともう少し

通路の途中に三角形の衝立がありますが、これは風よけです。
列車通過時(特に新幹線開業前は優等列車が多数運行され、当駅を通過していた)トンネルからの突風をここで和らげる効果があります。

こんな遠くまで?」と思いますが、実際に下り普通列車がやって来た時も、到着する結構前からトンネルに風が生じていました。乗り遅れたかと勘違いしてしまいそうです。

土合駅の通路にある風よけ
通路にある風よけ

廃墟のような改札口

ついに出口に到着。
有人改札跡が残っている。

結局ホームから10分程度で駅の出口に到着します。

土合駅は無人駅ですが、出口では有人改札の跡が迎えてくれます。また、かつての切符売り場と思われる閉鎖された窓口もあり、駅が全体的に時間が止まったように古めかしいので、まるで廃駅のような雰囲気が漂っています。

土合駅の内部
駅の内部の様子
土合駅の伝言板
スマホ全盛の時代に伝言板??
窓口は閉鎖されている。

地上にある上り線ホームは改札口からそれほど離れていません。
駅舎は登山口らしく三角屋根が特徴的で、観光地のロープウェイ乗り場のようです。

土合駅上り線ホームから発車した列車
上り線から発車した列車
土合駅の駅舎
山岳観光地らしい駅舎

土合駅は本当に怖いのか?

さて、土合駅は階段・通路が怖いという感想が多くあるそうです。
私の意見は「状況によっては本当に恐ろしい」です。

私が訪れたのは8月の天気良好な土曜日の昼間。多くの人がこの駅を訪れており、階段を上りつめた光あふれる通路に着いた時には、知らない人たちの間で不思議な連帯感すら生まれた、賑やかな状況でした。

しかし、日も暮れて誰もいない場面で、水が流れ滴る音ばかりが聞こえる階段と、まるで何十年も前に廃校になった、蛾だらけの学校の渡り廊下のような連絡通路を通るのは、足腰だけでなく心臓にもなかなか負担のかかるイベントではないでしょうか。

土合駅の怖い通路
夜一人でここを歩くのはちょっと怖そう。
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なぜ上下線ホームが離れているのか?

「日本一のモグラ駅」として知られている土合駅ですが、どうしてこんな構造になっているのか?

それには上越線の複線化と土木技術の発達が関わっています。

上越線が単線で開通

上州と越後を結ぶ上越線が単線で開通したのは1931年、この当時は現在の上り線だけでした。
つまり土合駅は普通の山間にある地上駅で、モグラ駅では無かったのです。

ちなみに現在では信じられませんが、上越線開通前は関東から新潟に行くルートは信越本線(高崎~長野~直江津経由)でした。
上越線という名称に対して信越「本」線となっているところに、その歴史的正当性が表れています。

実際、今は廃止された信越本線の碓氷峠の66.7‰というとんでもない勾配と比較して、上越線は長さ9㎞の清水トンネルで抜け、勾配も20‰に抑えられています。
関連記事:SLや電気機関車の聖地、横川駅隣の碓氷峠鉄道文化むらの案内

上下線分離による複線化

さて、上越線が当時最先端の技術で建設されたといっても、それは昭和初期のこと。山に挑むためにループ線を駆使した遠回りでカーブも多い路線であることは否めません。

上越線上り土合~湯檜曾間のループ線
上越線上り土合~湯檜曾間のループ線。
約3分後に下に見えている線路を通る。

輸送力増強のため1967年に複線化されますが、その時に増設された現在の下り線は、より近代的な工法で建設されます。
上り線と違ってループでよじ登ることはせず、より緩い勾配でより長い(13.5㎞)新清水トンネルを使って上越国境を貫通したのです。
よって標高は上り線より低い位置を走ることになり、土合駅もトンネル内部にできたために、このような駅が出来上がったわけです。

土合駅の階段にある複線化記念
階段を昇った先に複線化された年月を示す石がある
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土合駅への行き方

列車で行くときの注意点

駅なんだから行き方も何も…」と言われそうですが、土合駅のある上越線水上~越後湯沢間は列車本数が非常に少ないです。
普通列車は基本1日6往復で、内1往復は多客期のみの運転です。 (青春18きっぷ使用可能期間はほぼ運転)

気の向くままに降りてみたけど次の列車が来るのは3時間以上後、ということもあり得るので、事前に計画はたてましょう。

水上駅からバスでも行ける

列車以外では水上駅、または新幹線の上毛高原駅から、谷川岳ロープウェイ駅行きのバスで土合駅前にアクセスする方法があります。

水上駅から上越線で土合駅に行き、モグラ駅(もちろん下り線ホームのこと)と階段を楽しんだ後でバスに乗るのも良いですが、このプランの欠点は上り線のループを堪能できないことです。

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今や観光スポットに

土合駅は日本一のモグラ駅

普通に考えれば相当不便な土合駅も、登山者だけでなく、そのユニークさに着目した人たちが集まる駅となっています。

複線化からさらに15年後、上越新幹線が開業し、長さ22㎞の大清水トンネルを200㎞以上のスピードで駆け抜けています。

上越国境の3つのルートは自然を克服せんとする鉄道の進化の歴史そのものであり、通過列車がほとんど無くなってしまった土合駅は、その象徴であるといえます。

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