鹿児島本線と長崎本線が接続する駅
外国製古レールが使われているホーム
鳥栖駅は九州の二大幹線である鹿児島本線と長崎本線が接続する鉄道の要衝で、長崎本線の始点でもあります。
鹿児島本線は約10㎞の短い区間で佐賀県を通りますが、ここ新幹線の新鳥栖駅も含めて鳥栖駅も佐賀県にあります。
この駅の特徴は駅舎が明治時代の建築されたもので、ホームの柱も19世紀に欧米から輸入されたものを使っているところです。
その重要性ゆえに駅の歴史も古いということがよく分かります。
駅構内で線路が曲がっているので、余計に風格というものを感じさせます。
駅弁・かしわうどんの売店がある
鳥栖駅のホームには駅弁売り場も兼ねた立ち食いうどんが健在です。
私が訪れた時は駅舎から一番遠い5・6番ホームのみ営業していました。
ここのうどん・そば全品に、かしわ(鶏肉のそぼろ)が入っています。
私は鳥栖駅の駅弁は2種類食べたことがあります。
一つ目は「かしわめし」。
直方駅のものが有名ですが、ここ中央軒のかしわめしも似た内容の弁当です。
大正時代から販売されているというから驚きです。
もう一つは「焼売(しゃおまい)」で、とてもシンプルな一品ですが、廉価ながら食べ応えがあっておすすめです。
こちらは戦後まもなく、長崎の中国人から教わって製造を始めたそうです。
さすがは中国文化を取り入れてきた長崎への始点となる鳥栖駅ではありませんか。
どちらの駅弁も鳥栖駅の古い歴史を感じさせるパッケージが旅情を誘います。
以上が鳥栖駅の二大看板駅弁ですが、この両方を味わいたいという贅沢な悩みに応えてくれるのが「焼売弁当」です。
やはり人気があるのか、私が昼過ぎに訪問した時には売り切れていました。
なお、改札口付近にも売店がありますが、やはりレトロなホームでうどんをすすったり駅弁を買う方が汽車旅気分も盛り上がるでしょう。
鳥栖駅の歴史を語るギャラリー
駅の外に出る前にもう一カ所見学すべき場所があります。
駅の内部から改札口に向かって右手にある地下通路に、「線路下のギャラリー」というものがあって、そこでは昔の鳥栖駅の写真が展示されています。
昔の白黒写真を見ると、鳥栖駅がいかに広大な施設だったかがよく分かります。
また各時代ごとの背景を説明したパネルもあり、暗くて狭い通路ながらとても楽しめます。
特に貨車の仕分け作業の様子や、職員が危険を冒して貨車に飛び乗る写真は、操車場自体が廃止された現在ではとても貴重なものです。
朝や夕方のラッシュ時なら分かりませんが、私が訪れたのは平日の昼間で、なおかつギャラリーのある方はメインの通路ではないのか、あまり人通りもなく落ち着いて見学ができました。
鉄道貨物全盛期を偲ばせる、広大な操車場跡
駅構内の見学を終えたら改札の外に出ましょう。
古くて立派な駅舎は明治時代に建てられたもので、内部も随所に当時の意匠が見られます。
近頃九州を中心に全国で広まった品性に欠けたる「レトロモダンごっこ」とは、醸し出す味わいが全く異なります。
駅を出て歩道橋で線路を渡ると、広場があります。
ここは、鳥栖操車場の跡地です。
昭和30年代以前の鉄道貨物全盛期には、この広大なスペースに貨車を行き先別に仕分けする操車場があり、九州の貨物輸送の拠点として機能していました。
広場に佇む小さなモニュメントだけが、そうした栄光の時代を静かに語っています。
また線路脇にはホームからも見える小型の蒸気機関車が保存されています。
鳥栖駅には蒸気機関車時代に転車台や機関庫などから成る巨大な設備を有しており、現在ここにある機関車はその鳥栖機関区で構内作業用に使われていたようです。
鉄道の黎明期と全盛期の記憶
九州には歴史を感じさせる駅がたくさんありますが、その古さだけでなく、路線の重要性・規模の大きさや駅弁の存在といった要素も加味すると、鳥栖駅は九州でも屈指の魅力を誇る駅ということになりましょう。
鳥栖駅に立ち寄る機会というのは、鹿児島本線から長崎本線の普通列車に乗り換える時くらいしかないでしょうが、博多駅からも近いので是非とも訪問して、九州の鉄道が、そして鳥栖駅がこの島にもたらしてきた発展を感じ取りたいものです。
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