【まるで廃墟】旧・成田空港駅、広くて怖い東成田駅の昔と今

東日本の駅

日本の玄関、成田空港。

近年は羽田空港も国際線の発着本数を増やしているとはいえ、成田空港が日本を代表する国際空港であることには間違いありません。

さて、その成田空港ですが、京成電鉄もJRも「空港第2ビル」と「成田空港」の2つの駅を共用しています。
実は成田空港にはもう一つの駅が、 人知れず ひっそりと存在するのをご存じですか?

それが今回紹介する「東成田」駅なのです。

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なぜ成田空港にこんな駅があるのか?

現・東成田駅は成田空港の開港と同じ年、1978年に「成田空港」駅として開業しています。

しかし、現・東成田駅は空港のターミナルと直結しているわけではありません。(当時の成田空港は第一ターミナルのみが存在)
そこには成田空港を巡る、紆余曲折の歴史があったのです。

成田空港の鉄道アクセス路線の歴史

当初、成田空港の鉄道アクセスを担う「本命」とみられていたのは、京成電鉄ではなく当時の国鉄(今のJR)でした。

空港アクセスのために、東京駅から空港までを結ぶ「成田新幹線」なる構想がありましたが、結局頓挫してしまいます。
沿線住民の反対運動が激しかったことや、騒音や公害などといった環境問題が批判の対象となったのが原因です。
また当時の状況を振り返れば、国鉄の財政悪化も一つの要因として考えられるのではないかと思います。

ところで、成田新幹線は計画ルートの一部が、成田スカイアクセス線(現在のスカイライナーが利用する路線)として実現しています。
また後に開通する、京葉線の東京駅とその付近も、成田新幹線の用地を活用しています。

京成電鉄が空港駅として利用開始

東成田駅外観
現在の東成田駅外観。
かつて人々はここからバスに乗り換え、海外に飛び立った。

国鉄の成田新幹線構想の目途が立たない中、いわば「プランB」として、京成電鉄による空港アクセス輸送が検討されます。
そして京成電鉄の京成成田駅から新線が建設され、「成田空港」駅がついに開業するのです。

とはいえ、空港ターミナル直下はひとまず国鉄の成田新幹線の駅として確保されていたので、京成の「成田空港」駅、つまり現在の東成田駅は中途半端なロケーションとなってしまいました。

駅名に「空港」がついているものの、ターミナルまでは連絡バスに乗り換えならず、さしずめ実質的には「成田空港前」駅でした。リムジンバスと比較して利便性は劣り、利用率も低かったといわれています。

本格的にターミナル乗り入れを機に「東成田」駅に降格

そんな悲しい歴史を背負って生まれた旧・成田空港駅ですが、1991年に転機が訪れます。
1980年代に計画自体は廃止されてしまった成田新幹線ですが、そのターミナル直下に確保した用地を利用して、京成及び国鉄から民営化されたJRが共用する、新しい空港駅が開業しました。
これが現在の「成田空港」駅です。
翌年には第2ターミナルが供用開始となり、「空港第2ビル」駅もやはり共用で開業します。

一方で、旧・成田空港駅は「東成田」に駅名を改め、現在に至るというわけです。

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国際空港駅としての面影を随所に残す東成田駅

まるで廃墟のような怖い駅

東成田駅ホーム
東成田駅。左手に見えるのが旧スカイライナー用ホーム。

現在使われている東成田駅は、地下にある1面2線の島式ホームを持つ駅です。
が、隣の暗い空間に非常灯で照らされた、もう一つのホームが見えます。
現在では使われていない、成田空港駅時代の有料特急「スカイライナー」用のホームです。

何より味わい深いのが、駅名標が「成田空港」のままとなっていることです。また広告や案内表示も当時(つまり70年代後半~90年代初頭)と同じです。
東成田駅そのものがあまり人の気配がなく、暗くて不気味な駅のホームですがしっかり観察しましょう。

東成田駅での成田空港の駅名標
駅名標は「成田空港」のまま

広いコンコースが当時を語る

東成田駅の広いコンコース
東成田駅の広く立派なコンコース

ホームの見学が済んだら、改札の外に出てコンコースに出ましょう。
この駅の閑散っぷりからは想像できないほど広くなっており、一応は空港駅として機能していた時代を忘れさせん、と主張しているかのようです。
私なんかは、鉄道が昔発達していて今は衰退した、一部の東欧の社会主義国のターミナル駅を思い出してしまいました。

東成田駅のかつてのスカイライナーの改札口
かつてのスカイライナー乗り場

かつて「スカイライナー」用の改札口(「自動化きっぷ入り口」という時代を感じる案内が確認できます。)があった区画は、仕切りで囲われて入れなくなっています。
また、当時営業していた喫茶店もそのまま放置されています。

因みに、立ち入り禁止区画の写真は隙間から撮影したものであり、不法侵入したわけではありません。

東成田駅出口にある看板
駅の出口にある看板

消しているようで完全には消えていない看板も、独特の情緒を醸し出しています。
また駅の周りも雑然とした雰囲気です。

なお、当駅は空港の敷地内にあるため、空港関係者が利用しているようです。我々が訪れた時間帯は平日の夕方前でしたが、警察犬の出勤風景に遭遇しました。

東成田駅への行き方

「行き方も何も電車で駅に行けばいいんだろ?」

と言われてしまいそうですが、もちろんそれも一つです。
では他の方法はというと、現成田空港からのアクセスが可能です。

  1. 成田空港第2ターミナルから徒歩で行く
  2. ターミナル間の無料シャトルバスで行く
東成田駅から空港第2ビル駅への通路
東成田駅から空港第2ビル駅への通路

この2つの方法があります。

1つ目に関しては、東成田駅は現成田空港駅と空港第2ビル駅の間に位置しており、 第2ターミナルと東成田駅との間には連絡通路があります。もっとも徒歩だと10分弱、それも無機質で狭く人も少ない通路ですから、ちょっとした冒険気分でしょうか。

第2ターミナル をよく利用する人も、まるでゲームの隠し部屋のような、東成田駅への通路があることなど知りもしない人が多いのではないでしょうか。

空港第2ビルから東成田駅への通路
空港第2ビルから東成田駅への通路。
普段意識していないと気付かないかもしれない。


無料シャトルバスは一部の系統が東成田駅を経由します
ちなみに成田空港のホームページのターミナル間シャトルバスのページには、東成田駅の存在は触れられていませんが、その程度のあつかいなのでしょうか。私も何度もシャトルバスを利用しましたが、この駅にも寄るとは知りませんでした。

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悲哀の歴史こそが東成田駅の魅力

東成田駅にある、初代AE形イラスト付きのスカイライナー入り口
「スカイライナー入り口」と書かれた看板。
初代のAE形のイラストも見える。

東成田駅は開業以来、ずっと損な役回りを演じてきました。

「成田空港」と名乗りながらも、アクセスの不便さにより不本意な成果しか出せず、いよいよ鉄道がターミナルに乗り入れるにあたり、今でも忘れられたように、まるで海底の貝のように地下に佇んでいます。

人によっては(私もそうですが)大変興味をそそられる駅です。
ですが、「昔の雰囲気が残る旧成田空港駅」として、アピールされたり商業化してしまうと、それはそれで残念な気もします。

「知る人ぞ知る、不運に見舞われた駅」として、インバウンド客で栄える空港のちょっと外れで、ずっとひっそりと存在して欲しい駅です。


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