直江津駅は新潟県上越市に位置する駅で、2015年の北陸新幹線延伸までは北日本において東西を分かつジャンクションとしての機能を果たしてきました。
そんな重要な意味を持ったこの駅は、今でもその面影を強く残しています。
2021年春には駅近くに「直江津D51レールパーク」が開園しました。
当記事は直江津駅とその周囲の見学とD51レールパークの訪問記の二本立てです。
北日本の東への入り口、直江津駅
長距離列車が発着した長いホーム
直江津駅に到着して感じるのは、この駅が醸し出すただならぬ風格です。
2015年に北陸新幹線が金沢まで延伸するまで北陸本線の終着駅であっただけでなく、長野から中部山岳地帯を横断してきた信越本線(旧信越本線・現妙高はねうまライン)が、この駅を境にその性質を変え、日本海縦貫線として北陸本線を受け継いで北東へ進路を変えるのが直江津駅です。
さらに、北越急行ほくほく線も事実上この駅を拠点としています。
つまり、直江津駅から富山・大阪(北陸本線)・長野・新潟(信越本線)さらには東京方面(北越急行から上越新幹線乗り継ぎ)へと列車が出発していったのです。
もちろん日本海沿いを走った寝台特急もこの駅を経由しました。
留置線も含めた駅構内の広さは、直江津駅が鉄道の要衝であることを雄弁に物語っています。
駅弁二大将軍に加え「にしんめし」が新登場
直江津駅では駅前のホテルハイマートが製造する駅弁がよく知られています。
このうち、「鱈めし」と「さけめし」は両方とも「駅弁大将軍」で優勝歴のある(2つ優勝した業者は他にないらしい)知る人ぞ知る実力派の名物駅弁です。
それぞれ魚の身とその魚卵の組み合わせで、見た目と材料は素朴なのですが、味の方はさすが大将軍と思わせられる逸品です。
「両方食べたいけどどちらを買えばいいか迷う」という方も心配は要りません。
「鱈めし」と「さけめし」の2つとも味わえる、その名も「二大将軍弁当」なる駅弁が販売されています。
地ビールと共に満喫したい。
さらに2021年春、親子シリーズ第三弾「にしんめし」が新たにラインナップに加わりました。
少し濃いめの味付けの弁当は、やはり期待を裏切らない旨さです。
ネイビーのスーツではありませんが、地元の希少な特産品でもない極ありふれた魚でこれだけ美味しい駅弁があるのですから、やはり定番というものは侮れません。
謙虚な販売員の方が「3つ目の優勝を狙っているんですよ。」と恥ずかしそうにおっしゃっていましたが、果たして「三大将軍弁当」は発売されるのでしょうか?
もっとも、発売したばかりなのに「直江津名物」を名乗るのは勇み足な気がしないでもないが...
普段は改札を入った所にも駅弁の売り場があるようですが、コロナの影響で当面は駅の北口を出た所にあるホテルハイマートの入り口で販売しています。
直江津学びの交流館にちょっとした鉄道の展示品あり
駅の北口から少し歩いた所に、「直江津学びの交流館」という公民館があります。
「鉄道のまち直江津」だけあって、1階エントランスホールの隅に、タブレットやサボ、写真などの鉄道関連の展示品があります。
数はそれほど多くありませんが、昔を懐かしみたい人やコレクション系が好きな人にとっては時間潰しにはちょうど良いと思います。
なお、エントランスホールは上越市民でなくても利用可能です。
参照:上越市ホームページ
SL乗車体験ができる直江津D51レールパーク
直江津D51レールパークは2021年4月下旬に開園した車両基地の一部を利用した施設で、鉄道博物館というよりはアミューズメントパークの部類に入ります。
直江津駅の南口(ホテルハイマートがある北口ではない方)から徒歩数分の所にあります。
注意すべきは、営業しているのは主に土日のみ(多客期は一部平日も)であるという点です。
詳しくはホームページを参照してください。
D51が牽く車掌車に乗る
この施設の目玉は何といっても、蒸気機関車D51(デゴイチ)が牽く車掌車に乗る体験ができることです。
1日4回運転され、事前に整理券をもらっておく必要があります。
時間になると扇形庫から蒸気機関車がゆっくりと出てきて、転車台で向きを変えます。
後ろ向きに車掌車に連結したのを見届けてから、我々もそれに乗り込みます。
車掌車は簡素なベンチが設置されており、まるで明治時代の鉄道黎明期のマッチ箱客車のような雰囲気でした。
いよいよ出発。ステンレス車体にカラフルな塗装が施された電車たちの合間を縫って、真っ黒の機関車と車掌車が直江津駅の自由通路付近まで走行し、同じ道を引き返します。
スピードは遅いですが、結構ガタガタ揺れて臨場感があります。
乗客が下車して蒸気機関車は扇形庫に戻りますが、その後清掃作業で煙室を開けてくれました。
SLを見る機会はあっても、内部を見るのは非常に貴重な体験です。
413系にはショップがある
ここでは国鉄時代の塗装に戻された413系の車内も見学できます。
飲食可能なので休憩室として利用できます。
413系は地方の都市圏輸送に使われた近郊型車両で、急行型車両の部品を再利用していました。
私は中学生くらいの時に北陸本線の普通列車でこの車両に乗りましたが、急行用の台車を履いていたためか、他の国鉄近郊型車両と比べて乗り心地が明らかに良かったのを覚えています。
車内は座席はもちろん、広告まで昔のまま残されています。
車内の一部はグッズショップになっていて、えちごトキめき鉄道オリジナルの珍しい品もあります。
せっかくですので地方鉄道を応援する気持ちも込めて、鉄道好きの知人用にお土産を買いました。
また、個人が書斎として使用していた車掌車があり、こちらも車内見学が可能です。
狭い車内は確かに自分一人の世界に閉じこもるには最高の環境ですが、ベンチがベッドくらいの大きさならば病室のようにも感じられるでしょう。
新潟県鉄道発祥の地
そのため、途中の直江津駅でキロポストが打ち切られていた。
新潟県の鉄道は1886年、直江津~関山(妙高はねうまライン、妙高高原駅の一つ直江津寄りの駅)の開業で幕を開けました。
旧信越本線の直江津以南は官設鉄道によって、中山道幹線(当初は東京~大阪の路線は東海道ではなく中山道経由が考えられていた)の建設資材輸送のために建設された経緯があります。
そのため、歴史的にみても鉄道との関わりの深さが感じられる駅です。
長距離輸送が新幹線に移行した現在では、この駅を発着するのは普通列車がほとんどで、長大なホームに短い編成の電車がちょこんと停車しているのは、時代の流れとともに違和感を感じます。
しかし、その電車たちも行き先によって車種や塗装が異なるため、今でも直江津駅の持つターミナル性を彼らなりに精一杯表現してくれているようで、そのいじらしさは微笑ましくもあります。
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