長万部駅で途中下車する
路線の明暗が分かれる駅
長万部駅は函館本線から室蘭本線が分岐する道南の駅です。
かつてはこの駅を通過する特急列車もありましたが、現在では全ての「スーパー北斗」が停車する、比較的大きな駅です。
青春18きっぷなどで普通列車を乗り継いで移動する場合には必ず下車することになります。
長万部駅から噴火湾沿いに室蘭・苫小牧方面に向かう室蘭本線は、大部分が複線化されていて特急列車も数多く走っています。
一方で、北の倶知安・小樽を通る函館本線(通称・ヤマ線)は札幌までの路線距離は室蘭経由よりも短いにもかかわらず、曲線や勾配が多いために臨時列車以外は特急の運行も無くなり、「本線」という名称とは裏腹に実態はローカル線となっています。
昔ながらの駅
おそらく駅の規模の割には町はあまり大きくないためか、駅が全体的に古い感じがします。
素っ気ない跨線橋もなぜか逆に魅力的に映えてしまいます。
改札口からホームまでは少しだけ離れており、改札を出ても駅には地元の観光案内を兼ねた小さなお土産屋さんがあるくらいです。
昔売店があったと思われるスペースも、現在はイスが並べられた待合所になっています(地方都市の駅でよくあるパターンです)。
総じてとりたてて印象的でもない、懐かしい感じの鉄道のジャンクションといった雰囲気の駅です。
長万部といえば駅弁「かなやのかにめし」
北海道のみならず全国でも有名な駅弁
長万部駅といえばかにめし。かにめしといえば長万部駅。
といってもよいくらい、長万部駅の「かなやのかにめし」は有名です。
「かにめし」と名の付く駅弁は全国にたくさんありますが、長万部のものは他のかにめしとは一線を画しています。
一般的な茹でた蟹のほぐし身とは違って、蟹を炒って香ばしさを引き出しているのが特徴で、独特の風味・香りがあります。
食感もフレッシュなものではなく、水分の少ないフワッとしています。
タケノコも蟹のフレークに添えられており、アシスタントとしてなかなか渋い活躍を見せてくれます。
地方の駅弁業者が次々と撤退する北海道にあって、さすがは全国区の駅弁ならではの、他にはない個性が感じられます。
「かなやのかにめし」はどこで買えるのか?
長万部駅では売っておらず(そもそも売店がない)、駅から徒歩2分程度の所にある、かなやの本店で買うことができます。
隣にかなやが経営する食堂がありますが、弁当を買えるのは駅弁直売所の方です。
鉄道利用者だけはなく、車で近くから来ているような客も結構沢山見かけました。
営業時間は8時~16時30分となっていますが、かにめしの完売を以て終了することもあるそうです。
ちなみに私が訪れたのは平日の14時ごろで、問題なくかにめしを買えました。
以前は特急列車の車内販売でも取り扱っていましたが、基本的に北海道では車内販売は廃止されているので、長万部駅で下車する必要があります。
その他では冷凍の弁当のネット通販や、道内の支店や催事イベントでも買えるそうです。
休憩所「自由席」で列車の旅気分で駅弁を味わえる
まるで列車に乗っているかのよう。
さて、駅弁の直売所には休憩所が併設されていますが、ここが大変ユニークな場所です。
「自由席」という名のこのスペースには、昔の客車列車の座席や網棚が並んでおり、列車の車内さながらの雰囲気となっています。
正面のスクリーンにはかにめしの製造過程の映像や、長万部から先の噴火湾沿いを走る室蘭本線の前面展望のビデオが流れています。
座席のテーブルは小さくてやや不便なのですが、まるで列車に揺られながら駅弁を食べているような気分になれます。
北海道新幹線開業で変わるか?
長万部駅は2031年春に開業予定の北海道新幹線の途中駅になる見込みです。
全ての列車が停車することはなさそうな気もしますが、札幌や本州と強く結びつけられるのは確実で、長万部駅や長万部町にとっては大きなチャンスといえるでしょう。
新しい高架式の駅になるようですが、現在の駅の風情が失われてしまうのは残念な気もします。