関空特急「はるか」、281系とその時代【普通車・グリーン車の車内など】

西日本の車両

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関西空港アクセス特急「はるか」

好対照な「はるか」と南海の「ラピート」

関西第二の空港として開港した関西空港へのアクセス列車として、1994年に登場したのが281系です。
関空アクセス特急は「はるか」と名付けられ、京都~関西空港で運転を開始しました。
運行ルートが特徴的で、新大阪から大阪駅を通らずに梅田貨物線を経由して大阪環状線・阪和線と走っていきます。

関空へのアクセス列車としては、南海電鉄も自社ターミナルの難波から「ラピート」の運転を開始します。
ラピートは「鉄人28号」の愛称もあるほど破天荒、かつ紺一色な外観が特徴の車両です。

南海電鉄「ラピート」

一方の「はるか」はその列車名もそうですが、白を基調にした車体や曲線美のある柔和な正面の表情は、女性的で繊細な印象となっています。

私の子供の頃の記憶では当初の話題性は圧倒的に南海のラピートに集中していたのですが、実際の利便性では「はるか」はラピートをはるかに上回りました。
やはりJRの路線網を活かしたアクセスの良さは強みで、特に国際観光都市である京都に乗り入れしたのは大きいです。
特に外国人にとっては安さや所要時間よりも、目的地に直通できる有難さは何にも代えがたいものです。
また「はるか」は新幹線に乗り継げる利点もあります。

天王寺駅にて
乗車した時はハローキティのラッピングが施されていた

競合する南海電鉄のラピートは、途中停車駅のない空港アクセスに特化した「ラピートα」と、停車駅が多く区間乗車も可能な「ラピートβ」が当初はそれぞれ1時間毎に運転されていましたが、2020年現在ではほとんどのラピートがβで、αの方も停車駅がやや増えています。

増備用編成271系がお見えするも…

2010年代には景気回復基調に加え、訪日外国人の数が大幅に増加したことで「はるか」の利用客数もそれに合わせて順調に推移します。
「爆買い」「インバウンド」の効果は首都だけにとどまらず、東京とはまた違った文化・魅力を持つ関西にも波及します。
特に京都ではオーバーツーリズム(過剰な観光客が訪れることによる公害)の弊害が強く認識される程でした。

2020年には東京オリンピックも控え、インバウンド需要の更なる高まりが予想される2010年代末に「はるか」の増結用の編成が製造されます。
基本の6両に対して増結用の編成は3両で、271系という新しい形式となりました。

281系は登場から25年経っていたために、新技術を盛り込んだ新形式としての登場でしたが、271系の外観は従来の281系と似ています。
塗装も281系に準じたもので、車体の形状やライトは「こうのとり」や「くろしお」で運用される287系を若干想起させます。
なお271系は全車普通車で構成され、グリーン車の設定はありません。

271系が運用を開始したのは2020年3月からでしたが、皮肉にもそれは新型コロナウィルス感染拡大の真っ只中でした。
当然のことながら「はるか」の利用客数も激減し、増結どころではありません。
結局デビューした翌月には「はるか」は6両編成に戻され、271系は早々と運用から外されるという不運を託ちます。
そして「はるか」は大半の便が運休に追い込まれました。

2022年以降は運転再開の流れ

2022年の6月になると、コロナ騒動のもとで無意味に敷かれていた令和の鎖国もようやく緩和の動きが始まり、運休が続いていた昼間の便の一部も同年7月から運行開始となります。

当初は期待されたインバウンド再開でしたが、その実態は先進国の標準には程遠いどころか、添乗員が監視する中でしか認められず、「北朝鮮型」と嘲笑の的になった外国人観光客受け入れ体制でした。
「はるか」にその恩恵が及ぶのはまだ先となりそうですが、とりあえず昼間の休業状態が解消されたのは復活への第一歩といえるでしょう。
参考:JR西日本の運転計画

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281系の車内

普通車の車内と座席

281系の普通車の車内
普通車の車内

外見と同様に落ち着いた雰囲気の車内です。
良くも悪くも普通の普通車です。

気になったのは座席の背面デーブルがなく、ひじ掛けに付いているテーブルも小さいことです。
海外出張で飛行機に乗る前にパソコンでひと作業、というのは難しそうです。

281系の普通車の座席
普通車の座席

空港アクセス列車なのでデッキには荷物置き場があります。
最近の列車では当たり前の設備なので、大型荷物を持った客が多いことを考えると、そのスペースと規格はむしろ小さく感じられます。

グリーン車の車内と座席

281系のグリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車の車内も普通車と同じような雰囲気ですが、車内も座席も大幅にグレードアップされています。
こちらは1+2列の座席配置です。

とても快適なのですが、やはりテーブルは肘掛け内蔵型の小さなもので、1990年代の車両なのでコンセントもありません。

281系のグリーン車の座席
グリーン車の座席

ところで、グリーン車の内装部分を差別化する際、首都圏のJR東日本では座席や壁の色調を濃くしたりして、コントラストをはっきりさせる傾向があります。
一方281系含むJR西日本のグリーン車では上質でどちらかと言うと繊細な内装が見られます。
このあたりは濃口醬油に代表される関東の味付けと、薄口醤油で素材の風味を大切にする関西料理との対比に通じるものがあります。

281系のグリーン車の車内
グリーン車の車内
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総評

やたらとインパクトのある空港アクセス列車の中にあって、281系はいかにも京都の風土が生み出した婉曲的な文化を体現しています。
大胆なデザインをあしらった見栄っ張りで、列車名も直接的な江戸っ子の「成田エクスプレス」と比べると、なお一層その特徴が現れています。

登場から25年以上経ち、設備面ではやや時代遅れな面もありますが、特にグリーン車の内装の上品さは陳腐化することはありません。
2025年の大阪万博までは引退することはなさそうなので、その折にはコロナ騒動に見舞われた2020年代前半の分まで存分に働いて欲しいものです。

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