波立てぬくろしお、草食化したこうのとり、287系とその時代【普通車・グリーン車の車内や座席など】

西日本の車両
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関西の標準型特急車両

基本設計は既存車両を踏襲

287系はJR西日本が2011年より営業運転を開始した直流型の特急電車です。
車体構造や客室などは「サンダーバード」「しらさぎ」などに使われている683系をベースにしています。
見た目は683系と関空特急の「はるか」用281系を足して2で割ったような感じでしょうか。

しかし683系のような特急車両らしい流線形の先頭部分もなく、かといって281系のような空港アクセス列車の特別感もなく、地味で没個性的な印象は否めません。
皮肉なことですが、これが287系の特徴です。

北近畿地区で羽ばたいた「こうのとり」

287系はまず2011年に、老朽化した国鉄型の183系の天下り先となっていた北近畿地区を走る特急列車に投入されました。
これらの列車は大阪や京都からビジネスや観光の需要がありましたが、晩年の183系は「やくも」の381系のように大幅にリニューアルされておらず、とにかく古さが目立っていました。
この際に大阪から福知山線経由で城崎温泉へ行く特急「北近畿」は「こうのとり」に改められました。

1970年代以降国鉄の標準型車両として全国で活躍した183系。
大宮の鉄道博物館にて。

この時には183系が全廃されたわけではありませんが、時刻表には特急らしい名前の「こうのとり」と共に「新型車両で運転」という表記があって、とても嬉しかったのを覚えています。
その分スマートな白い新車の登場は、いつまでもボロい特急を利用していた山陰本線系統の人々にとっては、なんだかんだ言って明るい話題だったのではないかと思います。

京都駅で出発を待つ287系「きのさき」
京都駅で出発を待つ「きのさき」。
山陰本線系統の列車は窓下にダークレッドの帯。

紀勢本線「くろしお」にも投入される

ところが、2012年には紀勢本線の電化区間を走る「くろしお」にも配備されます。
それまで「くろしお」に使われていた381系は日本初の振り子車両で、曲線通過速度が通常と比べ20㎞程高いのが特徴でした。
287系も低重心構造のため車体を傾けなくても曲線を15㎞程早く走れますが、それでも381系よりやや低くなってしまいます。

山陰本線の183系の時なら「車両が新しく快適になった」で済みましたが、今回のように振り子式の車両を車体傾斜機能のない287系で代替するというのは消極的で残念な話でした。

営利企業にとってコストダウンはもちろん「善」ですが、そのために所要時間が延びる(つまりサービス水準が落ちる)のは明らかな後退であり、決して好ましいことではありません。
「くろしお」で一部だけ運用されている283系のような意欲作とまではいかなくとも、せめて中央本線「あずさ」のような空気バネ式の車体傾斜車両にして欲しかったと感じます。

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287系の車内

普通車の車内と座席

287系の普通車の車内
普通車の車内

普通車はやはり大きな特徴があるわけでもありませんが、安っぽいこともなく十分の水準ではないでしょうか。
床やカーテンなども落ち着いたベージュで、主張しすぎない分安心して快適に過ごすことができます。
全体的に289系と比べてシンプルな内装です。

287系の普通車の座席
普通車の座席

グリーン車の車内と座席

287系のグリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車は車両の半分が充てられており、3列の座席です。
枕のピンク色がアクセントになっていて、客室に彩を与えているようです。
こちらの座席も289系と似ていますが、内装の雰囲気としては289系の方が高級感があってグリーン車らしいかと思われます。

287系のグリーン車の座席
グリーン車の座席

ただグリーン車のある1号車の運転台寄りのデッキはなかなかグレード感があって、良き導入演出となります。

287系のグリーン車客席へのデッキ
グリーン車客席へのデッキ
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287系と289系との違い、及びその運用

福知山駅で並んだ287系(左)と289系(右)
福知山駅で並んだ287系(左)と289系(右)

287系と同じく紀勢本線と山陰本線・福知山線などで運用されている289系とは兄弟のような関係です。
その違いは、287系が新製された車両であるのに対して、289系は「しらさぎ」で使われていた683系を直流車両に改造して新形式にしたものです。

287系は「こうのとり」(新大阪~城崎温泉)・「きのさき」(京都~城崎温泉)・「まいづる」(京都~東舞鶴)・「はしだて」(京都~天橋立)、そして「くろしお」(新大阪~新宮)に使われており、「まいづる」以外は289系と共に運用されています。(気動車で運転する一部列車を除く。また「くろしお」には283系による運転もあり。)
どの列車がどちらの車両かはJTB時刻表を見れば分かります。

同じ区間の列車であれば車両によって列車名が変わったり、ダイヤ上区別されるようなことはありません。
また289系は先頭部分も683系のままなので両者の区別はつきますが、車内の内装も若干異なっています。

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総評

287系には特に大きな欠点は無く、それまで走っていた国鉄型の183系や381系と比べると乗り心地も格段に良くなっています。

しかしその外観にせよ内装にせよ、コストダウンの名のもとに何処かで見たことがある要素が多く、新型特急車両としての華やかさには欠けるのも事実です。
例えれば、何気なく雑談するくらいの「いい人」ではあるものの、魅力を感じる「好きな人」とまではいかないような存在です。
ポジションとしてはJR東日本のE257系と同じで、国鉄型標準車両の183系の後継車両という位置づけでしょうが、381系の代わりにされたことは関西の鉄道にとって損失でした。

かつてスピードアップに熱心だったJR西日本ですが、JR北海道のキハ261系1000番台と同様に、287系は「ダイヤ優先で安全性軽視」との指摘を受けた会社の保守反動の象徴のようにも思われます。

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