振り子車両の集大成は白いかもめ、885系とその時代【普通車・グリーン車の車内や座席など】

九州の車両
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「白いかもめ」の登場

長崎本線「かもめ」のスピードアップ

長崎本線は博多~長崎間の特急「かもめ」の走る重要幹線ですが、振り子車両の883系が使われている日豊本線以上に線形が悪く、特に肥前鹿島~諫早間の海沿いの路線は曲線半径250m(数字が小さい程カーブがきつくなる。主要幹線では400m未満はあまりない)という急曲線が連続しています。
曲線通過速度は60㎞~70㎞程度に抑えられ、スピードアップの障害となっていました。

そこで長崎本線の輸送改善のために2000年に導入されたのが、新型振り子車両の885系です。
従来の車両と区別するため、885系による列車は「白いかもめ」と呼ばれていました。

乗客からの評判は好評だったようで、「白いかもめ」というトートロジーのような表現は、いつしかブランドとなったのでした。
その後は日豊本線の「ソニック」にも投入され、883系による「青いソニック」に対して885系の列車は「白いソニック」と呼ばれています。

外観

885系の車体側面
白い車体が美しい側面

それまで改造車も含め、カラフルな車両が多かったJR九州にしては珍しく、真っ白の車体で登場しました。
すっきりとしたスマートな仕上がりになっています。
同じ時期に登場したドイツの新幹線ICE3に似ています。

また、九州の車両はイラストや文字・数字がデカデカと書かれている車両(かつて存在した485系の改造車などはその典型)が目立ちますが、885系はそういったペイントの大きさが控えめです。

やんちゃでわがままな兄貴である当時の(リニューアル前の)883系を反面教師にしたのか、自己顕示欲を抑えた、余裕のあるエレガンスを感じます。

実は凄い走行性能

あまり言及されることはありませんが、885系はその俊足ぶりでも抜きんでています。

曲線通過速度は他の振り子車両と同様に本則+30㎞です。
車両の「速さ」の指標となる速度種別、つまり10‰の上り勾配で出せる最高速度は168㎞!
特急車両であっても140㎞台あれば高い方であることを考慮すると、その実力が分かります。

885系の営業最高速度は130㎞ですが、急曲線の多い区間での高速域(80㎞以上)での加速力を重視した結果、このようなパワーを身につけたわけです。

なお、電車特急では885系が最高性能ですが、気動車では曲線通過速度が本則+40㎞という、JR北海道のキハ283系があります。

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885系の車内

普通車の車内と座席

885系普通車の車内
普通車の車内
885系普通車の座席
普通車の座席

885系の車内の特筆すべき点として、普通車であっても革張りの座席であることが挙げられます。
床はカーペットではなく木材のフローリングで、明るく印象です。
また、照明もなかなかシックな味を出しています。

客室に入ると、グリーン車に来てしまったかと勘違いしてしまうほどの高級感があります。
なお、テーブルは肘掛け内蔵式なので小さめです。


ですが、実際に座ってみると革張りの座席は結構滑ります。
また、本形式も883系と同様に振り子車両ならではの揺れが大きいので、余計に体がズルズルと移動してしまいます。
乗り心地に関しては、残念ながら改善されていません。

普通車(モケット)の車内と座席

モケットに張り替えられた885系の普通車の車内
モケットに張り替えられた普通車の車内

革張りの885系の普通車の座席は、車内に入った瞬間はグリーン車のような高級感を感じる一方で、実際に座ってみると快適性で劣るという意見はよく聞かれます。
そこで一部の車両ではそれまでの革から通常のモケットに張り替えられています。
私は2020年9月に「ソニック」の2号車指定席に乗車した時に、このモケットタイプの座席に当たりました。

モケットに張り替えられた普通車の座席

グリーン車の車内と座席

885系グリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車の座席もやはり革張りで床はフローリングです。
座席が少し大きく独立性はある分だけ快適ではありますが、内装はあまり変わらないため、はっきり言ってグリーン車としての付加価値が低いように感じます。

とはいえ、決して「グリーン車が悪い」というわけではなく、「普通車が良い」のは確かです。
似たような例が、JR東海のキハ85系でも見受けられます。

885系のようなナチュラルさを演出した内装の場合、あまりむやみに「足し算」ができないので、結局普通車とあまり変わらなかった、といったところでしょうか。

885系のグリーン車へのエントランス
グリーン車への導入演出を果すエントランスデッキ

フリースペース

885系コモンスペース
コモンスペース

885系は乗車時間が2時間程度と短いにもかかわらず、フリースペースが充実しています。

縦長の窓が使用された休憩スペースは窓側の席に座れなかった人にとってはありがたい場所でしょう。

885系ギャラリー
ギャラリー

また、ギャラリーのような一画もあります。
車両によって内容はことなりますが、木材のフローリングと展示作品の筆遣いがよく合っていて、芸術的センスを感じる粋なスペースです。

トイレに行くついでに、いろいろと車内を探検することをお勧めします。

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885系の運用は「かもめ」と「ソニック」の一部

「かもめ」では787系、「ソニック」では883系と共に運用されています。
両列車とも紙の時刻表では「白い○○で運転」と表記されたものが本形式による運用です。

「かもめ」の場合、グリーン個室とDXグリーン車付きの787系と比べて、885系で運転する列車の方が所要時間が短いです。
一方「ソニック」の場合ダイヤ上の差異はないので、どちらかの車両に乗りたい場合は時刻表などで調べてきましょう。

駅の電光掲示板でも「ソニック」の車両は、883系(青)か885系(白)か分かるようになっています。
また883系は7両編成で885系は6両編成なので、そちらでも区別がつきます。

大分駅の電光掲示板。
青と白以外に編成でも車両の違いが分かる。

ちなみにこれは全くの妄想ですが、九州新幹線の新八代~鹿児島中央間の先行開業があと5年ほど遅ければ、885系を使って停車駅も減らした「つばめ」が振り子と高加速度を発揮して、博多~西鹿児島間をどれだけ早く結べただろうか(おそらく3時間少々)、などと考えてしまいます。

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885系の総評

デザインに関しては外観・内装ともにJR九州にありがちな「うざさ」が無く、非常に洗練されおり秀逸だと思います。

しかし、乗り心地の悪さは相変わらずで、乗った時の期待感と走り出してからのガッカリ感の落差が大きいのは返す返すも残念なことです。

なお、本形式を以て九州の在来線の特急車両の新造は一段落し、以降は国鉄時代の車両を観光列車に改造する潮流に舵が切られます。
また他社においても、885系が登場した2000年ごろを境に、速達性よりもコストパフォーマンスを重視した車両開発が主流となります。

その意味で885系は九州のみならず、日本全国の在来線高速化における到達点の車両であると評価できるでしょう。

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