去勢手術された最強気動車、「オホーツク」キハ283系とその時代【普通車・グリーン車の車内や座席など】

北海道の車両
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「スーパーおおぞら」から「オホーツク」へ

根室本線の高速化

札幌~函館間(室蘭経由)はキハ281系の登場により、最速の「スーパー北斗」は2時間59分、表定速度106.8㎞という驚異的な速さを実現しました。
この区間は本州各地から北海道の中心への回廊として、戦前の昭和初期の時代から室蘭経由へのルート変更と複線化・高速化が行われてきました。
2030年頃には新幹線が札幌まで開業する予定です。

しかし函館・室蘭本線と比べると、根室本線は近代化が遅れていました。
1981年に夕張山地を貫いて道央と道東を結ぶ石勝線が開通しますが、それでもなお帯広より先の線形の悪さは相変わらずでした。
民営化当時の1987年4月でも特急「おおぞら」の最速列車の札幌~釧路間の所要時間は4時間25分。5時間近くかかっている列車も結構ありました。
なお、石勝線開通以前は滝川経由で札幌から釧路まで特急で6時間程度でした。

1990年代になると自治体の資金援助も受けて、ようやく根室本線も高速化が行われます。
そして1997年より、キハ281系をさらに進化させたキハ283系を使用した「スーパーおおぞら」が運転を開始しました。

なお、「おおぞら」は1961年10月の「サンロクトオの白紙ダイヤ改正」で登場した、記念すべき北海道初の特急列車の名前です。
当初は函館を早朝に出発(青函連絡船乗り継ぎのため)して昼頃に終点旭川に着くダイヤでしたが、後に滝川から根室本線を通って釧路まで行くようになりました。
食堂車付きの長大編成が本州からの旅客を乗せて道南から道東まで走る光景は、鉄道黄金時代に相応しい堂々とした姿でした。

日本最高性能を誇る振り子式気動車だった

キハ283系の先頭部分のロゴ
先頭部分のロゴ

キハ281系をベースにしているため、外観はとても良く似ています。

分かりやすい相違点としては、霧の街釧路を走るために正面の前照灯が多くなっていることや、ヘッドマーク部分にタンチョウが描かれてたLEDになっていること、が挙げられます。
また、扉周りの配色も赤色が加わっています。

キハ283系の車体側面
車体側面

性能面で特筆すべきことは、①車体傾斜の角度が通常の5度から6度になったこと、②自己操舵台車を採用したことです。

これによって曲線通過速度は他の振り子式車両よりも10㎞速い、本則+40㎞が実現しました。
自己操舵台車とは車のように車輪の向きを変える機能で、曲線通過時に軌道に与える負担を和らげる効果があります。
高低様々な音色が織りなすディーゼルエンジンの多重奏も特徴的です。

また振り子の中心位置を下げたことで、振り子特有の曲線通過時に足元をすくわれるような動きが軽減されました。
実際に、一時期「キハ283系は振り子を停止している」という噂が流れましたが、乗っていても分からないくらい快適だということです。

キハ283系によってそれまで4時間20分以上かかっていた札幌~釧路間は、最速の「スーパーおおぞら」では3時間30分台にまで短縮されました。
ほとんどの区間が複線化されている「スーパー北斗」と比較して、高速化されたとはいえ南千歳から先は単線で、自然条件が過酷なうえに最高速度が120㎞に抑えられている区間が多い根室本線を走る列車としては、100㎞に迫る表定速度というのは大変立派なものです。
特急列車のスピードの鍵は曲線通過速度と加速度が握っていることを考えると、性能面においては、JR九州の885系とともに双璧を成す存在であるといえます。

その後も一部の「スーパー北斗」「スーパーとかち」にも運用を拡大し、北海道を、否、日本を代表する特急車両としての地位を不動のものにしました。

キハ283系の正面のLEDに描かれたタンチョウ
正面のLEDに描かれたタンチョウ

最高速度は110㎞に抑え、「おおぞら」はキハ261系化がすすむ

北海道の大地を我が物顔で走り回っていたキハ283系ですが、2010年代に石勝線での脱線・出火も含めた重大なトラブルが相次ぎます。
その結果、JR北海道は限られた経営資源を高速化ではなく、安全性の確保に集中せざるを得なくなります。
限られた体力で航空機や高速道路に対抗すべく積極的に高速化を進めてきたJR北海道でしたが、その歪みが顕在化したのです。

他のJRと比べて格段に厳しい自然条件で酷使されたことも要因で、車両・線路のメンテナンスコスト抑制のため、結局最高速度は110㎞に抑えられることになってしまいます。

以後、性能よりもコストを重視したキハ261系1000番台が増備されていくにつれ、キハ283系の運用も縮小されていきます。
「スーパー北斗」「スーパーとかち」からは撤退した後も、故郷である釧路行き根室本線特急「スーパーおおぞら」の運用は死守していましたが、2020年3月にはその半分をキハ261系に明け渡すことになりました。
なおこの時に北海道の特急の列車名から「スーパー」がすべて消えました。

そして、2022年3月には残りの「おおぞら」3往復もキハ261系化されます。
ここにキハ283系は定期列車運用を失い、先輩のキハ281系よりも一足先に引退するものかと思われました。

「おおぞら」引退後、石北本線「オホーツク」でまさかの復活

ところが2022年7月、これまでキハ183系で運転されていた石北本線特急「オホーツク」「大雪」が、2023年春よりキハ283系に置き換わることがJR北海道より発表されました。

流氷のヘッドマークを表示して、特急「オホーツク」の運用を開始したキハ283系

石北本線の最高速度は95㎞で、根室本線時代の勇敢な姿は望むべくもありませんが、霧や土壌が軟弱な太平洋側の道東から、雪や寒さがとりわけ厳しいオホーツク海側の道東へと、相変わらず過酷な仕事を続けるようです。
第二の人生を歩んだキハ283系にしばらくはお目にかかれることができると安堵するか、あくまで根室本線の振り子式高速気動車のイメージのまま勇退して欲しかったと思うかは、人次第でしょう。

ともかく、3両編成グリーン車無しというグレードダウンした形にはなるものの、キハ283系の運用が復活しました。
札幌から網走までの所要時間は5時間半ほど。
釧路行き「おおぞら」の時代と比べて、「道東はこんなにも遠かっただろうか?」と思っていることでしょう。
なお、車内は自由席の座席以外は基本変わっていません。

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キハ283系の車内

普通車自由席の車内と座席(「おおぞら」時代)

キハ283系の自由席の車内
自由席の車内

JR北海道の特急車両の指定席車やグリーン車はリニューアルが進み、座席が統一されてきていますが、その中で登場時の面影がよく残っているのが普通車の自由席です。

あいにく快適とは言い難いですが、内装に関してはキハ281系と比べるとだいぶ改善された気がします。
座席のモケットは薄いグレーの生地に、釧路を代表するタンチョウが描かれています。
また床も座席に合わせた配色のグレードを感じるものとなっています。

なお荷物棚はかつては航空機のようにカバーが付いたタイプだったのですが、現在では取り外されています。
そのため現在では中途半端な姿になっています。

キハ283系の自由席の座席
自由席の座席

「オホーツク」「大雪」の普通車自由席の車内と座席

キハ283系の「オホーツク」の普通車自由席の車内
「オホーツク」の普通車自由席の車内

石北本線特急「オホーツク」「大雪」として復帰するにあたって、車内のインテリアはそのままで、座席は変わっていました。
北海道の特急は同じ座席を異なる車種に対して使いまわしていますが、こちらも特急の自由席車両でよく見かけるタイプのものです。

普通車指定席の車内と座席

キハ283系の「オホーツク」の普通車指定席の車内
普通車指定席の車内

普通車指定席車両には、北海道ではおなじみとなった紫色のグレードアップ座席が並んでいます。
ただ、座席は交換されたものの、内装はほとんど変わっていません。
石北本線特急「オホーツク」「大雪」に転属後も、写真の座席・インテリアです。

同じ座席であっても車両ごとの内装の違いを感じるのも、北海道の特急列車の旅の楽しみの一つです。

グリーン車の車内と座席

キハ283系のグリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車もリニューアルされた座席で、内装も登場時とは大きく変わっています。
リニューアル前のグリーン車は凄かったという話をよく聞きますが、現在の座席や内装もなかなか良い出来だと思います。
ただ共通化されたことで車両ごとのバラエティーが無くなってしまったのは残念ではあります。

キハ281系のグリーン車と非常に似ていますが、細かい相違点はあります。
天井の照明はこちらの方がすっきりしていてスマートな印象を受けます。
また足元の窓側の部分にあった銀色の出っ張りも、キハ283系にはありません。

キハ283系のグリーン車
足元が若干キハ281系と異なる
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総評

津軽海峡に面して本州とのつながりを持つ函館を中心とする「道南」や、産業の集積した札幌・小樽地区を中心とする「道央」に対して、「道東」という言葉には、観光地化されていない遠くの地といった響きが感じられました。
よく「函館や札幌なんか北海道じゃない」と言う人がいますが、そうした素朴な人たちの思い描く「北海道の原風景」とは、過酷にして美しい自然とそこに生きる人間の健気な営みなのでしょう。

高性能を誇る新型のキハ283系が釧路まで運行されたことで、そんな遥かなる道東への心理的・時間的距離は大きく縮められました。
そして荒涼とした原野を突っ走るその姿によって、北海道の鉄道高速化が道東にも達したことを強く印象付けました。

しかし、克服したかに思われた自然はやはり、人の手に余るものでした。
キハ283系も現在ではせっかくの高性能を生かすことができず、宝のもち腐れとなってしまっています。
いわば「再建中」のJR北海道というチームにとって、キハ283系という高額年俸のスター選手は、もはや効果的に使いこなせない車両なのでしょう。

JR北海道はキハ281系を登場させて以来、高速気動車の開発をリードする存在でした。
その意味で現在キハ283系を取り巻く状況は北海道にとってはもちろん、日本の鉄道界全体にとっても損失だといわなければなりません。

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