鹿児島本線(含・肥薩おれんじ鉄道)全線の旅【車窓・駅弁・見所情報】

幹線

鹿児島本線は門司港~鹿児島(鹿児島中央駅のさらに一つ先の駅)を結ぶ大動脈です。
鹿児島本線の特徴は、九州の最重要幹線なので開業も早く、それだけに歴史を感じさせる施設・車窓があるということです。

私が鹿児島本線を基本的に普通列車で乗り継いで旅した記録を基に、車窓のことや沿線の見所、駅弁情報をお伝えしたいと思います。

なお、八代~川内間の肥薩おれんじ鉄道も、ここでは鹿児島本線として扱いました。

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門司港~小倉

鹿児島本線のいわば「序曲」にあたる区間です。

ついつい端折って小倉からスタートしてしまいがちですが、是非とも門司港駅に立ち寄りましょう。

なお、門司港駅近くには九州鉄道記念館があります。
詳細は【鉄道好き必見】九州鉄道記念館の見所案内をご覧ください。

門司港駅の駅舎は必見

門司港駅駅舎
門司港駅の駅舎外観
門司港駅の駅舎内部
駅舎内部

起点である門司港駅は、鹿児島本線の、否、九州の鉄道の玄関口に相応しい美しさを持つ駅です。

何年かの間修繕工事が行われていましたが、2019年春に復元が完了し当時の姿を再び見せてくれています。

駅舎外観もさながら、カフェやみどりの窓口に使われている内部の部屋も当時の面影を残しています。
2階にはレストランの他、待合室だった部屋が公開されています。

かくも立派な文化遺産を前には流石のJR九州も、デザイナー起用によるいつものレトロモダンごっこでは誤魔化せないと悟ったのでしょう。

門司港駅のみどりの窓口
待合室を利用したみどりの窓口
門司港駅の貴賓室
貴賓室

距離は短いが変化に富む車窓

門司港~小倉間は短い距離ですが、様々な線路が目まぐるしく近寄ってきて、目を楽しませてくれます。

門司駅では関門トンネルからゴールインしてきた山陽本線を迎え入れ、小倉の手前では山陽新幹線が姿を現します。
本州の下関と同様に、門司駅はかつてブルートレインの機関車付け替えが行われた場所で、長いホームと広大な用地を持っています。

途中で北九州貨物ターミナル駅のそばを走り抜けます。

門司駅
門司駅は広い
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小倉~博多間

鹿児島本線で最も賑やかな区間。
普通・快速列車の他に、「ソニック」などの日豊本線特急や時間帯によっては特急「きらめき」が走っています。

関連記事:【ワンダーランドからやって来た異端児】883系車両ガイド
【振り子車両の集大成は「白いかもめ」】885系車両ガイド

それだけに車両も多岐にわたり華やかですが、高速バスやJR西日本管轄の山陽新幹線との競争も激しい区間でもあります。
小倉~博多はさらに3つの性格を持った区間に分けられます。

折尾までは複々線

旅客線から貨物線の複線を見る

門司~折尾までは貨物線と旅客線が分離された複々線となっています。
博多周辺ではなくなぜこの区間なのかというと、複々線化が計画された昭和30年代は貨物列車がまだまだ多く、筑豊の石炭輸送も盛んだったからです。

関連記事:筑豊地域の鉄道の過去と今【石炭輸送なき後の線路たち】

車窓は工業地帯やその遊休地を利用した施設、そして住宅地が広がります。

折尾から東郷までは山越え

この区間は比較的カーブが多く、10‰の上り下りの勾配も連続し、沿線の建物も減ります。
北九州と福岡の両都市圏の狭間の山間部を走ります。

快速列車に乗っていると、小倉~博多のうちこの区間だけ停車駅が少ないことに気づくでしょう。

博多までの大都市圏を走る

東郷駅を過ぎたあたりからまた都市圏に入り、駅間も短くなります。
普通・快速列車だと、それまで空いていた車内が混み始めてくるのもこの辺りからです。

博多駅の一つ手前の吉塚駅からは単線の篠栗線も加わり、3複線区間となります。

駅弁が豊富な博多駅

九州の鉄道網の中心、博多駅。
行き交う列車たちを眺めるのも楽しいですが、改札を出て駅弁売り場に行ってみましょう。
選ぶのにも苦労するほど種類豊富な駅弁が取り揃えられています。

辛子明太子と糸島豚弁当」は名物の辛子明太子と2種類の味付けがされた福岡のブランド豚が入った、博多らしさを堪能できて質の高い駅弁です。

辛子明太子と糸島豚弁当
辛子明太子と糸島豚弁当
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博多~八代

かつては特急「つばめ」が130㎞で駆け抜けていた区間ですが、九州新幹線(鹿児島ルート)全通後はやや寂しくなってしまった感があります。

車窓もどちらかというと単調で、やや面白みに欠ける緩徐楽章といったところでしょうか。

依然として特急街道の博多~鳥栖

鳥栖駅の885系かもめ
鳥栖駅の885系かもめ

博多を出ると車両基地を見ながら走ります。
鹿児島本線の特急列車は新幹線に役割を譲ってしまいましたが、今でも鳥栖駅までは長崎本線系統の特急列車が数多く見られます。

車両も885系・787系と「みどり」「ハウステンボス」それぞれ違う塗装の783系、さらには久大本線の「ゆふ」「ゆふいんの森」の車両も加わり、日本屈指といわれた特急街道の面目を維持しています。

関連記事:【民営化後初の特急車両「ハイパーサルーン」】783系車両ガイド
【元つばめ担当の実力はなお健在】787系車両ガイド

鳥栖駅には駅弁・駅そばがある

鳥栖駅の古い屋根と柱
鳥栖駅の古い屋根と柱

長崎本線が分岐する鳥栖駅はホームの屋根や柱の構造が古く、風情を感じる駅です。
鳥栖駅は明治時代に開業しましたが、その時代の外国製のレールが柱としていまだに使われているようです。
関連記事: 異国情緒の街に誘う長崎本線の旅【車窓・駅弁・見所】

またここには駅弁・駅そばがあるので、途中休憩するのもお勧めです。
しゃおまいは駅弁にしては安い方でしたが、肉の香りがする中身が詰まった、満足な内容でした。

鳥栖駅の駅弁、しゃおまい
鳥栖駅の駅弁、しゃおまい

なお博多はもちろん、この先の久留米も福岡県ですが、ここ鳥栖駅は佐賀県に位置しています。
決して周りに埋没しない存在感がこの駅にはあります。

鳥栖~八代

鳥栖の先、久留米駅までは快速(一部は区間快速)の本数もそこそこあります。ちなみに久留米駅は西鉄の久留米駅とは離れています。

久留米駅から大牟田駅までも快速は運転されているものの、1時間に1本程度となります。
大牟田までは西鉄と競合しているはずですが、残念ながらJR九州はこの区間では乗客獲得に熱心ではありません。

車窓もあまり見所はありませんが、途中で西南戦争の戦場跡、越すに越されぬ田原坂を越えます。

時間の都合で新幹線でショートカット(通称「ワープ」)するとしたらこの区間(例えば久留米~熊本)でしょう。

グルメを堪能できる熊本駅

熊本駅では買い物には困らない

それなりに疲れてきた頃でしょうから、熊本駅で途中下車はいかがでしょうか。

改札前を出てすぐの所に、馬肉や海鮮など熊本のグルメを味わえるレストランが多いです。
駅弁も売っていますが、テイクアウトできるものはそれほど沢山売っていなかった印象です。

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肥薩おれんじ鉄道が運営する八代~川内

単線が続く区間

肥薩おれんじ鉄道のディーゼルカー
肥薩おれんじ鉄道のディーゼルカー

八代駅から川内駅までは2004年の九州新幹線開業以来、肥薩おれんじ鉄道によって運営されています。青春18きっぷは使えませんが、旅名人の九州満喫きっぷは有効です。
関連記事:「旅名人の九州満喫きっぷ」活用ガイド【補完戦略付き】

あるいは時間が許せば、八代から鹿児島まで肥薩線経由で行くのも、旅の面白さを味わうことができてお勧めです。
関連記事:スイッチバックにループ線、肥薩線絶景の旅【いさぶろう・しんぺい利用】

鹿児島本線時代は線路が単線になり、カーブも増えて最高速度も110㎞に抑えられるなど、明らかに条件が悪くなったのもここからでした。

海が見える景観路線

この区間の車窓の特徴はやはり海が見えることです。
といってもずっと海を見ながら走るわけではなく、前半と後半の2回に分けて海が見える、ということを覚えておいてください。

前半の海は日奈久駅あたりから。ハイライトは上田浦駅たのうら御立岬(おたちみさき)公園駅です。
八代海(別名不知火海)に沿って走ります。

肥薩おれんじ鉄道から八代海の車窓
穏やかな八代海

後半は折口駅薩摩高城駅に渡る区間で、ハイライトは西方駅~薩摩高城駅です。
こちらで見られるのは東シナ海です。

前者が穏やかで静謐な内海であるのに対して、後者は荒々しい外洋です。

肥薩おれんじ鉄道から東シナ海の車窓
波が大きい東シナ海
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川内~鹿児島から再びJR九州の路線

シラス台地を走る

ここからは再びJR九州の路線です。
ディーゼルカーが電車になり、運転本数もだいぶ増え、鹿児島が近いことを実感させます。

なので車窓も街中なのかと思いきや、意外と山間部を走ります。
このあたりはシラス台地と呼ばれる土地で、鹿児島本線の中で最も勾配が急なのは鹿児島中央駅の手前の区間です。

随所に線路改良の跡

複線と単線が交互に現れる

川内~鹿児島間は半分以上の区間が複線化されています。

ですが、複線といっても上下線が平行にそろっているわけではなく、それぞれがかなり離れた位置を走ったり、片方だけトンネルを通ったり、あるいは曲線の多い区間を走る、といった具合です。

シラス台地における線路増設・改良の苦労を跡を見つけるのが、この区間の楽しみでもあります。

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まとめ

鹿児島中央駅
鹿児島中央駅

九州新幹線(鹿児島ルート)全通以来、久留米以南はほとんどが地域輸送の普通列車となった今、鹿児島本線はローカル幹線になってしまった感は否めません。

それでも、 今まで見てきたとおり、 九州最重要幹線の風格を残すスポットは未だに点在しており、そういったものを見つけたり感じたりするのが鹿児島本線の旅の魅力だといえます。

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