南国のローカル線、日南線の乗車記【車窓・ダイヤについて解説】

ローカル線

日南線は南宮崎駅から鹿児島県の志布志駅に至る路線です。
宮崎から南に延びるローカル線ですが、山と海を抱いた沿線は風光明媚です。

この路線は運行形態や車窓の雰囲気から

  1. 南国の海沿いリゾートの雰囲気を持った南宮崎~油津
  2. 亜熱帯植物の生い茂る山間部を走る油津~志布志

に分けられます。
一般的には前半部分のイメージが強い日南線ですが、南半分もまた違った個性を有しています。
2020年9月中旬に、志布志から南宮崎までの乗車した時の記録を綴ります。

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志布志~油津

南九州の鉄道の要衝だった志布志駅

ノスタルジックな絵が描かれた鉄道公園入口

現在では滅多に列車が来ない終着駅になってしまった志布志駅ですが、かつては日南線以外にも大隅線・志布志線がここを起点としていました。
今の小さな駅は両線が廃止された後に移設されたものです。

1967年10月号の時刻表より南九州の路線図。
志布志から西都城へ至る志布志線と、海潟(後に国分へ延長される)へ至る大隅線はいずれも廃止された。

かつて駅があった場所は現駅舎を背に数分歩いた所にあります。
ここは現在では鉄道記念公園となっており、蒸気機関車とディーゼルカーが保存されています。
公園の広さから、それなりの規模の駅だったと予想されます。

かつてあった建造物の土台と思われるものも残っている
蒸気機関車と気動車。
気動車の車内には入れなかったが中を覗くことはできた。

ところで、志布志駅近くのショッピングモールにあるスーパーマーケットで買った握りずしが、大変結構でした。
錦江湾ではカンパチの養殖が盛んだと聞いていたのですが、その他マダイやカツオも、東京なら1000円くらいはしそうなものが、400円くらいで買えるのには驚きました。
鹿児島の食は肉だけでなく魚も魅力的です。
私も南九州に住んでいればもう少し体格が良かったのではないかと悔やまれます。

普通列車のみのダイヤ

観光案内所も兼ねた志布志駅

日南線はおおよそ中間地点となる油津駅で運転系統が分かれており、以南は普通列車8往復というダイヤです。
普通列車の所要時間はおよそ1時間15分で、特に日中は3時間以上間隔が空くこともあるので要注意です。
油津で乗り換えになる場合もありますが、南宮崎から志布志まで直通列車もあります。

車窓

平日の13時過ぎという時間帯のためか、1両編成の列車に乗ったのは約5人くらいでした。
終点近くの南郷駅までこの乗客数はほとんど変わりませんでした。
地元客ばかりで、車窓に見入ったり写真を撮ったりするのは私だけかと思いきや、ちょっと出かけるだけといった風貌をした中年女性がスマホで写真を撮りながら列車旅を楽しんでいました。

あっけない終着駅で発車を待つ普通列車

志布志駅を出発するといきなり絶景が現れます。
右手に港を見ながら坂を登って、崖の上から志布志湾を見おろします。
海岸線は市街地ではなく、綺麗な砂浜になっています。

下り線の終点近くで、海を見ながら下って港町に着くという構図は、薩摩半島の盲腸線である指宿枕崎線と同じ構図です。
志布志駅の次の大隅夏井駅福島高松駅の間に鹿児島県と宮崎県の県境があります。

福島高松駅を過ぎると海から離れ、畑や森の風景になります。
日南線の南半分は閑散とした区間にしては駅が「駅らしい造り」で、線路わきにホームがちょこっと置いてあるだけの指宿枕崎線と比べるとその違いは明らかです。

昔は急行列車が走っていたため、駅の構造は意外とサマになっている。

串間駅まで来るとようやく市街地です。
しばらくは比較的平坦な道を進みます。

日向大束ひゅうがおおつかからは本格的な山越えが始まります。
針葉樹林の美しい山の中に佇む灰色の家屋が印象的な車窓です。

急勾配を登り切って下りに転じて、やがて榎原よわらに到着します。
ここで列車行き違いのためしばらく停車しました。

ソテツのような亜熱帯植物と針葉樹、そして竹林に囲まれている寂れたこの駅は、今では無人駅になっていますがなかなか立派な駅舎を持っています。

有人駅だった時代の切符売り場や待合室を覗いてみると、内部は荒れ果てていて化け物屋敷のようでした。

駅舎はまるで廃屋

その次の南郷駅を過ぎると海が広がります。
遠くには奇妙な形をした岩が見え、リゾート風の雰囲気が強まってきます。
外国人も含めた若い観光客が乗って来て、それまで静かだった車内が突然にぎやかになりました。

大きな船が停泊する油津港が見えてくると、油津駅に到着します。
ここで南宮崎行きの列車に乗り換えです。

油津駅の周辺にはホテルもあるようでしたが、ここは観光地といった感じではなく、特に時間をつぶせるような場所もありませんでした。

駅にはアロエの葉を肥大化させたような植物が植えられていた
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油津~南宮崎

列車本数はやや増える程度

油津からは列車本数が増えますが、北半分(鹿児島中央~指宿)では劇的に列車密度が高くなる指宿枕崎線とは異なり、日南線の場合は依然として1~2時間毎とそれほどでもありません。
普通列車だと所要時間は1時間20分程度です。
日南線の下り列車(志布志方面行き)は宮崎駅を始発としていますが、逆の上り列車は南宮崎止まりであることが多いです。

また、1日1往復快速「日南マリーン号」が設定されている他、多客期には観光列車の特急「海幸山幸」も南郷駅まで運転されます。
やはりと言いますか、沿線の車窓の良し悪しではなく、沿線の観光施設の充実度によって観光列車の運転区間が決められています。
鉄道会社の増収に寄与し、サービスにも気を遣っているのでしょうが、それでも「向こうがそのつもり(注:人が来るのを待っている)でいる所へ、だれが行ってやるものかと思う。」(内田百閒著:「第一阿房列車」より)と考えなくもありません。

南国リゾートらしい景色

油津駅を出ると工場を見ながら走り、飫肥おびからは次第に山間部の川沿いを進みます。
このあたりからだんだん雨が降ってきてきました。
明るい海沿いのイメージのある日南線だけに残念ではありますが、こういう天気でも植物が茂っている部分はより鬱蒼とした雰囲気が出てきます。

このあたりも山なみの針葉樹林が綺麗です。
南国らしい檳榔樹だけでなく、こうした景色が見られるのも日南線の魅力の一つです。

伊比井駅からはまた海沿いになります。
特に小内海駅から内海にかけては、太平洋の外洋ならではの広々とした海原が望まれます。

青島駅、子供の国駅あたりは駅名に違わず、いかにも保養地らしい建物が見られます。
駅間が目立って短くなり、それに呼応するように乗客も増えてきました。
その一方で観光客はあまりいませんでした。

木花駅からは南国リゾートの雰囲気は消え、風景はごく普通の水田や畑になります。

宮崎空港線が分かれる田吉駅付近からは空港や飛行機が見えます。
宮崎空港は宮崎市内から近く、鉄道によるアクセスも便利ではありますが、やはり鉄道好きとしては喜ばしいことではありません。

終点の南宮崎駅はバスターミナルには近いですが、駅の規模としては宮崎駅よりもかなり小さいです。

駅前の通り

これまでは国鉄型ディーゼルカーばかりでしたが、日豊本線の鹿児島行きの「きりしま」や大分行きの「にちりん」の姿が見られます。

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大隅半島に残る路線として廃止は避けたい

大隅線と志布志線が両方廃止された今、日南線は大隅半島に何とか残っている唯一の路線です。
この路線には具体的な廃止の話はありませんが、全国のローカル線がそうであるように、沿線の過疎化と並走する道路の整備により将来が安泰とはいえません。
さらに近頃九州で顕著となっている災害リスクもあります。

しかし日南線には、指宿枕崎線と共に南九州のローカル線として、他の路線にはない豊かな魅力があります。
そしてその「魅力」は独特の自然や絶景ポイントだけではなく、何気ない途中駅の趣も含まれます。

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