秘境駅奥津軽いまべつ駅訪問と津軽二股駅から津軽線に乗車

ローカル線

津軽半島の北部にある北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅は、上下それぞれ停車する列車が10本に満たない、新幹線の駅では全国トップクラスの秘境駅です。
2019年12月に、新青森~奥津軽いまべつまで1駅新幹線に乗車し、その後隣接する津軽線の津軽二股駅から三厩みんまや駅で折り返し、青森駅に戻りました。
列車やダイヤは2019年12月の時刻表に基づいています。

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津軽線・海峡線・津軽海峡線…違いについて

旅行記の前に路線名を整理しましょう。

津軽線・海峡線の路線図
青森から北に延びる青線が津軽線。
現・北海道新幹線が津軽線と交差する所(黄色の点)から海峡線が分岐している。
海峡線は元から新幹線との共用として建設されたので、事実上新幹線の一部になっている。

津軽線

津軽線は青森駅から蟹田駅・中小国駅を経由して 三厩駅まで北に延びる路線です。
単線非電化のみすぼらしいローカル線でしたが、青函トンネル開通により中小国までは電化され、本州と北海道を結ぶ幹線になりました。

海峡線

津軽線の中小国駅から分岐して青函トンネルを通って北海道の木古内駅に至る在来線です。
青函トンネルと同時に開業し、当初から新幹線電車が通行できるように標準軌・狭軌併用になっています。
中小国駅の先で津軽線と分かれると、すぐに北海道新幹線の線路と合流します。
新幹線が開業した現在では北海道新幹線に組み込まれ、その存在が曖昧になっています。

津軽海峡線

津軽海峡線は正式な路線名ではありません。
青森から中小国を経て函館までの路線をひとまとめにした愛称名で、新幹線開業前はともかく、青函トンネルを通過する旅客列車が新幹線しかない現在は、この名称はあまり使われなくなっています。

北海道新幹線

北海道新幹線は新青森駅から札幌に至る新幹線で、現在は新函館北斗駅まで開業しています。
海峡線の節で述べた通り、青函トンネルの前後は在来線と共用する区間になっています。
貨物列車と共用している区間は最高速度が160㎞(当初は在来線時代と同じ140㎞だった)に抑えられています。

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新青森駅からはやて91号で奥津軽いまべつ駅へ

青森駅から新青森駅への接続は悪い

当日私は青森駅に宿泊していました。
乗車するのは新青森駅の下り始発列車のはやて91号(JR東日本のE5系)で、6:32発、奥津軽いまべつ駅着は6:48です。
ちなみに定期列車だと「はやて」は、もう時刻表から探し出すのは大変になった絶滅危惧種の列車です。

青森駅から新青森駅へのアクセスですが、これが不便です。
青森駅6:36発の普通列車では間に合わず、だからといって5:41発では早すぎるので、結局青森駅からタクシーを利用しました。
時間は10分もかからず、料金は1200円くらいだったと記憶しています。

青森駅から新青森駅へのアクセス東京方面への新幹線の接続は考慮されているようですが、北海道方面の乗客は蚊帳の外のようです。

さて、まだ暗い中出発した「はやて91号」ですが、私が乗車した車両は自分も含めて乗客は2人。
おおよそ予想の範囲内です。
新青森駅で買ったコーヒーを飲み終わらないうちに奥津軽いまべつ駅に到着しました。

奥津軽いまべつ駅と津軽二股駅は隣接している

意外なことに、私以外でも奥津軽いまべつ駅で下車した人が一人いました。
自分も同じことをしておいて勘ぐるのは失礼ながら、何の用だろうと思っていましたが、どうやら駅の職員のようでした。

奥津軽いまべつ駅はホームが狭く、新幹線駅というよりは私鉄の駅のようでした。
改札口も非常にこじんまりとしています。

奥津軽いまべつ駅のホーム
奥津軽いまべつ駅のホーム
奥津軽いまべつ駅の改札
奥津軽いまべつ駅の改札

この駅には津軽線の津軽二股駅が隣接しています。
すぐ近くなんだから駅名も同じにすればいいのにと思いますが、北海道新幹線がJR北海道、津軽線がJR東日本と会社が違うためか別の駅として扱われています。
実際に両駅の接続は考慮されていません。
奥津軽いまべつ駅が秘境駅扱いされるのは、停車する列車の少なさだけでなく、アクセスの悪さにもあるように感じます。
青森駅からの諸々の接続の悪さといい、津軽線の非協力的態度といい、まるで「利用できるものなら利用してみろ」と言いたげです。
その挑戦に対して私は、寒い中朝5時に起きてタクシーまで飛ばしてでも応えさせていただいた次第であります。

「何もない新幹線の秘境駅」とは言われるものの、駅入り口から改札口への通路は駅の構造がよく分かるのでなかなか興味深い場所です。
新幹線の駅の両側には狭軌の海峡線(現在では貨物列車のみ運行)が通り、駅から青森方面を見て右側に保守基地、さらに右には津軽線の線路があります。

奥津軽いまべつ駅の構内の配線
青森方面を望む。
一番左端が新幹線ホームの屋根、その横を在来線の海峡線(貨物列車のみ)が通る。
中央右寄りに保守基地が広がり、右上に延びている単線が津軽線。
奥津軽いまべつ駅の構内の配線と津軽二股駅
北海道方面を望む。
左側の黄色の建物の傍に津軽線の津軽二股駅ホームが見える。
立体交差のトンネルは保守基地への連絡線。

奥津軽いまべつ駅を出て、駐車場の傍らを歩いて津軽線の津軽二股駅へと向かいます。
津軽二股駅の横には道の駅がありましたが、朝早くて営業時間外でした。

津軽二股駅に併設された道の駅
津軽二股駅に併設された道の駅

ちなもに、奥津軽いまべつ駅からストーブ列車で有名な津軽鉄道の終点、津軽中里駅まで1日数便バスが出ています。

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津軽線乗車記

非電化区間は寂れたローカル線

43分の接続(これでもだいぶ良い方)で7:31に津軽線の三厩行きのディーゼルカーが、隣の大掛かりな他社の駅に対して遠慮がちにやって来ました。
乗客は私を含めて3人で終点まで変わりませんでした。

津軽線津軽二股駅
新幹線駅の横にある小さな駅

重装備した北海道新幹線・海峡線の線路と離れ、以降は平凡な車窓が続きますが、三厩の一つ手前の津軽浜名駅からは右手に海が見えます。
小さな漁港と簡素な小屋の先には津軽海峡が広がり、新幹線の奥津軽いまべつ駅では目の前に思われていた北海道が、今度は果てしなく遠くにあるように感じます。

津軽線三厩駅付近の車窓
本州の北の果てを走る

北国の日本海の寂寥感のある風景は、同じ車両が使われている五能線を思わせます。

終着の三厩駅。何もありませんでした。
少し前に無人駅になったようで、窓口がベニヤ板で塞がれていました。
やはりといいますか、折り返しの列車に乗車したのは先ほど乗って来たのと全く同じメンツの3人でした。

津軽線の終点三厩駅
終点三厩駅
三厩駅
窓口はベニヤ板で覆われていた

引き返して蟹田駅を目指します。
津軽二股駅から次の大平駅までは駅間が10㎞ほどもあり、ちょっとした山越えがあります。

津軽線の津軽二股から大平までの車窓
津軽二股から大平までは珍しく山越え

大平駅と中小国駅の間では北海道新幹線から在来線の海峡線が分岐する現場を見ることができます。
非常にダイナミックな光景です。

北海道新幹線に在来線の海峡線が合流している
真っすぐ延びる新幹線に在来線の海峡線が合流している
北海道新幹線に在来線の海峡線が合流している

新幹線と別れた、というよりフラれた海峡線はすぐに気を取り直して津軽線と合流して中小国駅に到着します。

津軽線と海峡線の合流
新幹線と分岐した海峡線が寄り添ってきた

ここからは津軽線も「津軽海峡線」の一端を成すので、それまでと比べて乗り心地の良さが格段に良くなります。

蟹田駅からは電車で青森駅へ

中小国駅から一駅で乗り換えとなる蟹田駅に着きます。
ここからはディーゼルカーではなく、電車に乗って青森駅を目指します。

津軽線蟹田駅
蟹田駅からはローカル色が薄まる

駅間も短くなり乗客も増え、ローカル線から青森の郊外列車のような雰囲気になります。
あいにく単線ではありますが、「津軽海峡線」時代の名残として、駅のポイントも高速対応になっています。

津軽線の途中駅の一線スルー化されたポイント
途中駅のポイント。
通過列車が高速で走行できる設計になっている。

蟹田駅から津軽線は海辺を走りますが、眺望は家などに阻まれることが多いです。
その中では蟹田駅から次の瀬辺地せへじ駅までが良く海が見える区間です。
また屋内駅付近では北海道新幹線の高架が右手遠方に見られました。

津軽線の車窓
陸奥湾の海岸に沿って進む
津軽線から北海道新幹線を見る
遠くに見える新幹線の高架

終着の青森駅に到着するにあたって、まずは奥羽本線と、その後東北本線(現・青い森鉄道)と合流します。

津軽線と奥羽本線の合流
奥羽本線に合流
奥羽本線と青い森鉄道の合流
続いて青い森鉄道に合流

かくして各地からの線路は青森駅で一つにまとまるのです。

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時代に翻弄される津軽線

三厩駅
三厩駅

青森駅から津軽半島を北上する寂しいローカル線だった津軽線は、青函トンネルの開通によって中小国までが「津軽海峡線」の一部として大出世を果たしました。
新幹線開業により本州・北海道間の旅客輸送はお役御免となりましたが、相変わらず貨物列車は多数運行されています。

むしろ函館止まりの新幹線の当区間の利用客の少なさ(青函輸送に限れば民間フェリーも格安で利用できる)を考えれば、まだ本領を発揮していない新幹線よりも、北の大動脈として貨物輸送に貢献する津軽海峡線の方がまだ主役といえるのかもしれません。

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