【水戸→郡山】復旧した水郡線の旅、常陸大子駅で駅弁「奥久慈しゃも弁当」を購入

ローカル線

水郡線は常磐線の水戸駅から東北本線の郡山の一つ手前の安積永盛駅あさかながもりに至る路線です。
「奥久慈清流ライン」という愛称が示す通り、この路線の魅力は久慈川沿いの穏やかな風景にあります。
2019年の台風の影響で部分運休していましたが、2021年3月に全線で運転を再開しました。
水郡線の景色の概要は以下のように4つに大別されます。

  • 水戸市のベッドタウン、水戸~常陸大宮
  • 水郡線の代名詞である久慈川沿い、常陸大宮~常陸大子ひたちだいご~東館
  • 福島県に入り盆地を走る、東館~磐城棚倉
  • 阿武隈高地の分水嶺を越えてダラダラ郡山盆地に降りる、磐城棚倉~郡山

復旧から間もない3月下旬に、水戸駅から常陸大子駅で途中下車して郡山駅まで乗車しました。

青線が水郡線。
国土地理院の地図を加工して利用。
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久慈川に沿って北上する水郡線

水郡線の車両はカラフルなディーゼルカー、キハE130系

水郡線は全線単線非電化で、E130系というディーゼルカーで運転されています。
概して地味な印象の水郡線には不釣り合いな、カラフルな塗装が施された車両です。
車内は2人用と4人用のボックスシートが通路を隔てて並び、ドア近くにはベンチ式のシート(短いがロングシート)がある構造です。

水戸駅に近い上菅谷駅・常陸大宮駅までは日中でも1時間に1本の頻度で列車がありますが、それ以北は本数が少なくなります。
特に常陸大子駅から先は2時間以上間隔が空くこともあるので要注意です。
おおよその所要時間は、水戸から常陸大子まで1時間15分、常陸大子から郡山まで1時間50分です。

常陸大子駅の駅弁「奥久慈しゃも弁当」は玉屋旅館で買える

水郡線を全線走破するには3時間以上かかりますが、途中で下車するとしたら周辺の観光地の玄関口である常陸大子駅がおすすめです。

また、常陸大子駅には有名な駅弁、「奥久慈しゃも弁当」があります。
駅弁を名乗ってはいるものの、残念ながら駅では販売されておらず、一旦下車して駅前の「玉屋旅館」で買うことになります。
なお、水戸から郡山までスルー運転する列車には常陸大子駅で5分停車するものもありますが、私が買う際にはお店で少し待ったので、個人的にはこの程度の時間の停車中に買いに行くのはおすすめできません。

さて、「玉屋旅館」は実際には宿泊施設ではなく食堂で、玄関口では愛想の良いお婆さんが座って迎えてくれました。
今では市内各地にしゃも料理を出す店がありますが、ここが元祖のようです。

奥久慈しゃも弁当はコクのあるもも肉と淡白なむね肉の2種類が楽しめますが、やはり肉の食べ応えが違います。
「脂がのって柔らかくて食べやすい」などという陳腐な形容詞を嘲笑うような、「肉らしい」美味しさです。
ピリ辛牛蒡と炒り卵が付け合わせです。

沿線観光も兼ねて、是非水郡線の旅の供として購入したい駅弁です。

水郡線の乗車記

今回乗車したのは水戸駅11:15発の常陸大子行きの列車です。
たしか2両編成だったと思いますが、入線してくる直前くらいにホームに着いたのでボックス席の進行方向右側の窓側を確保しました。

常陸大宮駅までは比較的混雑する区間

水戸駅を出発してすぐに左にカーブして常磐線と離れ、右手に水戸城址を見た後に那珂川を渡ります。
車内はかなり混雑していました。
ずっと市街地を走るというよりは、郊外の田園地帯に住宅地や工場が点在している感じです。
このあたりの駅間は短く、駅の周辺には新しい家が目立ちます。

上菅谷駅からは常陸太田まで水郡線の支線が分岐しています。(似た駅名が多くややこしい)
「支線が分岐している」とはいうものの、大半の客はそちらに乗り換えてしまって、まるで本線であるはずのこちらが支線のようでした。

その先は徐々に田園風景がさらに卓越して駅間も長くなってきますが、常陸大宮駅は栄えた市街地のようでした。

車窓:久慈川は進行方向右側を流れる

常陸大宮駅からはいよいよ山が迫り、ローカル線らしくなってきます。
その次の行き違い停車をした玉川村駅はすっかり山村の風景で、所々に色とりどりの花が咲いていました。
車窓が変われば車内の雰囲気も変わり、学生や背広姿に人々に代わって、大きな買い物袋を持った中高年が多くなります。

やがて水郡線の代名詞である久慈川が進行方向右手に現れます。
川幅は広く流れもゆったりしていて、確かに同じく清流と呼ばれる四国の四万十川と似ている気もします。

西金駅さいがねあたりからはカーブが多くなり、谷も少しだけ深くなります。
柔和な表情をしていた久慈川も若干顔を引き締めた様子です。
2019年の台風被害以来、最後まで不通だった区間もこの辺りです。

また山が遠ざかっていくと集落が川沿いに広がり常陸大子駅ひたちだいごに到着します。

常陸大子駅は水郡線の運転上の要衝で、広い駅構内には車両基地もあります。
前節で述べたようにこの駅には有名な駅弁「奥久慈しゃも弁当」がありますが、それを買うためには下車する必要があります。
駅弁を堪能したり、ゆったりとした時間が流れる市街地を散策しているうちに、次の列車までの2時間が経ちました。

車両基地もある常陸大子駅
駅前に保存されている蒸気機関車

常陸大子駅から乗ったのは水戸から郡山まで通しで運転する列車で、3両編成だったのがこの駅で後ろ2両を切り離し、郡山行きは1両編成となりました。
便利な列車だけに、車内は復旧を祝って乗車していると思われる「同業者」で混みあっていました。

なおも久慈川を右側見ながら走ります。
矢祭山駅やまつりやまの傍は川沿いの崖で、そんな荒々しい風景を慰めるかのように桜が咲いているのが印象的でした。

なお、下野宮駅と矢祭山駅の間で茨城と福島の県境を越えます。

車窓:川沿いの盆地。今度は左手に川

やがて盆地が開け、大きく左にカーブして久慈川と並ぶと東館駅ひがしだてに到着します。
低くなだらかな山地に両手を囲まれた平地を走るため、ここからしばらくはカーブは少なくなります。

進行方向右側も低い山

時々ビニールハウスがありイチゴを栽培しているようです。
磐城棚倉駅いわきたなくらの手前でついに久慈川が離れていきます。
今までずっと寄り添ってきた川ですが、別れは意外とあっけないものでした。

ところで、近くのボックス席に座っているマダム4人は、「あそこの○○の花が綺麗だ」「あの畑で××を栽培している」などと、ずいぶんと景色に目を凝らしています。
多くの鉄道ファンは列車が駅に進入してから乗るまでの間しか活発ではないのですが、彼らよりもマダムたちの方がずっと鉄道の旅を楽しんでいるように思えます。

分水嶺を越えて阿武隈川流域に

磐城棚倉駅からは急な上り坂となります。
坂は長くありませんが、登り切ったあたりが久慈川水系と阿武隈水系の分水嶺です。
広々とした水田地帯が開けて、ようやく少しは東北地方らしい光景が見られます。

ここから郡山盆地へ向かって走るわけですが、素直に下っていくのではなく、平地になったり山越えをしたりと線路はランダムウォークな動きを見せます。

一山超えて磐城石川駅に到着。
近くに温泉があり水郡線の中では結構大きな駅で、部活帰りの高校生など地元の人が増えてきます。

その次の野木沢駅付近は周囲から山はすっかり見えなくなります。
その後は阿武隈川沿いの水田地帯を走ります。

泉郷駅

阿武隈川は左側にその存在が窺われるだけでほとんど見えませんが、時々蛇行する力が余って線路めがけて寄ってきます。
阿武隈川の5㎞くらい先には東北本線が並んで走っているはずです。

水郡線の列車もこのまま川と共に郡山に行くのかと思いきや、川東駅かわひがし過ぎて川から離れてまたもエンジン音をたてながら山間部に入っていきます。
今度こそ最後の山越えです。
右手はなだらかな阿武隈高地です。

磐城守山駅からはもう郡山盆地です。
水田地帯に住宅や工場が点々としています。

水郡線の終着駅は郡山の一つ手前の安積永盛駅で、意外とここからも人がたくさん乗ってきました。
東北本線の1駅区間を、今さら元気を取り戻したかのように走って終点郡山駅に到着です。

郡山駅着
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とりとめのないローカル線だが景色は良い

水郡線はその特徴を一言で表すのは非常に難しい路線です。
まず線区の立場として、東西横断線なのか南北縦貫線なのかがはっきりしませんし、車窓風景にしても阿武隈高地をいつの間にか超えたあとも、平地になったりまた山越えをしたりと、いささか「構成美」には欠けると言わざるを得ません。

しかし、それぞれの要素はどれもローカル線らしい長閑さがあり、そんな地味な旅模様が水郡線の特色だといえるでしょう。

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