東京から仙台へ4時間半、特急ひたち3号に全区間乗車【車窓や車内など】

旅行記

東京から仙台へは新幹線「はやぶさ」で約1時間半で着いてしまいます。
東北地方も近くなったものです。

実は仙台行きの鉄道ルートにはもう一つあり、それが今回紹介する常磐線経由の特急「ひたち」を利用する方法です。
常磐線は海沿いを走るので、特に北半分は太平洋の景色を楽しむことができます。
2023年3月中旬、苦しい花粉症に春の訪れを感じながら、「ひたち」3号に品川駅から仙台駅まで全区間乗り通しました。

赤線が「ひたち」のルート
国土地理院の地図を加工して利用
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E657系「ひたち」で仙台まで所要時間は4時間半

仙台行き「ひたち」は1日3往復

首都圏から水戸・いわきなどへ多数の「ひたち」や「ときわ」が運転されていますが、仙台行きの「ひたち」は1日に3往復だけです。
始発駅は品川駅で、上野東京ラインを通って東京駅、上野駅に立ち寄ります。
ちなみに「ひたち」と「ときわ」の違いは停車駅の多さで、「ひたち」の方が遠距離で速達タイプです。
上野駅~仙台駅の所要時間はおよそ4時間半です。

「ひたち」に使用されるのはE657系という、東日本大震災直後にデビューした車両です。
雰囲気としては観光色はあまりなく、どちらかというとビジネス向けの車両といったところでしょうか。
全体的な印象としては真面目タイプなのですが、側面の窓下に濃いピンク色のラインがあしらわれていて目立ちます。

普通車とグリーン車どっちを選ぶ?

「ひたち」には普通車とグリーン車がありますが、私はグリーン車に乗る必要は無いと思います。
普通車でも十分快適です。

逆にその分グリーン車の付加価値が下がっている感があります。
また、普通車であっても、全座席に充電用のコンセントが付いています。
もちろん「空いている」「特別感が味わえる」等の利点はあります。

デッキも高級なビジネスホテルのような雰囲気です。
ただし、フリースペース等の設備はないので、4時間半の乗車時間で気分転換をするのは難しいです。

特急ひたちのデッキ
デッキの様子

車内販売があるのはいわき駅まで

また、「ひたち」には車内販売がありますが、営業している区間はいわき駅(品川駅から2時間半くらい)までです。
商品もあまり多くは無く、ホットコーヒーもありませんが、アルコールは販売しています。
取扱商品についてはこちらを参照してください。
なお、車弁当・サンドイッチは売っていないので要注意です。

全席指定席だが予約なしでも乗れる

「ひたち」は全席指定席の列車です。
では座席予約がないと乗れないのかというと、従来の自由席特急券に当たる「座席未指定券」でも乗ることはできます。
つまり、指定席車両と自由席車両の区別が無くなったとイメージしてもらえれば良いと思います。
指定席特急券と座席未指定券は同じ料金です。
しかも、指定席は「えきねっと」で割引(数に限りあり)になります。

車内には各座席の上に赤・黄・緑色いずれかが点灯したランプがあります。
それぞれの意味は

  • 赤→空席
  • 緑→座席予約済み
  • 黄→まもなく座席予約済み区間になる

座席未指定券で利用する時は赤ランプの席に座ることになります。
満席の時でも乗ることはできますが、座ることはできません。
また、座れたとしても乗車中に他の人が自分の席を予約して黄・緑色になることはあり得るので、頭の上のランプを気にしながら列車に乗るという精神衛生上好ましくない旅になります。

よって、予定があらかじめ決まっているのであれば、えきねっとで指定席を予約することを強くおすすめます。
割引額についてはこちらを参照してください。

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「ひたち」3号の乗車記:景色は海側の右がおすすめ

品川~水戸:ビジネス客で混雑

朝ラッシュ時の品川駅を「ひたち3号」は7時43分に出発しました。
せわしなく走り去っていく通勤電車を横目に、我が特急列車は悠然とした足取りで進んでいきます。
優等列車の貫禄というものでしょう。
2015年に開通した「上野東京ライン」を通り、いよいよ常磐線に入り雑然とした街並みを走ります。
柏駅を出ると、座席上のランプはほぼ全てが緑(予約済み区間)になりました。

さて、長時間の乗車なので景気づけとして、品川駅で駅弁「しらす弁当」を購入していました。
東京駅、上野駅にも大きな駅弁売り場があります。

水戸までは特に車窓で特筆すべきところはありません。
で終わってしまうのは無責任なので、都心部では川に着目してはいかがでしょうか。
RPGでは橋を渡るごとにフィールドの敵がワンランク強くなります。
同様に、常磐線に限らず関東の路線では、荒川、江戸川、利根川と橋を渡るごとに「都会度」がワンランク低くなります。

利根川を渡る

ということで、利根川を渡り取手駅を通過して複々線区間が終わると、辺りはすっかり首都圏から関東の趣になります。
ようやく東京を脱出した実感が湧いてくるのではないでしょうか。

朝陽を浴び続けていると、のどが渇いてきました。
ちょうど狙ったかのように車内販売のワゴンが通りかかります。
ここは「ひたち」限定商品のクラフトビール「常盤野ネストラガー」を購入です。
キーボードをたたく音しか聞こえない静まり返った車内に、プシュッという音が響き渡ります。
毎度のことながら、良い瞬間です。
「常盤野ネストラガー」は軽めでほろ苦いすっきりした味わいで、女性でも飲みやすいと思います。

梅で有名な偕楽園が右手に見えてくると間もなく水戸駅に到着です。
水戸駅までは30分毎に特急が運転されています。
東京と茨城より、江戸と水戸の繋がりと言った方がしっくりきます。

ここで多数の乗客が下車しましたが、意外と乗ってくる人も多く、車内は相変わらず混雑していました。

水戸~いわき:勿来の関を越えて東北地方へ

水戸駅を過ぎてもまだ沿線には活気があり、右手にはようやく海が見えてきます。
日立駅では左手には工場や事業所がありますが、海側は意外なほどのんびりとした風景です。
だんだんと空席が目立つようになってきました。
車窓も鄙びてきたように感じます。

日立駅付近

高萩駅磯原駅を過ぎて、いよいよ奥州三関の一つ、勿来の関を越えて東北地方に向かいます。
山越えをして県境を越えますが、常磐線のみちのく入りは実にあっけないものです。
寧ろその途中に見える海の景色の方が印象的です。

勿来の関を越える

このあたりはかつて常磐炭田があった所で、首都圏に近い炭鉱として古くから発展していました。
東北本線よりもずっと早く、常磐線が大正時代にいわき駅まで複線化されていたのも、石炭輸送のためです。

以降も軽い丘陵越えを繰り返し、やがていわき駅に到着します。
いわき市は福島県で最大の人口を有する工業都市で、常磐線にとっては東北地方の入り口となる都市でもあります。

いわき~仙台:車窓ハイライトにも震災の影

いわき駅から乗ってくる人は少なく、今や車内はだいぶ空いています。
しばらくすると、ずっと複線だった線路も単線になります。
この先は常磐線で最も景色が良い区間です。
相変わらず海沿いを走るのですが、これまでのような工業化された海岸ではなく、トンネルの合間に自然のままの海辺が広がります。

時々右手にレンガ造りの廃トンネルが姿を現します。
この辺りは電化を機にトンネルを掘り直したためです。

蒸気機関車が昔のトンネルを走っていた頃と変わらない風景を楽しんでいるうちに、ふいに明らかに不自然な堤防が我々を現実に戻します。

特に富岡駅付近は東日本大震災の爪痕が痛々しく、静かな海岸に向かって空き地が呆然と広がっています。
その後も工事車両が目立ち廃屋も散見され、駅はこじんまりとした新しいものです。
富岡駅~浪江駅なみえが一番最後(2020年)に復旧した区間です。

震災前の計画では、常磐線特急はいわき駅を境に列車が分離されるはずでした。
結局復興の一環でしょうか、東京から仙台まで通し運転の「ひたち」が10両編成という過剰輸送力で、被災地をこまめに停車しながら走っています。
思えば終戦直後も、蒸気機関車の汽笛の音が敗戦で打ちひしがれた人々に勇気を与えたと聞きます。

さて、原ノ町駅付近は住宅や工場が増えてきます。
乗客の乗り降りはほとんどありませんでした。

ここから(正確には2つ前の小高駅)仙台近郊区間になるので、そのままの賑やかさで北上したいところですが、あいにく殺風景な光景が広がります。
その後、さしたる自然障壁も無く福島と宮城の県境を越えます。

宮城県に入ると水田を高架橋で駆けていきます。
線路は復旧に際して新たに敷き直したもので、レール音も大変滑らかです。
住宅、というか集落全体が新しいので、造成されて間もないニュータウンのような雰囲気です。

仙台まであと15分程度のところで阿武隈川を渡ってから、東北本線と合流します。
350㎞前の日暮里駅以来の再会に心弾みます。

東北地方唯一の大都会をラストスパートし、12時29分に終点仙台駅に到着です。

ちょうどお昼時です。
長旅の後の牛タンや寿司は格別に旨いはずです。

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堂々たるロングラン特急「ひたち」

東京から仙台まで1時間半という時代に、敢えて「ひたち」で4時間半かけていく人は物好きの部類に入るでしょう。
しかし、在来線の特急列車で4時間以上旅をできる機会も、今や限られたものになっています。

たまには「タイパ」なる非人間的な概念の呪縛から脱して、移動そのものにも積極的な意義を見出してみてはいかがでしょうか。

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