仙台駅から石巻駅まで、仙石東北ライン特別快速の乗車記【車窓・車両など】

ローカル線

東北地方最大の都市である仙台と、宮城県第二の人口を持つ石巻。
この二つの都市間を結ぶのが「仙石東北ライン」です。
東日本大震災からの復興に際して、従来とは違ったルートとして新たに開業しました。
距離にして50㎞弱、所要時間も1時間程度と短いものの、日本三景の松島など車窓がとても良い路線です

2023年3月、仙台駅を朝出発する仙石東北ラインの特別快速に乗って石巻駅まで行きました。

青線が東北本線、黄色線が仙石線部分
国土地理院の地図を加工して利用
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東北本線+仙石線=仙石東北ライン

仙台~石巻の新ルート

まず「仙石東北ライン」というのは正式な路線名ではありません。
首都圏の「湘南新宿ライン」と同じで、隣接した別個の路線に連絡線を使って乗り移る列車だ、というイメージで良いでしょう。

その「仙石東北ライン」の列車は仙台~石巻間で運転されています。
仙台駅から東北本線を北上し、塩釜駅を過ぎた辺りで仙石線あおば通仙台石巻に飛び移り、そのまま石巻まで行きます。

「そもそも仙石線だけでも仙台から石巻まで行けるのに、なぜそんな面倒なことをするのか?」と思う方もいるでしょう。
その答えは仙石線の特徴にあります。

仙石線は元はと言えば私鉄で、東北本線にまとわりつくように敷かれています。
元私鉄のため単線で、特に仙台寄りはカーブが多くさらに駅間距離も短いという高速運転には不向きな条件が揃っています。
一方の東北本線は正反対で、複線でカーブも緩い線路条件に恵まれています。
そのため最初は東北本線の線路を使い、途中から仙石線に乗り入れることで、両都市間の所要時間短縮が実現したのです。

特別快速の所要時間は49分

仙石東北ラインでは快速または特別快速が1時間に1本運転されています。
このうち特別快速は仙台駅午前中発と夜着の、1日1往復のみ設定されています。
所要時間は快速が約1時間、停車期の少ない特別快速は49分です。

快速には東北本線内の仙台~塩釜で各駅に停車する便と、途中ノンストップの便の2種類が存在します。
また、仙石東北ラインの列車は仙石線内では全て快速運転(または特別快速)をします。

車両はハイブリッド気動車、HB-E210系

仙石東北ラインの車両はHB-E210系という、ハイブリッド気動車が使われています。
「ハイブリッド」というのは従来のエンジンだけでなく、モーターも組み合わせて動力を発生させる仕組みです。
たしかに乗ってみると、初めは静かに走り出すのですが、途中からガリガリ、その後ゴォーッというエンジン音が響きます。
感情の起伏の激しい人のようです。

ところで、東北本線も仙石線も電化されているのになぜ気動車が投入されたかというと、両線の電化方式の違いがあります。
東北本線は交流電化なのに対して、元私鉄の仙石線は首都圏と同じ直流電化(東北地方で仙石線だけ東京の中古車が走っているのはそのため)です。
両方を走れる交直両用電車もありますが高価なので、いっそのこと車両を気動車にして解決しています。

車内のモニター
只今駅に停車中

車内は中距離電車でよく見かける、4人用ボックスシートと一部ロングシートという構造になっています。
顔も仙台地区の近郊電車とそっくりです。
また各編成(2両単位)ごとにトイレがあります。

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【乗車記】海が見える右側の座席がおすすめ

仙台駅4番線から発車

遅めの通勤ラッシュ時間帯の仙台駅。
到着する電車はどれも満員です。

今回乗車するのは9時25分発の仙石東北ライン特別快速石巻行き。
仙石線の電車は地下ホームまで行かなくてはなりませんが、仙石東北ラインは地上の4番線から出発します。
折り返し列車の遅れのため出発時刻間際に入線し、4分遅れで仙台駅を出発しました。

窓側の席を取り損ね、進行方向通路側のボックス席を確保。
周りの3人は学生らしき男性3人組でした。
最初は鉄道ファンかと思ったのですが、会話が「まとも」で観光パンフレットを見ていたので、普通の旅行者でしょう。

東北唯一の百万都市仙台とはいえ、新幹線が離れていく頃には水田が目立つようになります。
塩釜駅付近は起伏の多い地形です。

やがて右手に日本三景、松島が見えます。
「島々の数を尽くして、そばだつものは天をゆびさし、ふすものは波にはらばふ」という「奥の細道」の一節を引用すると、もう私に書けることがなくなってしまいますが、仙石東北ラインのみならず、500㎞を超える東北本線でも屈指の車窓ハイライトです。

余談ですが、有名な「ああ松島や」の句は松尾芭蕉が詠んだものではありません。
「奥の細道」に彼の松島での句は入っておらず、その代わりそもそもことふりにたれど、松島は扶桑第一の好風にして」(昔からそうだが、松島は日本一の絶景で)から始まる文章でその風景を絶賛しています。

松島の絶景に酔いしれる乗客にちょっかいをかけるように、仙石線の単線の線路がちょこまかと左右から絡んできます。
列車の方はその仙石線に飛び移るタイミングを見計らいますが、平面上で接近し、かつ高低差も無い場所はなかなか見つかりません。

そのチャンスは塩釜駅を出て10分くらいの所で訪れます。
反対方向の東北本線の線路を横切って、仙石線へと繋ぐ連絡線に進入し、今度は仙石線に乗り入れます。

これより赤線を通って連絡線へ進入する
右側には仙石線の架線が見える
非電化の連絡線を進んでいき、やがて仙石線と合流する

復旧でルートが変わった仙石線

仙石線に入ってからも右手に松島の車窓が続きます。
歌枕によって彩られたまでの松島と違って、こちらは観光地化されていない静かな風景です。
そんな海も東日本大震災では津波の被害を引き起こし、防波堤が嵩上げされています。

海沿いが終わると、列車は大きく左にカーブします。
復旧に伴いルートがやや内陸寄りに変更された区間です。
カーブしながら、右手には広い水田とその向こうの海沿いには疎らに生える松、さらに遥か遠方には工業地帯を見渡します。
思わず息をのむ光景です。

前面展望だとより迫力があるのですが、あいにく男の子4人組に占拠されていました。
私とて、そこに割って入るほど大人げない鉄道ファンではありません。

後ろから眺めた雄大なカーブ
帰りの列車より

近代的な橋梁で高台から地上に舞い降りると、吉田川・鳴瀬川を続けざまに渡ります。
河口なので川幅は広く水量も豊富、そして線路の高さも水面に近いので、見応えは申し分ありません。

その後は住宅が増えて、それらの間を縫うように走ります。
つい先ほどまでのダイナミックな車窓から一転、都市近郊の元私鉄電車になりました。

工場や商業施設が見えてくると終点の石巻駅に到着。
仙石線のホームは駅の外れの方にあります。
停車駅の少ない特別快速は仙台を出た時から立っている人がちらほらおり、石巻まで混雑度はほぼ変わりませんでした。
帰りの快速は石巻を出た頃は空いていましたが、次第に乗客が増えて仙台に着く頃には立ち客が沢山いました。

駅舎はマンガチックなもので、改札を出たところにはコンビニがあります。
この駅から石巻線で小牛田駅または女川駅に行くことができます。
特に新しくなった女川駅行きの列車からは風光明媚な車窓を楽しむことができます。

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仙石東北ラインはハイブリッドな路線

今まで見てきたように、仙石東北ラインは車窓の見所が次々と現れるので、あっという間に時間が過ぎていきます。
そして、隣り合う全く性質の違う路線に乗り入れる面白さもあります。
つまり、仙石東北ラインは車両だけでなく、路線もハイブリッド式になっているのです。

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