二つの顔を持つ路線、石巻線の乗車記【石巻~女川・石巻~小牛田】

ローカル線

石巻線は東北本線の小牛田こごた駅から石巻駅を経て、女川おながわ駅に至る路線です。
小牛田から女川まで直通する列車も多いですが、石巻を境にその沿線のイメージは大きく異なります。

2020年12月中旬に、石巻から女川に行き、すぐ折り返し列車に乗って小牛田に向かいました。

紫線:前章部分、オレンジ線:後章部分。
国土地理院の地図を加工して利用。
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石巻~女川

石巻の駅舎

石巻駅は仙石線との接続駅ですが、昔は同じJRの路線でも、仙石線と石巻線とでは駅舎とホームが別々になっていました。
現在では統合されていますが、駅構造は少し変わっていて面白いです。

まだ10時過ぎでしたが石巻駅のキオスクで地酒と「ほや」のおつまみを買いました。
この「墨廼江すみのえ」という日本酒は辛口の純米酒で、澄ました綺麗な味わいでした。
また宮城県の珍味として知られるほやは、一瞬ゴムのような独特な風味に戸惑いますが、ナマコの味に近いです。

旅の供は地酒と地元の珍味

さて、列車は石巻駅を出ると早速、東北の大河、北上川を渡ります。
水量の多い雄大な川に架かる橋はいささか心許なく、速度を落として恐る恐る走っているようです。

その後しばらくは市街地が続きます。
はじめの方は新しいマンションも立ち並んでいますが、だんだんと建物が小さくなっていきます。

沢田駅の手前辺りの車窓。

沢田駅から浦宿うらしゅくまでは万石浦の海岸線に沿って走ります。
石巻線の車窓の魅力はこの1駅間に尽きると言っても良いでしょう。
万石浦という景気の良い名称に違わず、ここでは牡蠣の養殖が盛んなようで、自然の豊かさを感じる光景です。
沢田駅付近には水産工場があり、付近にはおびただしい数の貝殻が積み上げられています。

線路は海岸線に忠実に敷かれており、列車は急カーブのためゆっくりと走ります。
景色を眺めるには非常に都合の良い線形です。

やがて市街地が開けると、浦宿駅に到着します。

浦宿駅から次の女川駅までは、太平洋に垂れ下がる牡鹿半島の付け根の部分を横断します。
短い区間ですが山越えをして、トンネルを抜けるとすぐに終点の女川駅に到着です。

ここは2011年の東日本大震災で一度破壊されましたが、その後再建された新しい駅です。
小さい駅ながらも温泉や見晴らしの良い展望台があり、終着駅らしい佇まいです。
折り返しの時間が僅か10分弱しかなかったのですが、本当は1,2時間後の次の便まで時間を過ごしたいと思うような場所でした。

駅の展望台から線路とは反対向きを見る。
港まで商店街となっている。
展望台からホームを見る
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(女川~)石巻~小牛田

大慌てで車内に戻り引き返します。
相変わらず車内には中高年がちらほら乗っているだけです。

石巻駅では20分程度停車しました。
ここで乗客がほとんど入れ替わり、学生や若者が多くなったようです。
ここを境にして、別の列車・路線だといった方が実感と合うような気がします。
仙石線は冒頭に述べた経緯から、相変わらず駅の隅の方で申し訳なさそうに停車していますが、乗客も列車本数も石巻線を上回っています。

停車中に貨物列車が通過していきました。
石巻線では石巻港~小牛田・仙台に貨物列車が運転されています。

貨物列車が通過。左奥に見えるのは仙石線の列車。

石巻駅からの石巻線の沿線風景は、ひたすら平野を突き進んでいくので単調です。
豊かなササニシキの絨毯も既に刈り入れが終わり、雪化粧をしているわけでもないので見栄えがよろしくありません。
時々白い鶴のような鳥がいて、そこだけが映えています。

ずっとこのような景色が続く

前谷地駅からは気仙沼線が接続しています。
以前は気仙沼駅の列車が出ていましたが、震災の津波の影響で現在では途中からBRT(鉄道線路跡を舗装してバスによる代行運転する)となっています。

前谷地駅に停まる気仙沼線の列車

線路は相変わらず直線主体で、カーブもさほどきつくはありません。
普通列車と低速(最高速度は75㎞)の貨物列車しか走っていないのが勿体ないくらいです。

小牛田駅の手前まで来ると右方向に東北本線が見えてきます。
架線の張られた複線の立派な線路です。
さらにその奥からは陸羽東線が、やはり東北本線に寄り添うようにして合流しています。

終着の小牛田は3つの路線が交わる駅。
また東北本線もここを境に運転系統が分かれているので、まさに鉄道の十字路です。

鉄道地図上では小牛田は南東北と北東北を分かつ、「東北地方のへそ」と表現してよいでしょう。
ホームの向こうに広がる多数の留置線がそれを物語っています。

新幹線のルートからは外れたが、小牛田駅は鉄道の要衝である。
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地味だが貨物輸送を担う石巻線

思えば石巻線は昔から地味な存在だったことは否めません。
仙台から石巻へは仙石線や仙石東北ラインを利用する方が便利です。
また、気仙沼線の全通が1970年代後半と遅く、仙台から気仙沼へも一ノ関から大船渡線経由が一般的でした。

しかし、貨物列車が走っているというのは他の地方路線には無い特色です。
半世紀前と比べると全国的に貨物列車が撤退した中でも生き残っているわけですから、これは大きな存在価値だと言わなければなりません。


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