大阪・京都間の私鉄特急有料座席乗り比べ③、京阪電鉄のプレミアムカーに乗る

私鉄

2024年7月に阪急電鉄の京都線特急で特別車両「プライベース」が導入された。
一方、既に京阪電鉄では同種の「プレミアムカー」が営業していることも忘れてはならない。

そこで2024年9月、両者を乗り比べるために大阪と京都を往復した。
本記事は帰りの京阪の乗車記である。

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【前書き】京阪特急の歴史即ち戦後日本の歴史なり

京阪電鉄のプレミアムカーは特急や快速特急・快速急行といった優等列車に連結される。
料金は区間によって400円または500円である。
チケットの購入は京阪電鉄の公式サイトから行うことができるが、会員登録をする必要がある。
それが面倒なら駅でも購入できる。

さて、個性的な関西の私鉄の例に洩れず、京阪もそれぞれの時代に合わせた役者を輩出してきた。
戦後まもない1953年には、当時まだ家庭には普及していなかったテレビを車内に設置した「テレビカー」が登場した。
そして70年代に入るとテレビはカラーになり冷房も付いた。
私も子供の頃にテレビカーに乗って、プロ野球の阪神戦を見た記憶がある。
流石にスマホ全盛の現在ではテレビカーは営業していない。

国鉄民営化後の1990年代はJR西日本の新快速がさらに快適で高速になり、他の路線でも京阪神エリアの「アーバンネットワーク」を急速に充実させた。
競争が激化するなか、京阪はなんと特急列車にダブルデッカー(二階建て)車両を組み込んだ。
関東の人ならJR線のグリーン車と同様にこれがプレミアムカーと勘違いしてしまうかもしれないが、あくまでダブルデッカー車両は特別料金不要の一般車両だ。
この車両は今でも運用されている。

2010年代後半になると着席通勤の需要が高まり、鉄道各社が有料着席サービスを打ち出していく。
かくして、京阪電鉄でも2017年に特別車両「プレミアムカー」が導入されたのである。
このように、京阪特急発展史は日本戦後社会史でもあるのだ。

ちなみに、現在の京阪特急は赤い電車(8000系)と青い電車(3000系)で運転されており、いずれにもプレミアムカーが連結されている。
車内設備はほぼ変わらないので特に気にする必要はないが、公式サイトでどちらの車両か確認することはできる。
両方とも一般車両でも転換クロスシートで快適だが、ダブルデッカー車両は赤い8000系にしかない。

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3000系京阪特急プレミアムカーに乗る

叡山電鉄に乗って鞍馬寺を訪れ、また出町柳に戻ってきた。
冒頭述べた通り公式サイトからプレミアムカーの予約・購入ができるが、会員登録が煩わしくなり中断してしまった。
果たして駅のチケット販売機で買い求めると、16時46分出町柳発の便は意外と席が埋まっており、辛うじて2列席の窓側を確保することができた。

ホームには列車が既に入線している。
私が乗車したのは青い電車の方だった。
赤い電車のダブルデッカー車両には何度もお世話になったが、青い電車に乗るのは初めてである。

京阪のプレミアムカーも阪急のプライベースと同じで2&1列配置で、JR特急のグリーン車並みの設備だ。
座席が黒く客室全体としてシックな印象があるが、ところどころに金色が使われていて明るい雰囲気もある。
京阪特急のシンボルマークである鳩の絵柄も金色に輝いている。

列車が動き出した。
出町柳駅を出発した時点では空いていたが、駅に着くたびに乗客が増えてほぼ満席になる。
客層はスーツで決めた人がほとんどなのかと思いきや、見たところちょっと出かけてきた感じのオバちゃんも結構いて意外だった。
プレミアムカーでは記念品の車内販売も行っているようで、黒い制服を着た女性アテンダントが度々車内を巡回している。
予約した席に座っていれば検札されることはない。

京阪線は淀川の左岸を走るので、右岸でほぼ並走する阪急線とJR線ほど競争は熾烈ではない。
とはいえ、区間によってはJR東西線・片町線や奈良線と競合している。
何度か支流を渡っているうちに市街地の複々線区間となる。

京橋、天満橋、北浜と駅に着くごとに客が降りていき、終着の淀屋橋駅まで残った人は少なかった。
出町柳から淀屋橋までの所要時間は55分。
京都側の駅を祇園四条駅と考えても、JRはもちろん阪急よりもやや時間がかかる。

全体的な感想としては、予想以上に良かった。
阪急の車両がもともと高水準なのは幼いころからよく知っているから、プライベースが快適なのも、ある意味想定内だった。
阪急プライベースと京阪プレミアムカーを比較すると、座席のグレードではプライベースに軍配が上がるが、車内設備はほぼ同等、内装の良し悪しに関してはもはや個人的趣味の範疇であろう。
走行時の乗り心地も申し分ない。

淀屋橋駅に到着
新型車両でも昭和レトロな鳩のシンボルが再現されている

ということで、大阪・京都間を有料座席で贅沢に往復した。
JRの新快速に所要時間の面では苦戦しているが、車両の高いクオリティと個性の豊かさでは、今なお「私鉄王国」関西の実力が発揮されている。
いずれも500円の追加料金で乗車できるのは有難い。
そういえば新快速にも一部の列車に「Aシート」が連結されているので、機会をつくってそちらにも乗りに行きたい。



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