大阪・京都間の私鉄特急有料座席乗り比べ①、阪急京都線のプライベースに乗る

私鉄

2024年7月、阪急電鉄初となる有料指定座席サービス「プライベース」が、京都線特急に導入された。
もともと車両の質の高さには定評があった阪急に特別車両が登場したのだ。
物心ついた頃より阪急電車に親しんでいる私にとって、これは是非とも体験しなければならない。

というわけで9月上旬、幼い頃より乗りなれた大阪梅田駅から終点の京都河原町駅まで、新たに登場したプライベースに乗車した。

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【前書き】管理人洗礼の地

昼食後、西宮北口駅から大阪梅田行きの阪急神戸線特急に乗る。
十三駅で神戸線に加えて宝塚線と京都線が勢ぞろいし、阪急名物の3複線(つまり複線が3セットある)となって淀川を渡っていく。
幼少期から30年間馴染んだ光景だ。

かつて京都線特急で使われていた偉大なる6300系は、扉が片側両端2か所だけでクロスシートを装備した、幼稚園児の私にとっては「長距離列車」の風格があった。
しかも公衆電話が設置されていて、携帯電話普及前の当時は車内で電話できると知って驚愕したものだった。
神戸線の電車から並走する京都線特急の威容を眺めるたびに、小さな私は遥かなる鉄路に思いを馳せたのだ。
かくして電車大好き少年が阪急電鉄より生まれ、そして(恥ずかしながら)今に至るのである。

30年前の感傷にふけっていると、電車は大きくカーブして大阪梅田駅に吸い込まれていった。
一番端の9号線(9番線ではない!)に到着。
ここは行き止まり式では日本最大のターミナル駅である。

やはり京都線特急は梅田から乗りたい。
子供の頃に京都へ行く際にも、神戸線から十三駅ではなく梅田駅から京都線に乗っていた。
クロスシートに座って梅田駅の1号線で出発を待つ時間が、当時は大変優雅に感じられたものだった。
今でも「改まって」列車に乗る時は始発駅からでないと何処か中途半端に思える。
新幹線に乗るのなら上野駅や品川駅ではなく、東京駅からの方が気分的にもすっきりしないだろうか?

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【本編】京都線特急のプライベース

プライベースの予約・支払いは阪急電鉄のサイトから簡単にできた(会員登録不要)。
なお京都線特急は10分毎に運転されるが、プライベース付きの便は20分毎。
全特急列車ではないので要注意。

料金は一律500円で、利用しやすい価格設定だ。

乗車する京都線の列車が反対側の1号線に到着した。
プライベース車両の基本色はもちろん阪急マルーンで他と同じだが、扉が片側中央に1カ所だけで、さりげなく金色のラインが施されている。
編成美を保ちながらも特別車両の貫禄を見せつけていた。

座席転換作業のためしばらく待ってから乗車。
車両中央部のデッキには乗務員が2人いた。
彼らは検札や車内サービスは行わないが、予約された座席以外に利用している人がいないか確認していた。
また、予約していなくても追加料金をその場で支払えば、「飛び込み」でプライベースを利用できるようだ。

車内は通路を挟んで2&1列の座席配置。
2人掛けの座席でもパーテーションがあって、これはJRのグリーン車越えと表現しても誇張ではない。
強いて言えばリクライニングの角度が浅いのだが、せいぜい乗車時間は40分程度なので問題になるまい。
内装や座席のオリーブ色はやはり安定の阪急カラーで、床はカーペット敷きだった。
そういえばかつての京都線特急の6300系の床も、他とは違って模様付きのベージュ色だったと記憶している。

12時40分、大阪梅田駅発。
3列車が同時に発車した。
再び淀川を渡る。
鉄橋は神戸線・宝塚線よりも少し高いので、なおさら長距離列車の京都線ならではの格上感がある。
シャンシャンと響く鉄橋の走行音が気分を盛り上げる。

車内設備は言うまでもなく、乗り心地も良い。
阪急の車両なので関東の電車のようにガタガタ揺れることもないし、そもそも一般車両でもたいていは快適なクロスシート車両である。
それを差し引いても、プライベースには500円分の付加価値はある。

高槻市駅を過ぎると左手より山が迫って来て、それに押し出されるようにJR京都線や高速道路も近づいてくる。
そして右手には新幹線がぴったりと寄せている。
この辺りの大阪平野と京都盆地を結ぶ狭隘地が、羽柴秀吉が明智光秀を破った「天下分け目の天王山」であるが、今も交通路がここに集結してお互い切磋琢磨しているのだ。
先ほどからずっとJRの快速電車を捉えている。

京都の市街地に来ると終点まで地下を走る。
烏丸駅までにほとんどの客が降り、終点の京都河原町駅まで残っていたのは僅かだった。
いやはや、贅沢な45分だった。

私は「西高東低」とは鉄道の話だと思っている。
阪急のプライベースや続編記事で紹介する京阪プレミアムカーと、例えば関東の京王ライナーや東武TJライナーを比べてみると、いかに関西の車両が高品質かよく分かるだろう。
今住んでいる東京の中央線にも近いうちにグリーン車が導入されるのだが、その楽しみも半減してしまうくらい良い車両だ。
願わくば、プライベースを神戸線にも導入して欲しいものである。

さて、今日の目的は阪急のプライベースと京阪のプレミアムカーを乗り比べることだから、京都に用事はない。
そもそも猛暑のなか大混雑の京都を観光するのは嫌である。
スペインのバルセロナよろしく、外国人観光客に水鉄砲をかけて涼んでもらう「おもてなし」をするくらいが関の山であろう。

とはいえ、そのまま引き返すのも勿体ない気がしたので、叡山電鉄に乗って鞍馬寺に行くことにした。

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