新幹線で北海道へ最速乗り継ぎ、はやぶさ&北斗で東京から札幌へ7時間44分の旅

幹線

東京から札幌まで行くのに、普通の人なら航空機を使うでしょう。
実際にコロナ前の国内線の旅客数は羽田~新千歳が1位、成田~新千歳も9位と、圧倒的な数となっています。
そして速いのはもちろん、LCCなら1万円未満も珍しくありません。

しかし、鉄道による北海道入りにも数字では表すことのできない価値があります。

2023年3月下旬、東京駅から北海道新幹線「はやぶさ」で新函館北斗駅へ行き、そこから特急「北斗」に乗り換えて札幌駅を目指しました。

緑線が「はやぶさ」、紫線が「北斗」乗車区間
国土地理院の地図を加工して利用
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東京から新函館北斗まで北海道新幹線で行ける

【所要時間】函館まで4時間半、札幌まで8時間

「はやぶさ」のE5系新幹線

2016年、北海道新幹線(新青森~新函館北斗)が青函トンネルを越えて開通しました。
東京から新函館北斗まで新幹線「はやぶさ」で約4時間の所要時間です。
新函館北斗駅は市内中心に近い函館駅から電車で20分程の所にあります。
新幹線の新函館北斗駅到着に合わせて、函館駅行きの連絡列車が設定されています。

さらに先、北海道の中心都市札幌へは、新函館北斗駅から特急「北斗」に乗り換えて3時間半の所要時間です。
乗り換え時間も含めて、東京~札幌は8時間程度かかります。
本記事で利用した「はやぶさ」は特に速い便なので、上下合わせて最速の7時間44分を叩き出しています。

特急「北斗」のキハ261系

「はやぶさ」のうち新函館北斗まで行くのは1~2時間に1本くらいです。
東海道・山陽新幹線では1時間に2本ずつ博多行き「のぞみ」が出ていますが、太平洋ベルトとみちのく・蝦夷を同じように考えてはいけません。
むしろ実際に北海道新幹線に乗ってみれば、これでも需要に対して健闘している方だということが分かるでしょう。

【札幌までの費用】「えきねっと」で分けるか、通しで買うか?

次に費用について説明します。
まず、東京~札幌までの通常価格は27,500円です。
これは「はやぶさ」(全席指定)の指定席と「北斗」の自由席を乗り継いだケースです。
「北斗」も指定席の場合は27,760円です。
「北斗」は始発駅からの乗車でないこと、車窓の良さは左右で格差がある(乗車記で解説)ことを考慮すると、「北斗」も指定席にすることをおすすめします。

さて、「はやぶさ」・「北斗」両列車とも、「えきねっと」で独自の早割運賃が設定されています。
列車・席数限定で何種類か割引率が存在します。
それらを以下の表にまとめました。

通常価格割引率割引率期間限定セール
はやぶさ23,23022,050(5)17,410(25)11,610(50)
北斗9,4408,010(15)6,590(30)5,660(40)
通しの総額27,760
カッコ内の数字は割引率(%)を表す

両列車の料金の和が27,760円を下回れば分けて買うべきです。
期間限定セールの料金(お先にトクだ値スペシャル)は通年設定されているわけではありませんが、幸運にも両方これで予約出来れば、合計17,270円と1万円以上の割引が受けられます。

ここで重要になるのは、ウェイトが大きい「はやぶさ」の25%引き(お先にトクだ値)を予約できるか否かです。
これが取れれば、「北斗」は通常価格になってしまっても、乗車券ごとまとめて買うより安くなります。
逆に25%引きが残っていない場合は、「北斗」の期間限定セールが買えない限り、割高になっていしまいます。

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各列車の車内、サービスについて

「はやぶさ」にはコンセント、車内販売あり

「はやぶさ」に使用される車両は、国内最速時速320km/hを誇るE5系新幹線です。
派手な緑の外観の割には、車内は落ち着いた雰囲気になっています。

窓側の席にはスマホ充電ができるコンセントが付いています。
新しい編成だと各座席にコンセントがあります。

「はやぶさ」では東京~新青森の区間で車内販売があります。
取扱商品はあまり豊富ではないので、弁当・サンドイッチは出発前に駅で購入しましょう。
一度中止されたホットコーヒーの販売が再開されています。
列車限定となっていますが、定期便の「はやぶさ」はほとんど販売を行っているようです。

「北斗」は車内販売無し、新函館北斗駅に売店あり

「北斗」の車両は強力なディーゼルカー、キハ261系です。
厳しいJR北海道の経営を反映して、コスパ重視の設計となっています。

指定席車両は「グレードアップ座席」と呼ばれる、快適な座席が並んでいます。
ただし、コンセントはありません。

また、「北斗」では車内販売は営業していません。
新函館北斗駅の乗り換え時間はそこまでタイトではないので、新幹線の改札内・駅の改札外・在来線ホームにある売店で駅弁やビールを調達しましょう。

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乗車記①:東京~新函館北斗「はやぶさ7号」

東北新幹線の車窓は左側がおすすめ

春休みの朝8時過ぎの東京駅。
新幹線ホームも在来線ホームに負けないくらい旅行や出張する人で賑わっています。

私が乗車するのは8時20分発の「はやぶさ7号」。
折り返し列車到着後の清掃作業が終わって、車内に入れたのは出発3分前でした。
海が見えない東北新幹線の景色は、奥羽山脈側の進行方向左側がおすすめです。
東京駅を発車した時の乗車率は半分くらいです。

上野駅を通過して、山手線と並走する辺りは都心でも落ち着いた雰囲気で、春麗らかな公園の桜が見頃です。
やがて住宅街になり大宮駅に到着。
ここでほぼ満席になりました。

大宮駅から新幹線らしい速度で走ります。
「いよいよ本当の新幹線の旅の始まりだ」という高揚感と共に加速すると、左手で上越新幹線が分かれていきます。
このタイミングでこの規模は圧巻です。

宇都宮駅から最高速度320km/h運転区間

宇都宮駅までは騒音に配慮して最高速度が275㎞/hに抑えられています。
130㎞/h制限がある大宮以南もそうですが、もっと住宅が密集している東海道新幹線は特別な配慮は無いのに、東北新幹線は何かと損をしています。
ようやく最高速度の320㎞/h運転で本領発揮する頃、鬼怒川を渡ってみちのくへと入っていきます。

ここからはトンネルが多くなります。
ここでずっと待っていた車内販売のワゴンが来ました。
私が朝食にカツサンドを選んだのは、東北新幹線で久々にホットコーヒーを購入したかったからです。

東京駅を出発して1時間ちょっとで、郡山駅を通過します。
左手前方に安達太良山が見えます。

9時40分頃に仙台の一つ前の白石蔵王駅しろいしざおうを通過。
摂り損ねましたが、この時に蔵王山と共に白石城(少し遠くで分かりづらい)が見えます。
幕末期に、この城で新政府に対抗する奥羽越列藩同盟が結成されました。
もし戊辰戦争で同盟軍が勝っていれば、東北新幹線は会津・米沢経由になっていたことでしょう。

仙台以北は空いてくる

大宮駅から僅か1時間少々で、東北唯一の百万都市仙台に到着です。
新幹線で東京から来ると、左側の青葉城付近は山塊が張り出していて、市内は狭苦しく感じられます。
仙台駅では7割くらいの人が降り、乗ってきた人も含め6割くらいの乗車率になりました。

東北本線ならこの先松島が見えるのですが、新幹線はあいにくトンネル主体です。
仙台を出てから20分くらいすると岩手県へ。
県の南端に位置する一ノ関駅付近では視界いっぱいに水田が広がります。

そして北上川を渡りますが、その渡り方が新幹線らしい。
在来線では川を橋梁で渡る際には、横断歩道の小学生よろしく、礼儀正しく直角に渡ります。
しかし高速運転をする新幹線の、相手が大河であっても斜め横断する態度は、反抗期の中高生のようです。

さて、北上盆地を走る一ノ関~盛岡は比較的トンネルが少ない区間です。
粗末で屋根の急な家屋と針葉樹の屋敷林。
北東北はより一層みちのくの色も濃くなります。

盛岡到着を知らせる車内チャイムが鳴る頃、左手前方に岩手富士こと岩手山が見えてきます。
盛岡駅では秋田新幹線が分岐します。
そして全く同様に、盛岡駅手前の右手で、南北に流れる北上川から東西に流れる雫石川が分かれます。
ここから乗ってくる人はほぼおらず、乗車率は半分程度になりました。

盛岡から先は最高速度が260㎞/hになり、乗っていても明らかに遅くなったことが分かります。
北海道新幹線が札幌まで延伸した暁には、盛岡以北もスピードアップする必要があるでしょう。
しばらくは岩手山を望むことができます。

ところで、盛岡の次にいわて沼宮内駅ぬまくないを通過します。
北海道には「○○ない」という地名が多く見られますが、これはアイヌ語に由来しています。
この傾向は北東北でも見られることから、この地域のアイヌ文化との繋がりが窺えます。
北東北で血液型のB型が多く、酒飲みが多く、そして美人が多いのは、この理論でほぼ説明できると私は信じています。

さて自分勝手な比較文明論をご笑覧いただいたところで、列車はずっとトンネルの中を北上します。
通過しても気づかないくらい存在感の薄い七戸十和田駅しちのへとわだを過ぎると、地面は雪で覆われていました。

3時間も経たぬ間に、新青森駅に到着です。
ここで降りる人が多く、車内はガラガラになりました。
駅付近は特に何もなく、60年前の新横浜駅のようです。
右手に見える市街とベイブリッジが本当の青森です。
なお、どの列車もここからまで来ると空いているでしょうから、ここで右側の席に移ることをおすすめします。

青函トンネルに入ったら教えてくれる

新青森駅から先が北海道新幹線区間です。
平野が尽きて、在来線との共用区間になると最高速度は160㎞/hにまで落ちます。
これは貨物列車とのすれ違いの風圧を考慮しての速度で、休日の貨物列車が走らない時間帯は200㎞/hまで引き上げて3分所要時間が短いこともあります。

奥津軽いまべつ駅を通過した後、6つ目のトンネルが全長約54㎞の青函トンネルです。
車内の電光掲示板でもアナウンスされます。
実際の海峡部分は20㎞少々で、トンネル中央部の平坦部の前後は緩い勾配になっています。

1954年の洞爺丸沈没事故から計画が進んだ青函トンネル。
この壮大なプロジェクトが実現した1988年には、とっくに本州から北海道の移動は飛行機が当たり前になっていました。
そんな皮肉な経緯を持つ青函トンネルは、かつて多くの思い出を運んだ青函連絡船に代わって、今や新幹線が走っています。
それが本領を発揮するのは、北海道新幹線が札幌まで全通する日でしょう。

青函トンネルを出ました。
何となく雪深くなったかな、と感じているうちにトンネルが連続します。

やがて共用区間が終わる木古内駅きこないに至ると、右手に津軽海峡が広がります。
ここに来てようやく海が見えて興奮しますが、北海道新幹線のハイライトはこの後です。

またしばらくトンネルが続いた後、函館湾と島のような函館山が我々を歓迎してくれます。
北海道に来た実感が湧き上げてくるのはこのタイミングです。
津軽海峡前後の長いトンネル区間は、この北海道入りの感動を盛り上げるためにあったのかもしれません。(クラシック音楽ファンなら、ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」のあの部分、と言えば分かると思います。)

北海道新幹線は、しかし、エキゾチックで魅力的な港町の誘惑を断ち切り、左に大きく舵を切って新函館北斗駅に到着します。
東京駅から3時間57分、今は12時17分です。
この駅の位置と方角は、目指すべきは札幌であるという固い意志の表われです。

新函館北斗駅
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乗車記②:新函館北斗~札幌「北斗7号」

「北斗」の車窓は右側が見所多し

新函館北斗駅での乗り換え時間は17分。
昼食を調達するには充分な時間です。
北斗11号には外国人も多く、なかなか混雑していました。

早速昼食にします。
新函館北斗駅で買える函館駅の駅弁で、私のおすすめは「鰊みがき弁当」です。
柔らかい鰊とパリパリした食感のカズノコの親子共演が光る定番の駅弁です。
駅弁が定番なら相手をするビールも北海道の定番、サッポロクラシックでしょう。

「北斗」の車窓ハイライトは進行方向右手に集中しています。
しかも開幕早々見所が続くので、食欲に全力を傾けることなく、車窓も楽しむようにしましょう。
函館平野を後にして、列車は勾配を登って行きます。
函館本線の旅の始まりです。

早くも最初のハイライト、駒ヶ岳と大沼小沼が登場

大沼公園駅の前後では大沼小沼越しに秀麗な駒ヶ岳が見えます。
さすがは北海道。
駅弁を食べ終わらぬうちから雄大な景色を楽しませてくれます。

駒ケ岳は最初だけ左手に見えますが、その後は右手に移ります。
大沼越しに、次いで正面に構えています。

特に右に左にカーブしながら山麓を下っていく辺りは、駒ヶ岳の姿が目まぐるしく変わって実に楽しいです。

そして山越えが終わると、海沿いの森駅に到着です。
東北地方のローカル線でも目にしなくなった国鉄型のディーゼルカーを見かけます。

森駅からはずっと海岸に沿って走ります。
八雲駅やくも付近では、雪山が迫った海岸線から噴火湾の形状を実感することができました。

長万部駅おしゃまんべ(北海道らしい響き)からは室蘭本線を通ります。
この先の函館本線は新幹線開通後に廃止されることが決まりました。

手に汗握る断崖絶壁区間を行く

この辺りは海岸沿いの断崖絶壁に難工事の末に線路を敷いた区間です。
トンネルの合間に迫力のある景色が展開します。
途中通過する小幌駅こぼろは元信号場だった日本有数の秘境駅で、鉄道でしか駅に辿り着けないと言われる程です。
しかし、私が普通列車でこの駅を通ると、必ず鉄道ファンが乗って来ます。

13時55分、小幌駅を通過

洞爺駅とうやの手前では、すぐ真下に海、そして反対側の線路が見えます。
この厳しい地形のもと、建設者たちがいかに苦労して複線化を行ったかが分かります。

その後線路は落ち着きを取り戻します。
右側は相変わらず海。
同じような景色に飽きた人は左側の有珠山を眺めるのもよいでしょう。

やがて工場が目立ってきます。
対岸には三方を海に囲まれた室蘭の絵鞆えとも半島が見えます。

林立する工場の隙間からは白鳥大橋が伸びています。
海面が曇っていたので、半島も橋も雲の上に浮いているようで、ファンタジックな光景でした。
東室蘭駅では乗り降りが多数あり、次の登別では温泉観光の外国人たちが降りていきました。

北海道らしい雄大な景色と線路

この先は駅構内と緩いカーブを除けば、約60㎞に渡って延々と直線が続きます。
そして左手には牧場に、頂上の形がユニークな樽前山。
実に北海道らしい風景です。
国立アイヌ民族博物館「ウポポイ」の最寄り駅の白老駅しらおい到着時には、アイヌ語の放送も流れます。

左側

製糸業が盛んな苫小牧とまこまいは室蘭と並ぶ北海道の工業都市です。
苫小牧駅前には、見上げるほどの巨大の煙突が目の前に建っていて圧倒されます。

湿原地帯を走って、南千歳駅へ。
新千歳空港や帯広・釧路方面からの線路が集まる駅です。
その後も白樺の原野と市街地が交互に現れます。
大都会となった札幌も、開拓前は一面の原野だったといいます。

5分程遅れて終点の札幌駅着。
時間通りなら16時4分に到着します。
東北新幹線開業前は17時間以上かかっていた道のりを、朝無理のない時間に東京を発って、冬でも明るいうちに札幌に辿り着くとは感慨深いものです。
新幹線延伸を見越してか、駅前はビル建設が盛んです。

札幌駅に到着

夏に札幌を訪れた時には若い女性の露出度の高さに目を奪われましたが、今回は地元民のマスク着用率の低さに感心しました。

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北海道を演出する8時間

作家の宮脇俊三氏は「船ではなく飛行機で北海道へ行くのは、序曲を聞かずにオペラを観るようなもの」と語っています。
青函トンネルになった現代では「序奏」くらいに簡略化されましたが、今も函館に近づいた時の感慨は違った角度から味わうことができます。
そして、地図を見るとまだ北海道の「入り口」近くにある札幌は、実際には函館から3時間半もかかり、この島の広さを実感させられます。

失意のうちの帰郷が冬の青函連絡船でより一層人々の心を打つように、青函トンネルをくぐり抜ける8時間の鉄道移動は、北海道旅行を殊更に有意義で思い出深いものにしてくれるはずです。


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