私鉄王国関西の猛者、新快速の有料座席Aシートで京阪神三都物語

幹線

ここ最近の鉄道業界の大きなトレンドとなったのが、都市部の通勤列車の有料着席サービスである。
とりわけコロナ騒動を経て通勤スタイルが多様化したことで、この動きは一層強まった。
スピードでは競合他社を圧倒する京阪神地区の新快速も、有料座席サービス「Aシート」を導入している。

2025年8月、今さらながら地元関西の新快速のAシートを京都駅から三ノ宮駅まで利用した。

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予約はe5489のチケットレス指定席券が安い

Aシートの座席指定券は全区間共通で840円
ただし、JR西日本のネット予約サービスe5489で購入できる「チケットレス指定席券」だと600円になる。
早期割引や期間限定商品ではないので、基本的にチケットレス一択だ。
「基本的に」と断ったのは、青春18きっぷで乗車する場合はチケットレスが使えないためである。

新快速は頻繁に運転されているが、そのうちAシート車両が付いているのは1日6~7往復のみである。
平日と土休日でダイヤが異なり、時間帯も偏っているので事前に確認しよう。

なお、京阪神地区の着席サービスで似たものに「うれシート」がある。
こちらは一般と同じ座席の一部を指定席として使用するもので、専用の特別座席を提供するAシートよりも値段が安くなっている。

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リクライニングシートにコンセント付きのAシート

旅行者でごった返す真夏の京都駅の土曜日。
今は最も気温が高い14時過ぎだ。
14時15分発の新快速のAシートを予約している。
普段なら席が取れるか心配しながらホームに立つものだが、今日はワクワクしながら列車を待つ。
ちなみに、「Aシート」の読みは「エーシート」ではなく、関西弁の「ええシート」なので間違えないようにしよう。(非公式)

さて、Aシートは特急と同じようなリクライニングシートである。
全席に充電用コンセントがついていて、内装も全体的に高級感があるものとなっている。
なおAシート車両の9号車にはトイレもある。
京都駅を出た時は8割以上の席が埋まっていた。

関東在住の方なら、快速列車のグリーン車自由席の着席保証版をイメージしてもらえばよい。
しかし首都圏のグリーン車両と違って、新快速のものはあくまで普通車の特別な座席である。
つまりグリーン車なら法令によって一般客を排除できるのに対して、新快速の場合は座席指定券を持たない客でも透明な仕切りで隔てられた簡易デッキに立つことはできるのである。
通路には立ち入れないようになっているらしく、知らずに進入した客は乗務員に呼び止められていたが、これは日本文明が編み出した魔法、「法的根拠に基づかないお願い」であろう。
いずれにせよ、通路に立ち客がいるわけではないのでさほど気にすることではない。

京都と大阪の県境が有名な天王山だ。
高速道路や新幹線、そして新快速にとって長年のライバルである阪急電鉄がこの地に集まってくる。
かつての天下を賭けた戦いの地は、今でも交通機関がしのぎを削る場なのだ。
もう一つのライバルの京阪電鉄だけが淀川の対岸から高みの見物をしている。

大阪駅で大半の客が降りた。
大阪から神戸(三宮)まではライバルが阪急と阪神になる。
各々のターミナル駅を出て淀川を渡った3線は一旦放射状に拡散し、神戸が近づくにつれてまた収束していくのである。
鉄道少年を育んだ我が実家の傍を通りすぎ、やがて六甲山が近くに寄り添ってきた。
深夜から明け方にかけて50㎞以上を歩いた六甲縦走は、もう20年も前だろうか。

京都駅からおよそ50分で三ノ宮駅に着いた。
幼いころからもう何度も乗っている路線だが、改めていつもとは違う車両に乗ってみると新鮮に感じた京阪神三都物語であった。

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【比較】Aシートは関東のグリーン車以上、阪急・京阪の有料座席以下

新快速と競合する私鉄各社のうち、京阪電鉄と阪急電鉄もそれぞれ「プレミアムカー」「プライベース」という有料座席を導入している。
最後にこれらのサービスを比較してみよう。

結論から言うと、JR新快速のAシートは京阪や阪急の有料座席に比べて劣る。
上の写真を見ればわかる通り、私鉄両社は一人利用に嬉しい横3列の座席配置である。
特に阪急に至っては新幹線のグランクラスを思わせるほどの豪華さだ。
さらにいずれの設備もたった500円で利用できるので、料金でも新快速は不利となる。

というわけで、「新快速のAシートはコスパが悪い」と決めつけてしまいそうになるが、それは早計だといえる。
なぜならプレミアムカーとプライベースのクオリティが高すぎる、かつそれでいて安すぎるのである。
関東のグリーン車自由席と比較すればAシートの方が優れていると思うし、何より確実に座れる。
料金でもチケットレスなら50㎞以内のグリーン料金より安い。
なお一般車両でも新快速や関西私鉄の特急は快適だ。
要するに、Aシート・プレミアムカー・プライベースの比較というのは、ガタガタ揺れる粗悪な電車に足元をすくわれながら通勤する関東の民からすれば、別世界のように贅沢すぎる悩みなのである。

ところで2027年をめどに、ついにあの阪神電鉄も有料座席サービスを開始する予定だという。
「キャラブレしとう」と思ったのは私だけではないはずだが、それはともかく、京阪間だけでなく阪神間にもAシートのライバルが現れたのである。
ここは是非、阪急が神戸線にもプライベースを導入して競争を盛り上げて欲しい。
「私鉄王国」関西の戦いは終わることがなさそうだ。



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