富良野線は北海道の旭川と富良野を結ぶ路線です。
この線区は景色の良さが魅力的で、とりわけ初夏のラベンダー畑は有名です。
2022年7月の日曜日に、「富良野・美瑛ノロッコ6号」に富良野から旭川まで乗車しました。
指定席はほぼ満席で混雑していた「ノロッコ」号
「富良野・美瑛ノロッコ」は3往復で一部指定席
普通列車は富良野~旭川直通のものだけでも1日に10往復以上あります。
美瑛~旭川の区間列車も含めると、美瑛以北は1時間に1本の割合の本数が確保されています。
主に使われているのはキハ150形という車両で、4人用と2人用のボックスシートが並ぶ車内です。
それ以外に「富良野・美瑛ノロッコ号」が3往復運転されています。
トロッコ3両を機関車が牽く列車で、座席は通路を挟んでボックス席とベンチ席が並んでいる構造です。
また車内にはトイレもあります。
指定席車両と自由席車両はほとんど変わりませんが、指定席車両には天井にラベンダーを模した装飾がありました。
この列車は臨時列車ですが、ラベンダーが見頃を迎える初夏から8月上旬までのハイシーズンには毎日運転されています。
このうち富良野行き1号と旭川行き6号は旭川~富良野、それ以外は途中の美瑛~富良野の運転です。
運転日や時刻はJR北海道のページで確認できます。
「くしろ湿原ノロッコ号」と違って純粋に移動手段として使える列車なので、その点でも利用価値が大きいです。
乗車証明書が配布されましたが、車内販売はありませんでした。
乗車記:景色は右がおすすめ
発車20分ほど前に購入した時には、指定席券はほとんど満席に近い状態でした。
日曜日の夕方に旭川に着く便だけあって、なかなかの人気列車のようです。
客層は観光客ばかりかと思いましたが、部活帰りらしき学生の姿も結構ありました。
トロッコ列車で風に当たりながら富良野線の景色を見て帰れるとは、羨ましいものです。
なお、富良野線の車窓は畑や遠方の山が見える右側(旭川行きの場合)がおすすめです。
もっとも、車窓を遮るものが少ないので左側も綺麗ですし、そもそも「ノロッコ号」ならどちら側に座ってもあまり関係ないかもしれません。
ラベンダー畑の見える富良野~上富良野
16時11分、ディーゼル機関車に牽かれたノロッコ号はゆっくりと動き出します。
上富良野までの第一パートは富良野盆地の平坦な地形で、富良野線の代名詞でもあるラベンダー畑が点在するのもこの区間です。
富良野駅を出発して間もなく、右手には雲の中から十勝岳が姿を現しました。
昼間で雨だったようで、山を覆うように虹がかかっています。
左手はなだらかな丘陵地で、スキー場などが見えます。
富良野駅近くの売店で買った「ふらのワイン(白)」が今回の伴侶です。
ちょうど目の前の玉葱畑から運ばれてきたオニオンサラダの香りが、やや辛口の白ワインと絶好のマリアージュとなりました。
中富良野駅周辺からがラベンダーの景色が楽しめる区間です。
まだこの辺りでは指定席車両には空席が目立ちます。
私は紫色が好きですが、緑の中に紫の絨毯が敷かれているのが美しいと思います。
紅葉でも色の変化があった方が良いのと同じです。
ラベンダー畑駅は季節限定の臨時駅で、駅舎は無くホームも仮設のような造りです。
ここでファミリー層の観光客が沢山乗ってきました。
駅のホームがある側は小麦畑ですが、反対側には有名なファーム富田があります。
起伏のある大地、上富良野~美瑛
上富良野駅を出ると盆地は尽き、起伏のある土地となるので、車窓はダイナミックさを増します。
ラベンダー畑が彩る第一パートに続き、躍動感のある地形が織りなす第二パートも富良野線の見所です。
途中で松林が両側に続いた後、美馬牛駅に到着。
読み方も漢字も北海道らしい駅です。
その後も起伏のある丘陵地を進んでいきます。
綺麗に整備された農地の丘の中央に佇む赤い屋根の家は、美瑛観光のパノラマスポットとしても知られているようです。
上川盆地の水田、美瑛~旭川
富良野線の主要駅である美瑛駅を過ぎると上川盆地に入ります。
これまで様々な品種が作付けされた畑が多かったのに対し、この辺りは水田地帯の割合が増え、「雄大な北海道らしい風景」はやや後退といったところです。
右手遠方には大雪山系が連なります。
「ノロッコ号」は美瑛駅から旭川駅までの20㎞余りをノンストップで走ります。
美瑛から先も相変わらず農地が広がりますが観光地は無く、むしろ旭川都市圏に組み込まれた住宅地が増えていきます。
最初の方は活き活きとしていた乗客たちも、もうこの頃にはすっかり疲れたご様子で、帰りの観光バスのような雰囲気になってしまいました。
普通列車であればだんだんと乗客が増え、客層も多様になって地元の生活感が味わえる所なのですが、この辺が観光列車の大きな欠点です。
やがて高架になり、機関車に牽かれたトロッコ列車は電車特急が待つ近代的な旭川駅に乗り込みます。
向かって左側が緑地、右側がホテルや商業施設の並ぶ市街地と、駅・線路を境に対照的な景観です。
車内放送の後に下校時間に使われそうな音楽を流しながら、終点旭川駅に到着しました。
旭川は北海道第二の都市で、札幌・道東・道北の路線の結節点でもあります。
観光・通勤に健闘する富良野線
富良野線の存在価値として観光輸送が大きいのは言うまでもありません。
それだけでなく、普通列車の本数の多さからも分かる通り、この路線には通勤・通学でもそれなりの輸送量があります。
そのため、廃止の噂が絶えない北海道のローカル線では、(決して安泰ではないが)非常に恵まれた環境にあると思います。
実際に、隣にある「格上」の存在であるはずの根室本線の富良野~新得の廃止が確実視される中、富良野線の健闘には頼もしいものがあります。
こうした富良野線の二面性を味わうためには、富良野からノロッコに乗り、美瑛で普通列車に乗り換えて旭川に行くという旅程も良いでしょう。
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