【私鉄ムードのゲタ電路線】仙石線(含・仙石東北ライン)の乗車記

ローカル線

仙石線は仙台市内のあおば通駅から、仙台・松島海岸を経て石巻駅に至る路線です。
この路線は元々「宮城電気鉄道」という私鉄だったものの、戦時中に国によって買収された経緯があります。
そのため都会の私鉄の支線のような雰囲気が漂っています。

以下、2020年12月中旬の仙台から石巻までの乗車記です。
旅程は 
仙台855発→高城町940/949→石巻1014着
です。
乗り換えとなった高城町を境に前半と後半に分けます。

紫線が仙石線。地図上で「松島」と書かれた辺りが東北本線と離れる高城町駅。
国土地理院の地図を加工して利用。
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私鉄の歴史を色濃く映す仙台~高城町

車両は首都圏の中古だがトイレがある

仙石線では今も昔も、首都圏のおさがりの車両が使われています。
これは単なるマニアのウンチクではなく、仙石線の歴史と大いに関係があります。

電化には直流(古いタイプ)と交流(新しいタイプ)の2種類あり、東北地方のJR路線は基本的に1960年代以降に交流電化されています。
しかし冒頭述べた通り、仙石線は1920年代という古い時代から、電化された私鉄として建設されたために直流です。
そのため、周りの路線とは異なる車両が走る例外的な路線なのです。

有難いことに、仙石線の車両は東北左遷に際して、先頭車両(石巻方面行の場合)にトイレが設置されています。
仙台から高城町までの所要時間は45分程度です。

「ああ松島や」だけではない車窓

仙台駅の仙石線ホームは地下にあり、新幹線からの乗り換えは結構時間がかかります。
宮城電気鉄道時代から仙台駅は地下でしたが、その後地上になってから、また別の地下駅に移動した経緯があります。
ターミナル駅が地下というのも大都市の私鉄らしい点です。
通勤通学時間帯ですが方向は逆なので、電車はそれほど混んではいませんでした。

地下区間は陸前原ノ町駅までで、明かり区間に出ると市街地に時々水田が見られます。
駅間はとても短く、頻繁に乗客が入れ替わります。
急カーブも多く、途中の多賀城駅前後は高架になっているなど、私鉄要素が至る所に表れています。

塩釜市内でも線路は高架化されています。
市の中心となる本塩釜駅のすぐ傍に港があります。

その次の東塩釜駅までが複線区間で、以降は山塊が立ち塞がり、松島湾を時々見ながら短いトンネルを抜けていきます。
それにしても、単線になった途端に車窓が都会から自然に変わるというのは分かりやすいものです。

またこの辺りでは東北本線が近くを走っています。
堂々とした複線の幹線に媚びへつらうように、単線の仙石線はちょこまかとご機嫌伺いをします。

JRの路線同士がこうした絡み方をするのは珍しいですが、これも仙石線が私鉄だったためです。
富山~魚津における、北陸本線(現・あいの風とやま鉄道)と富山地方鉄道の関係に似ています。

トンネルの上を東北本線が横切っている

松島海岸駅は言わずと知れた景勝地、松島のすぐ隣にあります。
周囲は観光地らしい風情ですが、オフシーズンで時期も時期だったので、それほど人は多くありませんでした。

松島海岸駅からの眺め

仙石東北ラインが合流(後述)して、高城町駅に到着しました。
地形的に東北本線と仙石線が近いのでここが乗換駅になっているだけで、特に何もない所でした。

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海沿いと田園風景の高城町~石巻

仙石東北ラインの特快

仙台を出た頃は本数が多い仙石線ですが、50㎞弱の距離にある石巻まで行く列車は少なく、ほとんどが複線区間の終わる東塩釜止まりです。
東塩釜の3駅先(松島海岸の次)にある高城町からは仙石東北ラインの列車が乗り入れてきます。
この列車は仙台から東北本線を走り、高城町駅の手前で仙石線へと渡ります。

左側の東北本線との渡り線。架線は無い。

前章でも触れた通り、東北本線は交流電化で仙石線は直流電化です。
さらに両線間の渡り線は電化すらされていないため、2015年の仙石東北ライン開業に合わせて最新技術を採用した気動車が新製されています。

仙石東北ラインの列車は快速または特快の種別で、仙石線だけ経由では時間がかかる仙台~石巻の利便性を高める意図があるのでしょう。
快速の所要時間は仙台~石巻で1時間、高城町からだと30分。
特快だとそれぞれ50分、25分となります。

仙石線の電車(左)と仙石東北ラインの気動車(右)
仙石線の電車(左)と仙石東北ラインの気動車(右)

風景の印象が変わる

これまではせわしなかった仙石線ですが、高城町から先はおおらかな車窓が特徴的です。
引き続き野蒜のびるあたりまでは海沿いを走ります。
しかし、それまでの商業化されて華やいだ雰囲気とは違い、堤防が張られた海岸線は静謐な表情をしているように感じます。

やがて海岸線から離れ、広々とした穀倉地帯に放り出されます。
すぐに鳴瀬川を渡りますが、遠くの海辺の松はまばらに生えています。
これも震災の影響なのでしょうか。

その後も平野部を直線主体の線路で進みます。
都会の私鉄風の前半部分との対比は鮮やかです。

市街地が広がってくると終点の石巻駅はもうすぐです。
この駅で石巻線と接続しています。

石巻駅の仙石線の列車。
この右後方に石巻線のホームがある。

かつての石巻駅はその歴史的経緯から、仙石線と石巻線とで駅舎とホームが別になっていました。
現在では仙石線を延長して石巻線の駅舎に統合される形になっていますが、両路線のホームが少し離れていて変わった駅構造です。

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仙石東北ラインで変わった仙石線

松島の車窓は当然のことながら、仙石線の面白さはその歴史が随所に垣間見られる点です。
一見すると何気ない郊外電車ですが、注意してみると多くの発見や気づきがあります。

仙台・塩釜市街や松島を抱える前半部分とは違って、それまでの後半部分は地味な印象でした。
しかし、東日本大震災からの全線復旧と共に開業した仙石東北ラインによって、こちらも新しい使命を持つようになりました。

仙石線の歴史は異端児であった元私鉄路線が、周囲のJR路線網と統合していく過程のように思われます。


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