意外と速いローカル快速「最上川」、陸羽西線の乗車記【車窓の左右など】

ローカル線

陸羽西線は奥羽本線の新庄駅と、羽越本線の余目駅あまるめとを結ぶ山形県の路線です。
沿線の見所である最上川に導かれて、新庄盆地と庄内平野を繋ぎ、「奥の細道最上川ライン」という愛称でも知られています。
短い路線ではありながら、「緩ー急ー緩」の3部形式という典型的な横断線の様式美を備えています。

  • 豊かな庄内平野にて鳥海山を望む、余目~清川
  • 芭蕉の句を想いながら最上川に沿ってゆく、清川~古口ふるくち
  • 防雪林に守られながら新庄盆地を走る、古口~新庄
赤線が陸羽西線
国土地理院の地図を加工して利用

2022年3月、快速「最上川」に乗って余目駅から新庄駅に向かいました。
なお、陸羽西線は2022年5月14日から2024年度中にかけて、全線で運休して代行バスでの営業となります。(後述)

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奥の細道最上川ライン

雪解けを眺めて速し快速「最上川」

陸羽西線の列車は1日9往復あり、一部には酒田発着のものもありますが、多くが余目~新庄の運転です。
快速「最上川」が1往復設定されていますが、新庄発の列車は羽越本線の余目→酒田でしか快速運転をしないので、実質的な陸羽西線の快速は上りの余目→新庄の便だけです。

ところで、この上り快速「最上川」の所要時間は40分(普通列車だと50分弱)です。
同区間が43㎞なので停車時間も含めた表定速度は64.5㎞(なお最高速度は95㎞)となります。
電化されている磐越西線の快速「あいづ」は、最速列車でも表定速度が60㎞ですから、「最上川」の速さはなかなかのものです。
陸羽西線は全体的に直線が多く、カーブも緩やかなのがその要因です。

余目駅で出発を待つ快速最上川

車両はキハ110系という東北のローカル線でよく見るディーゼルカーです。
通路を挟んで2人用と4人用のボックスシートが並んでいるタイプです。

乗車記:最上川の車窓は左側

春の訪れを実感させる暖かい日でしたが、庄内地方はまだ所々雪が残っていました。
2両編成の快速「最上川」は新潟方面へ向けて走り出しました。
陸羽西線の車窓は最上川や鳥海山が見える北側、つまり今回では進行方向左側の座席(2人用ボックスシートの方)を確保しましょう。

庄内平野と鳥海山の景色

余目駅あまるめを出ると羽越本線と分かれ、左手正面の平野の向こうに鳥海山が見えます。
東北地方には美しい山が多いですが、鳥海山の滑らかな山容はひときわ優れていると私は思います。

屈指の米どころである庄内平野だけに、広い水田地帯が続きます。
薄く雪化粧をしている所もあれば、雪解け水に浸かっている所があります。
雪が消えた所ではその代わりに白鳥が餌を探しているようです。
列車が来ると慌ててヨタヨタと線路から離れていく様子は滑稽で、サンサーンスの作曲した優雅なチェロの調べにあわせて泳ぐ姿からは想像もできません。

一つ目の停車駅狩川駅を過ぎた頃には山が迫ってきました。
日本海側に特徴的な黒光りする民家は、雪景色にも本当によく似合います。

最上川に導かれて出羽山地を横断

清川駅を通過すると、ついに最上川と間近にご対面です。
ここから古口駅あたりまで、林に見え隠れする最上川を眺めながら、庄内平野と新庄盆地を隔てる出羽山地を横断します。
松尾芭蕉があまりに有名な「五月雨を あつめて早し 最上川」の句を詠んだのもこの辺りといわれています。

この日の最上川は、いくらかは雪解けを集めたはずですが、芭蕉が見た時ほど水嵩を増しているわけではないようです。
比較的川幅も広いので流れも緩やかで、急カーブもさほどありません。

陸羽西線のハイライト区間に臨み、午前中の鶴岡観光の帰りに駅で買った地酒を手に取ります。
山形らしいふくらみのあるフルーティーなお酒です。

2つ目の停車駅、古口駅ふるくちに到着。
ここが舟下りの乗り場です。
ホームには雪が高く積み上げられています。

新庄盆地に入り再び平坦な道に

古口駅を出るとすぐに最上川を渡り、この川との付き合いは終わります。
別れに相応しい、堂々とした大河の姿を見せてくれます。

また平地になったわけですが、海沿いの庄内平野と違い、内陸部の新庄盆地はまだ分厚い雪に覆われています。
どこを見渡しても白く険しい山が立ち塞がっています。
そして線路沿いに立派に立ち並んだ防雪林が、冬の厳しさを思わせます。

やがて住宅が増えてくると、最上地方の中心地である新庄駅に到着です。
停車駅が少ないためか、乗客の入れ替わりは少ないようでした。

新庄駅は山形新幹線の終点となる奥羽本線の主要駅で、陸羽西線を引き継ぐ形で小牛田駅こごた(東北本線)に抜ける陸羽東線の始発駅でもあります。
東北地方を東西・南北いずれに分けても境目付近に位置する、東北のへそとも言うべき鉄道交通の要衝です。

新庄駅に着いた快速「最上川」
以南の奥羽本線(山形線・山形新幹線)はレール幅が広くなるので、この駅で線路が分断されている。

この後3分乗り換えで、陸羽東線の快速「湯けむり号」で小牛田・そして仙台を目指しました。

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全線で運休し、代行バス輸送に

本記事投稿後まもなくで恐縮なのですが、冒頭述べた通り、陸羽西線は2022年5月14日より2024年度中に全線で運休し代行バスでの営業となります。
なお、陸羽西線に有効な乗車券類があれば利用可能とのことです。
リンク先の代行バスの時刻表を見ると、本数は微増するものの所要時間は延びているようです。

今回の運休の原因は新庄~酒田の国道のトンネル工事です。
つまり、商売敵の道路建設のために2年間運休を強いられるわけで、そもそもの輸送量の小ささ故とはいえ実に皮肉な話です。
たしかに40㎞程度の地域輸送ならバス代替で間に合うという判断になりかねません。
しかし前章でも紹介したように、陸羽西線は意外と高速運転のポテンシャルを持った線区です。
陸羽東線と併せて有効活用すれば、仙台~小牛田~新庄~酒田という、東北の中心と山形県の最上・庄内地方を直結する南東北の横断ルートが機能します。

勝手に想定した陸羽西線・陸羽東線経由、特急「もがみ」の運転ルート

今回の措置は「廃止」ではなく、あくまで「運休」ですが、その後も鉄道の必要性が問われるのは間違いありません。
個別の線区での地域活性化も良いですが、地方(陸羽西線の場合だと南東北地方)レベルでの輸送品質底上げも、鉄道の特性を活かすうえで必要だと思えます。

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