【神戸・明石・姫路】JR神戸線と私鉄で兵庫3都市巡り(②明石・姫路編)

旅行記

兵庫県の瀬戸内海側の主要都市、神戸・明石・姫路。
JR神戸線の新快速に乗ると40分で過ぎてしまうエリアだが、それぞれが見所の豊かな都市である。
そして昔から関西の鉄道は会社間の競争が活発で、やはりそれぞれが明確な個性を持っている。
地元の西宮市を拠点として、阪急電鉄・阪神電鉄・山陽電鉄の私鉄3社およびJR神戸線に乗って、各都市と各鉄道会社の魅力や歴史を探っていこう。

神戸パートの前回記事に続き、本記事では後半の明石・姫路パートを収録した。
なお、実際の日程として1日目に半日神戸観光をし、2日目の午前中は神戸の続き、その後明石と姫路を訪れた。

赤線:山陽電鉄、紫線:JR神戸線
国土地理院の地図を加工して利用
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海峡と国境の街明石

私鉄特急を圧倒する速さの新快速

2020年1月

神戸駅からJR線に乗って明石へ。
神戸駅は東海道本線と山陽本線の境目なのだが、戸籍上の正式名称はともかくとして、大阪~神戸~姫路を指す「JR神戸線」の愛称が使われている。
関西の新快速は130㎞/hで走り、車内も転換クロスシートになっている。
関東の人はその速さと快適さに驚く。
およその所要時間は京都~大阪が30分(阪急特急で40分)、大阪~三ノ宮が20分(阪急・阪神特急で30分)、三宮~姫路が40分(山陽特急で60分)と、競合が多数存在する「私鉄王国」関西においてもその速さは圧倒的である。

須磨のあたりで海岸に出て、淡路島と明石海峡大橋を望む。
反対側には崖が迫っており、まるで地方のローカル線のような絶景である。
複々線の線路からこんな景色が見られる区間は日本全国でも他にないだろう。
土地が狭いのでJRと山陽電鉄の線路がぴったり接近して敷かれている。
大阪府と京都府の境の山崎付近におけるJRと阪急の関係も同様で、古戦場になっている点も全く同じである。

ここ畿内(摂津)と播磨との境目は、昔の人にとって、いよいよ都を離れて遠方の西国への旅の始まりの地だったのだろう。
今では新快速が走る姫路~敦賀(福井県)まで関西経済圏が広がっている。
地方の短編成の列車を乗り継いだ末に姫路駅や敦賀駅で新快速電車を見ると、ようやく帰ってきた気持ちになる。

明石といえばタイ・タコ・シロ

昼過ぎに明石駅に着いて、まず駅の南側にある魚の棚市場に行った。
今日は日曜日で混雑している。
通りで蛸の天ぷらを売っていたので、思わず買ってしまった。
私は観光地化された市場は好きではないが、ここは庶民的な市場で安心する。
蒸し暑かったので昼食は明石焼きではなく海鮮丼にした。
もちろん海外から来られたお客様カルフォルニアロールしか知らないチョロい客用のインバウン丼などない。
鯛も蛸も歯応えが抜群で、地酒も魚によく合う辛口だった。

ところで、旅行を趣味にしているとどうしても遠くの地に注目しがちになる。
だから「海峡で食べる旨い蛸」と聞けば関門海峡を即座に連想するが、今思えば地元のすぐ近くに明石があったではないか。
これまで長崎・函館・ナポリ・ブダペストと素晴らしい夜景を見てきたが、いつか神戸の夜景も見てみたいと思う。

さて、昼食後に明石城へ。
南を向いた櫓の間に長く延びる東西380mの石垣が特徴的である。
駅からだと城はすぐ近くに感じるが、実際歩いて見ると意外と距離があり、城自体も大きく見える。
城を登ると明石海峡大橋や淡路島を望むことができ、ここが摂津・播磨・淡路の結節点であることを改めて感じさせられた。

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播磨国の首都姫路

山陽電鉄は都会的なローカル私鉄

新快速が出たばかりだったので、明石からは山陽電鉄で姫路に行く。
馴染みのある銀色の特急電車に乗った。
小学生の頃は、アルミ車体の山陽電車で明石に行くだけでもワクワクする旅行であった。
山陽電鉄は元々は路面電車から出発した会社で、関西の大手私鉄と比較すると「ローカル私鉄」感は拭えないが、阪神の大阪梅田駅まで直通する特急を走らせて健闘している。
車両も大手の中古車(地方私鉄でよくある)ではなく自社で造っており、座席はJRの新快速と同じクロスシートでスピードもそこそこ速い。

姫路駅に着いたのは16時過ぎ。
JRの線路は旧城下町の目の前を東西に堂々と横断するが、山陽の場合は歴史に敬意を払ってか、南側から回り込むようにして姫路駅に進入する。
地方私鉄のターミナルらしく程よい大きさの行き止まり式で、よい雰囲気の駅である。

姫路城の複雑な縄張に焦る

さて、夏期の姫路城の営業は18時まで。
来たからには急がなければならない。
城に行くバスがすぐ出るようなので飛び乗る。
城に隣接する庭園の両方を見る時間はあるかと窓口で聞くと「急ぎはったら見れないこともないですね。」とのことなのでセット券を購入。

それにしても、先ほどの明石城でも石垣に感心したが、いやはや池田輝政の姫路城はスケールが違い過ぎる。
小天守たちを従えた大天守は、雨空の下でも神々しく聳えている。
しかし、城において天守は「氷山の一角」で、それを支える石垣や渡櫓に魅力がある。
富士山は裾野が美しいのと同じである。

しばしその威容に感動した後、時計を気にしながら城攻略に取り掛かる。
普通の城のように階段を登りながら三の丸・二の丸・本丸、という訳にはいかず、迷路のような道を進まなければならない。
二の丸に入り、幾つかの門をくぐると目の前に大天守が姿を現すのだが、そこから先も複雑な経路でなかなか天守にたどり着けない。
時間を気にすればするほど、姫路城の偉大さが身に染みて分かってくるようで、楽しい。

天守内部の見学を終え帰路につく。
行きと帰りの道は分離されている。
順路は標識があるので分かるのだが、城を眺めるのにいい場所はないか探してウロウロしていると、ガイドの人に”This way please”と言われてしまった。
どういう訳か私は日本でもよく英語で話しかけられる。
一般的な日本人男性の顔立ちの範疇には収まっているはずなのだが、どうやら日本語能力なしと判定されているらしい。
「あ、どうも。」とガイドに会釈して立ち去った。

残り時間で城の横にある庭園の好古園に行く。
曇り空に木々は緑一色、池を泳ぐ鯉が風景に彩を添えている。
観光客が多数いた城と違って、こちらは静かで落ち着いた雰囲気だ。
それからこちらは外観を見ただけだったが、城のすぐ近くの姫路市立美術館は明治時代の軍の倉庫だったレンガ造りの建物を利用している。
また兵庫県立歴史博物館も隣にある。
このように城周辺には文化施設があり、姫路は旧播磨国の首都にして神戸に次ぐ副県都であることがうかがえる。

関西私鉄各社の競合と共演

18時ギリギリに庭園を出て、姫路駅まで歩いて行く。
帰りも山陽電鉄の特急に乗った。
もっとも通常はJRよりも私鉄の方が安いが、山陽・神戸高速鉄道・阪急と3社線に跨るため、姫路から西宮北口までの運賃はほとんど変わらない。
ちなみに新快速があまりに速くて便利なので、姫路から大阪や神戸まで新幹線に乗る人はほとんどいない。

なお、神戸高速鉄道は神戸市内に点在する各私鉄のターミナル駅を直結する鉄道会社で、路線はほぼトンネルで自社車両は持たないというユニークな存在である。
ここには山陽・阪神に加え阪急の電車も乗り入れるので楽しい。
もっとも前半の記事で述べた通り、場所は違っても阪急と阪神の駅名は同じなので、慣れない人にとってはどれに乗ればいいか分からないだろうが。
それはともかく、関西の私鉄は競争ばかりやっているのではなく、協力すべきことは協力しているのだ。

以上、神戸・明石・姫路の3都市を実質1日半で周った。
明石と姫路に関してはほとんど城巡りだけに終わってしまったが、私個人としては久々に山陽電鉄にも乗れて子供の頃に戻ったような心地だった。

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