【日光亜阿房列車・往路】新宿発253系特急きぬがわ3号の乗車記【車内・予約方法など】

旅行記

かつては旅客争奪戦を繰り広げた国鉄(今のJR)と東武鉄道。
今では両社で直通運転を行う列車が運行されています。

2023年9月末、会社の野郎5人でJR新宿駅を出発する東武線直通の特急「きぬがわ3号」に乗車し、日光・鬼怒川温泉を目指しました。
本記事では前半(攻略編)に列車概要や予約方法・車内などの情報、後半(本篇)では旅日記を綴っていきます。

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【攻略編①】特急「きぬがわ3号」

車両はJRの253系か東武スペーシア100系

2006年にJRの新宿駅発、途中から東武線に乗り入れて日光・鬼怒川温泉へ直通する列車が運行を開始しました。
東武特急は浅草始発で、エリアによっては不便でしたが、新宿・池袋・大宮を通ることで首都圏各地からのアクセスが格段に良くなりました。

JR・東武直通特急に運用される車両は、JR側が元「成田エクスプレス」を改造した253系、東武側がスペーシア100系を用意しています。
列車名は253系使用列車が「日光」または「きぬがわ」、スペーシア使用列車は「スペーシア日光」または「スペーシアきぬがわ」と使い分けられています。

どちらに乗っても料金に差はありません。
また普通車でもスペーシア車両の方がずっと快適で、豪華な4人用個室もあります。
253系も悪くはないのですが、相手がバブル期の傑作車両スペーシアというのは気の毒です。

東武スペーシア100系の個室

予約方法と費用:Suicaは使えないので注意。

特急「きぬがわ」の予約はJR東日本の「えきねっと」で行うことができます。
ここで注意すべきは、行き先が日光の場合、降車駅を「東武日光」にする必要があります。
JR駅の「日光」だと乗車駅を新宿にしても、東北新幹線経由のルートしかヒットしません。
また、東武線内で完結する「けごん」「きぬ」と比べて、JR・東武直通列車は会社を跨るので料金が高めです。
スペーシアの個室料金もJR・東武それぞれの線内で必要になるので、東武線のみの料金より倍(6,000円以上)かかります。

料金は新宿~東武日光・鬼怒川温泉だと計4,090円。
「えきねっと」で買える割引チケットの「トクだ値」も設定されています。
割引率は期間によって異なりますが、たいてい20%~30%引きになります。
なお、特急と普通を乗り継いで行く場合(例えば下今市駅で「きぬがわ」から普通に乗り換えて東武日光に行く場合)は、空席に余裕があっても「トクだ値」が適用されないようです。

「えきねっと」で乗車券込みで購入した時は問題ありませんが、特急券のみ購入した際にはSuicaなどの交通系ICカードは使えないので注意してください。
窓口に並んで直通列車に対応した切符を買う必要があります。

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【攻略編②】253系特急「きぬがわ」・「日光」の車内

JR253系の編成は普通車のみです。
「成田エクスプレス」時代の重たいイメージは完全になくなり、車内の印象は明るくなりました。
ただ、さすがに窓が小さいのはそのままです。

253系特急「きぬがわ」の車内

座席の色は2種類あり、奇数号車がオレンジ色、偶数号車が水色になっています。

253系特急「きぬがわ」の車内

車内では「老けやすい」部分であるデッキも、30年前の車両であることを感じさせません。
一方で、荷物置き場用のスペースなど、時々「成田エクスプレス」時代の面影が見られます。

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【本篇】日光亜阿房列車・往路

以下、乗車記です。

登場人物の紹介。

  • 国鉄特急電車185系(筆者)…基本的に職務遂行能力は高くないが、故障リスクは皆無で他部署出向やイレギュラーな時間帯での勤務もこなすことができるため、会社にとっては意外と有用な存在。と本人は思っている。
  • ジョイフルトレインお座敷車両…運用は非定期かつ流動的。旅客輸送という本来の業務はおざなりで、閑散期の平日は開店休業状態になることも。カラオケと喫煙所は必須。実は5人の中で職位が一番上だから驚く。
  • 小田急ロマンスカーLSE…5人の中で会社から最も高い評価を受けている。地味な印象だが若い社員に負けずに長年主役として働き続けている縁の下の力持ち。後輩の指導役もよく任されている。
  • 動態保存用旧型客車…何においても受け身で、機関車の牽引が無ければ動くことはおろか、電源を入れる事すらできない。さすがに自身のアップグレードの必要性を感じて、今年スマホデビュー(1GBプラン)を果たした。
  • 九州新幹線800系…以前、信越亜阿房列車の回で「地蔵」の名で出演。キャラは充分に立っている。しかし労働を殊更に毛嫌いしており、いかんせん勤務時間が短すぎるせいか、職場では今一つ目立たない存在。

ようやく秋の気配が感じられるようになった9月下旬。
とは言うものの、この日はやはり暑く10時を過ぎる頃には気温は30度近くなっていた。
我々が乗車するのは新宿駅を6番線から10時31分に発車する「きぬがわ3号」。
新宿駅の5・6番線は南寄りに奥まった所にあり、知らないで来るとコンコースによっては案内表示が4番ホームの次が7番線なので迷う。
6番線からはもう隣の代々木駅が見えている。

現地集合だったので、10時15分くらいにホームでお座敷車両氏とLSE氏で落ち合った。
新宿組はこの3人で、残りの旧型客車氏と800系氏は大宮から乗って来る。
「いやいやいやいや…」とお座敷車両氏がいつもの挨拶をする。
隣の5番線には「成田エクスプレス」が停まっていて、ホームには外国人が結構いた。
「周りは通勤地獄ですが、この離れ小島だけ優雅な雰囲気ですね。」と私も嬉しくなる。

「きぬがわ3号」は10時20分に入線、その後車内清掃があり、10時25分に扉が開いた。
「この車両に乗るのは30年ぶりなんだ。前乗ったのは親と一緒に成田空港に行った時で、○○時○○分発の列車だった。」とお座敷車両氏は子供時代を懐古している。
「えっ、海外行ったことあるんですか?」とLSE氏が驚いて聞くと
「いや、成田エクスプレスに乗るために空港まで連れて行ってもらったんだ。」とのこと。
私も関西空港の「はるか」で同じことをした経験がある。

「きぬがわ3号」が新宿駅を出発した。
ここで歓声をあげたいところだが、お座敷車両氏が車内放送を録音するので、我々は物音を立てることを禁止されている。
車内メロディでショパンの「華麗なる大円舞曲」の冒頭が流れ、続いて長ったらしい放送が始まった。うんうんと頷きながら耳を傾けているお座敷車両氏を見て、LSE氏がクスクスと笑っている。

車内放送の「本編」は池袋駅発車後からで、そのせいで録音は11分にも及んだ。
大宮駅で旧型客車氏と800系氏が乗って来た。
旧型客車氏はかしこまってお辞儀をしながら、800系氏は間延びした挨拶をしながら、二人ともいつも通りだった。
隣の車両も含めて、大宮を出発した時点でも半分以上の座席は空いていた。
直通列車ゆえに料金が二重にかかることもあってか、この列車の乗車率はあまり高くないらしい。
通路を隔てて2列の座席をボックスにして、5人で8席分を占拠した。

お座敷車両氏は焼酎をストレートティーで割り(こういう飲み方があるらしい)ながら、253系について窓が明るくなったこと、自動放送が4か国語であること、車内は古さを感じさせないほど綺麗にリニューアルされていること、その一方でトイレは相変わらず真空式ではなくて青い洗浄液が大量に流れるタイプであることを、嬉々として指摘する。
それを見守りながら「少年だな。」とLSE氏が相変わらず穏やかに突っ込みを入れる。

ここで私も鉄道ファンとしてお座敷車両氏を弁護した。
「しかし、歳をとって旅行した回数や乗った路線とか車両が増えてくると、人は鈍感になっていくんですわ。彼みたいに少年の心をいつまでも持つのって大切やと思いますよ。
「そうだよ。この列車は車両が珍しいだけではなくて、JRと東武に直通するんだからね。」
「ええ。昔、国鉄(今のJR)と東武は日光行きで熾烈な乗客獲得競争を繰り広げていたんです。それが今や協力し合う関係ですからね。だから今は犬猿の仲のお座敷車両さんと××上司も、いつかは親友になるかもしれませんよ。」
「いや、それだけは絶対にない!」
LSE氏は××上司のフォローをした。

「大宮を過ぎたら、急に辺りは田んぼが多くなりましたねぇ。」
と窓を見ながら800系氏が呟いた。
たしかに同じ幹線でも東海道線は横浜を出ても住宅街が続くが、東北線では大宮から先は首都圏の雰囲気はない。
その後、800系氏は東海道・横須賀線と東北・高崎線の沿線環境・イメージの差異について述べ、それに関連して上尾事件(1973年の高崎線で、国鉄のストライキに伴う運転打ち切りに激怒した乗客が暴走した事件)、さらに続いて国鉄の労働組合や政党との関係について一席ぶっていた。
ちなみに800系氏の出身は栃木県である。

「それにしても、800系君とプライベートで会うのは初めてだね。」とお座敷車両氏。
既に焼酎の紅茶割を何杯も重ね、会社の愚痴を言っているうちに甲高い声も枯れている。
僅か30分の間に、瞳を輝かせていた少年から30年歳をとった中年のオッサンになり果てていた。
二人はすぐに共通の話題を見つけたらしく、ディープな世界に入り込んでいった。

通過する栗橋駅で列車は停止した。
ここから東武線に入る。

JRと東武線の駅の間に設けられた渡り線で乗務員の交代が行われていたらしい。
通りかかっただけの東武の車掌に向かって、旧型客車氏が会釈をした。

まもなく右手前方に大きな橋梁が見えて来て、列車が築堤を登りながら90度右へカーブすると利根川を渡る。
関東地方では川を渡るたびに都会度が1ランク下がる。
利根川を渡ってしまうと、もう関東平野から脱出してようやく旅に出てきた気分になる。
800系氏が再び故郷のことを悪しざまに言い始めた。

お菓子を食べるだけで黙り込んでいた旧型客車氏に、LSE氏が「最近何か面白いことあった?」と声を掛けた。
「いや、特に無いですね。」
(沈黙…)
「ああ、そういえばこの前は○○さんに怒られました。これこれのミスをしたんですよ。」
その話が可笑しかったので、一人ずつ類似の話題を披露する展開に。
残念ながら(?)、LSE氏には持ちネタが無かった。

全体的には車窓は進行方向左手の方が綺麗だった。
私が座っているのは右側で、左側の山と田んぼに佇む集落の景色を撮ろうとスマホを構えると旧型客車氏が写ってしまう。
彼は姿勢を正しながら「僕もここにいた方がいいですか?」と聞く。真面目なのか冗談なのかさっぱり分からない。
「いや、おらん方がいいです。せっかく景色が綺麗なので。」と言っているうちに、シャッターチャンスを逃してしまった。

新鹿沼駅を過ぎると上り坂がきつくなる。
「この車両はモハ(モーター付きの車両のこと)だから、下からモーター音がよく聞こえますね。」と車の運転好きの800系氏が感心する。
冬なら男体山も雪を被ってとりわけ綺麗なのだろうが、今の季節は大して目立たなかった。
とはいえ、明らかに山道になって日光への道も佳境に入ったように感じる。

新宿から1時間45分。
12時16分に下今市駅に到着した。
ここで我々は二手に分かれ、私と800系氏がここで乗り換えて日光へ、残り三人が引き続き鬼怒川温泉まで乗車する。
こちらを見てケラケラ笑っている鬼怒川温泉組を見送り、ホームの向かいにいる東武日光行き普通電車に乗った。

「お座敷車両さん大丈夫ですかね?結構出来上がってましたけど。」と800系氏が心配する。
「まあ、大丈夫でしょう。LSEさんが彼を介抱してくれるでしょうから。」
下今市から10分で目的地の東武日光駅に着いた。
外国人観光客が目立つ。

昼食を済ませてから東照宮に向かった。
800系氏の神社仏閣に関する知識たるや、私の鉄道知識の比ではない。
おかげで個別ガイドツアー付きで観光することができた。

その後800系氏が一番気に入っているという輪王寺の常行堂へ。
菩薩像がクジャクに乗っているとても珍しい寺で、観光客で賑わっている東照宮とは対照的に静まり返っている。
「あっちがなら、こっちはですよ」と800系氏。
曰く、東照宮はもちろん良いが、そこにいる坊主の商売っ気が前面に出すぎてケシカランとのこと。

時間も迫ってきたので東武日光駅に戻り、下今市駅で鬼怒川温泉組と合流した。
帰りに乗るのは、今年7月にデビューしたばかりの新型車両「スペーシアX」のコンパートメントである。

往路の乗車記は以上です。
続きは以下の記事をご覧ください。







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