九州行きのブルートレインが全廃されたことで、2009年以降は東京・九州間を直通の夜行列車で移動することはできなくなりました。
新幹線で行くにしても、東京から博多まで「のぞみ」でも5時間程度かかるので、多くの人は航空機を利用するでしょう。
実際にJR西日本の資料によると、東京対福岡の新幹線のシェアは7%程度となっています。
しかし、同区間でも鉄道を実用的に利用する手段はあります。
それは、寝台特急サンライズ出雲(瀬戸でも可だが、以下出雲)と山陽・九州新幹線「みずほ」を岡山で乗り継ぐ方法です。
ダイヤは
東京発21:50(サンライズ出雲)→岡山6:27着/6:51発(みずほ601号)→博多8:28着、熊本9:02着、鹿児島中央9:46着
という、非常に利便性の高いスケジュールになります。
この方法によって、サンライズ出雲を「はやぶさ(寝台特急)化」することができます。
- 東京と九州の移動で時間を有効に活用したい。
- ブルトレ全廃後でも夜行列車で九州行きを諦めたくない
- 非日常の感覚を味わいたい
という方は参考にしてください。
サンライズ出雲で岡山へ
どの寝台設備がおすすめか?
結論から言うと、「シングル」が一番無難です。
その理由は
- 最もグレードの高い「シングルデラックス」は、乗車時間が8時間半程であることを考えると勿体ない
- 「ノビノビ座席」は雑魚寝に近くプライバシーが確保されない。また床も硬い。
- 「ソロ」は「シングル」より1000円安いが部屋が狭く、特に荷物が大きいと圧迫感がある
からです。
なお、ノビノビ座席以外の個室寝台には、どの設備にもコンセントがあります。
なお、サンライズ出雲に使用されている285系電車の詳細については以下の記事を参照してください。
入線時刻は21時35分ごろ
サンライズ出雲の東京駅入線時刻は、出発の15分くらい前です。
到着後、清掃・準備が行われますが、2、3分もしないうちに車内に入れます。
それまでに夜食・飲み物・駅弁などを買っておきましょう。東京駅の「駅弁屋 祭」は5時30分~23時まで営業しているので、旅の準備には欠かせない存在です。
私は大船軒の「湘南しらす弁当」を買いました。
しらすが主役ではありますが、やはりいくらの存在感も大きいです。
また脇役であるマグロのカツもなかなか美味しかったです。
シャワー券とミニラウンジは争奪戦になる
サンライズ出雲にはシャワー室がありますが、シャワー券の数は限られています。(「シングルデラックス」利用客なら無料で専用のシャワー室を利用できる)
東京駅出発前に購入しておきたいところです。
また、3、10号車にミニラウンジがあります。ここで夕食や晩酌をするのもなかなか良いものですが、座席数が少ないのですぐに場所を取られてしまいます。
乗車したら、なるべく早く席を確保しましょう。(貴重品の管理は要注意)
一番の車窓は「人」
クルーズトレイン「ななつ星」について、JR九州の社長が同じようなことを述べていました。
しかし私が言いたいのは、人を都合の良い財布と見なすことを包み隠すための綺麗ごと(=裏のある「おもてなし」)ではありません。
寝台車でくつろぎながら、仕事で疲れたスーツ姿の人々を収容した通勤電車や日常風景を眺めて優越感に浸る。これが夜行列車の魅力であり、楽しみ方です。
この味を覚えると、あなたも夜行列車の旅が病みつきになります。
小田原を過ぎると住宅も少なくなり、外は真っ暗になります(というかトンネルが増える)。
部屋の電気を消してブラインドを開けると、音も静かで周りの風景がうっすらと見えながら流れていく、不思議な感覚になります。
回想・反省etc…。一通り済んだら、おやすみなさい。
岡山駅からは「みずほ」で九州へ
国鉄型車両の宝庫、岡山駅
翌朝、6時27分に岡山到着です。車内放送もこの駅から再開するので、寝過ごすリスクは低いです。
岡山駅では年代物の国鉄型車両がたくさん見られます。懐かしい115系・117系・キハ40系などに出会えば、朝の眠たい気分も忘れるほど生き生きとしてきます。
そして、四国でお馴染みの駅メロ「瀬戸の花嫁」も聞こえてきます。
ここでサンライズ出雲と瀬戸の分割ショーを見終えたら、新幹線ホームに向かいます。
新幹線の改札に入場したところで、朝食・駅弁を買うことができます。
朝食として「鰆寿司」を選びました。
鰆は肉厚なのが何よりですが、全体的に生姜の風味が支配的です。
時々シャリから顔を出すシイタケも良い味を出しています。
「みずほ」は普通車でも指定席は豪華
山陽・九州新幹線直通車両は、指定席でも2&2シートになっています。
また内装や座席のモケットも、ブラウンで落ち着いた雰囲気です。
東海道新幹線に普段乗っている人には、信じられない水準といえるでしょう。
自由席は通常の2&3シートなので、指定席利用を推奨します。
山陽新幹線は先輩格の東海道新幹線と比べるとトンネル区間が多く、開業当初は「モグラ新幹線」と呼ばれたこともありました。
しかし、最近開業した区間と比べるとまだ車窓が眺められる区間が多く、高架の線路を走るのでかえって在来線よりも見晴らしが良い場合もあります。
費用
東京から博多まで「シングル」と指定席利用を例にとると
- 乗車券 13,820
- 特急券 1,620(サンライズ乗継割引)+5,370(みずほ指定席)
- 寝台券 7,560
計28,370円です。(通常期)
やはりネックはこの費用の高さですね。
LCCで余裕で1万円切る時代に、割高であることは間違いありません。
どうしても安くしたい場合は、サンライズ出雲の「ノビノビ座席」利用で寝台券が指定席相当の520円で済み、「みずほ」を自由席にすることでさらに830円削減できます。
脱コスパ至上主義
なぜ敢えて寝台列車を使って九州に行くのか?
それは今回紹介した方法が、他ではできない体験を提供し、かつ時間も有効に使える、非常に優れた選択肢だからです。
コスパという基準では測りえない魅力が寝台列車の旅にはあるということを、一人でも多くの人に知ってもらうことを願ってやみません。