【日韓擬似国際列車の旅・終】ソウル駅から仁川空港へAREXに乗る、そして帰国

アジア

2026年6月末日、日本・韓国両国の新幹線と下関・釜山間のフェリーを乗り継いで、東京発ソウル行き「日韓擬似国際列車」の旅に出かけた。
日本が朝鮮や中国に進出していた1940年の時刻表を基に、現在の最新型高速列車を当時の看板列車に見立てることで、戦前の鉄道黄金時代の海外渡航を今日に蘇らせようとする試みである。

【日韓擬似国際列車の旅・序】東京から韓国・ソウルまで鉄道と船を乗り継ぐ1700㎞
島国の日本には当然のことながら国際列車は存在しない。もっとも国土には多様性があるので、景色のダイナミックな変化を感じられる場所は幾つもあるが、あの国境越えの独特な旅情を味わうことはできない。しかし、お隣韓国への国際航路なら運行されている。こ…

韓国旅行の最終日(4日目)は、午前中にソウル郊外にある鉄道博物館を訪れ、日韓擬似国際列車の空想旅行に実体を吹き込んだ。
あとは飛行機に乗って帰るのみである。
鉄道博物館からソウル駅に戻り、仁川インチョン空港行きの空港鉄道(AREX)に乗車した。

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韓国では日本の時間感覚が通用する

13時半ごろに博物館を後にして、ソウル駅に着いたのが15時前。
飛行機の出発が18時30分だから、ソウル駅15時30分発のAREXに乗ればちょうどよい時間になりそうだ。
余った時間で駅の食堂で軽く昼食(この日はまだ何も食べていなかった)にした。
タッチパネルで注文して、料理の提供が遅かったらどうしようかと心配する間もなく、餃子・ひき肉炒め・わかめスープ・各種キムチの定食が運ばれてきた。
日本人の私でも家庭の味だなと感じてしまった。

それにしても、こんなに慌ただしくもちゃんとした食事をとれるのは有難い。
ヨーロッパだったら、注文と支払いの時にウェイターを探しているうちに時間になってしまうだろう。
ヨーロッパばかり行っていた私にとって、海外とは日本の常識が通用しない世界だった。
つまり物理的にも文化的にも「正反対」の場所なのである。

ところが今回の韓国旅行は、ハングル文字と辛い料理を除けば、ありとあらゆる面で日本との親近感を感じた3日間だった。
「1940年を再現する日韓擬似国際列車の旅」の締めくくりにこういうことを書くと誤解を招きかねないが、海外旅行というより「国内旅行の延長」の方が実感に近かったように思う。
日本語に接したり使う機会が多く、人々の見た目や振る舞い・接客態度も似ていて、時刻通り動く列車の車窓からはトンネルの合間に水田・住宅・工場がせわしなく現れ、そしてホテルには洗浄便座とバスタブがある。

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空港鉄道AREXのモニターが映す韓国社会

そのような感想を抱きながら定食をさっと平らげ、列車乗り場へ急いだ。
ホームは東京の都営大江戸線と同じくらい地下深くにあり、心持ち余裕を持っていて良かった。
AREXはソウル駅と仁川空港第1ターミナル及び第2ターミナル駅を結ぶ直通列車で、第2ターミナルまでの所要時間は約50分である。
日本の京成スカイライナーのような存在で、座席は全席指定となっている。
真ん中の車両にトイレがある点も似ている。

AREXの車内

しばらく地下を走り、地上に出るとソウル市を流れる大河、漢江ハンガンを渡った。
車内にはモニターがありニュース等を多言語で流している。
また今日もKOSPI(韓国総合株価指数、韓国の日経平均のようなもの)が10%近く急落したようだ。
折からの半導体の熱狂のおかげで、国全体の株価指数がベンチャー企業の株価のように連日乱高下している。
「韓国の豊かさは少数の半導体企業の異常な繁栄に依る表面的なものだ」という、行きのフェリーで出会ったヤンさんの言葉が思い出される。

ニュースが一段落すると、沖合に浮かぶ切り立った崖のような島の映像が現れた。
はじめは観光案内でも始まるのかと思ったが、どうもこの島には見覚えがある。
果たして、Dokdoという文字が映し出された。
独島トクト、つまり竹島のことだ。
このビデオだけは字幕が英語のみで、その内容は敢えて説明するまでもなかろう。

隣国同士の領土問題があるのは何も日韓に限ったことではないし、自国の立場を国際世論に訴えたいという戦略も分からないでもない。
しかし、日本人はともかく、これから韓国を観光する、あるいは韓国を去っていく第三国の旅行者がこの場でこれを見て、ビデオの制作者が意図した通りの感情を抱くのだろうか?
予想をはるかに超えて韓国旅行を楽しませてもらった私としても、旨いアサリの味噌汁を飲み干す際に砂利を噛んだような思いである。

とは言うものの、そんなことは今回の旅行の収穫・満足度に比べれば実に些細なことに過ぎない。
ビデオの内容など全くおかまいなしに、背筋を綺麗に伸ばした若い女性車掌が笑顔でミネラルウオーターを乗客に配布していた。
長い橋を渡って埋め立て地へ渡り、16時21分に仁川空港第2ターミナル駅に到着した。

飛行機は18時30分に出発し、成田空港着は21時。
ちなみに往路は東京駅からソウル駅まで乗り換え含めて約28時間かかった。
疲れのためか、搭乗前に急いで飲んだ焼酎ソジュのせいか、機内ではぐったりして過ごした。
帰路の2時間半は、長くて退屈だった。

(了)





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